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帝国戦記 第三章 第06話 『北欧戦略』
男は天下を動かし、女はその男を動かす。
山本五十六
日曜の朝、窓から差し込む優しい朝日を浴びながら、エプロン姿のさゆりは高野邸のキッチンでサイフォン式コーヒーメーカーにてコーヒーを入れていた。
このコーヒーメーカーは気圧の差によって湯を移動する仕組みで19世紀のイギリスで発明されたものである。加熱にはアルコールランプにて行う、この時代の技術に見合った構造のものだった。ただし、さゆりが使用しているものは帝国重工の子会社が製造している耐熱性のガラス風船型であり、安全性が極めて高いものである。
また、使用するコーヒー豆も外国から輸入した豆ではない。
昨年に占領したニューギニア地域にて生産が始められた浅中煎りのものである。ニューギニア地域は占領地にも関わらず、治安が向上し経済が活性していくという世界常識から反した奇妙な状況になっていた。
これはサハリン島と同じ傾向と言えるだろう。
ともあれ、アルコールランプによって加熱される下側のフラスコから、熱された湯が上部の漏斗の内に上っていく。お湯が一定量まで溜まると、さゆりは丁寧に漏斗の湯に浮かんだコーヒーの粉を、竹べらにて粉をほぐすように撹拌していった。他に便利な道具はあったものも、さゆりは日曜の朝に入れるコーヒーだけは急ぎの用が無ければ手間暇を惜しまない。これも高野に対する愛情が成せる業と言える。
「よし、出来た」
さゆりは嬉しそうな表情を浮かべると、事前に料理しておいた生ハム・ソーセージ、バターで半熟にて焼き上げたスクランブルエッグ、トマトやレタスをあしらえたサラダ、先ほど入れたばかりのコーヒーをカップに注ぎ、エプロンを外すと、それらを木製のトレイに乗せて高野が居る、陽光の差し込む中庭にあるテラスへと向かう。
中庭にはリビングにあるテラスドアから向かう事が出来る。テラスの周辺には、中庭に植えられた木々による緑によって、光あふれる空間が暖かな癒し空間が生み出されている。
また高野邸には、はるなやメイド達も一緒に住んでいたが、さゆりと高野の仲を進展させるべく二人で朝食を取れるように計らっていたのだ。名目は副官との意思疎通の進展である。凄い事は高野達に懐いている7頭の狼達も雰囲気を察して、二人を邪魔しないように空気を読んでいた事であろう。
「高野さん、朝食をお持ちしました」
「ありがとう、さゆり。
いつもながら美味しそうな料理だ」
「どう致しまして♪」
想いの人から褒められたさゆりは返事を二コリと笑って返事を行った。
大きな仕草では無かったが幸せそうな感じが良く伝わってくる。
彼女が料理に対して腕によりをかけるのは高野に喜んでもらう為であった。高野の偽りの無い感謝の言葉を聞くだけで、さゆりは喜びで心が一杯になる。この仲睦まじい新婚さながらの雰囲気はさゆりにとって至福の一時なのだ。
穏やかな雰囲気の中、
二人は頂きますという言葉を言ってから、一緒に食事を始める。
会話を弾ませながら二人の食事が進む。
朝食を食べ終えて、コーヒーの香りを楽しむ頃には、
話の内容が雑談から政務へと移っていた。
「そういえばベルゲンの状況はどうなっている?」
「ベルゲンに対するテコ入れは順調に進んでおり、
北極圏戦略は全体的に、概ね計画通りに進んでいます」
ベルゲンとは北欧地域のノルウェー王国の南西沿岸地方にある、ホルダラン県の中心都市の事である。西岸海洋性気候の恩恵によって、冬でも緯度の割に寒くなく港も凍らない事からノルウェー王国に於ける海運の中心・物流の要衝になっており、ノルウェー海軍の主要基地の一つであるハッコンスヴェルン基地もあった。 また、ノルウェーは1905年3月からスウェーデン王国と交渉を重ね、9月にスウェーデン王国との同君連合を平和裏に解消し、ノルウェー側からデンマーク王国のカール王子に即位要請を打診し、ノルウェー王として迎え入れて、新憲法のもと立憲君主制として新たに動き出したばかりの国でもある。
高野はコーヒーから広がる香りを愉しみつつ質問を続けた。
「それはなにより。 では、例のドックに関する状況は?」
「若干の遅れが生じていますが来年の夏、遅くとも秋には完成します」
「その位ならば遅れても問題の無い範囲だろう。
後は大淀級と峯風級の設計が完了すれば、北極圏戦略は次の段階に移行できるな」
「そうですね」
会話に出てくるドックとは、ベルゲンから南西6kmにあるベルゲン・ノルゲのハッコンスヴェルン基地にあるドックの事であった。現状のノルウェー王国では5000トン級の軍艦を整備する事は不可能だったが、昨年の末から帝国重工の関連企業によって商船整備を主眼に置いた民間と軍の共用として2基もの12000トン級乾ドックの建設工事が進められている。
これもロシア帝国に対して優位に進める戦況と、徐々に拡大してきた帝国重工に対する魚介類、豚肉、木材の輸出による収益の結果であった。輸入した食糧は缶詰となって輸出品の一つになっている。
更には帝国重工は交易利益による隔たりによって、ノルウェー王国とスウェーデン王国の関係が悪化しない様に、ノルウェーのみならず、同じ北欧諸国であるスウェーデン王国から鉄鉱石と水産物、デンマーク王国から水産物、木材を輸入していた。幸いにもノルウェーは海運大国であり、輸送手段に困ることは無い。
これらの事から北欧での親日感情は極めて良好である。
また、同君連合の解消時に軍もスウェーデンのものと分離され、独立したノルウェー海軍が維持されており、戦闘艦では海防戦艦「ノルゲ」「エイズボルト」「ハラルド・ハールファグレ」「トルデンスコルド」、砲艦「ミョルニル」「スラッドバンガー」「スコーピオン」「トール」、防護巡洋艦「ヴァイキング」「フリッチョフ」の合計10隻を保有していた。
ともあれ、このハッコンスヴェルン基地の新ドックが完成すれば、帝国重工はより北欧から各種資源を効率よく輸入する事が出来るようになる。修理用のドックがあれば突発的な故障が商船に発生しても対応可能だからであった。現在は戦時ゆえにデンマーク王国、スウェーデン王国などに点在する帝国重工系列の商会を介して輸入していたが、将来の輸入拡大を見込めば大型船舶での輸送が経済性からも好ましい。
何しろ帝国重工の航洋型商船で最も小型な商船でも1万トンは下らないし、日本帝国にて量産が進む、商船利用も考慮されている一等輸送艦も1万トン級の大きさである。
故に、長期的な効率の良い交易を行うならば、このサイズのドックは必要不可欠と言えた。
また大淀級とは基準排水量が1万トンに達する汎用巡洋艦で、峯風級は基準排水量が2500トンに達する汎用護衛艦(駆逐艦)である。大淀級は帝国重工の手で、海外に出しても問題ない葛城級の廉価版として設計が進められていた。そして峯風級は帝国軍の福田馬之助(ふくだ うまのすけ)大佐を中心に帝国重工の監修の下で設計を進めている汎用大型駆逐艦である。もちろん2種類の艦も薩摩級戦艦と同じく将来を見越した拡張性は高い。
福田大佐は護衛艦(駆逐艦)工廠として整備が進められている造船、造兵、造機の3部を持つ舞鶴工廠の造船廠長を勤めていた。護衛艦の設計を統括する人物として、適していると言えるだろう。
余談であるが、彼の息子である福田啓二(ふくだ けいじ)は、1934年から艦政本部第四部基本計画主任として大和級戦艦の設計に携わっている。この世界ではどの様になるかは不明であったが将来が楽しみな血筋と言えるだろう。
また峯風級の設計には、軍艦建造のみならず退官後も民間の造船発展に貢献した辰巳一(たつみ はじむ)中佐も参加し、研修生として海軍技術学生の藤本喜久雄(ふじもと きくお)も参加していた。藤本は長門級戦艦の欠点であった艦橋に煙突の排煙が逆流してしまう問題を、「芋虫煙突」という煙突を大きく曲げるアイディアで解決したり、最上級重巡洋艦や初春級駆逐艦などを設計し、ダメージコントロール分野でも研究熱心だった人物である。
さゆりは言う。
「ただし、我が社が販売し始めた2式肥料(特殊重合肥料)によって、
歴史が変わりノルウェーの水力発電と重化学工業化の発展が下火になっています」
「それに関しては悪い事ばかりでは無いかな。
現状で無理に開発を行っても、ノルウェー単独では資金が足りず、
外資によって補おうとすれば、結局のところ天然資源を外資に牛耳られてしまう」
「そうですね……
後進国が近代化を行うためには膨大な資材を海外から購入しなければなりません」
「ああ、それは往々にして高価なものになる。
安価で提供してしまえば、自らライバルを作り出すことになるからな。
国力に見合わぬ買い物を行うことになり、結局、それが歪みに繋がる」
高野の言う通りであった。外資によって開発を行えば結局は外資の支配下に置かれてしまう。外資が行う投資は寄付では無い。高野達が介在しなければ、歴史通りに1914年には化学工業と鉱工業の80%以上が外資の支配下に置かれてしまうだろう。更に利益追求の強引な合理化によって過剰労働力を作り出してしまい、多くのノルウェー市民が職を失う事になる。
また、2式肥料とは帝国軍、国防軍、帝国重工や缶詰工場などで発生した食品廃材を、バイオプラント浄化設備を改良した全配位子対応型バイオリアクター(生化学反応装置)によって処理して生産した肥料である。この2式肥料は従来の肥料とは比べ物にならないほど優れており、圧縮燃料ペレット(バイオ燃料ペレット)を上回る売り上げを見せ始めていた。食品廃材が原材料であり、元手は殆ど掛かっていない。今までは公爵領のみで使用されていたが、生産量の拡大により販売が行われるようになっていた。
しかもバイオリアクターは肥料だけでなく、有用な物質を低コストで、かつ迅速に生産できるが利点であった。 しかも抜け目のない帝国重工は、窒素を含む化合物を低技術にて効率よく生産可能なハーバー・ボッシュ法も化学的窒素固定法として事前に特許を取得しており、帝国重工製の肥料が売れなくとも特許料が入ってくるように環境を整えている。
「ともあれ、ノルウェーを含む北欧諸国の対日感情は極めて良好なので、
計画全体を見ても大きな遅滞も無く計画を進める事が出来るでしょう」
「北極圏の基地群を介して行う航空交易路の整備も急がないとな。
これで…スカンディナヴィア半島の人口流出が収まれば良いのだが」
ノルウェー王国が存在するスカンディナヴィア半島では、アメリカへの大規模な移民が80年前から続き、人口が18世紀並みの水準まで落ち込んでいた。スカンディナヴィア半島から流出した人口はノルウェー王国の総人口に匹敵する200万人である。またノルウェーからも73万人にも上る民がアメリカへと渡航していた。
高野の懸念に対してさゆりが応じる。
「人口流出は3.2%に留まっています」
「とりあえずは改善の兆しはあるか」
「はい」
帝国重工の支社が1901年からスウェーデン王国とノルウェー地域に於いて日本圏への輸出用にと始めた林業と水産業によって現地経済を活性させ、本来流出していた人口を抑えていたのだ。また天然資源の開発も環境に負荷をかけない程度に始められている。かつての歴史と違って鮭の輸入をアメリカからではなく北欧から輸入している点も重要な要素と言えた。
これらの国外からの鮭輸入は日本圏に於ける鮭資源の保全の意味が大きい。
何しろ国内漁業だけで補えば、遠くない未来には漁獲量が減少してしまう。早期に漁獲制限を掛けていたが、循環型社会を維持するためには、徐々に養殖に切り替えるとしても現状では外国産の鮭輸入は避けられない。更に、これにはオースケ、別名トキシラズと呼ばれる鮭の一種を守る意味もある。オースケとは主に北海道日高沖で獲れ、強い脂の乗りによって塩蔵保存に向かないものも美味しい鮭として珍重されていた鮭であった。故に、このまま進めばこの鮭は乱獲によって激減してしまうだろう。
またアイヌ人にとって鮭はただの魚では無い。
アイヌ人にとって鮭はシ・イペ(食糧)でありながらカムイチュプ(神の魚)と呼ぶ特別な魚である。鮭は彼らの文化の一つと言っても過言ではないだろう。オースケともなれば更に特別であった。現在の日本帝国では帝国政府の政策と広報事業部の情報戦略も相まってアイヌ民族の立場は良好である。雪原地帯での戦闘に於ける活躍も後押ししている。
このように帝国重工は日本国内の水産資源を温存しつつ、
民族対策を兼ねながらも北欧に於ける経済振興を行っていたのだ。
北欧方面で意見の交換を進めていく中、AIネットワークを介してさゆりに一つの重要な報告が入ってきた。その情報によって会話の内容が欧州方面の話題へと移行する。
「情報によりますと水面下にてチェンバレンの手の者が、
ドイツとの接触を図っている模様です。
詳細はまだ判明していませんが……どちらにしても良くない兆候でしょう」
「そうだな。
考えられる展開として、
イギリスはドイツと一時的に手を結んでフランス利権を切り崩していく。
もしかしたら……単にドイツはイギリスに利用されるだけかも知れん。
あのチェンバレンらしいやり口だな」
「ですが、どちらにしても傍観は出来ませんね」
「そうだ。此方のシナリオに影響が出るのは困る。
悲しい現実だが、この世界は食うか食われるかの弱肉強食。
やるべき事を怠って災いを残す訳にはいかないよ」
「では?」
「余計な損害は抑えたかったが止む得まい……
大西洋艦隊に優先命令を発令し、禍根を断つしかないな」
高野はそういうと、作戦内容を纏め始め、
さゆりの協力によって作戦は迅速で的確に作られていく。
その作戦を補佐するべく4式飛行船「銀河」による臨時補給部隊による補給すらも織り込む念の入れようだった。作戦が纏まると、高野は大西洋にて展開する大西洋艦隊のカオリ大佐の下へ、北極圏の基地群を介する通信網を通して通信を送る。
日本時間との時差を考慮すればカオリが居る海域では朝の8時であったが問題は無い。日曜とはいえ作戦行動中の軍艦であり、8時ともなれば既に起床し食事を終えていた時間だった。
書斎に居る高野は椅子に座り、さゆりは高野の傍らに控えていたが、カオリは日本国防軍第1種礼装を身に着けて直立不動にて通信に応じていた。軍隊に於ける上官との会話ではありきたりな風景と言えよう。普段は砕けた雰囲気だが、軍務時のカオリはこうなのだ。
モニター越しで高野はカオリに言う。
「日曜の朝早くに済まない」
「いえ、お気になさらずに。
むしろ戦闘航海中に、その様なお気遣いは無用ですわ」
「ありがとう。
突然だが、例の作戦の進捗具合はどうか?」
「来週中にはトゥーロンの地中海艦隊を立派な魚礁にしてみせます」
「はは、順調そうだな。だが、申し訳ないが状況が変化した。
上村中将の葛城と合流し、
ヴィルヘルムスハーフェン軍港を母港とするドイツ大洋艦隊を叩いてもらう。
人的損害を抑えられるならば、此方の損害は多少ならば考慮せずとも良い」
カオリは高野と会話しつつ、通信網の中にある幾つかの秘匿回線によって形成されているAIネットワークを介して自分宛に送られてきた作戦内容を閲覧する。戦術目標と敵戦力の詳細が記されていたが、カオリはそこから高野が狙う政治目標を理解する。
「現状で作戦変更となると、英国による蠢動を防ぐためと……
ドイツの行動に枷を掛けるのですね」
「言葉を尽くさずとも理解が早い」
「軍人は政治に関わらず、しかし常に政治を理解するべき。
これも高野さんの影響ですわ」
「さゆりと同じような事を言うな。
ともあれ、これ以上英国が強くなるのは国家安全保障の面から好ましくない。
それに、ドイツの艦隊戦力を叩けば、
従来と同じ国威を維持するためにはフランスとの共闘が不可欠になる。
またイギリスの暗躍を予防しつつ、ドイツの継戦能力をも奪えるのだ」
カオリが満足そうな表情を浮かべる。
「平和への足掛かりに加えて、
黄禍論を建前に掲げるドイツ皇帝をコケに出来るとは最高の状況ですわね」
カオリの言うようにドイツ帝国海軍は陸軍のようなプロイセン王国陸軍、ザクセン王国陸軍、バイエルン王国陸軍、ヴュルテンベルク王国陸軍の合同軍ではなく、皇帝直属の軍隊である。海軍の損失は皇帝の権威にも少なからずの影響を及ぼすだろう。
またドイツ帝国海軍はアルフレート・フォン・ティルピッツ海軍大臣の下、ドイツ海軍総司令官エデュアード・フォン・カペル大将と協力し、艦隊戦力を増強する艦隊法を推進していたものも、十分な戦力が整うのは1917年頃を予定しており、現状の戦力では戦艦12隻、海防戦艦7隻、装甲巡洋艦2隻、防護巡洋艦19隻、偵察巡洋艦4隻に過ぎなかった。現段階では旧式艦も多く、艦隊戦力を喪失してしまえば皇帝がどれだけ意欲を持っていたとしても対日戦の継続は絶望的になる。
「喜んでもらえて何より。話を戻すぞ」
「はい」
「ドイツ大洋艦隊の攻撃後に再びフランス海軍に対する攻撃再開となるが、
此方に関してはN機関を通じて我々の攻撃計画をフランスに流す」
北部艦隊が壊滅した現状で、仏地中海艦隊に日本大西洋艦隊を止める力は無い。出来る事と言えば勇敢に戦って沈む事だけであった。高野はその状況を逆手に取る。あえて情報を流す事で仏地中海艦隊を逃し、N機関の価値を高めつつ、列強の戦艦が敵前逃亡しなければならないほどの日本艦の強さを世界に印象付けるつもりなのだ。
それだけでなく高野は更に先を見据えていた。
やがてスペイン海軍にて立てられる、フェランディス海軍法案に介入するつもりである。フェランディス海軍法案とはスペイン海軍が弱体旧式化した自らの海軍戦力をイギリス製の兵装にて再建する軍事計画の一つで、史実では1909年12月6日から「エスパーニャ」「アルフォンソ13世」「ハイメ1世」の戦艦を順々に起工していた。つまり高野はスペイン海軍にイギリス製戦艦ではなく、歴史改変によって日本製戦艦を採用させる事を考えていたのだ。
事情を察したカオリは納得する。
「なるほど……フランス海軍に華を持たせつつ、
今後のために日本艦隊の精強さを世界に見せつけるのですね」
「そうだ。
条件は厳しいが、出来るか?」
「了解しました。
さっそく準備に取り掛かります」
「よろしく頼む」
カオリは高野との通信を終えると執務机の椅子に座り、両手を口元で組みながら机の上にある写真立てに収められている一枚の写真を見つめていた。写真には高野とさゆりの二人が写っている。カオリは自分の唇を滑らかに舌で舐め、艶然と口元を歪めつつ優しげに呟く。
「ご安心ください……御二人の行く手を遮るすべてを容赦しません。
この手で綺麗に片付けてみせますわ」
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【あとがき】
帝国重工は経済振興を介して北欧諸国の連携を強めて行きます。それと同時に日本帝国製の兵器が北欧圏に浸透していくでしょう。
意見、ご感想を心よりお待ちしております。
(2011年02月05日)
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