ワイアットの逆襲 第27話【謀略の宇宙:中編】
重巡ヴォルフのブリッジで、
通信士がハルトマン少佐に報告を行っていた。
「奇襲部隊からの報告では敵艦隊は巡洋艦ではなく、
戦艦5、空母2からなる部隊だそうです」
「そして敵艦隊には噂の新型MSも多数いるのだな?」
「ど、どうしてそれを!?」
通信士は報告前に戦力を推測した司令官に驚きを隠せない。
ハルトマン少佐は常に連邦軍の動きを警戒しており、得られる範囲での情報を貪欲に入手していたのだ。行動力、保有戦力、そして新型MSを多数保有するとなれば敵の存在は自ずと限られる。何しろ、ハルトマン少佐が特に注意して集めていた情報がワイアットに関する事だったのだ。集めた情報の多くが該当する。
ワイアットが優勢な戦力で戦うだけの将校ならばハルトマン少佐はそれほど気を掛けなかっただろう。しかしハルトマン少佐から見てワイアットは凡庸の将校とは違っていた。緒戦の混乱時に、しかもルウム会戦の敗戦直後に寄せ集めの兵力で、しかも1個艦隊程度の戦力でジオン勢力圏に大胆にも侵入し、大きな戦果を上げた男である。そして、情報部が入手した情報によると、ワイワットは連邦軍に於けるMS開発責任者だけでなくMSの開発プランすらも早期に纏め上げた英才でもあった。しかも一流のパイロットを見抜く神がかり的な素質すら有しているらしい。
その影響力は大きく、ジオン公国軍ではワイアットを倒した者にはダイヤ柏葉剣付ジオン十字章が確実に授与されると噂されるほど。
「この大胆かつ先を読む知能…そして固定概念に囚われない発想だ。
おのずと相手が限られる。
敵艦隊の指揮官は…十中八九あのワイアットだろう。
新型MSが居るのは当然だな」
状況と相手の行動パターンから、重巡ヴォルフの艦長席に座るハルトマン少佐は自分たち状況及び、誰を相手にしているかを即座に理解したのだ。
「そんな……まさか!?」
司令官の断定により、話を聞いていた士官の誰かがゴクリと唾を飲み込む。ジオン公国軍に対して災厄を振りまいているワイアットは死神に等しい存在になっていたのだ。怨敵と言っても言い過ぎではないだろう。しかし、だからと言って簡単に討ち取れる存在でもなかったのがジオン側にとっての不幸だった。有力な艦隊戦力を率いて縦横無尽に宇宙を駆け巡る彼らは、並みの部隊では生贄にしかならないからだ。しかも、困ったことにワイアットの大将と言う階級は、その戦功からして階級以上の発言力を有しており、彼が推し進める戦争戦略はジオン公国に対して重く圧し掛かっていた。通商破壊作戦に然り。
「それと…信じ難いことですが、
連邦のMSはビーム兵器を搭載しているようです」
「なんだとっ!」
この情報には流石のハルトマン少佐も驚く。
だが、ジオン側がビーム兵器を搭載した連邦軍のMSの存在を知らなかったのは仕方が無いことだった。史実でもシャア・アズナブル少佐の部隊がV作戦を察知し、その事が発端となりRX-78ガンダムがビーム兵器、つまりビームライフルを装備していた事を知るのだから。そして、この世界ではワイアットの介入によってRX-78の試験運用はより強固な態勢で行われていたのだ。
加えて、このRX-78ガンダムが始めて実戦投入されたのが今月半ばに連邦軍第7艦隊による貨物船カセッタVの救援である。すなわち貨物船の拿捕を試みたジオン襲撃部隊は母艦もろとも全滅し、加えてワイアットはその戦いに於いて徹底的な電子妨害によって戦闘情報を秘匿していたので、ジオン側が連邦のMSの性能を知る機会がなかったのだ。ジオン軍が自分たちで散布したミノフスキー粒子も情報秘匿の一翼を担っているのが凄まじい皮肉であろう。
また、貨物船カセッタVは連邦軍の新兵器を目にした事と、中立船を鹵獲しようとしたジオン側による口封じの危険性を考慮して、戦時特例として貨物船カセッタVは乗員もろとも連邦軍第7艦隊の編入となっていたのだ。乗員も軍属待遇である。もっとも貨物船カセッタVは徴用されていたが戦場には出ることは無い。サイド7宙域での安全な輸送業務に就いており、また連邦側から迷惑料として相応の謝礼と業務に対する依頼料が出ているので彼らも不満は無かった。これはゴップ大将を始めとした幕僚会議の働きが大きい。
ハルトマン少佐は言葉を続ける。
「そうと判れば長居は無用だ。
直ぐに本艦を残して全艦隊を退避させるぞ。
このまま留まれば全滅は必至だ」
「し、しかし本艦だけではMSを収容し切れません」
「わかっている。
帰艦してきたMSは収容しきれない分は破棄する!
本艦に残っている全直衛機は軽巡にまわせ。
急げ、作戦コードF4を発令せよ。一秒たりとも時間を無駄にするな」
戦略家であり戦術家でもあるハルトマン少佐は最悪の状況を想定しており、その備えも行っていたのだ。作戦コードF4とは優勢な敵戦力に遭遇した場合、一部の艦艇を殿として遅滞作戦の後にデブリ帯の先に広がる暗礁宙域の中に潜伏して再起を図る内容だった。先に離脱する部隊は比較的航行が容易なルート1-2暗礁宙域を通り、殿側は防戦後に追撃が険しいルート4-5に向かうプランである。殿に旗艦を残すところが責任感のあるハルトマン少佐らしい決断であるが。
また、暗礁宙域を通って撤退する理由は単純にして明白。通常航路ではブースターを装備しているだろう連邦艦の追撃を受けた時に大変な事態になるのが明白だったからだ。
「なに、案ずる必要はない。
多少は危険だが本艦1隻ならば、
デブリ帯の先にあるルート4-5の暗礁宙域の中を突っ切って逃げられるだろう。
何しろ暗礁宙域の中では艦隊行動は取れない。
ある程度の探索を終えている我々と違って彼らは初めてのはずだ。
故に連邦も危険を冒してまで追ってこないだろう」
「な、なるほど!」
ハルトマン少佐はそう言いながらも自分たちが生きて帰れる可能性は低いと見ていた。ワイアットは戦略的な理由がない限り、高価目標を確実に潰していた事を今までの戦いからハルトマン少佐は分析していたからである。もちろん部下を不安にさせない為にもその考えは心の奥にしまったままだ。
「離脱する各艦に連邦のMSの情報を転送し終えたか?」
「あと140秒で終えます」
「概略情報でよい、80秒で終わらせろ」
「了解」
命令を下し終えるとハルトマン少佐は考える。
…報告を聞く限り連邦のMSは情報よりも強いようだな。
しかもビーム兵器か…
我々が得た情報は偽情報と見てよいだろうな。
一日も早く対抗可能なMSを作らねば大変な事になるだろう。
連邦側はやがて漏れるだろう開発したMSの情報を歪んだ形でジオン側に漏らしていたのだ。その内容は連邦の新型MSは物量戦を主眼に置いたMSであり、MS-06Fと戦うには2機のRGM-79ジムが必要だと。実際は逆であり、RGM-79ジムは後に出てくるだろうMS-14Aゲルググに対抗して作られており、MS-06Fで戦うとなると困難な試練に直面するのは必須だった。
ハルトマン少佐の命令を受けた各艦が離脱を始める。
最初は最後まで戦うと各艦が撤退を拒むも、ハルトマン少佐が連邦の新型MSの性能を本国に伝える事が最優先であると、諭されて渋っていた彼らも撤退を決意したのだ。
ただし、ジオン艦隊はデブリ帯を出るまで低速で移動し、そこから最大加速状態を行って暗礁宙域に行かねばならなかった。このように移動に手間が掛かるが、逆にそれは追撃の難しさを意味しているので悪い事ばかりではない。
臨時の旗艦として戦域より離脱を図る艦隊を率いるのが軽巡ハンザであった。
離脱したジオン艦隊は暗礁宙域まで後10分の地点に到達し、
各艦が緩やかな減速を始める。
軽巡ハンザの艦長が無念の表情で呟く。
「ハルトマン少佐…どうかご無事で…」
「うん?…これは?」
「どうした」
艦長はオペレーターの反応に注意を向ける。
オペレーターは少し待ってくださいと言ってから計器を操作する。
検出したパラメーターが意味する内容に気付く。
「上空に熱源反応感知っ!」
「敵の航宙機、いやMSか?」
「ち、違います…
この熱量からしておそらく戦艦クラスです。
隻数1、急速に接近中!」
「なんだと!?」
軽巡ハンザが探知したのはブレックス准将率いる連邦軍第9艦隊の旗艦を務める戦艦オーシャンである。ワイアット率いる第2任務艦隊の別働隊として参加しており、受け取った座標データを元に最大加速で突き進んでいたのだ。ただし、配備されている空母2隻、補給艦6隻は別行動を取っており、本宙域には居ない。戦艦1隻、巡洋艦10隻が今の全戦力。そして、戦術上の理由から戦艦のみが最大戦速で僅かに先行していたのだ。
ブレックス准将はこの戦争で家族を全て失う悲劇に見舞われていたが、憎しみに囚われることなく己が掲げた信念を見失っていない、偉大な指導者としての気質を備えた将官である。また、ブレックス准将は地球連邦政府議会員の資格を有する異色の軍人であった。
ブレックス准将は心の中で呟く。
『家族を無くした身だ…躊躇いはない』
ブレックスの心には恐れはなかった。
そして、決断に対する躊躇いの文字も無くなっている。
彼にあるのは拡大する戦火を一刻も早く終わらせる事だった。
「重巡…おそらく旗艦が一隻で戦域に留まるのか…勇敢だな。
しかし、我々に課せられた命令は一隻でも多くのジオン艦を沈めることだ。
悪く思うなよ、まずは軽巡から頂くとしよう」
ブレックスは砲術参謀に視線を向けて言葉を続ける。
「照準はどうだ?」
「ジオン艦隊は最大加速状態から観測を行ってきたので、
回避行動を行っていない今なら後少しで有効射程圏内です」
ブレックス准将の質問を受けた砲術参謀は自信満々に答える。改装を受けた連邦戦艦の砲戦能力はソフト面で著しく上昇していた。宇宙空間では赤外線の透過性が高いので、熱源探知が極めて有効な点から、かつて西暦の時代に活躍していた赤外線画像追尾式ミサイル(IIRAAM)の赤外線画像追尾装置の派生をリファインしたものを射撃装置に取り入れていたのだ。ジオン艦艇は特徴的なデザインなので見分け易いのも大きな助けになっている。
また、通商破壊作戦に投入されるマゼラン級戦艦の各所にはRGM-79のシールドを細分化したものが増加装甲して備えられていた。重要区画の強化に加えてデブリ帯での加速を可能にするための強化である。無論、全体を覆うものではなく、装甲材として4枚のシールド分の素材をトータルバランスを崩さないように貼り付けたものだ。故に直接的な防御力に関しては1.7%の向上でしかない。あくまでもデブリ帯での戦闘を主眼に置いた改装だから当然であるし、この程度なら小改装なので現地改装も可能だったのだ。
後の戦史家から、
これらのマゼランは強襲型マゼランとして分類される事になる戦艦である。
必要な各情報を得たブレックス准将が言う。
「そうか、なら頃合だな。
ECM(電子戦)及び、フレア(熱欺瞞弾)とスモーク放出を開始せよ。
続いて全隔壁閉鎖、減圧開始、被害対策準備」
「アイ・サー」
戦艦オーシャンから放射されるのと同じ周波数帯の赤外線を放つ幾つもの熱源と発煙弾が電子妨害と共に船体各所から放たれた。フレア発射機と発煙弾発射機(スモーク・ディスチャージャー)は改造時に取り付けたものだ。フレアと煙幕弾が広範囲に面を形成するように広がる。フレアは地球上と違って熱源は燃え尽きるまでそのまま慣性で突き進む。つまり妨害継続時間が長い。もちろんフレアが放つ周波数帯は連邦の装置ならば簡単に除外出来るので、オーシャンが搭載している赤外線画像追尾装置の妨害にはならなかった。
また、合金反応によって形成する光異性化の背何時質を有する粒子状帯から成り立つスモークは妨害熱源帯の前で展開し、そのまま慣性で進んで広範囲に亘って視界を封じる壁となる。非常に長い持続性を有するので、有視界戦闘を好むジオン軍にとってはかなり嫌な妨害手段と言えるだろう。ただし、地上戦で使われるような赤外線妨害などの付属効果は有していない。その理由は、赤外線画像装置を始めとした自分自身の索敵手段を妨害しない事に加えて、スモークの存在自体を早期に知られないようにする為である。
こうしてジオン艦隊は、
戦艦オーシャンによって用いる全ての探知手段を封殺されたのだ。
「全兵装使用自由っ、潰す気で行くぞ!」
ブレックス准将の命令を受けた砲術参謀が砲撃命令を下す。
航海参謀が戦闘航行プログラムを実行する。戦艦オーシャンの航行パターンが蛇行に変化するが、そのような機動でも連邦の優れた火器管制装置(FCS)にとっては容易い修正である。火器管制装置(FCS)が弾き出した数値を元に、前方に射撃可能な5基の連装メガ粒子主砲が射撃を開始した。
戦艦オーシャンから放たれた凶悪なビームがジオン艦隊に降り注ぎ、
その中の2発の雷光の様に煌めくビームが軽巡ブルメルを撃ち抜く。
「ブルメル通信応答無し!」
軽巡ブルメルは被弾から5秒ほどで、
誘爆による損害に耐え切れずに爆沈となる。
「全艦ランダム回避だ!」
軽巡ハンザの艦長は連邦側の砲撃命中を不運と判断せず、何らかの理由で敵の射程圏内と判断した。その判断は正しい。そして、判断は正しくとも打開策には繋がらなかった。最初に放ったフレアが燃え尽きる前に戦艦オーシャンから次のフレアが放出され、欺瞞熱源が途切れる事がないので探知が出来ない状況に変わりは無いからだ。
ようやく収まってきた欺瞞熱源が再び拡大したのを見て、軽巡ハンザのオペレーターが絶望の表情を浮かべる。職務の関係上から索敵が制限される危険性を理解しているだけに、その恐怖は大きかった。それでも職務の責任から報告は怠らない。
「熱源拡散、敵戦艦捕捉出来ずっ!
電子妨害によりレーダーも使用不能であります」
「観測兵、何か変化を捉えたら報告せよ」
「了解」
観測兵は心なし上空の一部分で星空が見えない部分が出来たような気がしたが、気のせいだと判断して報告しなかった。何しろ有視界戦闘領域まで、まだまだ距離が離れている。デブリ帯から流れた、スペースデブリの何かだろうと納得した。
ジオン艦隊に残された虎の子である5機のMS-06Fの発艦はもう少し減速を終えるまで使えない。このまま送り出してしまえば、回収が出来なくなる可能性が大きいからだ。それに、偵察機及び観測機として活用しようにも、連邦の電子妨害の前でMS程度の通信出力では妨害を免れるのは不可能だった事もある。
そして、この戦法も戦史好きのワイアットの考案で、彼は第二次世界大戦時に煙幕を活用したスラバヤ沖海戦を参考にしていたのだ。煙幕を使えば寡兵で主力艦に対して攻撃を行える証明であった。今回の場合は、煙幕と戦艦を用いて軽巡を襲撃する逆のパターンであったが、戦争の基本は変わらない。戦力と工夫が勝ったものが勝つのだ。
ジオン側が反撃を行おうにも敵艦艇を捕捉できずに無情にも時間だけが過ぎていく。ワイアットと共に行動する部隊は低視認性の塗装を好むので、有視界で捕捉するのが困難なのが理由だ。再びビームがジオン艦隊の上空に降り注ぐ。
第二射は回避行動の甲斐もあって致命傷は何とか避けられた。だが近弾であり、砲撃誤差を修正していけば、そう遠くない間に直撃するのが予測出来てしまう。その予想は的中し、3射目も同じ艦が狙われ、そのビーム射線は更に正確さを増していたのだ。
4射目のビームが飛来する。
流石に避けきれず、軽巡ヘルタが被弾した。
「ヘルタ被弾っ! 速力低下っ」
「くそっ、なんて精度だ!」
「後30秒で熱源帯が本艦隊を通過します。
敵戦艦の位置は依然不明」
「常識的に考えて戦艦は過度な接近を避ける為に減速してるはずだ。
熱源帯通過後、索敵を密にせよ。
一斉射撃で射線を形成して墜とすぞ。
戦艦が減速せず突っ切るなら背後から狙い打てばよい!」
マゼラン級戦艦は後方にも攻撃は行えたが、正面や側面に比べて砲戦能力は大幅に落ちる。ジオン艦隊はそこに勝機を見出したのだ。
「カウント開始します。
15…14…13…12…11…」
オペレーターによるカウントが始まった。残りカウントが10の段階で戦艦オーシャンが張った煙幕の一部がジオン艦隊を通過する。当然ながら一瞬とはいえ視界が途切れる現象にジオン側は警戒した。
「なっ、なんだ!?」
「原因不明、現在は有視界索敵に異常ありません」
一瞬の視界不良で混乱が生じたが、高い錬度の甲斐もあってそれも直ぐに収まる。ジオン艦隊が上空に意識を集中させ、回避行動を行いながらカウントがゼロを待つ。その努力も空しく熱源帯の通過と同時に速度が低下していた軽巡ヘルタが爆沈となった。
ジオン側の予想に反して攻撃は上空からではない。
熱源帯の中に潜んだ戦艦オーシャン咄嗟射撃だったのだ。砲塔旋回性能の高さは、戦艦の各砲塔及び銃座の砲塔旋回部には廉価版のマグネット・コーティングのお陰である。咄嗟射撃の際に目標探知に使用したシステムは目標から返ってくる光波をシーカーで捕捉する光波ホーミング誘導を使用していたので、この様な高い精度を実現していた。もっとも、元の技術が対空ミサイルや建設機材に使用していたものなので、艦船のような大きな目標を捕捉するのは容易いと言えるだろう。欠点としては、光波を利用するので照射信号に拡散符号を用いた高精度なものでも近距離戦にしか使えなかったが。
「敵戦艦の通過を確認っ!」
「熱源帯の中に潜んでいたのか!?
観測兵っ、何を見ていた!」
「ちょ、直前まで確認できませんでした」
戦艦オーシャンはジオン艦隊の背後に回るような軌道を執りながら離れていく。戦艦が描く軌道からして、意図しているのは離脱ではなく、再攻撃を意図したものが明白だった。現状からして、連邦戦艦に戦闘継続の意思がある限り、ジオン艦隊は否応にも応じなければならない。加速状態のままで暗礁宙域に突入すれば自滅を意味するし、敵を前に不用意な減速は回避率の低下を意味でしかなく一方的に狙われてしまう可能性が出てしまう。そして、殿を残そうにも軽巡で戦艦と戦うとなれば半数以上を残さねば足止めにもならない。
「連邦のやつら戦艦を攻撃機と勘違いしてるんじゃないか!?」
ブリッジに居た士官の一人が悪態をつく。
「くっ、艦隊反転、
あの戦艦の背後を全砲門で狙い撃ちにしろ!
敵艦を沈め次第、速やかに暗礁宙域に退避する」
艦長の判断はムサイ級は軽巡とはいえ連装メガ粒子主砲を3基搭載しており、5隻なら1隻のマゼラン級戦艦に勝る火力になると計算したのだ。敵艦が減速するならMS-06Fを向かわせる事も出来る。
軽巡ハンザからの命令によりジオン艦隊が反転を開始した。
だが、反転途中で次の凶報がジオン艦隊に舞い込んでくる事になる。
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【あとがき】
申し訳ない…半年以上の間を空けた更新になりました(汗)
ともあれ、ワイアットの介入によって連邦戦艦も史実よりも比較的低コストで能力の底上げを行えたので、ジオン側が連邦戦艦を墜とそうとするなら大量のMSが必要になるでしょう。例えジオン側がビームライフルを用いても、連邦戦艦の主要箇所はビームコーティング済みだし、接近するまでに強大な防空火器があるので、その苦労は並々ならぬ苦労に直面するでしょうね。
【Q & A :現段階におけるジオン公国軍の戦闘艦艇の累積被害は?】
グワジン級戦艦
【撃沈】 「グワラン」「グワバン」
チベ級重巡洋艦
【撃沈】
「ラワルピンディ」「ピネラピ」「コルモラン」「フェルスト」「ヨルク」
軽巡洋艦 【撃沈】36隻、
小型艦艇 【撃沈】23隻、
補助艦艇 【撃沈】124隻
【ジオン艦隊の残存戦力(ワイアットの獲物)】
戦艦8、大型空母1、重巡37、機動巡洋艦7、軽巡90、戦闘用艦艇61隻、補助艦艇210隻
↓
戦艦8、大型空母1、重巡37、機動巡洋艦7、軽巡88、戦闘用艦艇61隻、補助艦艇210隻
意見、ご感想を心よりお待ちしております。
(2012年10月21日)
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