黒江大佐の憂鬱2−中・炎の運命と明治偉人伝
近代化に邁進する日本の舵取りをせねばならない帝国重工幹部は皆、大概は忙しい。
だが、その日の会議はTV会議ではなく、一堂に会しての会合となっていた。
真田准将からのたっての要望によるものであった。
「ウィスキーのテイスティング?ですか?」
テーブルに並んだ14組のタンブラーを眺めながら、黒江は最後にウィスキーを飲ん
だ時のことを思い出していた。
ウラジオへの出撃が決まった後、同期たちと「今生の別れになるかもしれない」と、
誘われてクラブをハシゴしたのだった。
その時の意識とは別の意味で彼らとは二度とは会えない状況になってしまったが、送
り出してくれた同期たちはもとより、出征すると聞くや「日本の未来を頼んだぞ」と
酒を注いでくれたバーテンダー、ホステス(A.I.だったが)たまたま居合わせた
客らが願ったであろう「希望のもてる未来の日本」を築かなければならない。
任務の重大さを痛感しながら飲んだ酒は、美味かった……世界に誇れる味だった。
「あぁ、鳥井君に頼んでいた舶来ウィスキーが届いたのと、ウチで試作してみた製品
を飲み比べてもらおうと思ってな」
真田が言う鳥井とは、帝国重工発足後に売り込みに来た外国雑貨取り扱い商人であ
る。ダミー企業というほどの存在でもないが、帝国重工が表にでるほどでも無いよう
な小規模の取引については商品の入手を手伝ってもらっている。
「なるほど、それで味覚に優れた、はるな嬢が居るわけだ」
「味を利く機能に関しては、他の方と同じ精度のはずなんですが……」
はるな嬢は謙遜するが、擬体の基本仕様は同じでも、顔や体格に個性があるように、
それぞれの擬体には微妙に能力差が付いている。同じように作られていても、擬体ご
との舌は違う。そもそも、まったく同じ味覚感覚を持たせようとすると、全て同じ顔
と声(口内と喉の形状)にしなければならないが、それは避けられていた。
「では、頂こうか」
高野の合図で全員が、一番の表示がつけられたタンブラーに手を伸ばす。
「すごい香りだな」
黒江には、口に含むまでもなく、正体がある程度判った。立ち上るスモーキーフレー
バー、スコッチの特徴の一つである。
「この臭いは、グアイアコールと2−エチルフェノールですね」
さゆり嬢がその揮発成分を特定し、はるな嬢も同意して頷く。
「シングルモルトだね。しかし、この……焦げ臭さはあまり好きになれないな」
高野の言うとおりだと黒江も感じた。飲めないことはないのだが、21世紀の日本の
ウィスキーに慣れた舌には、本場モノのスコッチは少々ピート(泥炭)臭が強すぎ
る。そして、それ以上に気になる点もある。
「微かに潮の香りがします。『ボウモア』に近い風味ですね。しかし、惜しいことに
21世紀の製品ほどには洗練されていません。もちろん、この荒々しさを好む方もい
らっしゃるかも知れませんが……私は、好んで飲みたいとは感じません」
「はるなさん、ご名答だ。これは、アイラ島のモルトだ。少しは私も期待していたん
だが、やはり日本人の、特に舌の肥えた未来人な私たちには合わないようだ」
「いいえ、真田さん。未来人でなく、明治時代の日本人の口にも合ってなかったよう
です。記録によれば、やはりこのピート臭が敬遠されていたとのことです」
「まぁ、他の味も見てみよう」
高野が次のタンブラーの赤みの強い酒を手に取る。
「これは、バーボンだね」
「グレーンウィスキーはサイレントスピリッツとは言うけれど、これは主張が無さ過
ぎないか?」
単式のポット・スチルで蒸留されるモルトに比べ、連続蒸留機で作られるグレーン
ウィスキーは、ニュートラルで癖がないと言われているが、それにしても個性が足り
なさすぎるように黒江には思えた。
「カクテルベースには向いているかも知れませんが、それではホワイトスピリッツと
何処が違うの?て感じでしょうか?」
さゆり嬢からも辛辣な評価が下される。
「チャーが深すぎて、樽由来成分が出にくかったのかな?」
高野が言う『チャー』とは、ウィスキーを貯蔵する樽の内側を炎で焼いて焦がす作業
のことである。使用済みの樽を利用するスコッチに対し、アメリカンウィスキーは新
樽に貯蔵するが、樽が新し過ぎると木の成分が色濃く出過ぎてしまう。これを避ける
ために樽内部を焼くのだが、度がすぎると樽の成分がウィスキーに渡らなくなってし
まう。
「いえ、単純に熟成期間が短すぎるのだと思います。熟成するために樽に入れたので
はなく、蒸留所から消費地へ運ぶまで、あるいは瓶詰めする場所まで運ぶため、とり
あえず樽に保管した、という感じでしょうか。西部劇でガンマンが、馬上で尻ポケッ
トから取りだしたスキットルで一杯やるような酒はまったく熟成されていないモノも
多かったらしいですし、そのようなウィスキーとも呼べないようなシロモノの可能性
はありますね。西部の荒くれ男達には、それらしい色が付いていれば良かったので
しょう」
さすがに、個性のなさ過ぎる酒については、はるな嬢も特定はできないらしい。
「なるほど、ニューポット(これから熟成を行う蒸留直後の新酒)か。確かにそうか
もしれんな」
「で、真田さん。コイツの正体はどういうウィスキーなんです?」
「ブランド名を聞いても判らんと思うよ。儂も初めて聞く名前だった。おそらくは禁
酒法時代に潰れて無くなる蒸留所だと思うが」
並べたウィスキーを次々に利き酒(全部飲んではいられないので、味見だけ)して
いったが、いくつかの銘柄をはるな嬢が読み当て、(特に21世紀にまで伝わる伝統
銘柄については、高野や黒江にもそれらしき味に思える製品もあった)、いくつかの
正体が判らない製品が取るに足らないものと品評され(おそらく時代によって淘汰さ
れる運命にある酒なのだろう)12番目のウィスキーまで達した。
「僕らの口に合うようなのは無いなぁ。真田さん、この中に『当たり』は、あるんで
しょうか?」」
「難しいかもしれんな。我々が慣れ親しんできたジャパニーズウィスキーは、淡麗で
まろやかな味わい、そして、何よりも絶妙なバランスにこだわった逸品だった。ある
人は日本のウィスキーを『磨いた球を一列に積み上げたようなバランスの良さ』と評
したそうだが、この時代の酒はまだ、球もろくに磨かれていなければ、さほど高くも
積み上がってもいない。球は磨かなければ光らない。しかし、光り輝くように磨き上
げた球を縦一列に積み上げるのは、球が磨かれれば磨かれるほどに困難さを増し、よ
りバランスを要求される。我々を満足させてくれるウィスキーはまだ、存在しないの
かもしれないね」
高野が少し諦めの表情をする。
「ところで、真田さん。今日の利き酒の目的は何です?」
「それは、13番をみてもらってからのお楽しみじゃ」
「これもスコッチらしいが……」
スモーキーフレーバーを嗅ぎとりながら、高野が13番目のタンブラーを口に運び、
「げほっ!!」
いきなりむせた。
「大丈夫ですか!高野さん!」
さゆりが急ぎ駆け寄り、その背を撫でさする。
「いや、ちょっと想像していたのと違う味だったからね。ありがとう、もう大丈夫だ
よ」
(どんな味だよ)と思いつつ、黒江も試飲。
(『なんで皆こんなものを美味そうに飲むんだ・・・?』)
古い記憶がよみがえってきた。あれは……そう、黒江にとっての初めてのアルコール
体験。
中学校の理科準備室、悪友たちと試した薬品棚の「エチルアルコール+滅菌精製
水」。確か気分が悪くなって、吐いた奴も居た。
あまりの懐かしさに、思わず飲み下しそうになり、吐き戻そうとして、やはりむせ
た。
「まぁ、黒江さんまで?これはそんなにヒドいの?」
タンブラーに口をつけようとしていたはるな嬢がたじろぐ。
「ヒドいというか、『ゆらめく影はよみがえる悪夢』って感じかな。個人的な体験と
味わいが微妙に絡み合って……」
タンブラーを手で弄びながら、黒江は感想を示す。
「そうそう、国防軍の士官学校で、車両用のアルコール燃料をくすねて新入りに飲ま
せるという悪しき伝統があってね、その味を『炎の臭いが染みついた』って形容する
んだが……」
高野もほぼ同じモノを感じ取ったらしい。
「それで、お二人とも『むせた』のですね」
席に戻ったさゆり嬢が納得の顔をする。
「高野さん黒江さんの拒否反応を見ていたせいなのかも知れませんが、私もこれを美
味しいとは感じられません。それを我慢して分析しようとすると、これは美味しいと
判断せざるを得ないと感じます。不思議な味わいのお酒ですね」
おかしな原体験が無いので、はるな嬢は冷静に味を読み取る。
「私も、高野さんが拒絶されたのを見ていましたから、やはり美味とはほど遠く思い
ます。けれど、含まれている個々の化学物質の量と比率は、最高級のウィスキーと呼
べるものだと結論付けてしまいます」
さゆり嬢も同じ意見を述べる。
「真田さん、これはどういう罰ゲームですか?鳥井君にも苦情を言いたいよ。こんな
モノを納めるなんて」
黒江は冗談半分に真田を糾弾する。
「これは、儂が工場で合成したモノじゃから、鳥井君を責めるのは筋違いじゃな。口
直しに14番を試してくれたまえ。話はそれから」
真田の返事に黒江は最後のタンブラーを手に取った。
「色と香りは、13番と変わらないようですが……」
おっかなびっくりに口へ運び、舌の先につける。
「!?!」
ウィスキーに期待される『美徳』の全てがそこにあった。たぶん、それまでは険しい
顔をしていたのだろうが、それが自然に緩んで笑顔になる。
高野も同じ表情になっているのが見て取れた。
「真田君!これ、『ザ・リアル・マッコイ』だよ!陛下にもお薦めできる逸品だ」
炎のさだめから解放されたような顔をして、高野が感激を露わにする。
「鳥井君も凄いのを見つけてきたもんだ。これは21世紀の日本でも通用するよ。こ
んな良いウィスキーが明治時代に存在していたなんて信じられないくらいだ。これほ
どの熟成……樽に仕込んだのは幕末期くらいかな?」
「不思議な感覚ですわ。成分を分析すると、先ほどの13番とさほど変わらない、と
いうのも躊躇われるほどソックリなんですが、お二人がこれを手放しで褒めていらっ
しゃるのを見ていると、自然と私もこれを美味しく感じ始めています」
はるな嬢の感想ももっともである。人工知性は感情判断の多くを『人に倣うよう』に
(ある意味無難に)設定されている。
もっとも、それは人間とて同じ事。全く未知の味わいの食材を「これはウマいよ」と
薦められ、廻りが皆美味しそうに食べていたら、よほど口に合わない限り、自分もお
いしく感じるものなのだ。
「そうですね。味覚を分析できる範囲では、成分は13番とほとんど同じなのに、何
故か私もこれを美味しく感じます。きっと、高野さんが美味しいと思われるものは、
私も同様に美味に受け取ろうとする感情が働いているのでしょう」
さゆり嬢も好悪の判断を「ヒト」に委ねて、これを美味しく感じたようだ。ただし、
彼女の場合は、他の九十九人が『不味い』と言ってもただ一人の高野が『美味い』と
言えば、それに従うのかも知れなかったが。
「真田君、そろそろ種明かしをしてもらえるかな?」
全部飲み干した14番のタンブラーを名残惜しそうにテーブルに戻して高野が尋ね
る。
「はい、大変残念な事に、14番は入手困難というか、不可能です。何故なら、これ
は2020年代に仕込まれたウィスキー、つまり未来から持ってきた私の秘蔵の酒だ
からです。あまり残りもありません」
「そんな事だろうと思ったよ」
期待が大きかっただけに落胆も大きい黒江である。
「では、13番は?」
「未来の酒を分子アナライザーにかけて分析し、約二万七千種類の化学成分を特定、
これを人工的に再構成してみたのがソレです」
「道理で、同じに感じられた訳ですね」
「僕たちは、13番の合成酒を分析しようとも思わなかったが、真面目に利き酒しよ
うとしたら、美味いと思えたのかな?」
「無理じゃありませんか?例えば、フルーツケーキをフードミキサーでバラバラに砕
いて、これを混ぜ合わせて、食べて貰っても、元のケーキの味わいは感じられないで
しょ」
「胃の中に収まれば同じ事の筈なのになぁ」
「昔見た宇宙SF映画で、物質転送装置の技術を使用して、料理を同じように複製す
るってのがあって、それに憧れたものだったが、技術はそこまで進化していないって
事だな」
「さて、真田君の提案は何かな?未来の酒は無くなって模倣もできない。今の酒は
我々の口には合わない。それは判ったが……」
「ウィスキーの蒸留所を作ろうと思います。史実では1920年代に出来るものです
が……」
「それまで待てないと。確かに私もそうだ」
「ウィスキー作りは職人の経験と勘が大事ですので、帝国重工としてはあまり得意な
ジャンルでは無いと思われますが?」
さゆり嬢が疑問を呈する。
「実は、もう既に鳥井君と相談してあって、彼に出資して蒸留所を建設する計画を
練っていたところなんだ」
「気が早いな」
「ウィスキーの熟成には時間がかかります。少しでも早く取りかからねば、生きてい
るうちにヴィンテージもののウィスキーは飲めない」
「なるほど、経済的な支援なら問題は無いだろう。ウチの経営規模なら原資を回収す
るのが何十年先になっても大丈夫だ」
「史実のサントリーと同じく山崎に蒸留所を建設する予定で土地買収に動いてもらっ
ています。それと杜氏も各地の酒造家に当たってもらっていますし、熟成に関しては
ごまかしようがありませんが、アルコール醸造とスピリッツの蒸留に関しては21世
紀中に確立した化学分析技術でかなりの部分をフォローできると思います」
「未来技術を杜氏さん達に教えるのは問題があるのではないですか?」
「未来技術とは思われない方法で伝授します。つまり、睡眠学習と古文書を模した書
類による教育です」
「何か面白いアイディアがあるようだな。じゃぁ、任せよう。美味いウィスキーがで
きたら、陛下も喜ばれるだろうし、高級ウィスキーなら国際贈答品としても利用価値
がでてくる」
こうして、真田の画策した「美味いジャパニーズウイスキー生産計画」は発動するの
だった。
「ところで、黒江君。確か人材活用について申し送りがあると聞いたが?」
高野が次の議題に話を変える。
そこで、黒江は野口英世(この時はまだ改名前のため、清作を名乗っていたが)との
一件を話した。
「確か黄熱病の研究で知られた人物じゃなかったかな?」
さすがに、高野もその程度は知っている。
「人種差別による偏見が無ければ、ノーベル賞ももらえたかもしれない人物だよ」
科学史にも詳しい真田が付け加える。
「ただ、当時の研究機材では、ウィルスを観察することが不可能だったため、彼の研
究成果の多くは後に否定されています。これはまぁ、仕方の無いことであると言えま
すが、当時からでも疑念があがる研究成果が発表されたりと、成果の捏造も疑われて
いたりします。それに……」
さゆり嬢は、口ごもった。
「他に何かあるのかね?」
高野に促されてさゆりは続けた。
「野口英世の金銭感覚については、非常識の一語に尽きます。借金をしては散財す
る。という事を繰り返しており、組織として、彼に重要な地位を与えるのが躊躇われ
ますし、外部の産業スパイに非常に目を付けられやすい人材と言えます」
「よく、こんな人の肖像を紙幣にしたなぁ」
正史における、野口の経歴(借金踏み倒し歴)を眺めながら黒江は感想を漏らす。
「いや、政府にとって紙幣は貯め込まれるより「遣われてナンボ」だから、こういう
『お金があったらパァーッと使ってしまう』人物を配するのは、ある意味正しいとも
言えるぞ」
真田が皮肉る。
「そうか!こういう人材も使い様だということだな」
高野が何か思いついたようだ。
「アイディアがありますの?」
「真田君、先ほどのウィスキー蒸留所に、付置研究設備として、菌類や微生物の研究
を行う施設を建設するというのはどうかな?」
「まぁ、日本の酒造りの基本はコウジカビという菌類ですから、まったく関連が無い
とは言えませんが?」
「では、そこに研究員として採用した野口君を配しよう。研究所の資金管理もある程
度任せられる地位に上げる」
「いや、使い込みとかされたら、鳥井君に何て説明すればいいか!」
「大丈夫だよ、彼がどれくらい使い込みできるかは、こっちで管理する。そして、研
究資金に彼が損害を与えた場合は、帝国重工から謀略費として補填する」
「なるほど、産業スパイどもを引き寄せる誘蛾灯として使うわけですな」
「で、具体的にはどんな仕事をさせるのですか?」
「21世紀に比べて、まだまだ大自然の残るこの時代、山野にはまだ我々の未知の細
菌・菌類が生き残っているはずだ。それらを収集し、有用な遺伝資源を発掘する。こ
れは膨大な作業が必要で、根気のいる非常に困難な仕事だが、後々の野口君の研究ス
タイルをみると、彼にはにはうってつけと言える。
我々には蛇毒研究も梅毒スピロヘータの研究も、黄熱病ウィルスの研究も不要だが、
日本が近代化の過程で失う前の遺伝資源については無知だ。
それを調べ上げ、利用法を研究するのに、彼はもっともふさわしい人物と言える」
「新しい機材を使わせますか?」
「防諜上は使わせないに越したことはないんだが………、危険を冒してでも彼の研究
を進めたい内容が現れたら考える事にしよう」
高野が裁定を下した。
「ところで、野口君の周りに集まる、各国の有象無象のやからの処理は、黒江君。頼
むよ」
「はい、言い出しっぺですから、責任は持ちましょう」
「それと、野口君が蕩尽する経費の管理も、宜しく頼む。出来れば、外国のスパイか
ら受け取る賄賂の範囲内で収まるよう工夫してくれると助かる。もちろん、独自に工
面してくれても良いぞ」
「はい?!えぇぇ!!!」
「では、野口さんの処遇は決まったとして、実は他にも二人、対応を迫られている人
材が居ます」
さゆり嬢がさっさと、次の話題に話を移す。
「二人?」
「どちらも陸軍を通じて頼み込まれた件なのですが、一つ目は二宮忠八なる者の考案
した『飛行器』の開発に対する援助。もう一件は、白瀬矗伍長の北極探検への援助で
す」
「どちらも援助することは出来ないな」
高野が言下に切り捨てる。
「飛行機は欧米列強が追随できない完成品を一挙に披露する予定だし、陸の無い北極
に日章旗を立ててもあまり意味はない。むしろ、ロシアに対して領土的野心を疑われ
るような行動は慎んでおきたい」
この時代の極地探検は、科学目的というよりも、新しい領土獲得を目的とする傾向が
あり、国やそれに近い組織が探検を援助する場合は、その方面への野心を疑われても
仕方がない面があった。それに、北極が海であり、陸地が無いことを既に知っている
帝国重工にしてみれば、無駄な冒険であり、来るべきロシアとの戦いを視野に入れ、
刺激するのは避けたいところだった。
なお、史実の北極点到達は1909年アメリカの探検家ヒアリーにより達成されてい
る。
「いえ、援助を行うかどうかというよりも、積極的に妨害するか否か?という問題で
すね。北極探検が成功するにせよ失敗に終わるにせよ、白瀬伍長が探検に出発すれ
ば、ロシアに日本の領土野心を警戒されますが、戦争が始まるまでは注目を集めたく
ないので、彼には余計な事をしてもらいたく無いというのが本音です。
ですが、経済は好調で各企業の業績も良く、また、帝国重工が頒布する『先進科学』
などの影響もあり、社会には科学への探求心が高まっています。
彼が寄付を募れば、北極探検の費用は集まる可能性が高いのです」
「二宮君の『飛行器』も、状況は同じか」
「はい、彼の設計になる『玉虫型飛行器』は、その後の検証で飛行不能であったこと
が確認されていますが、帝国重工が既に市販している材料で再設計すれば、飛ばせる
可能性が高まります。そして、適当なエンジンのめどがつけば、スポンサーになる企
業には事欠かないと思われますから、この場合、帝国重工の援助無しでも彼が初飛行
に成功してしまう危険があります」
「適当なエンジン?!はっ『H.D.L.』か!」
真田が何かを思いついたようだ。
「はい、シミュレーションしてみたところ、H.D.L.2基の双発とすれば、二宮
氏の飛行器は飛べます。
おそらく、史実のライト兄弟のフライヤー号よりもはるかに高性能でしょう」
『H.D.L.』とは、『国民自転車構想』により開発された共通設計自転車用のオ
プション部品である。
詳細が公表されていないため、その取付部分を『草履掛け』と揶揄されているが、
『H.D.L.』とは、(Half Deci Liter)の略語であり、出力8
キロワット程度を発揮するエチルアルコール燃料の内燃機関なのだ。
真田が開発中の、というよりも試作は既に完成しており、市場への投入時期を見極め
ている段階であった。
その導入時期は「市井にアルコール燃料を供給する環境が何時整うか?」にかかって
おり、少なくとも、各県の県庁所在地にはアルコール燃料を供給する店舗が出来る〜
そこへ補充するインフラが整う〜までは状況を見る予定だった。
帝国重工の設備を利用すれば、エチルアルコールを製造することはそれほど困難な事
ではない。
しかし、本社に運び込まれた原料を、大鋸屑(おがくず)大に破砕し、加熱・加圧し
て植物繊維(セルロース)分子を破壊した上で、アルコール発酵を経て、さらに蒸留
濃縮を行うというものであり、この原料への下準備にかなりのエネルギーを使用して
いるため,原料を元に燃料を作っているというよりも、核融合炉で発生した電力を輸
送・小分けしやすいアルコール燃料の形に変化させていると言った方が正しい状態な
のだ。
もちろん、使用量が少なければこのままでも良い。しかし、モータリゼーションを進
め全国規模でアルコール燃料が消費されるようになると困った事態が発生する。
それは燃料のコストである。
いかなる燃料資源もコストを無視しては存在し得ない。
英国で産業革命が始まった時、紡績工場の動力源として使われていたのは主に『水
力』であった。それが石炭を燃やす蒸気機関に置き換わるまでおよそ百年の時間が経
過している。この百年の間に何が起こったのか?
それは英国全土に鉄道が敷設されるまでの時間であった。
水力を利用するためには、水源の近くに工場を建設しなければならない。対して蒸気
機関は水利の便不便を問わないので、立地条件を緩和できる。しかし、馬車等で石炭
を運んでいては、その輸送コストは膨大になり、メリットは失われる。だが、石炭の
輸送に鉄道を利用することで、そのコストを大いに引き下げて、水力を駆逐し、石炭
動力に置き換えていったのである。
石油の利用もまた、コストの兼ね合いで世に広がることになる。
固形燃料である石炭の輸送は、大規模集積施設ではベルトコンベアなどの機械装置を
利用できるとはいえ、末端の利用では多くを人力に頼っている。対して、石油は原則
パイプを繋いで圧をかければ流れていく。
輸送にかける人件費のコストに限れば、石油は石炭に対し圧倒的に安価なのである。
アルコール燃料も輸送コストは石油とほぼ等しい。だが、原料の輸送に関しては別で
ある。
問題は、その原料を、いかに効率よく本社工場へ運び込むかだったのだ。
例えば、北海道の山野から拾い集められた「落ち葉」や「枯れ草」などを集めて荷車
に積み、近くの鉄道駅まで運ぶ(車夫の人夫賃が要る)。
次いで、駅から鉄道の貨車に載せ近くの港へ運ぶ(鉄道の運賃が必要)。そして、港
から船で幕張の帝国重工本社まで運ぶ(船賃が必要)。
石炭や石油(原油)も鉄道や船で運ばれる。条件は似たようなものではないか?と思
われるかも知れない。しかし、石炭や原油がエネルギーとして既にほぼ完成してお
り、原油の場合は途中で精製する必要があるとはいえ、運んだ先ですぐに利用できる
『製品』なのに対し、アルコールの原料はまだ製品とは到底いえない段階のシロモノ
であり、21世紀の感覚で見れば、ゴミに等しい。
21世紀において、これらの資源をアルコール燃料の原料として利用できたのは、「廃
棄するために必要なコストが節約できる」という、その時代の事情があったからであ
り、低コストで利用できたからでは決して無い。
(もちろん、明治の日本にしてみれば、薪や家畜飼料として有用な資源であるのだ
が)
原料の原価は只に近い状態から、輸送コストを上乗せされて驚くほど上昇する。これ
にアルコール生産工場での生産コストと、再び地方へ配送するためのコストを考える
と、到底庶民が気軽に利用できる価格帯にはならない。
それに、鉄道にしろ船にしろ、アルコール燃料の原料を運んでいる間は、他の貨物を
運べない=少なくとも、他の貨物を運ぶ量は減じる。
太平洋戦争末期の日本のように、『一滴でも多く航空燃料を増産せよ』とでもいう状
況ならいざ知らず、こんな単価の低い貨物の運送に、貴重な輸送インフラ資源を消費
したくは無い。
つまりは、いかに地方でアルコール燃料を製造するか?が最大の課題であり現状での
問題点だった。
そして、本社工場のような施設は未来技術の塊であり、安易に地方都市へ建設させる
訳にはいかないのだ。
「真田君、アルコール燃料の供給体制の整備はどんな具合かね?」
「現状は、近隣地域からの原料運び入れでリットル単価下限が15銭です。せっかく
安い原料を使っているのに、そこらの焼酎を買ってきて蒸留しなおすのとそう変わら
ないという体たらくですが、現状以上に増産しようとすると、原料供給源を増やすし
かなく、当然輸送コストの増大に繋がり、単価はさらにあがります。供給源を増やさ
ずに増産を進めれば………房総半島は何十年か先には禿げ山になります。また、地方
都市でのアルコール燃料製造に関しては、本社工場のように潤沢に電力を使用出来ま
せんので、同じ製造方法では、その単価は数倍になるとの試算が出ております」
原料の輸送コストを不要にする=藻類を培養し、これを原料として燃料を製造すると
いう技術にも着手しており、これが完成すれば将来は有望な燃料供給源となる予定で
あったが、現状はまだ模索の域を出ていない。
実は有望と思われた藻類「オーランチオトリウム」で油脂成分の製造を試みたとこ
ろ、明治日本の河川湖沼には、この藻類が利用できる有機物が少なかったため、ろく
な収穫が得られないという実例があった。石油を原料として大量消費を行い、河川や
湖沼に生活排水や農業肥料が流れ込んでいる21世紀の日本でしか使えない技術だった
のだ。
「となると、『H.D.L.』の投入はもっと遅れるという事だな」
「ある意味、二宮飛行器問題に関しては助かるという事ですね」
「彼に適当な内燃機関が与えられないように注視しておく必要がありますね」
「あまり気分の良いものじゃないな。『流星』の発表を速めよう」
「予定では、ライト兄弟の初飛行より3年前となる、1901年の新年、20世紀と
いう新しい世紀の始まりに発表する計画ですが」
「いや、のんびりはしていられない。帝国重工が存在しているおかげで、時代は加速
している。二宮君だけでなく、外国の飛行家に先んじられる危険は避けなければなる
まい」
「特に諸外国の科学を向上させるような技術は開陳しては居りませんが?」
計画の前倒しが自分の負担増に繋がる真田は不満そうだ。
「だが、高性能な医薬品を提供している。これで、病に倒れるはずだった科学者が長
生きして、技術を発展させるという可能性を否定できない。バタフライ効果というの
かな。どんな形であれ我々は世界に影響を与えているのだよ」
「判りました。それでは、今世紀中の初飛行を目指す事とします」
「白瀬伍長は、今は予備役中ですよね?」
確認のため黒江はゆかりに尋ねた。
「はい、軍務には就いておりません。ですから、探検は自主的に行おうとしているの
です」
「では、軍に戻して秘密任務に就けるというのはどうでしょうか?」
「何かアイディアがあるようだね」
高野が乗り気になる。
「日露開戦となれば、帝国軍と国防軍はロシア領の樺太と沿海州の一部、そしてカム
チャツカ半島に上陸し拠点を確保する計画です。我々の装備は優れていますが、本来
はアウェーでの戦いで不利な筈です。また、総兵力も、こと樺太に関しては負けてい
る可能性があります」
「だが、負けやせんだろう。多分圧勝できる」
「ですが、装備や戦術が圧倒的に優れていたと、諸外国に過剰にアピールしたくな
い。ましてや、詳細な地形図を我々が事前に持っていた等とは知られてはならない」
「なるほど、この時あるを事前に予想して、白瀬伍長=千島列島を探検した経験のあ
る彼に敵情の偵察を命じる。彼が作成した地図を持っているなら我々が地に利を得て
戦ってもおかしくないという言い訳が立つ」
「しかし、事がロシアに露見すれば、北極探検以上にロシアに警戒されることとなる
ぞ」
「そこで謀略を提案します」
「聞こう」
「ロシアにて極東漁業会社を発足させます。朝鮮半島が手に入りそうな状況ですの
で、これは自然な流れです。それから、この会社で極東水域の探検を計画させます。
そこで彼らは千島探検の経験者である白瀬伍長に、探検隊への参加を求めます。もち
ろん、彼が軍に復帰していることは秘密です。
北極探検までの手頃な力試しと資金集めのために、彼の方から会社に接触したことに
しても良いでしょう。
こうして、ロシアの依頼により日本の予備役軍人がロシア極東水域を探検する名目が
立ちます。当然、調査途中に樺太島へ立ち寄り上陸する機会もあり、ここを偵察する
ことも可能でしょう。もちろん、本当に偵察するという危険を冒す必要はありませ
ん」
「あくまで、偵察する機会はあった。ロシアはそれに気づけなかった。という言い訳
ですね」
「彼の探検に前後して、ヨーロッパでこの会社は出資を募ります。しかし、これは巧
妙な詐欺で、会社幹部は集まった出資金を持って姿を消します」
「白瀬君も被害者の一人というわけだね」
「はい、約束された報酬ももらえず、放り出される事になります」
「だが、それこそ予定通りというわけだ。ウチのフトコロも全然痛まない。それに新
たに工作商会を立ち上げるだけだから、既存の商会の評判も落とさずにすむ。この線
で白瀬君の方は処理しておこう。そして、彼には南極を目指してもらわないとな」
高野はそう結論して、最後に付け加えた。
「黒江君、工作商会への出資、集まると良いね。せめて、野口君が飲む分くらいは確
保しておいてくれないと、後で困るぞ」
「困るって?どういう意味ですかぁ??????」
その後
プロシアで滑空機の研究を行っていたリリエンタール氏は、帝国重工からの密かな援
助により、動力飛行技術の開発に邁進した。彼の設計した飛行機は、使用された材料
が強靱であり、動力装置も強力軽量であったため、まずは無人状態での飛翔に成功
し、ヨーロッパを涌かせた。だが、好事魔多し。続けて行った有人飛行に失敗。墜落
して不帰の人と成る。契約に基づき、支援していた会社が器材資料一切を回収して
いったため、ヨーロッパの飛行機研究者たちには技術情報は伝わらず、その成果のみ
が伝わり、彼らに大きな混乱をもたらした。
オットー・リリエンタールはオーニソプター(羽ばたき飛行機)を完成させていたの
だった。
おかげで、ヨーロッパの研究者は3年回り道をさせられたといわれている。
日本人探検家、白瀬矗伍長のアリューシャン探検は順調に行われたが、いずこからか
「某海域で、絶滅したと思われていた巨大海牛が再発見された」という情報がペテル
スブルグにもたらされた。会社はこれを機に、会社規模拡大を企図して出資を募っ
た。ステラー海牛は非常に温厚で警戒心も無く狩猟が容易で、その油脂や美味といわ
れた肉は商品価値が高いと思われ、かなりの資金が集まったらしい。だが、ロシア科
学アカデミーが皇帝に海牛の保護を願い出て、調査隊を派遣したところ、海牛など発
見されなかった。海牛発見が虚報であると知られた時には、会社幹部は集まった資金
を持って姿を消しており、巧妙に計画された詐欺事件と判断された。
スポンサーの逐電を知らされた白瀬伍長は、「依頼人が消えたところで、探検する
島々が消えた訳でも無い。俺の仕事に変わりは無い」と宣言して、探検を続けた。
約束された報酬を得られぬと知ってもなお、受けた依頼を遂行しようとする日本人に
ついて、隠されたスポンサーの存在に、その時は気付く者は居なかった。
そんなある日、木曽の山中にて大量の樹木が枯死するという事件が発生した。
南方熊楠博士を長とする調査隊が派遣され、子細を調べたところ、とんでもない事が
判明した。
事件の発端は、帝国軍が新小銃を採用した事に始まる。
優秀な新小銃の配備により、今まで使用されていた村田小銃は、用途廃止となり、外
国に売られる一方で、猟銃としても優秀であったため、国内でも販売された。(村田
銃は散弾銃に改修されている。黒色火薬使用の村田銃は、口径が大きく、散弾銃とし
ても優秀な銃であった)
樹木が枯死したという山林には、3人の猟師が居た。彼らは皆、陸軍払い下げの村田
銃を入手して仕事を始めた。
だが、帝国重工が始めた「狼の保護」という新しい状況が、彼らが鹿や猪といった大
型獣を猟果とすることをためらわせた。
「山神様の餌を奪っちゃなんねぇけ」と、彼らは鳥を撃つ事にした。
そして、彼らはほんの少しだけ、働き者過ぎた。
山の鳥の数が極端に減ったため、それに捕食されていた昆虫類の一部が異常繁殖をし
た。
それは『キクイムシ』甲虫の一種である。樹木の大量枯死はこうして起こった。
南方博士が採集したそのキクイムシは、帝国重工のアーカイブにも記載の無い新種で
あった。
おそらくは、世に知られる事もなく、昭和末期に行われた、松食い虫防除(松枯れ予
防)のための農薬散布により、密かに絶滅した種であろうと推測する他無かった。
さて、キクイムシはその名の通り樹木の木質を食べる。しかし、他の多くの昆虫類と
同じく、自らは樹木の食物繊維を消化して栄養とする事が出来ない。そのため、彼ら
は共生菌類の力を借りて、繊維を栄養とするのだ。これは日本に住むシロアリが樹を
喰うくせに自分では消化できず、腸内細菌類の助けを借りて栄養としているのと同様
である。(台湾以南の熱帯域に生息するシロアリには、自分で消化酵素を作れる種類
も存在する。なお、牛などの偶蹄目も消化管内に生息する体内細菌の力を借り、食物
の消化を行っている。同様の事は巨大な草食恐竜もしていたと推測されており、動物
にとってありきたりの能力であろう)
キクイムシの共生菌類は、もちろんキクイムシとの共生関係に特化して進化した存在
である。
当然ながらキクイムシの身体の外では生息することが不可能であり、正史の世界で
は、宿主の消滅に伴い、ひっそりと絶滅した存在だった。
この菌類を新種として野口が調査した。
おそるべき結果が報告された。
「木曽山中の気温が熱帯並に高かったら、菌はそのおそるべき繁殖力をもって周辺の
樹林にはびこり、森全体をカビの巣にしてしまっていたであろう」
「もしも、この菌の胞子を赤道直下の島に撒いたら、その島は『腐海』に沈むだろ
う」
高湿高温状態の密閉容器に直径30センチ大の丸太を入れ、この菌を植えたところ、
二四時間で丸太は全体が菌のコロニーとなってぐずぐずに崩れてしまったという。
だが、野口はこの恐るべき菌類の利用法を考案し、実用化に成功した。
密閉し適温とした容器の中で、菌を繁殖させ、強固な植物のセルロースをもっと簡単
な糖類に分解させる。分解が進んだ段階で温度を下げ、繁殖を止めさせる、そこから
先はアルコール酵母の出番だ。分解済みの糖類を発酵させアルコールにしていく。
この方法は、それまでのアルコール燃料製造における、材料の粉砕・圧縮・加熱分解
といったプロセスを省略できるため、コストの大幅削減が可能となったのだ。
そして、菌類の管理さえしっかりしておけば、特に漏洩して困る技術情報は存在しな
い。管理を緩やかにせざるを得ない地方都市の工場でも、それこそ普通に味噌醤油を
作っていた工房ですら、製造が可能になるのだ。(最終的な蒸留は必要だが、それは
焼酎工場のレベルでも充分である)
菌は帝国重工で遺伝子操作され、条件から外れた状態となると死滅するようプログラ
ミングされて出荷され、アルコール燃料の原料製造(繊維の分解)のみに使用され
る。これにより、燃料製造コストを大幅に削減し、かつ地方でのアルコール大量製造
が容易となり、『H.D.L.』の市販が始まることとなる。
こうして、野口は「アルコール燃料の父」とまで、称賛されることとなるが、放逸な
私生活と関連づけられて『野口博士は、自分がいつでも好きなだけお酒が飲めるよう
に、この技術を開発したのです』という笑話まで作られてしまうのである。
なお、地方でアルコール製造を始めた業者は、作業に使っていた木桶がすぐに使い物
にならなくなる事に困惑した。菌類は桶の中の原料も木桶そのものも同じように分解
していたのである。
桶の内面に金属板を貼るということで解決したが、この菌には「桶喰らい」というあ
だ名が付けられたという。
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