ワイルド・ワイド・ウェスト 16
『まだ・・・起きたくない』
「んはあっ、んんっ、んっ、んっ」
前も後ろも、ドロドロのザーメンの渦。
次々と押し込まれながら、その快感に痺れ、溺れ、蕩けつくす。
チャラリと鎖が鳴り、鎖に縛られた両手が何かを否定しようとする。
それを望んだのは、彼女自身の願望。
『まだ・・・起きたくない』
恍惚と蕩けきった顔、
その美しい顔が、汚され、浴びせられ、
滴りと体液にまみれても、なお淫靡に美しい。
次々とまたがり、あるいは広げ、受け入れる男、男、男。
気持ちいいことに、溺れてしまいたい。
半覚醒のまま、エカテリナはエネルギーに浸る快楽に溺れ、
不安と現実の恐れから逃げていた。
男性の精液からエネルギーを吸い取る力は、
麻薬のような快楽に彼女を引き込み、半覚醒のよどみに深く溺れさせていた。
『このまま・・・このまま・・・溺れていたい・・・』
地下のならず者たち相手の酒場、
その専属の肉奴隷、
セックスだけの排泄道具、
ゾクゾクする背徳の快感が、口から、アナルから、ヴァギナから、
突き入れられるたびに、沸きあがってくる。
「んはあんっ、んぅっ、んっんうっ!、んんっ!、んうううっ!!」
両手を縛られたり、つるされたり、足首とくくられたり、
様々なポーズで、弄ばれ、嬲られ、輪姦され続けていく。
でも、それが、『とても気持ちいい』
男性のオモチャになって、何もかも忘れ去った人形になって、
肉奴隷で、すごして、いた、ら・・・・・・・・。
うっとりと、蒼い目がペニスの生臭い匂いに浸り、
前も後ろもドロドロに貫かれる快楽に溺れる。
鎖で縛らせたのも、肉奴隷の堕落した声を上げたのも、
彼女の奥底の願望。
アヘンの夢から覚めたくないという、欲望の声。
だが、身体は、残酷に回復していた。
理性は、もうフル稼働をする用意ができていた。
『はう・・・だめ・・・かぁ・・・』
喘ぎながら、男の上で腰を振り、深くリズムを受け止めながら、
快楽のうめきが、子宮を貫き、中に射精を繰り返しながら、
エカテリナは、自分の覚醒を止められなくなっていく。
自分が何者であるか、
自分がどこから来て、どこへ行こうとしているのか、
深いよどみの底から、ゆっくりと全てが浮上してくる。
左右の男たちの男根を、掴み、しごき、しゃぶり、
下から突き上げる肉柱を、受け入れながら、
自分が何をするべきか、性欲にただ溺れ続ける肉奴隷の目から、
光を取り戻したエカテリナの目で見始めている。
『ここ、使える・・・かな?』
丸テーブルの上に、ぐったりと身を投げ出しながら、
白い肌が汚されきって、滴りをこぼしながら、
この地下の酒場のありようと、その利用価値まで冷徹に見ている。
「あっ、ごめんなさい、ぼーっとしてしまって・・・」
のしかかる男に、うっとりと笑いかけながら、
エカテリナは、再び身体を起こした。
あぐらをかいた男の上に座り、
そりかえったペニスが、中に入ってくるのを、
喘ぎながら感じ取る。
腰を下ろし、腰をくねらせ、
彼女を串刺しに貫き、犯そうとする男を、
逆に捕らえ、弄ぶ。
くねり動く膣の中で、亀頭がころがされ、
嬲られ、搾り上げられて、うめきながら突き上げる。
「んはっ、はっ、ああっ、きてますっ、すごくっ、いいですうっ!」
絡み合う腰が、次第に深く密着し、高ぶりが深く奥まで突きぬける。
「ううおっ!」
「あはあああああっ!!」
ドビュウッ、ドビュウッ、ドビュウッ、
煮えたぎった精液が、中深く噴き上げ、
突き上げ、射精し、胎内に撃ち込み続ける。
「すごく、いい、ああ、いい・・・」
ガクガクと腰を揺らしながら、男を搾り取る彼女に、
相手はなすがままに、されていく。
「なんだか、上に人がいっぱいいるみたい・・・すごくいやらしい感じがしちゃう」
「おお、俺も気持ちよかったぜい。ここの上は食料品屋のメンフィスの上だからな、
おまえの耳には、人の足音が聞こえるんだろ。」
「くへへ、上の店の、壁の向こうでするってのも、燃えるじゃねえか。」
「恥辱プレイ、いいなあそれぇ」
助平な想像に、再び勃起したものをしゃぶってやりながら、
今の情報を記憶して、エカテリナは、また性行為に没頭していった。
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「E・グリーンベルト構想だと?」
微妙に視線の歪んだ目が、ぎろりと報告者をめねつけた。
超がつく、高級品と調度ばかりの部屋は、
完璧な静けさと調和をはかりながら、
不思議なほどの暗さとカサついた不気味さをはらんでいた。
それは、部屋の主の持つ雰囲気そのものだ。
足元まで埋まるじゅうたんに、
報告者の黒い革靴がびくりと震えた。
「今頃、なんだというのだそれは・・・。」
いぶかしげに、
そして、かんにさわる何かに不気味な苛立ちを覚えながら、
その男は薄い唇をひん曲げる。
高い鼻に、豊かな整えられた金髪、高貴な顔立ちを持ちながら、
破壊と、死と、無残さだけが、
隠しても隠しても、死体から立ち上る腐臭のように、
その周辺にたちこめる。
“影(シャドウ)”と呼ばれ、
リヴァール連合の暗部に巣食い、あやつるとかすかに噂される、
妖怪のような存在。
その名を公然と口に出したものは、
必ず、考えられる限りの無残なしかばねをさらし、
リヴァールの種族差別政策に反対する者は、
その足音を聞くだけで、行方不明になる。
何度も暗殺を確認されながら、
今なおこうして、いずことも知れぬ居城の一角で、
不気味な時を過ごしている。
まさに妖怪だった。
「何度も廃案になったそれを、どこぞのまぬけがまた議会に出したのか。」
リヴァール南西部
大西部領域と呼ばれ、ポポラ、マスディニア、サウスウェスト、クラーク、
4つの自治区にまたがる広大な地域で、真ん中にポロピ砂漠という、
巨大で無情そのものの荒野が広がる。
そこの緑化構想は、過去に何度も挫折し、
今ではそれを提案することすら不可能に近い。
「い、いえ、それが・・・」
報告者は、汗にまみれながら、
部屋の主の機嫌が激変しないことを、全身全霊で神に祈った。
グワシャアアッ
分厚い黒檀のテーブルが、
振り下ろされた拳の一撃で真っ二つになった。
飛び散った破片が、いくつか報告者に突き刺さったが、
彼は、自分がテーブルでなかったことに、
心から感謝していた。
「何事だ、それは?!」
すでにその議案は、連合議会の承認を得てしまったというのだった。
ありえる事ではなかった。
通常この手の議案は、最低でも議会下部の委員会提出から議会まで半年、
議会通過には3年以上かかるのが、常識以前の話。
それが、委員会を通過し、
調査計画とはいえ、議会までも含め3週間で承認されるなど、
いかなるマジックでもありえない。
そんな方法があるなら“影”の方が知りたい。
議会の両院に、巨大な超党派議員集団が出来、
それが一気に議会を通過させたというのだから、
驚きを通り越して、不気味さすら感じてしまう。
とりあえずこの件だけとはいえ、右派も左派も、中道も、
敵対関係の議員までが、協力し合っているという事実は、
奇跡の部類に属した。
戦争を繰り返している世界の大国同士が、
いきなり声をそろえて『世界議会の平和憲法を承認しましょう』、
と言い出すようなものだ。
しかも、この超党派の行動は、
議会の分裂を利用し尽くしている“影”にとっては、極めて都合が悪かった。
“影”の影響力が一気に低下する可能性が高い。
そして、その苛立ちは、報告の計画書を見て、頂点に達した。
すでに、かなり精密な計画図案が出来ており、
E・グリーンベルトの位置まで、決まっていた。
不運な報告者の足が、宙に浮いた。
「ぐ、ぐええええええええ」
悲鳴は即座に止まった。
強力な右手で、のどぶえを握りつぶされ、力なく足が揺れた。
「どこのどいつだ、こんな計画をつくりおったのは?!」
投げ捨てた死骸の頭蓋骨を踏み潰しながら、
“影”はずかずかと歩き出した。
計画は最初の基点を「エコス」というポロピ砂漠の隅の町から、
ベンドンシティへのラインを重点的に調査するとされていた。
このライン上に、“影”が狼狽するほど、不都合な場所があったのである。
それゆえ、あまりに堂々とE・グリーンベルトと書かれた、
計画書の題名の意味にまでは、思考がおよばなかった。
この『E』ゆえに、
党派や主張を超えて議員や、その後援の有力者たちが結束し、
また同じ男として、心情的に協力を約束した議員が続出したのである。
(最初期の『E・グリーンベルト計画』の賛同議員は、全て男性であった。)
皮肉なことだが、それゆえに、計画の本当の理由は、
『男同士の盟約』として、いかなる国家機密よりも厳重に守られ、隠された。
全ての始まりは、一人の女性が、飛行機事故で行方不明になったニュースだった。
それは、人種差別政策の下『たかがエルフ』の娼婦に過ぎない彼女と、
関係を持った全ての男性に、とてつもない衝撃を与えた。
王家に連なるある貴族は『闇に閉ざされたような思いだ』と心から嘆き、
中道派の有力議員は『足元が崩れていく』と呆然としたという。
タカ派で知られた右派のある議員など、
巨大なひげ面をぐしゃぐしゃにして、その場で泣き崩れたほどだった。
彼らにとって、『たかがエルフ』に過ぎないはずの彼女が、
どれほど大切な女性であったのか、思い知らされた。
それゆえに、生存の情報が確認され、
救出困難と聞いた彼らの奮起はすさまじかった。
彼らはみな、この国の支配階級の者ばかりである。
人種差別政策に反する、彼女に対する感情を、言葉に出す事はできない。
出せば、この国にいることができない。
ゆえにこそ、男たちは己の心を押し隠し、
全てを『女性を救い出すという誇りとプライド』に賭けて、
輝くばかりに燃え上がったのである。
男の誇りとプライドは、時として、戦術核よりも強力な破壊力を持つ。
『E・グリーンベルト計画』、
盟約者たちの呼ぶ本当の名前『エカテリナ嬢救出計画』は、
こうしてばく進しはじめたのだった。
ちなみに、この一大奮起には、
エカテリナの最初のパトロンであり、
リヴァール最大の鉱山王ガッハ・バルボアも、
エカテリナの2番目のパトロンとなり、
リヴァール3枚のジョーカーと呼ばれる3人、
王家の影の実力者フェリペ公爵夫人、
リヴァール軍情報局長リンゼ・ワグナリウス、
巨大コングロマリット総帥サーニャ・エグゼリオンも、
全く関与していない。
むしろ全員あっけに取られて見ていたほどだ。
だが、これで彼らに先を越されてしまっては、
自分たちの面目もプライドも、丸つぶれになってしまう。
だからと言って、この計画を邪魔するほど、
狭量な人間は一人もいない。
「なんとしても、我らが先に救出せねばならぬぞえ。」
これほどの興奮と緊張は、フェリペ公爵夫人の人生の中でも、めったに無かった。
それは、半生を陰謀と遊びの頂点の中で過ごしてきた彼女にとって、
最高に面白いプレイであるといえた。
それは他の3人も同じだった。
メイド長のダークエルフが首をかしげた。
「僭越ですが、彼らはこのコースをどうやって選び出したのでしょうか?。
私たちやガッハ様の情報網と、
リンゼ様の国家地理院の機密地形データなどから、
ようやく照合した移動確率データにほとんど合致しています。」
ふっと、フェリペが力なく笑った。
「衆愚の恐ろしさは、まだそなたは知るまい。
情報とはデータだけではないのだ。
匂い、感覚、直感、それらの形にならぬ情報こそが、
恐ろしいほど真実に迫ることがあるのじゃ。」
『E』計画の盟約者たちは、
ポロピ砂漠に詳しい者を、つてを使い、縁故を引いて、
寄せうる限りの情報を見せて意見を聞いた。
呼び寄せられた者の最年長の老人が、
その中から地図に一本の線をひいたのが、グリーンベルト計画の基礎になったという。
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真っ白い部屋の中に、
うずくまる小さな影があった。
丸まった細身の裸体、
真っ白い、ベルベットを思わす肌。
背筋に浮き上がるかすかな陰影。
白金の髪が、天使のそれのように輝く。
いたいたしげな細い首筋が、ひくりと動く。
細くしなやかで、骨の無いかのような柔らかそうな腕が、
そっと、まさぐるように動く。
その手になでられ、愛撫されたら、
どれほどの快楽を覚えるだろう、そう思えるような美しい指先だった。
形の良い頭がゆっくりと持ち上げられる。
鎖骨のくぼみが、なまめかしい影を刻み、
柔らかな膨らみが、楚々と、しかし艶やかに女性の美を物語る。
広い、知性を描く額、
柔らかく触れたくなるような頬、
絶妙の曲線を描く鼻筋から、バラのつぼみの唇、
そして、長いまつげがふるえた。
ぱちりと開いた瞳が、青く、どこまでも深く輝き、
見る者全ての魂を、飲み込む輝きをちりばめる。
天使も悪魔も、その中に潜んでいるような、謎めいた輝き、
それはあらゆる魂をひきつけるきらめきだった。
『あなたは、だあれ?』
金髪の少女は、手を伸ばした。
『あなたは、だあれ?』
白金の髪の少女が、あどけなく神々しいまでの笑みを浮かべた。
二人は、合わせ鏡のように、手を伸ばしあった。
顔かたちは違えど、その目が秘めた深い深い輝きは全く同じ。
真っ白い光が、触れ合った指先からほとばしった。
「ん・・んんっ、あふっ、あ・・はぁん、」
声が、暗い部屋に響いた。
男の前立腺が嬲られるような、甘い声。
夢から、ゆっくりと浮き上がっていく意識に、
肉体の信号が、無数の光点となって、身体の中を這い登ってくる。
振動が、感覚が、圧力が、
次第に、熱く、大きく、激しく刻み付けられていく。
太腿を大きく割り広げ、
柔らかな陰唇が、引き裂かれそうに広がり、
膣の粘膜をモリモリと力強く開いていく。
熱く、硬く、凶暴な暴力、
それが身体の芯を突き、突進し、貫いていく。
「うあっ、あっ、ああっ、はあんっ!」
身体の奥から、歓喜の声がわき、
肉の喜びが、満たされる感覚にいとおしげに絡み付く。
自分の身体に、誰よりもなじんだもの、
それが、子宮を小突き、己の居場所を作ろうと奮戦する。
自分に、胎内に、その人の場所がある。
「うあっ、あっ、う、ウェモンっ!」
声を上げた瞬間、暴力の塊は歓喜に震えた。
脈動が一気にほとばしった。
ドビュルルルルルウウウウッ
バラのつぼみのような唇が、
ほとばしる歓喜の衝撃に、大きく開いた。
目を開くと、ごついが愛嬌のある顔が、
日に焼けて笑っていた。
とてもとても、長く会えなかったような顔、
嬉しくて、嬉しくて、青い目が美しい雫であふれる。
「ウェモンっ!」
細く白い手が、ぎゅっと、巨大な巌のような身体を抱きしめる。
すさまじい筋肉の腕が、そっとそっと、やわらかい宝物を、
くるみこむように抱く。
「んっ、あああんっ、」
思わずエカテリナが身もだえする。
胎内を、濃厚な体液が蠢く。
なじみ、いとおしんで来た彼の分身が、
未だに、轟然と屹立し、彼女の胎内を占領していた。
「ずるいよお、寝てる間に犯すなんてえ。」
甘えた声で、抗議をするエカテリナ、
こんな声をあげて甘える相手は、世界に一人だけ。
耳が震えそうな声と、しなだれかかるベルベットの肉体、
吸い込まれそうな青い目、
それだけでも、どんな男もふにゃふにゃになるだろうが、
それ以上の凶悪な反撃が始まる。
「うぐっ、お、おいっ、あっ、だめ、おっ、おっ、」
情けない声をあげて、脂汗が流れる。
陰茎をしゃぶられるような、
亀頭を締め上げるような、無数の蠢き。
長い腿から、陰唇のふくらみから、淫肉全て、
そして胸の膨らみ、手の蠢き、足先の淫技まで、
総動員されて、快楽の悪魔が無数に身体中を群がるような快楽。
天が落ちてくるような、めくるめく悦楽は、
ほとんど全ての男を、破滅に導く力だった。
青筋を立てて、いきり立った分身が、
エカテリナを突き上げ、抱え上げ、
上下に激しく突き落としながら、深く、凶悪に刺し貫く。
「んはああっ、ああっ、うぃえもんんっ、うぇもっ、んっあっああっ!」
垂直に落ちる、直撃が身体を引き裂く、
しがみつき、甘く狂った声を上げ、
愛する男に、身体中でしがみついた。
「うぇもおおおおおおおおおおおおんっ!!」
のけぞる肌が、鮮やかに興奮で染まった。
ウェモンの精が、たぎりが、暴風のように胎内を荒れ狂った。
寝室が、ようやく静かになった。
離れ離れの時を埋めるかのように、激しく求め合い、
絡み合い、注ぎ込まれ、何度絶頂を迎えたか、おぼえていない。
ウェモンの広い胸板の上で、その身体はとても小さく見える。
彼の隆々たる逸物は、いまだ萎えぬまま、エカテリナの中にいる。
何もかもが一体となって、全ての言葉は必要が無かった。
ただ、それでも言葉は、ウェモンの口からこぼれる。
「できたのか?」
責めるわけでもなく、何気ないいたわりの声。
だから、エカテリナはもうしわけないような、悲しい青い目をして、
コクリとうなづく。
「そうか、いい子だよ。」
そっと腰を動かし、子宮をなぞるように、胎内をなでるように、亀頭が動く。
思わずその動きに、目を閉じ、蠢きに身を任せながら、
唇が謝罪の言葉をもらそうとする。
ウェモンは起き上がりながら、その唇を封じた。
『何も、いわなくていい。お前さえいれば、それでいい。』
言葉はもう、聞こえなくなった。
W・W・Wの大地には、無数の風穴や、地下水路が縦横に走っていた。
それを知り尽くしている砂エルフたちは、
特殊な高周波の口笛で、極めて遠い一族とも、
緊密な連絡を取り合っている。
その一つの小さな隙間が、
エカテリナが囚われていた地下酒場の一室に、
通気口代わりに使われていた。
エカテリナが試しに、そこから連絡を入れたことで、
ウェモンたちはようやくエカテリナの居場所を知ったのだった。
不思議なことに、
エカテリナを返すように言われた地下酒場の主は、
ひどく穏やかな顔を向けた。
「そうか、俺もまたふるさとに帰ってみる。
エカテリナのこと、たのむな。」
手の中の小鳥を放った主は、吹っ切れた顔をしていた。
自分もまた、囚われの鳥かごから、自由を取り戻したのだった。
甘いあえぎが、闇の中に続き、
隣の酒場だった大部屋では、ジジャや女たちが、
片付けと掃除、そしてこれからどう使うかをにぎやかに話し合いながら、
時折もれ聞こえる甘い声に、くすくすと笑っていた。
ひと時の、安らぎと平和は、
嵐の前の静けさであるとは、だれもまだ気付かないままに。
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