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ワイアットの逆襲 第23話【新型機動兵器】


ワイアットはジオン軍の重巡を撃沈すると、ルナUへと撤退する前に一つの仕掛けを行っていた。その仕掛けとは大破漂流していたジオン支援艦メーインヘイムに至る幾つかの航路に先に離脱した1隻の輸送艦と共に自律機雷を設置する事である。

このように、紳士の鏡のようなワイアットは相手に対する土産も忘れなかった。

もちろんワイアットは置き土産として恥ずかしくないように、ありふれた一般的な機雷ではなく、通常機雷の中に紛れ込むように電波吸収塗料を塗った特別型を混ぜていたのだ。

その中には西暦の時代に活躍したMk60キャプター機雷のように、パッシブセンサーにて敵味方の識別の後に攻撃を行うものも含まれている。メーインヘイムの救出に来るジオン軍の部隊は過酷な試練を経験する事になるだろう。更に将来の侵攻作戦で邪魔にならないように、これらの機雷は2ヶ月で自爆するように作られている。機雷源マップを保有しているとはいえ、撤去の手間を無くすための配慮も忘れない。


そして連邦軍の作戦は宇宙だけでなく、オデッサ方面に於いても静かに進められていた。時刻は深夜1時にも関わらず人知れず動く幾つもの人影がある。満月に照らされる彼らは地球連邦地上軍の陸軍特殊部隊からなる兵士達であった。

欺瞞服(ギリースーツ)に身を固めた彼らはジオン軍降下前からオデッサ地方に潜伏している。補給には事前に構築した秘匿拠点にて集積しておいた物資にて補っていた。万が一の際には電波吸収塗料によってレーダー波対策が施されている輸送機による補給が行えるようになっている。

その陸軍特殊部隊に所属する狙撃兵が山岳部に潜むように移動していた。

夜間だがパッシブ赤外線ゴーグルにて視覚情報を得ているので移動に不自由は無い。

彼らの周囲1kmには同じようにギリースーツを身に纏った狙撃手や観測手などの兵士が8人ほど潜んでいる。全員が陸軍特殊部隊の一員であった。上空には彼らを支援する為に電波吸収塗料による特殊処置が施されたAF-01対地攻撃機マングースからなる対地制圧チームが幾つかに分散して空中待機を行っている。また、間接的な支援として広域電子妨害と作戦目標から離れた場所に対する高高度からの欺瞞用の公算爆撃が行われていた。

「ついてこい、伍長、姿勢を低くな。
 このギリースーツならまず見つかることはない。
 後3km、目標に到達するまでピクニックと同じだ」

「了解、軍曹」

静かに不要な音を立てず進んでいく。

会話は極めて小声でも十分に行えるように骨伝導マイク・イヤホンを内蔵したTACヘッドセットシステムによって行われていた。二人の手には欺瞞処置を施した消音装置と多機能照準器を装備した狙撃銃がある。腰には闘戦を想定したコンバットナイフ、足の太ももには特殊部隊のCQB(室内戦闘)や夜間戦闘を主眼に置いて作られた消音装置付きの拳銃であるH&K MARK73が収められているレッグホルスターが備え付けられていた。これらの装備を身につけながらも動きが滑らかな事から、相当に鍛えられている兵士だという事が窺える。それもその筈、特殊部隊の隊員は50kgを超える荷物を装備し、1日に40kmもの悪路を移動できるように鍛えられているのだ。

軍曹がベテランに相応しい洞察力で何かを発見する。

「待て…前方450にてサウロペルタと歩哨を確認。
 二人か…こんな物騒な所で不用心だな。伍長、そちらから確認は出来るか?」

サウロペルタとはジオン公国軍で使用されている4人乗りの軽機動車であった。
電気自動車であり、燃料を使わない為にジオン軍では重宝されている。

軍曹の問いかけに伍長は応じていく。

「…車に1人、河川側にもう1人」

「上出来だ」

軍曹はそう言うと無線を部隊チャンネルに切り替える。
通信先は後方から退路及び敵軍の監視を行っている観測手であった。

事前に妨害帯を知らされている特殊部隊は、電子妨害の中でも問題なく通信が行える。全ての電波を妨害するミノフスキー粒子と違ってECMには応用が利く。安易にミノフスキー粒子を散布しないのは組織戦を重要視している連邦軍らしい判断と言えるだろう。

「シエラー126よりシエラー115へ」

『こちらシエラー115、どうした?』

「進行方向にて2名の敵兵を確認。
 その周辺に他の敵兵は居るか?」

『少し待て…………敵兵無し、その周囲1kmはクリアだ』

「了解、通信を終える。オーバー」

通信を終えた軍曹は伍長に命令を下す。

「グッドニュースだ。
 周辺に他の敵は居ない。
 俺は河川側をやる、お前は片方が目を離してる隙に車の方を始末しろ」

「了解」

二人は狙撃銃を構える。鍛え抜かれた肉体によって扱われるその銃身は殆どぶれない。幾つかのパッシブモードにて目標先の風速などの必要情報を得て、それらを頭の中で計算する。それらの作業に5秒と掛らない。

「照準よし、何時でも撃て」

伍長が狙撃銃の引き金に掛けていた引き金を人差し指で引くと、
小さな音と共に7.62mm精密射撃用専用弾が狙撃銃から解き放たれた。
伍長の発砲と同時に軍曹も狙撃する。

「グッドキル」

軍曹は伍長を褒めると狙撃銃のスコープから目を離す。

伍長によって狙われた兵士は頭を撃ち抜かれ、弾丸が抜けた方が割れたスイカの様になっていた。もっとも軍曹の狙撃も同じで、相手の頭を精確に撃ち抜いている。軍曹は狙撃座標を観測手に送信し、移動を再開した。後で攻撃機が爆撃を行い、犠牲者の遺体を吹き飛ばすのが目的である。これは死因を隠す事で陸軍特殊部隊の全貌をジオン側に隠し、ジオン側に対策を採られ難くするのが目的であった。

「よし、前進しよう。ゆっくり、慎重にな」

二人は周囲の自然に溶け込みつつ進んでいく。
やがて目的地を視界に収めた。

目的地とはジオン軍の小さな哨戒基地を視界に収める丘である。哨戒基地と言ってもコーダ社が開発したP01Bルッグンではなく、機動浮遊機ワッパを20機を運用する程度の基地であった。例外的な戦力として警備用のMSが2機駐留している。これら2機のMSはMS-06Fから地上戦用のMS-06Jへとなった現地改修モデルであった。

そして彼らの任務は指定された時間にレーザー誘導爆弾を誘導する為のレーザーマーカー照射を行う事にある。それからの仕事はデプ・ロック大型爆撃機の役目である。

軍曹は油断無く警戒しながら進む。

「ここまで誰にも見られてないな。
 待て、丘の森の傍に車を発見……その周囲に敵がいる。
 …開始時間まで後10分、迂回は出来ないな」

「4名です、殺りますか?」

「待て…車の前方に2人、車の後方にある木の陰に1人、もう1人は……あそこか…
 あれでは警戒行動になっていないな。
 殺るぞ。俺は接近して車両付近の3人を始末する。伍長、お前はここで狙撃待機。
 俺が1人目を始末したら撃て。5分以内に俺からの返事が無ければ独自に判断せよ」

「了解」

ジオン軍では機動兵器に関する兵力は充実していたが、連邦軍のような幅広い軍種を保有していない。後方兵站だけでなく、このような歩兵戦力も多くの場合に於いて連邦軍と比べて貧弱だったのだ。

軍曹はハンドシグナルを交えて伍長に最後の打ち合わせを行う。作戦の打ち合わせを終えると軍曹は狙撃銃をその場所に置いてレッグホルスターからH&K MARK73を取り出し、右手で拳銃を構えつつ、腰からコンバットナイフを音も無く取り出して左手に構えた。近距離突発戦に備えての行動である。またコンバットナイフには光の反射防止にリン酸亜鉛パウダーコートが施されており、月の光が反射する事は無い。

中腰にて軍曹は音を殺し、気配を殺しながら野原の草々の中をゆっくりと接近していった。万が一、ジオン兵に見られてもこの限られた光源とギリースーツから自然風による草々の揺らぎにしか見えないだろう。

これも宇宙世紀になる前の時代から引き継がれている特殊作戦のノウハウの一つである。

食物連鎖の頂点に位置する様な精鋭中の精鋭が背後の茂みから迫ってきている事など知りもしないジオン兵は差し当たりのない警戒を行っていた。野原からジオン兵がいる木に近づく。そのまま周囲を確認し、攻撃ポジションにつくとコンバットナイフを持った左手でH&K MARK73を支える様な姿勢でありながらも、素早く動作に移れるようリラックスした状態で立ち、無駄な箇所に力を入れないように照準を付けた。軍曹の目標は手前の兵士では無くサウロペルタの座席に座る2名のジオン兵である。

軍曹は風で流される程度の小声で無線にて伍長に言う。

「そちらはの準備は?」

『問題なし。何時でも可能』

「殺れ」

軍曹は指令を下すと同時にH&K MARK73を2発づつ、2人のジオン兵に向けて斜め後ろから撃つ。初弾は体の中心である心臓部、次弾は頭部を狙った射撃である。2秒にも満たない時間で二人のジオン兵は完全に沈黙した。1人は即死しなかったが、完全に虫の息であり、死ぬ運命に変わりは無い。やや離れた場所のジオン兵も狙撃によって沈黙する。

軍曹の近くに居たジオン兵は2人、3人と仲間が倒れた事によって事態の急変に気付き行動に移ろうとするも、 準備を整えていた軍曹の方が一瞬早かった。

彼は手のひらを下に向ける順手にてコンバットナイフを構えて、茂みからジオン兵の背後に出る。相手が気が付く前に素早く迫り、右足から放った蹴打にてジオン兵の左足首の付け根をけり上げた。これはCQC(近接戦闘)の一つで、背後からの強襲攻撃の一つである。強烈な痛打によりジオン兵は態勢を崩し、手にしていた小銃の引き金から手を離してしまう。軍曹は態勢を崩し、中腰になった無防備なジオン兵の首に向けてコンバットナイフを斜めから振り下ろす。

その一連の行動は全く無駄のない動きで、
狙い通りの箇所にナイフの刃が突き刺さっていた。

突き立てたナイフを捻って、傷口に空気を入れると速やかに引き抜く。

「オヤスミ」

軍曹はそう言うと生命活動を終えつつあるジオン兵に対する興味を失う。
戦争のプロである彼は機械の様に任務をこなすだけだった。

軍曹は任務を最終段階へと進めるべく伍長に「目標を排除」と連絡を取って合流を行うと、レーザーマーカー照射の準備に取り掛かる。軍曹は基地に対して直接照射するのではなく、基地から南1.5kmの地点に照射を始めた。これは直接照射によってレーザー波がジオン軍に探知される事を避ける為である。しかも今回のレーザー誘導爆弾は照射ポイントから北1.5km先に落ちる様になっている事に加えて、各爆弾が攻撃目標に対して碁盤状に降り注ぐようにプログラムが施されている特注品なので命中精度には問題は無い。

デプ・ロック大型爆撃機は爆弾槽・主翼下合計して81発の500kg対地爆弾が搭載可能であり、2割程度でも爆撃が成功すれば小規模の哨戒基地程度では大打撃は避けられなかった。

やがて爆撃時間になる。

哨戒基地に対して地獄のシャワーが降り注ぎ、哨戒基地は想定通りに壊滅状態となった。また、ほぼ同時刻に連邦軍は他5箇に上るジオン哨戒基地を叩いている。ジオン軍は知らなかったが、この基地襲撃にはワイアットが深く関わっており、それは後の反攻作戦に向けた準備の一つであったが、その事実にジオン軍が気付くような事は無かった。














 0079年 05月09日

地球連邦軍本部ジャブローにあるジャブロー工廠では連邦軍によるMSの量産が始められていた。連邦軍は史実でもザクの鹵獲から半年という短期間で、先進的な全自動CAD・CAMシステムを生かして驚異的な性能を有するRX-78ガンダムを作り上げている。この世界ではMS-06を獲した連邦軍情報収集艦EWB-65がワイアットの介入によって沈んでおらず、MS開発に必要な情報を史実よりも早く入手していた結果が、この時期でのMS生産を実現させていたのだ。

それにジオン軍による降下作戦の被害が一地域に
限定された事も大きく加味されている。

史実のように戦線拡大に伴う生産ラインの混乱があれば、
少数とはいえRX-78ガンダムのような高度兵器の量産は不可能だったに違いない。

また開発した試作機による性能評価を踏まえつつ量産型を生産する方法では無く、スロペースにていきなり量産に入り、その先行量産型でテストを行うクック・クレイギー・プランを選択していた決断もあって早期生産に結び付いていたのだ。 かつてアメリカ合衆国軍が採用していたF102、F-106、F-14も同じである。ジオン軍が後に量産する傑作MSとして名高いMS-14Aゲルググもクック・クレイギー・プランを採用しており、決して奇抜な方法ではない。

ともあれ、ワイアット中将の奔走によって史実よりも早く動き出したジャブロー工廠内にあるMS生産ライン、それら施設をコーウェン准将、テム・レイ大尉、レーチェル・ミルスティーン中尉の3人が感慨深く見ていた。

視線の先には8割ほど完成したMSがハンガーに横たわっている。
その周辺には同じ程度に出来あがっているハンガーに乗せられたMSが幾つも確認が出来た。

テム・レイ大尉は史実に於いて作戦の中心人物であったとされ、ガンダムの設計にも大きく関わっていた人物である。レイ大尉はMS開発計画の現場に於ける技術士官の中心人物としてワイアット中将によってコーウェン准将の下へと配属されていた。人事にはゴップ大将の全面協力もある。レーチェル・ミルスティーン中尉はこの中で唯一の女性で、メガネがチャームポイントのコーウェン准将の補佐役である。少々おっとりとしているがレビル将軍の推薦でコーウェン准将の指揮下に入った程の才色兼備の女性で、特に資材調達などに優れた能力を有していた。

腕を組んだコーウェン准将が言う。

「RX-78におけるコアブロックシステムの不採用は
 結果として良い方向に働いたな」

「はい。
 機体の簡略化による恩恵はかなり大きく、
 整備性と機体耐久性の向上に加えて生産性も4割ほど良くなりました。
 それに生産性も向上しているので、
 小規模生産に限定すれば量産の継続には問題は無いでしょう」

レイ大尉が満足そうに応じ、それにレーチェル中尉が続く。

「それだけじゃありません。
 低被弾率の部分をチタン系合金で補った事も大きいですよ。
 全ての装甲が高価で手間のかかるルナ・チタニウム合金では、
 どうしても生産工程に遅れが出てしまいます」

「あれはコスト度外視だからな」

「ええ…限定的にルナ・チタニウム合金がオミット(除外)されてもなお、
 RX-78は強力なMSである事は間違いないでしょう」

レーチェル中尉は満足そうに言った。ゴップ大将の全面的な支援があるとはいえ、ルナ・チタニウム合金を大量に揃えるのは地球連邦と言えども簡単ではない。この事から現場レベルでの調整を完全に行ったレーチェル中尉の能力の高さが良く分かる。

かつてワイアットが経験した歴史と違ってRX-78の装甲材は被弾率の低い箇所や、両手、両足にはルナ・チタニウム合金だけでなくチタン系合金も使用していた。もちろん核融合炉やコックピット周りのような重要部部分にはルナ・チタニウム合金のみを使用している。 しかもワイアットは開発期間と製造工程を短縮する為にコアブロックシステムの不採用に加えてモビルスーツが携帯可能なメガ粒子砲であるメガ粒子になる直前のミノフスキー粒子をそのままの状態で保持する、すなわちビームライフルの中核をなすエネルギーCAPのアイディアを技術部に持ち込んでいたのだ。

更にはRX-78NT-1で使われていたWE-D018シールドにある耐ビーム・コーティングの概要すらもエネルギーCAPと共に持ち込んですらいる。優秀な軍事技術を有する連邦らしく、有る程度の性能を有する耐ビーム・コーティングの実用化に漕ぎ付けて、現在製造中のRX-78にも使われていた。

コーウェン准将がしみじみと言う。

「M-120A1ザク・マシンガンを受け付けない主要装甲部分、
 戦艦並みの威力を有するビームライフル、
 ビーム対策として各所に施した耐ビームコーティング、
 フィールドモーターをサポートし、機体反応速度を高めるマグネット・コーティング、
 パイロットを各操作を補佐する教育型コンピューター…
 我々を苦しめたMSだが、次は我々のMSがジオンを苦しめる事になるだろう」

「そういえばMS戦技研究にはテム大尉のご子息も参加しているとか?」

「ええ、最初は嫌々だったようですが、
 今ではMSの操縦に遣り甲斐を見出しているようです。
 もう少し反応速度を上げてほしいと要望があった位ですよ。
 失礼、親ばかで申し訳ない」

「いえいえ、話を振ったのは此方ですから」

「ともあれ、今月の末には、ようやく15機のRX-78がロールアウトします」

「以後、月産12機の生産ならば問題なく資材の調達は維持出来るでしょう」

レーチェル中尉の言うように連邦軍はRX-78を試作機で止める気は無く、少数生産を継続していくつもりだったのだ。これもワイアットによる働きかけの結果であった。ペガサス級とRX-78を基軸にした打撃部隊の編成を構想している。また、ワイアットの提言により、今後生産される戦艦の主要区画には耐ビームコーティング処理が行われ、各砲塔及び銃座の砲塔旋回部には廉価版のマグネット・コーティングが施される事になるのだ。

「うむ。
 6月にはRGM-79の先行量産型の生産が始められ、7月頃にはある程度の数が揃う。
 それまでにRX-78にてどれだけの実戦データが集められるかで、
 以後の反撃作戦の成否に関わる」

「仰る通りです」

「そして、ジオン軍にはMSを中核にした戦術しか頼るものがない。
 彼らが頼みの綱としているMSを切り崩せば、我々の優位はより確実ものとなる」

コーウェン准将とレーチェル中尉の会話に出てくる、
RGM-79とはRX-78ガンダムの量産タイプとして再設計されたMSであった。

ただしワイアット中将の介入によって機体の方向性が早期に固まっていた事と、開発開始の時期が早かった事もあり、史実のRGM-79と比べて性能は大きく向上していた。性能的にはRGM-79Cに近いものになるだろう。もっとも、その代償として生産コストが45%ほど増していた。基本武装は頭部60mmバルカン砲と腰のマウントアタプターにビームサーベルを装備する。使用火器にブルパップ・マシンガン、ビームガン、ハイパーバズーカがあり汎用性が高い。

また、このRGM-79の開発には戦略戦術研究所が大きく関与している。

戦略戦術研究所とは地球連邦軍設立に伴いその諮問機関として存在し、連邦政府に軍事支出、戦略、兵器の将来的展開等を助言をしてきた実績によって地球連邦政府から信頼されている部門である。本来はコロニー公社と同じく中立部門であった。しかしジオン公国による無差別攻撃によって、戦時の中立性への配慮を不要と考えた戦略戦術研究所はゴップ大将を介してワイアット中将からの申し入れに応じ、軍事用MS事業への参入を始めていたのだ。

ワイアット中将が戦略戦術研究所の参入を働きかけた理由として、
その技術力の高さだけではない。

第一の理由として、戦後に肥大化するアナハイム・エレクトロニクス社(以後はAE社と明記)を抑える意味がある。何にしろ自らの死因となったガンダム試作2号機による核攻撃は、AE社の技術員ニック・オービルの手引きによるガンダム試作2号機強奪事件が遠因だった。この事からワイアットはAE社を危険視している。 第一、死因の遠因を担っているとなれば好意的な感情を持つ事すら難しいであろう。故に色々な理由を用いてゴップ大将を説得し、軍需物資に関する発注の多くはヴィックウェリントン社、ハービック社、タキム重工などの企業にて行っている。

もちろん、ワイアットは露骨に避けるのではなく、AE社には試作機RTX-44を改修したRTX-440を依頼していた。RTX-440は連邦軍のRX-78との兵器トライアルに勝てば量産化になる予定である。

第二の理由として、戦略戦術研究所はコロニーに関連する研究開発に従事しておりコロニー公社との結び付きが強い事があった。連邦政府管轄の公社でありながらも宇宙民寄りであり、ワイアット中将が目指す宇宙市民融和の足掛かりとして、もってこいだった。

余談ではあるが、この戦略戦術研究所は後に海軍戦略研究所(サナリィ)として再編され、モビルスーツ(MS)の小型化を提言し、連邦軍の近代化及び軍事費削減に貢献する事になる。
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【あとがき】
H&K MARK73は創作拳銃で、
元になった拳銃は特殊部隊で愛用されているH&K MARK23です。

敵地での無線ですが、ガンダムUCでも地球連邦軍特殊部隊がネオ・ジオンの敵軍事拠点パラオから傍受される事無く遠方のネェル・アーガマに通信を送っているので、この位の距離ならば行えると判断しました。


【Q & A :現段階におけるジオン公国軍の戦闘艦艇の被害は?】

グワジン級戦艦
【撃沈】
「グワラン」「グワバン」
【大破】
「グワメル」


チベ級重巡洋艦
【撃沈】
「ラワルピンディ」「ピネラピ」「コルモラン」「フェルスト」「ヨルク」

【中破】
「ヴォルフ」


支援艦
【大破】
「メーインヘイム」


ムサイ級軽巡洋艦 【撃沈】31隻、【大破】7隻【中破】7隻、【小破】2隻

小型艦艇 【撃沈】23隻

補助艦艇 【撃沈】124隻、【大破】2隻、【中破】4隻、【小破】11隻


【ジオン艦隊の残存戦力(ワイアットの獲物)】
戦艦6、大型空母1、重巡35、機動巡洋艦4、軽巡40、戦闘用艦艇61隻、補助艦艇189隻


意見、ご感想を心よりお待ちしております。

(2011年03月16日)
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