■ EXIT
ダインコートのルージュ・その31


≪エキゾチック・テレス10≫


『世界を動かすもの1』


見晴らしの良い、小高い丘の上。目の覚めるような緑の中に、白い石組の古風な城が立っている。
丘の上から見渡す限りの範囲には、牧場があり、こじんまりとした農村があり、きれいなパッチワークのような畑が美しく並ぶ。

もちろん城には、その全ての持ち主がいる。この城はその人物が所有するお気に入りの城の一つ。彼はその中心の部屋で、一人静かに仕事を続けていた。



「だんな様、お着替えをお持ちしました。」

執事の声に、もうそんな時間かとペンを置く。
鼻の下に綺麗にひげを生やした初老の男性は、血色の良い頬と、端正な顔立ちにかすかに渋いしわがダンディな雰囲気を漂わせる。

ゆったりとしたローブ姿で、優雅な羽ペンを操り、悠々と書き物をしていた手元には、分厚い調書、帳簿、報告書が山を成し、ペンは置かれる瞬間まで風に舞い踊るように次々と動き続けていた。

どんなに忙しかろうと、適度な休息は必要だ。
その地位に比べれば、質素とすら言えるアフタヌーンティーを取り、執事の持ってきた着替えを身につける。ふと思い出したことを老執事に聞いた。

「そういえば、メリシャの顔色が優れなかったようだが?。」

メリシャはメイドで、長く勤めてくれている中年の女性である。まかり間違っても、メイドと言う言葉で惑わされてはいけない。
骨太で物静かだが、気配りはとてもよくできる。

「はい、実は高齢の母親の具合が良くないようです。」

老執事は、淡々と事実だけを告げる。

「ふむ、ならばデミアズ医師をさし向けよう。あと卵等の栄養のつく物を差し入れてやるといい。」

「・・・情け深いご配慮、本当にありがとうございます。」

老執事は、目を潤ませて深々と頭を下げる。長年勤めているだけに、彼にとってはメイドたちも家族のようなものである。

優しく微笑む『だんな様』こと、大英帝国政界最大クラスの権力者バルフォア第一大蔵卿は、馬車に乗った。


途中、ウェストン地区にある孤児院に寄った、責任者のボック司祭が急いで出迎える。

「子供たちは変わりないかね?。」

「はい、バルフォア様のご配慮でこの冬は一人の病死も無く、感謝の言葉もございません。」

外から、子供たちの讃美歌が聞こえてきた。

指揮をしているのも子供の一人、バルフォア伯父さんが来てくれた事で、みんな一生懸命歌っているらしい。
彼は、ここには一個人として来ている。そのため司祭にも官職名を許していない。

「時間があれば、子供たちの顔を見ていくのだが、今日はこれからフランス大使と会わねばならん。」

讃美歌を聞いて緩みそうになる顔を引き締め、そっと一枚の小切手を渡して急ぎ馬車に戻った。




そして、舞台は英国議会会議室の一つへと移る。

白亜荘厳な建物の中は、静けさと恐るべき緊張がみなぎり、その中では世界を牛耳る策謀と計画が次々と練られている。


「やれやれ、貴方に乗り出されては、交渉もこれ以上は無理でございますな。」


薄暗い豪奢な部屋の中、豪奢極まりないソファで苦い笑いを浮かべたフランス大使ル・ジェビエルは言う。

大使はフランス政府の意向を受け、大英帝国に日露戦争の継続を水面下で同調してもらうよう、裏工作を続けていた。
『同じ欧州の大国同士、こういう時こそ助け合うべきであろう。英国にも悪いようにはしない。』

英国は日本と同盟を結んでいるが、態度をあいまいにしてくれるだけで、フランス政府は大いに助かるというわけだ。
フランス首脳たちにとって、このまま日露停戦になっては、丸損の上に首吊り縄が四方八方から投げかけられてしまう。

ロシアの圧勝を信じ戦時国債を大量に買った金持ちたちや、日露双方へ兵器を売りつけようと膨大な在庫を抱えた死の商人たちがいる。 政府の言う『日本の弱小』を信じてボロ負けし大恥をかかされた陸海両軍首脳部は、何が何でも日露を泥沼の長期戦に引き込みたかった。ロシアが勝てばフランスの苦闘が栄光を導いたといいわけが可能だからだ。

政府としても、戦争で先頭に立たされ死線をさまよった兵士とその家族、ふがいない国家への激怒に煮えたぎる世論は、日露が泥沼の長期戦になる事で怒りをそらすことが可能になる。日本が負けてくれれば怒りのガス抜きもできる。

おりあしく『サムライ』たちの恐るべき強さと規律への恐怖と、捕虜を戦士とみなし心からの礼節がこもった待遇への感動が、報道機関の過熱取材から兵士の写真と共に同時に語られ伝えられてくる。『なんでこんな恐ろしく気高いサムライ達と戦ったんだ?!』と怒りの矛先は完全に政府へ向いていた。


ここで英国側が、元外務大臣で親フランス派のガルソン・ロベルトあたりを出してくれるならば、かなり期待が持てたのだが、バルフォア第一大蔵卿が出てきた事でジェビエルはさじを投げた。これは英国の最後通牒と取っていい。


「貴君には貴君の事情があろう、言うべきことは言っておいた方が良い。」


バルフォアは強く光る眼を向け、魅力的な笑みを浮かべて柔らかに問いかける。
この魅力的な微笑は、いかなる困難な会議でも、泥沼のような騒乱でも絶やされたことは無く、そして必ず『相手の意見を尊重する』。

もちろん、交渉で粘り強く自国の利権を得ていくのは言うまでも無いが、相手の面子を潰さず、巧妙に誠実に話を進めていく。
それゆえ国内はもとより欧米諸国でも、憎まれてはいても面と向かって敵対する人間は少ない。法律論の著述も名高く、敬虔なキリスト教徒であり、人格者としても知られている。

ただし、明らかな敵や植民地、そして有色人種には情け容赦の欠片も無い。

硬軟両面に名を轟かせ、恐れられると同時に頼られ、尊敬すらされる。 国政、行政、大学、宗教関係までその人脈は幅広い。 第一大蔵卿の名は伊達や飾り物ではなく、まさに世界最強国家の最高権力を実力で保っている恐るべき存在だった。

世界は広く、深い。

帝国重工がどれほど優れた技術を持っていようと、日本という資源に恵まれない国の宿命で、物量ではまず勝てない。
そして、バルフォアのような恐るべき存在が、世界のどこかには必ずいる。

どれほど慎重にしてもし過ぎることは無いほど、帝国の本質は丁寧に隠さねばならないのである。

ただ、バルフォアは『有色人種には情け容赦の欠片も無い』が、感情で国益を無にする事は天地がひっくりかえってもありえない。

大英帝国という巨狼は、たっぷりと儲けを落とす善良で勇敢な犬の皮をかぶり、その下で凄まじい牙と力を備えつつある小さき竜を見破られなければ、誠実に同盟国としての義務を果たしてくれる。

ジェビエルは政府の意向を受けてきたとはいえ、非常に優秀な外交官なだけに、自国の主張には何をどう考えても無理があると感じている。
砂を砂糖と思わせ、鉛を金と取り換えるのが外交の一面とはいえ、相手がバルフォアではそんな手練手管は通用しない。

しかも、『相手の意見を尊重する』のは、『相手の意見に無意味に同調する』のではない。 バルフォアの恐ろしさは、聞いた意見から『相手の内外ほぼ全てを丸裸にしてしまえる』ということなのである。

外交で、政治で、行政で、この男の恐ろしさをなめて死ぬほど後悔した人間は数知れない。




何を隠そうジェビエル自身もその一人。

過去にモロッコの商取引のごたごたで英国との交渉に挑んだ際、得意の手練手管でフランス優位に操ろうと愚かにもバルフォアに姑息な交渉を色々としかけた。その頃のモロッコはフランスの独占市場で、後から割り込んできた英国に、フランス優位を認めさせようとしたのだった。

ところが、

「貴君の言う金製品の値幅は、モロッコ商人たちが一番やりやすい値段だな。貴国のフラン通貨の価値から言えば、もっと安い値段でないと利益が薄いであろう。下げないようにモロッコ人たちから頼まれたか。」

図星だった。ジェビエルはモロッコ商人たちから多額の賄賂を受けていた。賄賂そのものはこの時代の常識では悪ではないが、自国の不利を見過ごすのはかなりまずい。 顔が引きつりそうになるのを必死にこらえた。


「ほお、香木のミルラを・・・、そういえば先ほど『娘たちも好む』と言っておられたな。だが、別の香料それももう少し年上の女性が好むような3種の事も非常に熱心でしたな。ご長男や奥様の社交界の話題は聞いている。娘二人に息子一人、そうかそれとは別に3人送りたい女性がおられるのか。」

香料の話からにやりと笑うバルフォアに、必死に顔色を押さえるジェビエル。いきなり家族構成を読まれ、さらに3人の妾の事まで悟られてしまったのだから、驚かない方がどうかしている。


 交渉が進むにつれ、会話の端々や、内容の組み合わせ、人間の名簿等から、まるで衣服を一枚一枚はぎ取られていくように、国家機密から赤裸々な自分のプライベートまで、理路整然と当たり前のことのように推測され、露わにされていく。フランス優位どころか、独占市場で甘い汁を吸って堕落した貿易の現実を突き付けられ、ついでに自分の『ちょっとした資産運用』も暴かれる。

 この様子を現代人に分かりやすく表現するならば、メタボに陥った患者が、鏡と体重計と内臓脂肪撮影映像と病気の診断書を見せられ、隠し撮りされた暴飲暴食やカウチポテトな無様な生活を披露されながら、徹底的にダメ出しされ続けているようなものである。しかも的確すぎて容赦が無い。これはもう拷問と言っていい。

のたうち回りたいような恐怖と恥ずかしさに耐え、急いで残りの項目を終わらそうとリストを示した。ところが、ある項目のところで急にその視線が止まる。酒の名前の一つをトントン指でたたきながら、目を向けてきた。それがなぜか冷たさを帯びている。

「この酒の悪名は、ご存じですな?、“夢魔のしずく”。」

『なんでその名を知ってるんだ?!』内心悲鳴を上げ、とぼけた表情を作ろうとした。だが、外交官らしからぬことに無残にひきつってしまった。
この酒のことは、欧州では知る者がいないはずだった。香料にかなりの麻薬が入っていて、習慣性が酷く危ない酒である。
ついでに言うと、フランスには一切入らず英国を始め他国へ輸出される。輸出が開始されたあとは、仲介したフランスの名は消え、輸出の国名と輸入元の英国の業者の名前だけが残るという仕組みにまでなっていて、えげつない事この上ない。バルフォアが急いで乗り出してきたのも、このあたりの事情を察知してらしい。

「そして、その酒の作り主の事も。・・・・あなたもそこに出入りしているようですな。」

光る眼が、こちらの目の奥、魂まで覗き込んだように冷たく見つめる。今度こそジェビエルの顔色が青ざめた。

「この酒の製造元は新手の宗教団体、それも幼女を使った非道徳的な商売と、それをフランス人が買っているため現地人が激怒していると聞いています。そんな商売を買える層は限られる。それに、それを保護して歪んだ趣味の金持ちと通じさせるのはフランスの外交特権しかありませんな。」

その国には、フランスの船が独占的に貿易や流通を締めているのだから、目の前にいる人間が中心人物であることは明白以前の問題だった。 そして、フランス大使自身も刺激を求めて通ったことも。

しらを切るにもすでに手遅れ、このリストと交渉の内容だけでも、国際問題になりかねない。

その上よくよく見ると、細まった目が血走り、額には青筋が太く膨れ上がっている。

『どひいいいいいいっ!』

これを“激怒”だと分からなかったら、ジェビエルは外交官をやめた方がいい。 視線に憎しみと怨念まで入り混じっているのを感じ、この勘のいい外交官は本気であせった。

すでにバルフォアは初老であり、血色がいいとはいえ、色事の遊びの方はあまりできそうにない。
ジェビエルはまだまだ男盛り、妻と子供がいて、妾を3人も作り、さらに幼女を対象とした悪い遊びまでとなると、かなり若さを持て余している、つまりそれだけで憎悪の対象になりかねない。いや、すでに遠慮会釈なく、憎悪の生贄にされそうだった。その鉄色の目が憎々しく語っている『若い奴は全部敵だ!』。


「貴方が他国で何をしようとどうこう言うつもりは無いが、私は信心深いのでね、聞いた以上神の許しを得なければなりません。」

聞いただけでも耳の穢れだと言わんばかりの視線だが、それ以上に恐ろしいのが神の許しすなわち『告解』という、キリスト教の風習である。
今聞いたことを黙っているというだけでも『罪』となるので、バルフォアは司祭に向かって懺悔しなければならないという事だ。

この海千山千の政治家が、本気で懺悔するなどとはジェビエルも思わないが、ここは外交の戦場であり、言葉は武器弾薬。
この場合、バルフォアが教会の大司教あたりに話せば、ジェビエルは木っ端みじんに吹っ飛ばされる。

英国はプロテスタント(新教)、フランスはカソリック(旧教)でこの時代はほぼ完全に敵対関係。交流が無いように思われるだろうが、この場合逆に一切遠慮なく相手の罪を問う事が出来る。公然とこのような罪を問われたら、ジェビエルは破滅である。子供へのそれは、下手をすれば宗教裁判で火あぶり。助かっても二度と太陽の下は歩けまい。

全身冷や汗にまみれ、頭をテーブルに埋めんばかりに頼み込み、恥も外聞も投げ捨ててその足元に身を投げ出し、足を舐めんばかりに哀願し、どうにか政治生命はながらえた。もしほんのわずかでも、憎悪や反抗や若さへの優越感を出したら、即座に破滅だっただろう。

それは、白昼突然下着まで剥がされ、生きたまま解体されたような恐ろしさだった。




この怪物に下手な無理を言ったら、今度こそ本当に木っ端みじんにされてしまう。 幸い『弱みを握った外交官』という便利な道具は、大事に使おうと思っているらしく、ジェビエルの立場も多少は尊重してくれる。


「貴国の国情は、同じ欧州の一員として程度には知っているつもりだ。海峡を隔てる我が英国はとにかく、地続きの他の国々がこのままでは黙っていまい。」


バルフォアが言っているのは、フランスは大国であるがゆえに、多くの国と国境を接している。今のフランスの混乱ぶりを見れば、自分たちの利権を得ようとさまざまな圧力が来る。下手をすればあからさまに武力での侵略すら無いとは言えない。特に海軍力が壊滅的に痛めつけられたのが最も痛い。多くの植民地を確保しておくには、海軍力無しでは話にならない。


「我が国とはさまざまな歴史があったが、それでも何度も血を分けあった中でもある。」

仏英の戦争と交流の歴史を色濃く織り込んでいる。そして双方の王室は何度も血を混ぜているのだ。それを人情味あふれる話し方で、語りかけてくる。そんじょそこらのご婦人がただったら、一発でまいってしまうほど人間的魅力があふれている。

「欧州が荒れるのは、我が国としても芳しくない。そして日本は我が国との同盟には極めて誠実に対応している。ここは我が国の仲裁を受けてはもらえまいか。」

『日本は我が国との同盟には極めて誠実に対応している』この一言は、ある意味脅しも含んでいる。英国は日本と同盟を結んでいる、その同盟に誠実となれば、英国も黙っているわけにはいかないということである。そして、日本を立てるのではなく英国を立てるようにすれば、多少は国論も飲みやすくなるだろうと言うわけだ。

元々が尊大なフランス人、日本に脅されて我を曲げるのはプライドが許さないが、イギリスの顔を立てるというのであれば、まだましだ。

「まあ、貴方に何か言うのは東洋で言う『釈迦に説法』というやつでしょうが、我が国の尊大な気性は周りの危機にも鈍感で困っております。植民地を失って金が入らないようになってからでは、本気で手遅れでございますからな。申し訳ございませんが、貴方の名を出して各論をまとめるよう働きかけさせていただきます。どうぞよろしく。」

本気で申し訳なさそうに土下座するフランス大使に、バルフォアは鷹揚にうなづき、かすかに頬笑みを浮かべた。
バルフォアの口調こそ下手で丁寧だが、それに対して己の立場を忘れるようなジェビエルではない。自国の大統領にでもしないほど、丁寧に、そして卑屈に頭を下げた。

どちらにしろ、バルフォアが乗り出してきたことは、フランス政界にとっても油断ならぬ事態であり、よほどの強硬派でも引いてくれるだろう。 それに、多くの軍艦をスクラップにされてしまったフランスは、どこかから購入するしかない。英国あたりから多少高値でも買うよりほかにあるまい。


『それにしても、このフランスの混乱ぶり。まるで私が仕掛けたようなありさまだな。』

かすかな微笑みの下で、バルフォアは対仏戦略の再確認をして首をひねる。

もし大英帝国がロシアと同じような騒動になったとして、フランスが執拗に停戦を反対したならば、おそらくバルフォアも同じ手段を取るだろう。

第三共和政の最大の弱みは、膨大な合従連合でありまとまりが悪いことだ。 だが、それを突いて混乱させるにはよほどの政界通、それもバルフォアと同クラスで無いと難しい。あちらを引けばこちらが上がる、こちらを下ろせばあちらが上がるというような、複雑奇怪なシーソーの集合体のような共和政は、その複雑さが隠れ蓑となって、弱点を露呈しにくいように自然に組み合わさっていた。またそうでなければ、中小の政党は存在が難しい。それらがショックアブソーバーとなって、自然に国政を保つ働きもあったのだ。

そしてなんと言ってもフランスは大国である。そういう複雑さゆえに、同時にいくつものくさびをタイミング良く入れなければ、その混乱はすぐに吸収されて消えてしまう。

戦争に忙しい日本が、そういうくさびまで入れる余裕があったとは思えないが、それにしてもこのタイミングは・・・・?。


『そこまで日本に協力的になる欧州国家があったか?』


もしここでバルフォアが消去法で素直に考えていれば、『日本の計略』という結論にたどりついていただろうが、彼の唯一の欠点は植民地政策に色濃く取り込まれていたことであり、どこかで東洋人という枠組みをどうしても消しきれない差別的な意識で見てしまう事にあった。実際清国を始め、東洋や中東の外交官たちは、フランスとの交渉を行う際に、あまりに複雑怪奇な議会の構造に頭を悩ませ、英国をはじめとする隣国に先に相談して、フランスのどこへ話を持っていったら良いか、詳しく聞いていく例が後を絶たない。

それゆえ、日本という名前は無意識に選択肢から外されていたのである。

常識で考えれば、はるか地の果ての東洋の国が、大英帝国の自分よりフランスの国政に詳しいなどと、想像する方がどうかしている。

『北欧の連合ですら頭が痛いのに、困ったことだ。』

バルフォアは悩ましげな顔で、心中でそっとつぶやく。 世界は動き、動かされていくのである。
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