帝国戦記 第二章 第42話 『ナガトショック 後編』
軍は予定のごとく天明をもって砲戦を開始す。
黒木 為
巡洋艦春日の夕食後にて行われていた交流会は比較的早い時間で終わりを迎えた。ここは客船ではなく軍艦である以上、羽目を外すにしても限度がある。艶やかさに目覚めていた帝国軍であったが、規律は緩むことなくしっかりと守られているのだ。
戦闘航海ではなく通常航行中で最も一般的な配備である1日3交替で勤務する第3配備にて、
舞鶴を出港した第五任務艦隊は、翌日の朝には長崎県の佐世保市から平戸市にかけて広がるリアス式海岸の群島である九十九島に到着し、表向きの理由である写真撮影を行った。その写真撮影に参加する女優の全員が艦内を移動する際には防寒・防雨用の国防軍外套を着用し、撮影場所以外では安易に水着姿を晒さない様にする、細心の注意を払った撮影である。
ともあれ、全てのスケジュールを消化した第五任務艦隊は舞鶴から出港して4日目の31日の朝には相模湾を越え、三浦半島と房総半島に挟まれた浦賀水道に入っていた。またその春日の前部甲板では乗り込んでいた16名にも上る観戦武官の全員の姿が確認できる。
朝から甲板上に観戦武官の姿があったのは、
彼らは国防軍広報部から取材を兼ねた朝食会に誘われていたのが理由であった。
この朝食会を行うにあたって春日の前部にある第一砲塔の前方にて広がる甲板上には軽量合金のフレーム素材で作られた組立式パイプテントが幾つも組み立てられている。パイプテントの下にはテントと同じように組み立て式のテーブルとイスが並べられており、そのテーブルの上には上品な皿に盛られたパンやケーキと共にティーポットが置かれていた。
更に突風を防ぐために、史実の軍艦で使われていたタイプとは異なった、バイオポリマー素材で透明性を有する防風柵が周囲に設置されているのだ。この防風柵のお陰で強い海風も心地よい程度に減退している。
また、この朝食会は観戦武官にとっても渡り舟であった。
観戦武官のほぼ日課と化していた春日にある観戦武官用の無線機室にて行う公使館との連絡にて日本の新型戦艦が横須賀軍港に入港していると知らされれば観戦武官として入港時に確認するのは当然であろう。朝食会はまさに渡り舟……いや絶好の機会とも言える。
朝食会に出た朝食は国防軍や帝国軍の一般的な食事とほとんど変わりなかったが、もともとの食事の質は高く、それに加えて美女や美少女の集まりと言ってもよい国防軍広報官と一緒に談笑しながら食べるとなれば、また格別だったと言えるだろう。
このように朝食会は順調に進んでいった。
食後の紅茶を楽しんでいたハミルトン中将が
カップをソーサーの上に置いて口を開く。
「このディンブラはまた良い味ですな…
マイルドな味、そして優しく広がるやわらかい香りがなんとも」
「流石はハミルトン閣下は紅茶にお詳しいですね」
イリナが微笑みで応じる。ハミルトン中将は陸軍大将になって退役した後に英国で6番目に長い歴史を有するエディンバラ大学の名誉総長として招かれるほどの人物で、それに相応しく博識であった。この場の会話は全てイギリス英語であったが語学堪能なイリナにとって問題はない。
ハミルトン中将が笑顔で応じる。
「特別詳しいという訳でもなく紅茶は英国人にとって文化そのもの、
そう、例えるなら…四季を取り入れた日本の食文化と同じな様なものです。
英国では珍しい事でも日本では当たり前、逆もまたしかり」
「なるほど〜
閣下の例えは判りやすいです」
「それほどでもありませんよ。
しかし日本で我が国の直轄植民地であるスリランカ産の
紅茶が飲めるとは思いませんでした」
ハミルトン中将は嬉しそうに言った。
英国人は世界で一番の茶好き人種である。何しろ、英国が清国に仕掛けたあの悪名高い阿片戦争も茶、陶磁器、絹の輸入超過による代金を相殺するために強制的に阿片を輸出した事によって起こった戦争であった。どれだけの茶を消費しているかが良くわかる。
「茶にこだわる英国人に喜んでいただけて光栄です。
宜しければ、閣下が召しあがっているディンブラに合う
こちらのマドレーヌ・オ・ミエル・エ・オ・シトロンは如何ですか?」
「ふむ……頂こう」
ハミルトン中将はイリナから勧められる菓子に興味を持つ。
イリナは席を立つと皿に盛られていた、蜂蜜とレモンが入ったフランス風マドレーヌをケーキトングにて小皿に乗せ、作法に則ってハミルトン中将の斜め後ろからそっと優雅に差し出す。それを終えるとイリナは供茶もてきぱきと行う。ハミルトン中将の隣に座っていたアルゼンチン海軍のガルシア大佐と会話を交わしていた東郷中将にもイリナは同様の行為を行った。英国商船学校のウースター協会にて学問を学んでいた東郷中将もイギリス英語での会話は問題ない。
またガルシア大佐にはクレアが笑顔で対応している。この朝食会は広報官の席位置も計算されており、各観戦武官の好みに合うように配慮されていた。帝国重工が要人を招待する発表会と同じ仕組みである。ガルシア大佐はクレアの熱烈なファンになっており始終上機嫌だった。
マドレーヌを口にしたハミルトン中将が言う。
「おお! このマドレーヌも絶品だ!
味は鮮明なのにしつこくない……食感もまた何とも言えん」
「お気に召して頂いて光栄です」
イリナとハミルトン中将のやり取りを見ていた東郷中将が言う。
「ハミルトン殿。
楽しんでいるようで一安心ですぞ。
これで、ようやくこの甲板も役に立ちましたわい」
「ほう?
では、この広々とした前部甲板はわざわざ食事会を開く為に作ったと?」
「予備浮力を多く得るために艦の大型化が本当の理由ですが、
このような食事会も視野に入れているのも確かです」
「となると、別の意味もあるのですな?」
ハミルトン中将は東郷中将の言葉に別の意味を汲みだす。
その言葉に東郷中将は頷いて言う。
「ご存知の通り我が帝国は自然災害が頻発します」
「自然災害といえば、台風に地震ですな……」
ハミルトン中将が応えた。
日本列島は災害列島と言っても過言ではないことを観戦武官であるなら誰もが知っている。彼らは広報事業部のニュースを見ており、史実よりも日本通になっていたのだ。文献やニュースのみならず彼らの何人かは台風を実体験している。
東郷中将の言葉が続く。
「その通りです。
災害発生時において葛城級は避難民の収容する場所としても考えられています。
島の数は大小合わせて6000個を超えるとなれば、輸送艦代わりも止むなくですな」
東郷中将の言葉は嘘と事実を交え、本当の理由を糊塗していた。
葛城級は諸外国から見て不自然に満ちている。何しろ全長201.06m、全幅24.1mという大型艦にもかかわらず主兵装が52口径155o三連装が前部に2基、後部に1基と抑えられており、後部と前部の甲板スペースが大きく空いているのだ。史実の軍艦で例えるなら防空戦闘システムとして開発したイージスシステムをはじめて搭載したタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦よりも大型艦であり、かつ甲板部分が空いている。
帝国重工は、これらの余剰空間はVLS(垂直発射システム)に代表されるミサイル兵装やヘリ収容格納庫などの拡張性を見越していたが、そのような事など理解の外である観戦武官達や他国に教える訳にはいかない。そして他国からすればこの過剰とも言える余剰空間が謎でならなかった。この朝食会は欧米諸国に対する良い誤魔化しになるだろう。
「なるほど…確かに納得いきました」
「理由もなしに大型艦に特殊な設計を盛り込まないですぞ」
東郷中将の言葉にハミルトン中将が得心したように頷いた。
国防軍広報部による外交を兼ねた接待が続く。
この頃になると第五任務艦隊の現在地は浦賀水道から横須賀の観音崎を越えて東京湾に入っており、目的地である横須賀軍港までは最短航路でも10kmを切っていた。
艦橋から降りてきた春日艦長の伊地知大佐が2通の電文を東郷中将に渡す。
東郷中将は、一つの電文をイリナにも見せる。
「殆ど戦闘に参加できない観戦武官に対するお詫びとして、
横須賀にて長門級が見えたら観戦武官に説明させよとのお達しだ。
説明内容は貴方の知っている範囲で良いらしい」
「分かりました〜」
イリナは東郷中将に応じた。
東郷中将はもう一つの電文を渡しながら言う。
「そして、こちらの電文には艦名板を見なくとも艦を見分ける方法が書かれておる」
「了解です!」
イリナは頷いた。
二人の会話に疑問に思ったハミルトン中将が口を開く。
「その会話からするとイリナ嬢は前々から長門級を知っていたと?」
「はい、つい最近の話ですが、
かの戦艦が沖ノ鳥島に燃料補給の為に来航した際に
水着撮影の場所として使わせて頂きました」
イリナは沖ノ鳥島のアピールをさり気なく行う。
これは長門級とセットで沖ノ鳥島を認知させる目的がある。
当然、伊地知大佐の電文や、東郷中将とのやり取りも事前に予定されたものであった。
聞き慣れない島の名前にハミルトン中将は質問する。
「沖ノ鳥島…?
はて……失礼ながら何処の島でしょうか?」
「えーと……硫黄島から南720kmの太平洋上に浮かぶ小さな島の事ですね。
元々は岩礁でしたが度重なる地震にて岩礁が隆起して島が形成されたのを期に、
公爵領の漁業基地として開発が進められています」
「ほう? 出来上がったばかりの島を…
いや、樺太での開発具合を見れば帝国重工ならやり兼ねんな」
辺境中の辺境といえるサハリン島が短期間で文明圏に生まれ変わっていく過程を見ていたハミルトン中将は、サハリン島の開発に比べれば漁業基地の整備は容易いだろうと納得した。また沖ノ鳥島の存在は同島に停泊した長門級戦艦を背景にイリナの新作水着であるクロスタイプのカットアウトワンピース水着が載った写真集によって認知されることとなる。
やがて第五任務艦隊は春日を先頭にして横須賀軍港の海域へと入っていく。
艦隊は三浦半島の横須賀泊町を過ぎる。
甲板上からその一帯を見ていた観戦武官たちがざわめき始めた。その度合いは距離が近づくにつれて、横須賀軍港の様子が鮮明になっていく程に大きくなっていく。史実でも戦艦「薩摩」「河内」「山城」「陸奥」を初めとした多数の主力艦を建造した工廠やドックがある重要地帯である。大きく発展していた横須賀軍港地帯の姿に観戦武官たちは驚きを隠せない。
だが本当の驚きは軍港の規模ではなかった。
鷹取山を背後に持つ横須賀軍港の横須賀本港の東からの楠ヶ浦町を越えて泊町の一部まで続く桟橋の最外縁部に停泊している2隻の戦艦である。
やがて鮮明になっていく長門級戦艦の雄姿を見るにつれ、その存在感の大きさに驚きを隠せた者は誰一人としていない。背負い式の連装砲塔が前部と後部にあり、巨大でありつつも優雅な船体からは余裕すら感じさせる。
ざわめきが大きくなっていく。巡洋艦春日と護衛艦2隻は長門級戦艦が一望しやすい場所を航行しており、否応なしに視界に入ってしまう。もはや、そのざわめきは抑えようが無かった。
「あ……あれほどの戦艦を日本人が独力で作り上げたと言うのか!?」
観戦武官の一人がそう叫んだ。
彼らが目にした長門級戦艦は帝国軍に所属する「扶桑」「山城」の2隻である。
情報で知るのと見るのでは迫力が違っていた。
イリナは観戦武官に向かって言う。
「えー、皆さん、左側前方に帝国軍旗を掲げて停泊している2隻の大型艦が、
先日、条約軍との間で行われた日本海海戦にて、
帝国軍艦隊と国防軍艦隊の合同艦隊主力を務めた長門級戦艦であります。
艦名は手前が扶桑、その奥が山城ですね!」
同じ艦型であっても事前に搭載旗による見分け方法を教えられていれば艦名板が無くとも識別は容易なのだ。第一に遠方から旗が判りにくければ艦隊行動に支障が出てしまうに違いない。
艦名の説明を終えるとイリナは長門級の概要を説明していく。
多少の偽装工作を行ったうえで主砲を406o連装砲ではなく305mm連装砲の4基として伝え、基準排水量も空洞による予備浮力の確保を理由に軽く説明し、最大速力も偽って説明する。イリナは日本帝国もようやく主砲口径が列強水準に追いついたと、相手を褒めるのを忘れない。また情報公開に踏み切った理由を尋ねられるとイリナはこう言う。
「あの海戦にて砲火を交えつつも撃沈に至らなかった艦が居たので、
ここで隠しても無意味でしょう」
正論である。
戦艦4隻、防護巡洋艦9隻が逃げ延びており、条約軍艦隊の旗艦も含まれている。
これらの艦艇を合わせれば各国の観戦武官は10名は下らないだろう。大まかな情報は列強各国に流れていると言っても過言ではない。
また、このように下方修正されつつも説得力のある長門級の性能諸元を伝えていくのは、末長く列強各国を長門級にて翻弄するためである。やがて長門級が有する高速性は装甲板の中に隙間を設けた装甲である中空装甲の採用による軽量化が成し得た成果という偽情報が流される事になるだろう。また速度性能を無理やり高めた故に、燃料消費航続距離が犠牲となり拠点防衛用としてしか使えない事もナタリアのような人材を通じて流していく。
例え欧米がこれらの情報を鵜呑みにせず、真っ当な戦艦を建造しても問題は無い。
日本側は列強が史実よりも多くの軍事費の消費や戦艦を建造し保有するだけで十分に目的を果たしており、どちらに転んでも次の戦略にとっては大差が無かった。
春日が泊町地区を通り越えて楠ヶ浦町地区に入る頃に観戦武官の視界にもう2隻の戦艦が目に入ってくる。
観戦武官のつぶやき声が流れていく。
「おお、手前の艦は手酷くやられているな…大破判定は確実か…
情報によると船体が若干歪んでいる可能性もあるらしいぞ。
それに奥の艦もマシとはいえあれでは中破は確実だろう」
「日本の新型戦艦だが、
あの損傷からして一応は従来砲でそれなりに対応可能と言う事か……」
観戦武官同士が意見交換や推論を交えていく。確かに長門の損傷状況から旧式化となった戦艦群も戦い方次第では大打撃を与える事が可能に見えてくる。
その様子にハミルトン中将は思う。
現在計画中の新型戦艦に長門級に対する抗策を講じれば、苦戦はしそうだが隻数次第で対抗する事も不可能ではないように思えた。
しかし、彼らの推測は全く持って的外れであったのだ。長門の見た目とは裏腹にバイタルパート(重要防御区画)に対する損傷は軽微に留まっている。この事実が欧米各国に伝わるならば今後の戦艦建造の事情は大きく変わっていただろうが、高野は損傷軽微の事実を最重要機密として隠しており、巧妙な偽装工作もあって彼らにその事を知る機会は無い。
また帝国軍と国防軍は合同会見にて日本海にて行われた海戦には勝利したものも、此方の主力艦も極めて重大な損傷を受けたという微妙な嘘を交えた情報を各新聞社に発表している。これらの事から表面上の情報からは日本側は人的損害は抑えたものも兵器の損耗によって辛勝にしか見えないようになっていた。
日本側の情報戦略によって欧米各国はこれからの軍拡に於いて、
中途半端な戦艦を建造していく事になるのだった。
イリナが説明を続けていく。
「あちらの2隻は国防軍が有する戦艦で、
手前の上部構造物が大破しているのが長門、
その隣に停泊している中破状態の艦が陸奥になります」
イリナによる説明が続く中、最後の仕上げが行われようとしていた。
春日と護衛艦2隻が横須賀製鉄所開設以来の歴史を有する横須賀本港に入港すると、その本港がある横須賀湾から北西500メートル先にある長浦湾にまたもや長門級と思わしき大型戦艦が入港していたのだ。この横須賀本港と軍港として整備が進められている船越地区がある須賀湾は新井掘割水路によって繋がっていた。この水路は1889年に箱崎町を横断する形で横須賀造船所によって工事が行われており大型艦の通過も可能になっている。
観戦武官の一人が水路の先に見える長浦湾を見ながら言う。
「まて、あそこにも2隻…いや3…4隻!
合計4隻の長門級らしき大型戦艦が停泊しているぞ!」
「合計8隻だと!?
長門級戦艦が、は、8隻も……」
箱崎町にある小山によって横須賀本港に入港するまで更に4隻の長門級が、観戦武官の視線から隠されていただけに衝撃は大きい。小型艦ならば気が付かなかっただろうが、彼らにとって不幸だったのは長門級のような大型戦艦ともなれば、かなりの遠方からでも判ってしまう事にあったであろう。もっともこの位置から見える様に停泊しており見過ごす事など万に一つも有り得ない。計算されつくした演出と言える。
イリナが言う。
「やや遠方に見える長浦湾に停泊している長門級ですが、
手前にいる艦が伊勢、その左後方にいるのが日向になります」
残る2隻の説明が無かった事に不審に感じたハミルトン中将が尋ねる。
「ではその他の2隻は?」
「ごめんなさい。
私が知っているのは日本海海戦に参加した6隻のみなので……
ですがマストに掲げられている旗からして国防軍の戦艦なのは確かです」
イリナは嘘を言った。
彼女はさゆりを直接支援する24基副統括システムに連なる存在である。その高位に設定されたシステム階層からして国防軍の軍事機密に触れるのは容易だったが、世間一般ではイリナは有名とはいえ一介の女優に過ぎない。それは例えさゆりの親友であっても同じである。世間から見た立場からすればイリナの立場で高度な軍事機密に触れるのは不自然であり、このようなさしあたりの無い返事を返すに留まっていた。
そして長門級の数が6隻とばかり思い込んでいたのは観戦武官だけではない。
知らされていなかった東郷中将や他の帝国軍士官も例外なく驚いた表情をしていた。また正しい隻数を把握していなかったのは観戦武官や帝国軍士官の努力不足ではないだろう。長門級にしろ葛城級にしろ、その大部分が正規の軍事費で帝国軍工廠にて建造したのではなく、帝国重工が独自に建造した艦だからである。
資源に於いても帝国重工は工作商会や海底鉱脈などの独自のルートを確保しており、これに産業用ロボットを初めとしたファクトリーオートメーションも加わるのだ。ここまで徹底していれば世界最高の諜報力を有するイギリス帝国ですら尻尾を掴むのは至難を通り越して無理だった。ファクトリーオートメーションは理解の範疇外だからである。
軍事予算から建造の兆しを知る事は出来ず、
帝国重工に対する諜報活動は悲惨な結果にしか終わらない。
ハミルトン中将は思う。
(ここにきて予想外の8隻……
いや、本当に日本側が有する長門級は"8隻だけ"なのか!?
それどころか、8隻だけに留まる根拠が無いぞ……)
偽装工作と思いたくとも情報や痕跡を漏らすことなく長門級戦艦のような大型艦を作り上げてしまった事実が、冷静なハミルトン中将を混乱に導いていた。実績からして知らないうちに"もう8隻"が存在していても不思議じゃない。知らないうちに大型戦艦を作り上げていた事実が妄想や空想に等しい危惧を現実のものへと高めていたのだ。
観戦武官や日本に滞在する各国公使が情報に掴んでなかった長門級戦艦「加賀」「土佐」の公開によって、列強各国に大きな波紋を広げていく事になる。
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【あとがき】
ついに8隻の長門級戦艦がお披露目に!
近代改装の度に上向きに性能表が公表され、列強各国を軍艦建造競争へと誘導していきます。
意見、ご感想を心よりお待ちしております。
(2010年09月14日)
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