左上 右上
■ EXIT
左下 右下
左上 右上
レクセリア建国記 第16話 『アンドラスとリオン』


アンドラスとリオンは傭兵隊を率いてイスウェイク男爵領の中心地にある街、ウェイクの郊外に展開して傭兵隊の出撃前の最終訓練を行っていた。傭兵隊の規模は二人を含めて17名。そして、二人はその抜きん出た実力から傭兵でありながらも扱いは騎士待遇として準じていたので、イスウェイク男爵側が集めた傭兵も指揮下として与えられていたのだ。

実力の証明は簡単だった。

アンドラスは2級を、リオンは準3級になる冒険者ギルドの登録証を所持しており、その実力は疑いようがない。それに加えて集まった傭兵たちの中で行った模擬戦でも二人は圧倒的な実力を見せ付けていたので、今回の討伐に参加している傭兵たちにも文句の声は無かった。傭兵隊の体制としてはアンドラスが隊長で、リオンが副隊長として17名まで兵数が膨れ上がっていた傭兵隊を指揮する形である。

アンドラスは5人一組の3隊となって生存を重点的に上げる訓練に励む傭兵たちを見ながら隣のリオンに話しかけていた。

「明日の出撃までに何とか形になったな」

「そうですね。
 実戦経験の無い傭兵が大半とは予想外でしたが」

リオンは相変わらず冷静に応じる。リオンは可愛い容姿をしていたが、基本的にリリシアと目にかけた少年にしか愛想を見せないのだ。もったいない限りである。それでもリオンは時折、自らの意思でアンドラスとの肉体関係を交えていたりするので、強い男性に惹かれる夢魔らしさがあると言えるだろう。

「初陣は誰にでもある事だ。
 問題は彼らの初陣が魔獣というわけだが、
 彼らは依頼として受けているのでこればかりはどうにもならん」

「報酬を受け取るので、戦う責任が生じますからね」

「だな」

実戦未経験とはいえ、彼らの筋は悪くはない。初陣を乗り切ればそれなりに伸びる可能性があるな。ともあれ…自らの意思で傭兵になったと言えども、可能な限り彼らの犠牲は減らしたいものだ。

と思いつつ、アンドラスは空に流れる雲に視線を向けた。

アンドラスは旺盛な闘争心を有していたが、戦いに於いては不要な犠牲を好まない姿勢を貫いている。そして無謀な行動を行わないので、リリシアからの信頼は高い。

「そういえば調査はどうだ?」

「得られた情報はルザ村を襲ったのはキマイラのようなものが10体程。
 それ以上の情報が入ってこない」

「遭遇者の殆どが死亡しているので、
 これ以上は調べようは無いのは判るが…
 やはりきな臭いな」

「同感」

アンドラスと同じように
リオンも何かありそうな事を感じ取っており、
機嫌が余り良くない。

アンドラスたち傭兵が受けた討伐依頼の内容は、イスウェイク男爵領北西にあるルザ村がエイアス・イスウェイクの支援の下、進めていた開拓地に出現した魔獣の退治にある。だが開拓地に居た人々の大半が魔獣の群れによって大半が死ぬという壊滅的な打撃を受けており、僅かに逃げ切れた生存者の情報から襲ったモンスターが魔獣系のキマイラらしいという事しか判っていない。辺境地域では稀に発生するモンスター被害の中の一つ。

アンドラスは考える。

領主側は魔獣に関連する情報は俺たちが入手したもの以上のものを得ていないのは確かだろう。第一、隠す事によって利点が無いどころか、下手をすれば王室から失点として見られかねない。だが辺境とはいえ少数のキマイラでここまでの被害が発生するのも不自然だ。異なる勢力の介入を疑うべきだな。

自分の考えをアンドラスは周囲に聞こえないようにリオンに伝えると、リオンも同意した。 開拓を行う以前から一帯の調査を行っており、その時にはキマイラの巣どころか痕跡すら無かった。その事から今回の討伐対象は、この地に流れてきたモンスターと見て間違いはないが、それにしては手際が良すぎる。つまり、土地勘が乏しい筈なのに、まるで生存者を極力残さないようにキマイラが上手く立ち回っていたからだ。

これらの点からアンドラスは何か裏があると怪しんでいる。

「まぁ、この段階でリリシアに助力を頼むのは早急か」

「肯定。
 あの方の手を余計なことで煩わせるのは良くない。
 来て頂くのは段取りが整ってから」

「相変わらずリリシア優先だな」

「貴方も同じはず」

「違いない。
 あれは良い女だ。優先するのは当然だ」

リオンはリリシアの事が褒められて先ほどより機嫌が良さそうだ。リオンのリリシア優先は筋金入りだった。その優先度の高さは夢魔族の村や集落で行われる定期行事を例に挙げると次のようになる。

夢魔族では第2次性徴が始まる年頃の少年少女を一人前の男、女に育てる成人の儀というが仕組みが備わっていた。だたし、男性の夢魔族は極めて少ないので、その多くが村に住む人間やエルフの少年になるが。ともあれ、成人の儀とは夢魔族の多くが信奉するアルマ教の女性司祭よる懇切丁寧な手解きよって性の初体験を行うのだ。

数が少ない夢魔族は成人の儀を受けなければ戦いを担う職業に就くことが許されていない。逆に言えば、生産系の職業に就くならば受けなくても良いので、参加しない者も少なからず存在する。そして、アルマ教の司祭としての地位を持つリオンは成人の儀の立会いに積極的に参加して、相手となった少年に対して性の手解きを行いながらも、同時にリリシアの素晴らしさを説いていたのだ。

かなりの惚れっぷりであろう。

周知の様にアルマ教は夢魔族から生まれた教えで、レオニール王国に住む多くの夢魔族が信仰していた宗教でもあった。教えの方向性は大雑把に分けて 「優しく」「清潔に」「上品に」の3つに集約がされる。

他の宗教と大きく違った点は、
アルマ教で働く神殿娼婦の者に神官階級を授けた事だった。

出産率が極めて低い夢魔にとって、
閨事を介して行う新たなる生命を宿す行為を神聖と言わずして何であろうか?
故に、アルマ教の教えには種族の壁は無い。

また、回復魔法のような何らかの特技を有していれば上位階位にもなれるのだ。
ただし男性で神官になれるのは、夢魔族の男娼に限られていた。

そして、アルマ教は夢魔族の出産率向上だけではなく、夢魔族という種を守るためである。 夢魔族の出産率は極めて低い。その反動か夢魔族の女性達は天性の子供好きでもあり、彼女達にとっては子供を生み育てることが最大の夢であり憧れなのだが、 成人を迎えた夢魔族は進んで性に開放的にならなければ、生涯において子供を手に入れることは困難だった程。

彼女達の性に関して極めて寛容なのは生態にあわせている文化ゆえだ。
厳格な禁欲文化を始めたら、そう遠く無い将来に種族として絶滅してしまう。

更に、生まれもって約束されている美貌と不老長寿は決して彼女達を幸せにする訳ではない。捕らえて奴隷にしようとする奴隷商人が後を絶たない事から、リリムのような上位種ならともかく、サキュバスでは群れから離れれば常に狙われる危険性があった。閨事に関して一部では『淫魔』と呼ばれるぐらいに、高い適性と強靱性を有しているのも拍車をかけている。 故に身の安全を得るために相互支援の共同体を持つ必要があった。

もちろん、レオニール王国ではアルマ教の存在は、
その立ち振る舞いから多くの人々から好意的に受け入れられている。

夢魔族の娼婦は多種族の男たちにとって垂涎の的であり、必然的にアルマ教の神殿産業は多くの利益を生み出していたが、その得られた利益の少なくない額を神殿を置く都市の清潔化や孤児救済に使っていた事が最大の理由だ。加えてアルマ教は冒険者ギルドとも提携しており、負傷した冒険者に対して格安で回復魔法が使える神官を手配したりしているので冒険者からの支持も厚い。

余談だが、アルマ教が誕生するまでは夢魔族は定住する村に時折やって来る旅人に対して行う「夜伽」によって種の保存に努めていた。現地の年長者が選んだ未出産の夢魔の娘達が旅人の部屋へと向かい閨事に誘っていくのだ。そして運良く妊娠すれば子宝を宿した娘として仲間たちがサポートしていく。 夢魔族の女性の結婚は気に入った男性が出来たときに結婚するので、未婚であっても子連れのケースは珍しくない。しかし、「夜伽」の仕組みを導入しても出産率は殆ど変わらなかった。 道理であろう。最も妊娠に適した同族の男性であっても滅多に妊娠できないのだ。 他の種族の男性であれば結果は自明のこと。

閑話休題

アンドラスの言葉が続く。

「まぁ、キマイラが10体程なら、
 本気を出せば俺たち二人でも何とでもなるだろう」

「肯定。
 だけど現時点であまり派手に動くのは好ましくない」

「それは理解している。あくまでも万が一の話だ。
 領主軍も2機の魔導機(ウィザード)を出す。
 俺たちも居るし、よほどの事がない限り大丈夫だろう」

アンドラスはそう言いながらも楽観視はしていなかった。
それはリオンも同じである。

リリシア様が太守になられるまであまり目立たないように動かなければいけませんね。リリシア様の大望と同胞の為にも… とは言っても抑えて動くのは疲れますね。息抜きと実益の為に今夜は彼と交わりましょうか。

リオンはそう考えると、アンドラスのほうに心なしか熱が篭った視線を向けた。
視線を向けられたアンドラスは意味を理解して頷く。訓練は夕方頃まで続けられ、それ以降は明日に備えて傭兵隊の全員に休息と英気を養う為に自由行動となった。

その日の夜。

アンドラスとリオンは夕食後、用意された宿屋の自室に居た。アンドラスはベットの上でたくましい肉体のまま横たわっている。そして裸といって差し支えないアンドラスの下半身に汗ばんだリオンが跨いで上気した表情で緩やかな上下運動を繰り返していた事から閨事を行っているのが判るだろう。時折、どちらともなくリオンは口づけを交わす。

クールなリオンも閨事中ともなれば熱くなる。
動きに合わせて漏らす吐息が可愛らしい。

流石にリリシアが相手の時に見せるような熱々なものではなかったが、それでも十分な魅力が伝わってきていた。アンドラスの下半身もリオンに応じるように漲る。

「気持ちは判るが、
 明日は出撃だからほどほどにな…」

「っ…善処する」

…これは相当に鬱憤が溜まってるな。
リリシアから頼まれてるし、リオンは仲間だ。
俺が踏ん張るしかないか。

リオンも他の大多数の夢魔と同じように子供を授かりたいと想いは大きく、ストレスが溜まるとその想いが顕著になる。夢魔は数年に一度だけ生殖本能が特に強くなり、対して魔力制御が若干低下する時期があるのだ。そして、現在のリオンはその時期に当てはまっている。しかし、リオンのように高い魔力を有していると、完全に安定していない時期ともなれば、相手は誰でも良いわけではない。魔力制御が不安定な状態では、性行為のような密接した接触では、相手には相応の魔法抵抗力が必要になるし、漏れる魔力に抵抗しきれない場合には体力と魔力に負荷を与えかねないので、相手はリリシアやアンドラスのように強い者に限られてしまう。

事情を理解しているアンドラスは、リオンの気持ちを汲み取り、
積極的に行おうと巧みにリオンと上下の位置を変えた。
よほど嬉しかったのか、リオンの顔に明らかな歓喜の笑みが浮かぶ。

翌朝、リオンの満足そうな表情と若干疲れたアンドラスの様子からして、どれほど濃厚な交わりだったかを推して知るべしだろう。
-------------------------------------------------------------------------
【あとがき】
これ以上詳しく書くと18禁になってしまうので、
二人の交わりはここまでにします。
3件の要望があれば、別のページで交わりの部分を後日書きます(笑)


意見、ご感想を心よりお待ちしております。
左下 右下
左上 右上
■ 次の話 ■ 前の話
左下 右下