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レンフォール戦記 第一章 第05話 『レーヴェリア派遣艦隊』


とある島の沖合いに 戦艦、装甲巡洋艦、巡洋艦、強襲揚陸艦、などの大型艦や各種支援艦を中心に 護衛艦が見事な隊列を組んだ艦艇が艦隊として再編成を終えていた。

また、周辺には艦隊に対する最終補給を終えて帰路に着き始めた補助艦艇や輸送艦などの姿も見られた。

艦隊旗艦を勤める戦艦「長門」の後ろに 装甲巡洋艦「ローゼンベルク」が位置し、強襲揚陸艦「ゼイレン」と補給艦8隻、雑貨船25隻、測量艦20隻を守る為に囲っている、巡洋艦「高雄」「愛宕」「ケルン」が鎮座していた。更に護衛艦14隻が周辺を輪型陣を組んで厳重な守りを固めていた。


それらの艦艇は各国に本当の目的を悟られること無く集まっていたが、 明らかにレーヴェリアを遥かに超えた技術水準で作られた艦艇郡である。


それもその筈、ここはレーヴェリアと異なる世界なのだ。


艦隊旗艦を勤める戦艦「長門」の艦内にあるCDC(戦闘指揮センター)の中で 一人の男性が一人の女性と話し合っていた。その男の名前はアーゼン・レインハイムという。

人の身でありながら高い魔力によって老いることなく若い肉体を保ち、長い年月を生き続けてきた男。毒舌家であり最恐の魔王として名高いレインハイム皇国の王であるが、国民の安寧を第一に考える政策から慕われていた。

また、彼はラングレー王国、佐伯国、レインハイム皇国軍の3大国が中心となって作られたERという連邦国家勢力において、アーゼンは皇国軍最高司令官とニーベルンゲン特殊作戦軍総司令を兼任していた。


「前回の偵察情報が無ければ、こちらの初動が遅れるところだったな…」

「そうね…ゴーリアの動きが予想よりも早かったわ…
 もう少し余裕があれば良かった…」

「心配か?」

「ええ、アーゼン…私は祖国と娘達が心配……」

「そうか…だがリリスよ、もう少しの辛抱だ」

静かに頷くレンフォール国女王のリリス・レンフォール。

彼女が寂しそうな表情をしていていも、その表情は百合の大輪が咲いたように麗しく、あふれ出さんばかりの魅力に輝いていた。容姿はリリシアと似ていたが、経験の差であろうか雰囲気が決定的に違っていたのだ。

彼女の美貌は リリシアとアリシアの母として全く遜色の無いものであり、その美しさは魅惑効果を完全に抑えていても、一際に目立っていた。

表面上は冷静なアーゼンも、表情には出さずに、内心は心配していた。リリスの娘のアリシアはアーゼンとリリスの間で出来た子供なのだ。責任感のある大人で、自らの子供を心配しない者は居ない。

そんな中、アーゼンに率いられた士官達が CDC(戦闘指揮センター)に設置されている、高度にシステム化された各種端末を作戦開始に備えて慣れた手つきで操作していく。 高度にシステム化された各種端末が総合的な技術力の高さを伺わせる。

動きに無駄が無く高度な訓練を受けている事が良く判る。
士官達の口から次々と報告が述べられていく。

「ゲートまで、距離(ディスタンス)42南(サウス)1海里(マイル)」

「全艦隊、準備完了」

艦艇の間に近距離通信用のレーザー通信が飛び交う。 電波を使った通信を行っていないのは、通信内容から 艦隊の目的が外部に漏れないように広域通信を禁じていたからだ。ERは超大国に位置する大勢力であったが、同等の勢力も幾つか存在しており、ゲートの存在を可能な限り隠しておかなければならなかった。

ゆっくりと進む艦隊の進行方向に存在する島の岬には直径120メートルの環があった。 それは、レーヴェリアのロニセラ島にある環と瓜二つであった。 唯一の違いが、その環の内側に力場が発生していた事だ。


「700年ぶりのゲート起動。いよいよだな…リリス」

「ええ、待ちに待った瞬間…やっと…」

「そういえば、娘からの返事は有ったのか?」

「う〜ん、何度かテレパシーを飛ばしたけど…
 門を介する過程で、どの様に変化するかも判らないから、通じているのかも不明だわ」

「そうか…まぁ、もう直ぐ通じるさ」

「そうね…もう直ぐね…」

しばらくすると、CDC(戦闘指揮センター)での士官達の動きに変化が出始めた。 観測していた対象の変化が止まり、安定化を始めたのだ。どの様なシステムであっても安定が好ましい。

「観測経過良好…力場安定を確認!」

CDC(戦闘指揮センター)で最終確認を行っていた仕官が言った。

「よし、状況を開始しろ」

「了解。状況を開始します。各艦艇と接続…状況オンライン」

「カウント開始。突入作戦開始時刻(ゼロアワー)まで、あと180秒」

「4ノット増速。測量艦、本艦の前に出ます。
 ゲート突入まで後165秒…「ローゼンベルク」「愛宕」が本艦に続きます」

集結した艦隊が計画に従ってゲート内に向って突入準備を開始した。

「ゲート突入時の干渉に注意せよ」

















「突入まで後10秒…9…8…7…6…5…4…3…2…1…突入!」

強化ガラスがはめこまれている艦橋窓から真っ白な閃光が差し込んで艦橋内の視界が一瞬だが真っ白に染まる。しかし、各艦艇のCDC(戦闘指揮センター)は艦内内部の強固な箇所に設置されており、センサーが捉えた以上の変化は無かった。

ゲートに突入してから数秒の後に、長門はレーヴェリア界のロニセラ島の環を出ていたのだ。各種索敵機器の情報から、長門がゲートアウトを終えたのを確認すると、士官達は艦内情報の収集を始める。

艦内外に問題が無い事を確認終えると、周辺情報の入手に取り掛かった。


「システム起動中、周辺地形照合を終えました」

「照合結果、ロニセラ島と断定…後続に「ローゼンベルク」「愛宕」を確認。
 索敵継続中…」

「全艦艇、ゲート通過しました」


士官達が慌しく動き回る。 4日前から定期的に情報収集を行うために解き放った自律無人偵察機 の情報と照らし合わせているのだ。状況の変化の確認を始め、やることは山積みだ。

戦闘指揮センターにいる士官達の戦いは始まっていた。


環の内側に生じる門(ゲート) ―――― 旧文明の遺産で、異なる空間同士を繋いで、惑星間の行き来を行えるようにする、超科学の結晶たる恒星間パッシブゲート ―――― を通過したレインハイム皇国軍を中心とした派遣艦隊。


このゲートの再起動のきっかけはリリスの漂着から始まった。

700年前に環が門としての機能を停止してから何の変化も無かった レインハイム皇国領マーノイス島のハロルド岬内部にある環であったが、 レーヴェリアから飛ばされてきたリリスによって状況は大きく変化した。

そう・・・・
『門』周辺に設置されていた幾多の観測機が科学的に状況変化を洩らすことなく捉えたのだ。


リリスが行った決死の行動はゴーリア軍主力を巻き込んで空間の歪に落ちていった。 しかし、彼女は幾度もゲートを利用していた事により、無意識に体が覚えていたアクセスコードによって予想外の展開を見せた。

活動を停止していた門であったが、これは故障していたのではない。 安定活動を行う為のエネルギー不足によって、一定量のエネルギーを蓄え終えるまで 休止していたに過ぎなかった。

休止状態のゲートシステムはアクセススケジュールに無いハイパースペース上からのアクセスに反応して、残余エネルギーで緊急排出コマンドの実施を行ったのだ。

勿論、飲み込まれた全ての者が、そのような幸運を与った訳ではない。 リリスと一緒に飲み込まれたゴーリア軍の兵士達はリリスのような耐性 もなく、門にアクセスする手段も無く、ハイパースペース上の高エネルギーの 奔流に飲み込まれて分解されていった。

飛ばされたマーノイス島が、レインハイム皇国領だったのが リリスの運命を決定付けた。

700年前の ゲートの活動休止まで深い関係を もっていたアーゼン・レインハイムが統治する領土だったからだ。 これが、人間至上主義を掲げている通商連合の領土であったら、衰弱していたリリスでは抵抗すら出来ずに捕らえられ、身柄は研究材料となっていたであろう。



苦難と共に再び会えた二人の魔王。
アーゼン・レインハイムとリリス・レンフォール。

想いや意見を交わし、将来の行動を定めて、共に実行に移した。
お互いの営みの過程でアリスが生まれた事に子供好きのリリスを大きく喜ばせた。

あらゆる角度からの情報を集めて数値化し再現化するのが科学の特徴。 この観測データによって、突破口が判明し、検証するべき方向性が定まったのだ。

門の再起動に向けて動き出した瞬間だ。

ラテニスティア言語―――― 魔法とは旧世代に大量に散布された気象調整用ナノマシン郡が 体内の各種神経細胞の干渉下におかれた際に発生 する物理現象。そのナノマシン郡の動かすプログラム言語をラテニスティア言語と 言う。 ―――― に精通しているリリスとアーゼンは研究スタッフと共に3年の月日で、門の再起動技術の概要を掴んだ。




魔法に関するレポート  書類分類【第一級機密】

環境調整用ナノマシン郡は環境浄化と大気安定を主目的としており、 ごく自然に元素に近い存在として漂っている意思のない存在である。

滅多に起こらない出来事だが、特定条件化において 一定数以上のナノマシンが集まる事があり、その場合において 精霊シルフのように簡単な自我を有する存在へと昇華する場合がある。

さらに長い年月をかけて力と思考を蓄積していくとより上位の存在になる。
九十九神もこの例に当てはまり、使用人の強い想いがより顕著に数値化され、基本の行動プログラムとして物に蓄積して誕生する。また、一部は電子作戦要員として従軍中。


伝承で伝えられている『精霊』『妖怪』という表現は間違っており、厳密には『ナノマシン郡体』による生物として捉えるべきである。

また魔法の唱咏が定められているのは、この中にナノマシン郡にアクセスするコードの一部が含まれていると推測さる。機械に呪文を録音して、再生しても魔法効果が無いことから発動条件は多岐に及ぶと予想される。

現代の量子科学では解明できない、一定数まで自己増殖する超高性能なナノマシン郡を生み出した 文明は一部遺跡を除いて詳細は判明していない。

第248回 4項B 機密文章抜粋




ゲートの再起動に必要な安定したエネルギーの手配とゲートシステムの起動。

2つの目標達成時期を目安に派遣計画が立案された。
途切れていた世界は再び繋がるべくして歯車が動き出した瞬間でもあった。



順調に進んでいた計画だったが、門を通して送り込んだ 自律無人偵察機からもたらされた 偵察結果によって大きく狂うことになる。

リリスからレンフォール国に関する情報を聞かされていたアーゼンは 暗雲立ち込める南方諸国を安定させるために兵力派遣を計画に盛り込み 進めてきたが、レンフォール国の状況を考慮したアーゼンは計画を11日前倒しにした。


リリスの承諾を得て進めている『計画』の基礎になる国家が破綻しては 本末転倒だ。

計画の前倒しについて、 ラングレー王国、佐伯国、レインハイム皇国の三国間 に構築されている  多重構造型量子回線情報網(アルフヘイムシステム)に存在する レインハイム皇国担当の高位光電子知性体アイギスは反対しなかった。

他の機械知性も条件付賛成であり、止める存在は皆無であった。

当然であろう・・・

未開発の星・・・

しかも星系単位での開発が可能になる可能性は大きな魅力である。
豊かな自然に支えられた豊富な資源、それによって得られる市場、そして生存圏の確保…

環境さえ整えば、船団規模の移民が可能になる好条件。
通商連合との第二次反応戦争が勃発した際の移民先としても申し分が無い。

これらは如何なる宝石にも勝る存在なのだ。


投入できる戦力を惜しみなく派遣した。
本来ならば、念密なゲート利用における事前調査を繰り返してから 送り込むつもりだったが、状況が許さなかった。

過去に、アーゼンやリリス達がゲートを用いて、何度も行き来していた実績があったからこそ出来る冒険である。

集結を終えていない派遣部隊は第二陣として後から送り込む計画変更となった。


今回の計画責任者でもあるアーゼンはレンフォール国を植民地にする心算はない。 この計画の他の参加国も同じような意見である。

これは、事実上のアーゼンの妻であるリリスに対する特別な感情からではない。

アーゼンは夢魔族について詳しく知っていた。

総じて、高い知性を有し、融和的で穏やかだが 契約に関しては真摯で決して 裏切らない信頼に値する考えを有している。 更に、レンフォール国の言葉・単位も此方と同じであり、独自の文化を育てているが風習や常識も近い。

これらの総合的な結果、 要度9区分A++(最優良対応)いう非常に高い評価を下していた。

故に、資源採掘技術や農業技術を提供し、現地経済をゆっくりと育てていく方針だ。

最初から、ただの同盟ではなく、よき隣人、対等のパートナーとして視野に入れていたのだ。そして、この試みは大きな成功を収め、確固たる信頼関係に繋がっていくのだ。



「レーヴェリアか…久しい感じだ…」

アーゼンが呟いた。
レーヴェリアは魔力濃度がやや多いのだ。

「お帰りなさいと、言うべきかしら?」

リリスは嬉しそうに言う。
愛するリリシアやアリシア。そして大切な仲間達に会える・・・

アーゼンと一緒のこの状況に加えて、 強力な戦力がもたらす抑止効果から リリスは上機嫌といって良かった。彼女は争いを好まない。家族が、民が外敵に怯えることなく安らかに暮らせる日々を思い浮かべていた。

「照合結果から、事前偵察の地形情報と誤差はありません」

仕官の一人が言った。

「リリスよ、娘たちと連絡は取れるか?」

「ん…やってみるわ」

リリスは魔法通信を行うべく意識を集中し始めた。

第一陣として送り込まれた戦力

長門級 戦艦「長門」
蒼海級 装甲巡洋艦「ローゼンベルク」
新高級 巡洋艦「高雄」「愛宕」「ケルン」
ゼイレン級 強襲揚陸艦「ゼイレン」
護衛艦x14

測量艦x20
補給艦x8
雑貨船x25

戦艦と装甲巡洋艦は第二次世界大戦時に建造された船だが、近代改装によって侮れない実力を有する。むしろ、対地攻撃に関しては400mm砲や320mm砲を有しており強大な攻撃力と言っても過言ではない。

対艦戦を見ても圧倒的だ。

ミサイル兵装を使用せずとも巡洋艦から放たれる 主砲弾(通常弾)ですら、レーヴェリアの標準的なギラル級戦列艦を一撃で 戦闘不能(場合によっては轟沈)にしてしまう攻撃力を有している。


そして、第一陣の艦隊戦力の中で一番重要なのはゼイレン級強襲揚陸艦である。

ゼイレン級強襲揚陸艦 一番艦「ゼイレン」は全長310m、全幅34m、吃水8.2mで 満載排水量61302tに達する。ルフィル海軍工廠で建造された新鋭艦の一隻。動力部は佐伯重工製の統合電力システム(IPS)電気タービン二機二軸で120,000shpを生み出す発動機を装備していた。その強力な発電能力と推進力から最大速度は34ktに達し、巡航速度24ktで1万6千海里の航続距離に達する。

この揚陸艦は通常動力型正規空母のサイズに匹敵するという従来の域を超えており、 飛行甲板の充実は航空機の運用を最重視しているのだ。更に、艦内には1個旅団の両用戦力が収納可能である。



そのゼイレンの中では黒ずくめの野戦服を身に包んだ男達がうごめき、自ら使用する武器の最終確認をおこなっていた。彼らは上陸戦担当の皇国軍所属の第28装甲旅団の兵士達だ。

「敵の名前はゴーリアだったか?」

「ああ、美女達を襲う野獣…まったく戦いやすい相手だ」

「確かにな・・・憎い敵の方が殺しやすい」

「紛争以来だ・・・腕が鳴るな」

「交戦規定(ROE)は?」

「戦闘領域以外は自由だ、楽だろ?」

「ああ」

兵士達が雑談を交わしつつ、仕事をこなしていく。


艦内を歩いていた一人の兵士が見慣れない攻撃ヘリを見て足を止める。 彼はエア・クッション型揚陸艇に搭載している装甲戦闘車両部隊に 所属する兵士で、最新のヘリ事情にあまり詳しくなかった。

周りを見渡して、近く整備兵を見つけて機体について尋ねた。

「おい、あれはAH-64Fではないのか?」

「AH-64Gですよ。先週納品されたばかりの新鋭機です」

「おいおい大丈夫なのか?」

彼の反応は当然だ。実戦経験な豊かな部隊ほど、新鋭機に対して 懐疑的だ。戦闘の最中にエンジン不調や機械部品の故障、さらには プログラムエラーなどの危険性は幾多の戦闘での運用を繰り返して 得られたデータを元に改良を繰り返して、ようやく 稼働率が安定するものなのだ。


「エンジンや電装に関してはF型の改良なので問題は有りません。
それに、火器に関しても、このHET70mmロケット弾は三角柱構造で 真新しく見えますが、原型がHE70mmロケット弾と同じなので信頼性は保障済みです」

整備兵が自信満々に答えたのは、彼はこの機体の開発計画に関わっていたからだ。

「なるほど…
 それはそうと、急いで待てが軍隊の基本だが、今回は急ぎ過ぎとは思わないか?」

「そこまでの事情は流石にわからないですよ」

整備兵は両手を挙げてお手上げと言わんばかりに言った。
彼が詳しいのは兵器に限られていた。

皇国軍第28装甲旅団は即応体制に優れた緊急展開用の旅団として編成されていたが、それを差し引きしても86時間という短い時間で、装備品と共にゼイレンに乗船を完了した事を褒めて良いだろう。

旅団司令部の面々は限界に近いスケジュール前倒しの理由を知っていたが、彼のような末端に関しては、『門』の存在、守るべき『レンフォール国』とその基本的風習、そして倒すべき『ゴーリア』の基本情報しか知らされていない。

予定とは違った慌しい状況にもかかわらず、上陸軍だけでなくレンフォールに赴く全員の士気は高かった。 その理由は元来の士気の高さに加えて、窮地に瀕した美女達を助けに行くというシチュエーションに燃えていた男性が多かったのだ。

事前の再編成により9割が独身男性だったのだ。

女性達は非常に生暖かい目で奮起している男達を見ていたが、彼女達もまた夢魔族の男性の特徴を知ると、多くの女性達が男性達と同じように闘志を燃やすようになる。

更に、精神面の奮起に加えて、特別危険手当としてボーナスが振り込まれるのも忘れてはならない。 人間の原動力は欲望から来ている。そう・・・心と金の充実は大きな力となるのだ。

兵士達はもうすぐ訪れる戦いに動き始めていた。




兵士達が戦いの準備に追われている間、上陸戦に参加しない雑貨船の船員達も慌しく動いていた。 むしろ今後の戦略を左右する重要物資を満載している彼らは、上陸軍以上に緊張していた。

揚陸地点に集積場の設営、それぞれの積荷の揚陸の順序、集積場までの移送手段。
机上でどれほど隙のない計画であっても、実際は違う。

揚陸の遅滞による予期もしない停滞。
トラックの故障による遅れ。
渋滞や事故など発生するだろう。

ひとつの遅滞が全体に影響してくる。

事前に全てを予測できない、だからこそ揚陸作業は手間がかかり危険も伴う。

しかし、大量の物資を安全で効率よく、港に資材揚陸できる大型コンテナ船は連れてきていない。
これから向うレーヴェリアには、コンテナターミナルという施設も無く、港の岸壁にはコンテナ積み下ろし用のガントリークレーンも当然ながら存在しない。 揚陸に必要なのは大深水バースや港設備だけではない、 船員やリーチスタッカーを操る乗員なども忘れてはならない。

ゼロからのスタートなのだ。

その点、連れてきた雑貨船は深喫水さえ許す限り、自ら荷物が扱えるようにクレーンを 備えている為に、どのような港でも活躍できるのだった。

雑貨船の積荷は、コンテナターミナル建設用が重点的に詰まれており、 その他は土木作業用の重機の比率が大きい。 例外的な積荷としては、バイオプラントやエネルギープラントなどの 国力強化に不可欠な機材が詰め込まれている。


港の整備、測量船による深喫水船用航路の開拓・・・
これらが行われない限り、大型コンテナ船の派遣は無かった。

つまり、将来的に大型輸送船舶を行き来する状況を想定しているのである。
ある程度の設備工事が完了すれば、 開発物資を運ぶ輸送船団が運航する手筈になっている。

計画通りに進んではいなかったが、必要最低限の準備は終えていたのだ。
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【あとがき】
AH-64など現実世界の兵器の改造版が出てきますが、現実の社会とは一切関係有りません。

また、レインハイム皇国はER戦記に出てきた国家です。
あの世界とレーヴェリア界を繋げていたゲートの起動成功に伴って来れるようになりました。

中世レベルの軍隊に近代軍は…宇宙人が攻めてきたような超絶的な強さになりますが、戦力は1個艦隊+1個装甲旅団程度なので制圧力は高くありません。むしろ、兵站という枷があるので力を奮う場面は限られます。

何もしなくても毎日1200tの物資が必要なので補給がネックになりますし、コンテナターミナルやガントリークレーンも存在しないのも補給上の弱点ですね(笑)


あと、バレバレだと思うけど、ゲートのインスピレーション元は『映画版ス○ーゲイト』ですw
学生時、あのゲートに憧れというか、強い感銘を受けたなぁ…
行き先は砂漠というのが泣けてくるけど。

あの砂漠の惑星って…特殊鉱石が取れたんだっけ?


それでは今後とも宜しくお願いします!
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(2008年06月19日)




強襲揚陸艦 ゼイレンの能力

【建造元】
ルフィル海軍工廠

【満載排水量】
61302t

【全長・全幅・吃水】
310m、34m、8.2m

【機関】
佐伯重工製統合電力システム(IPS)電気タービン二機二軸 120,000shp

【最大速度・巡航速度・航続距離】
34 kt、24kt、巡航で1万6千海里

【乗員】
675名, 兵員2,400名

【兵装】
対空ミサイル8連装発射機 2基
ローリング・エアフレーム・ミサイル発射機 2基
20mmファランクスCIWS 3基
短パルスレーザー 6基

【艦載機】
ヘリコプター54機、垂直離着陸攻撃機 14機

【艦載艇】
エア・クッション型揚陸艇 4艇
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