■ EXIT
復讐の女神『第一章・金と人と』


「エカテリナ、いい?」

サーニャが、広い額にかすかに汗を光らせ、
いつもとは違う緊張、それも遊びに夢中の子供のようにぞくぞくしながら、潤んだ目を向けた。

「はい、いつでも大丈夫です。」

ピンクのスーツ姿に、度の無い伊達の眼鏡をかけ、
細い靴ですらりとした秘書スタイル。
それがまた、清冽な色気を発し、男性の目を引きずりよせる。

エグゼリオンコングロマリットの中枢部『中央ルーム』は、全情報が集中する最高位のセキュリティルームであり、コングロマリット最高幹部とその側近のみが入ることができる。

もちろん、会長はフリーパスだが、彼女の秘書といえど、きちんと申請が無ければ入ることはできない。
まして、エカテリナが4級市民であることがばれれば、サーニャといえど、大問題になりかねない。

社員が次々と礼をする、その中を憶すことなく堂々と歩むサーニャ。
そして、それにしずしずとついていくエカテリナ。

礼をされているのはサーニャであり、秘書としてついてくるエカテリナは何もする必要はない。

「サーニャ様」
背の高い痩せた男が、甲高い声で呼びとめる。
灰色の目に、ほんの少しカールのかかった髪、そして洒落気のあるデザインのスーツ。

『ちっ、いやなやつが』
サーニャは心の中で舌打ちした。

太い縁の眼鏡のなか、かなり鋭い眼光が光る。
エグゼリオン証券の社長であり、かなりの切れ者として名高い、ブルーノ・マルチネスだった。
サーニャの乱暴な取引で、たびたび後始末をさせられるので、彼女が中枢に入ることを、かなり嫌っている。

「なあに、ブルーノ?」
虫も殺さぬ顔をして、サーニャは優しく微笑む。

「会長職としてのお立場、お忘れなきようお願い申し上げる所存です。」

会長が中央ルームに入るのは、たいてい無茶な取引(天災)を起こすことになる。
そう言う迷惑をたびたび引き起こされるのは、証券会社トップとしては、黙認できない。

「忘れてないからこそ、我々のコングロマリットは成長したのではなくて?」
鼻で笑うように、言うサーニャに、ブルーノの眉がぴくりと動く。

「成長した今日の、責任を十分に感じていただきたいと申し上げています。」
慇懃無礼というか、嫌味たらたらというか、サーニャの虫唾が走るような言葉だ。

「それに、会長の個人秘書とは言え、勝手にどこの馬の骨とも知れぬよそ者を、遊び半分で引っ張りこまれては困りますな。」

エカテリナに目を移し、彼女のおもちゃで社内を汚さないで欲しいと、さらに嫌味をてんこ盛り。
彼女のレズ趣味へのあてこすりも含まれていて、サーニャは表情をかすかに震わせる。

だが、エカテリナはすいと前にでた。

「エグゼリオン証券社長、ブルーノ・マルチネスですね。」

エカテリナはファイルをめくりながら、確認するように言った。

名前を敬称無しで呼ばれ、むっと目を怒らせるブルーノ。
サーニャは心中どきっとする。

「先日提出されました第3期報告書の、利益勾配に不審な点が2点ほど。
 それとグラムリンクシティ支店の営業成績について、7月18日、8月3日、9月6日に予測より低い値が出ています。
 その日に行われた、あなたの個人資産と思われる投機ですが、それに合わせた空売りが、支店の独断で行われた節が見受けられます。
 これについての説明を、いただきたいのですが?」

ブルーノの顔が、見るも無残に青ざめる。これでは、説明の必要すらあるまい。
要するに、ブルーノが会社の資産を勝手に自己資産運用に利用したということだ。ただ、彼はそれを十分につくろえる成績をあげてはいる。

「私はサーニャ様の個人秘書ですが、必要と思われているために会長の御側にいます。何か問題でも?」

細い眼鏡をギラッと光らせ、高飛車な口調は背筋が震えそうになる。
もちろん、彼に一言も出るわけがない。

「くくくく・・・・ブルーノ、多少のことでとやかくは言いませんが、あなたのことは買っているのですよ、失望させないでね。」

清濁併せのむサーニャは、多少の小遣い稼ぎにとやかく言うつもりはない。
今の言葉通り、ブルーノの才覚と実績は買っているのである。その鼻っ柱をへし折るぐらいは、余興のうち。

恐れおののく社員たちを尻目に、会長と敏腕秘書はゆうゆうと中央ルームに入った。




「くっ・・・・くくくく、きゃははははははははは、さ、最高よエカテリナ!。」

転げまわらんばかりにして笑うサーニャは、笑いすぎた涙をふきながら、言った。

「でも、よくあれの個人資産についてまで、知ってたわねえ?。」

眼鏡をはずし、ふうっと息をつくエカテリナ。
もちろん、あの口調はお芝居。

「お客様に、さんざん嘆かれまして・・・」

と、名前はごまかして困った顔をした。
ははあん、とサーニャは笑いを浮かべる。

エカテリナの客として来た支店長あたりが、ブルーノのしりぬぐいをさせられているのだろう。
ばれれば、トカゲのしっぽ切りで支店長の首が飛ぶだけだが、それを拒否できるわけもなく、さぞストレスはすごかろう。




暗い室内に、サーニャの声が響いた。
「システム、オープン!」

かすかな電子音と、いくつものLEDが点滅し、空間に無数の線と点滅が広がる。

立体映像表示システムによる、コングロマリットとその関連するすべてのシステム、経済指標、物資動向、価格の変動などを、ビジュアルに表示し、瞬時に把握可能な形式に組み上げてある。

(もっとも、ERの最上級経済システムになると、視神経や感覚器へのダイレクトリンク表示なので、こんな大仰な施設にはならないが。)

情報の波の中を、泳ぐように歩きながら、サーニャが、今日の獲物を探して目を光らせる。

エカテリナが、手を上に向けて開く。

「口座ナンバー、861−453−王室保障−フェリペ−債権9584213」

手の上に、ずっしりとした重そうな金色の輝きが現れる。
フェリペの保証金額であり、王室保障の金色は、責任額無限大である事を示す。



先日、エカテリナが見せたある品物に、フェリペは想像以上の値をつけて買い取った。



「そなた、なぜ古代絹を・・・それもこれは?!」

美術品やデザインの鑑定では、フェリペに逆らえる者はまずいない。
彼女の鑑定眼はそれほど高い。

エカテリナが見せた古代絹は、フェリペも絶句するほどの最高級品。
古代エルフ王朝の織物だった。
エカテリナが、名も知れぬ古物商から見つけ出したと聞いて二度絶句する。

だが、フェリペがつけた金額は、エカテリナも、サーニャやリンゼですらひっくり返りそうな額だった。


「なに、驚くには値せぬ。グレン伯爵夫人や、ガーベンダ王子婦人、ハーウレイ王妃閣下などなら倍でも出しかねぬ。」

そう言う人間に贈り物として使うなら、たいていの無理は喜んで聞いてしまうだろう。

「株式市場、ダイレクト投入表示。金融と化学。」

値動きの不安定な株式に、サーニャが指をさすと、エカテリナがそこへ投げ込むように動いた。

みるみる膨らんでくる金額。

サーニャのゴスロリが似合う年齢不相応な顔を、にんまりと笑わせて自分の資金を投入した。

恐ろしく乱暴なやり方に見えるが、ここでの取引は最上級顧客用の莫大な金額を扱うため、ケタが7個以下はありえない。
そのお金をびた一文無駄なく有効利用するよう、瞬時に最良の投資方法を自動選択し、利益を取れるだけ取り尽くし、吸い上げるのである。


不動産の値動きを察知し、運輸の不安定を狙い、貿易の危機をあおり、奔放自在に投資を繰り返すこと1時間。
サーニャは遊びに飽きたように、投資を止めた。

大荒れに荒れだした市場で、大規模な変動が始まり、その連鎖が次々とドミノ倒しのように、二人の投入した資産を増大化するのだ。
もっとも、この嵐に巻き込まれた市場関係者は大変で、変動予測能力が人知を超える彼女とは違い、必死にか細い予測と自分の運を信じて、ごく一部の者が大金を手に入れ、大半は財産を減らしたり失ったりする事になる。

一週間後、サーニャの莫大な資産は3割以上増え、エカテリナの資産は軽く30倍を超える事になるが、それは後の話。
その金こそが、彼女の戦いのための武器となるのである。


「さて、エカテリナ。」

「はい、お茶をいれましょうね。」


サーニャの喉を潤すお茶は、エカテリナがいれたものが一番のお気に入り。
ただ、今日のお茶はいつもとちょっと違った趣向があった。














「くっ・・・う・・・んっ、んんっ・・・」

暗い部屋の中で、かすかな、よほど注意しないと聞こえないほどの声がする。

冷たいステンレスのシンクに押し付けられ、紺色のメイド服が激しく揺れる。
暗がりにも鮮やかな、まとめ上げた金髪と白いヘアバンドが激しく上下し、はだけられた胸元からこぼれおちた輝くような乳房が、上下に強く揺さぶられる。

密着した男の腰が強く、強く、激しい動きで突きあげ、鮮やかに白いまくりあげられた尻が、壊れんばかりの衝撃に震え続ける。

肉の中に突き進む男の欲望が、激しくいきり立ち、柔軟な肉襞を噛み、引きずり、擦りあげ、小柄な肉体ごと突きあげる。

「うっ!」

のけぞる白い顔。可憐な美貌にわずかにソバカスが散っているが、見る者が見ればそれが化粧であることが分かりそうに汗で浮きかけていた。

青い澄んだ瞳に、ブラウンのカラーコンタクトを入れ、律動の衝撃に目を潤ませて視線が泳ぐ。

喘ぐピンクの唇には、ハンカチが噛ませられ、声を立てぬようにさせられていた。

白いエプロンが激しくひらつき、深く押し込まれたまま、音を立てぬよう腰だけが彼女を突き殺さんばかりに、細い白い脚を広げ、突きあげ、膣底をえぐり続ける。
その欲求は、獣並みであり、勃起したピンクの乳首が何度も赤くなるほどつままれ、体がほとんど浮きかけてつま先立ちだった。

だが、そのさなかですら、つま先の力を加減し、あそこの締めつけがしゃぶり尽くすような蠢きとなって、幾重にも重なる快感の津波がカリ首をなで上げた。
背筋を羽扇がなぞりあげるような快感に、男が目をギュッとつぶる。
かすかにうめき、エカテリナの中に目いっぱいめり込ませたまま、どっと欲求全てをほとばしらせた。

「んう・・・・・・・!!」

ドビュッドビュッドビュッドビュッドビュッドビュッ

激しい男の欲求そのままに、穢れた白い体液が子宮口を汚し、押し寄せ、中に注ぎ込まれる。

ぼたぼたと、入りきれぬそれが床に染みを作った。

「ぬ・・・むう・・・・なかなか・・・・いいじゃないか・・・・」

傲岸な顔がかすかに緩み、どケチ極まりない男としては最上級の賛辞を、つい漏らしてしまう。

もし、この声を聞いた部下がいたら、本気で耳を疑い、3人の妾は嫉妬で狂うだろう。 どんな状況でも、ベッドの中でも、一度たりとも人を褒めたことが無いはずの男なのだ。

潤んだ優しいまなざしに、男が顔が赤くなるのを感じ、あそこがまたいきり立ってきた。 メイド服の内側をまさぐり、汗で濡れるすべらかな肌に、溺れた。
下半身に密着する柔らかいふくらみに、己の醜い欲望を、狂おしく突き立てる。

手の中の可愛らしいエルフの血の濃い女性、言われるままにハンカチを咥え、必死に声を押さえて男を受け入れる可憐な姿に、燃え立つ興奮が抑えきれない。
身悶える体の震え、立ち上るえも言えぬ香り、何より濡れたような瞳の輝きが彼の心すら突き抜く。

それまで女をただの性欲処理機としか思ったことのない男が、しかもリヴァールという差別国家で、狂おしく給湯室の暗闇に獣の欲望をたぎらせさらに激しくシンクをきしませた。

のけぞる少女を抱きしめ、己のありったけの快楽を吐き出す。
女の秘所に、肉襞の奥に、締めつけられ、吐き出し、突きあげ、ほとばしり、己の全てを。

「うっく・・・・・・・・っ!!」
「ぐ・う・・・う・・・・う!!」


がくっ、がくっ、と少女が痙攣する。
男が硬直し、何度ものけぞる。


少女の口元から、白いハンカチが、紅を帯びてはらりと落ちた。


男が給湯室を出た後、シンクに犯されたそのままの姿で、すがりついて喘ぐエカテリナ。

「あの『ごうつくばり』のグレザが、えらくご執心だったな。」

ぎくりとする彼女に、後ろから若手のIT企業トップのフレーザーマンが声をかけた。短い刈り上げた頭に、いやらしげな笑いを浮かべた顔。まだ40台半ばだが、新興企業体のトップらしく、鼻息が荒い。
ちなみに、『ごうつくばり』のグレザは、大型土木工業機械の製造会社のトップだ。

「ほお、可愛らしいだけじゃねえな。だが、オレはあれと穴兄弟なんざごめんだ。おい雌、そこにそのまま土下座しろ。」


ここはリヴァール連合首都、グランド・ビッグ・パレスと呼ばれる巨大ビルの一角。

そして、ここでエルフを始め、異種族の血を引く者は、まず人間扱いされない。 他人の所有物であっても、車や宝石に礼儀を払う人間がいないのと同じで、何の人格も認められることは無い。

エカテリナは、『そのまま』と言う言葉に従い、下着を落とし乱れたメイド服のまま、ゆっくりと土下座した。

「お見苦しいところをお見せしたこと、心からお詫び申し上げます。」

この言葉には普通、どうしても屈辱や恨みを帯びる。いや、そうさせるために土下座をさせる。 相手の屈辱や恨みが、むしろ言わせた方には快感であり、不穏な言葉に対する『正当な怒り』で相手を暴行する事も許される。

不思議だが、エカテリナの言葉にはそれが無い。

作法、すなわち見事な形の美が、相手のわずかな罪悪感を威圧する。美しいむき出しの尻肉が、ぞくぞくするような快感を刺激してくる。

「う、うむ、ならいい。」

思わず許しの言葉を発して、フレーザーマンはしまったと思う。
暴力性癖のあるこの男は、このメイドをボコボコにして、ストレス発散をしようと思っていたのに、衝動が霧散してしまった。

その代り分身が異様に興奮している。

「同じ穴はごめんだが、お前の口で俺にも奉仕しろ。」

ゆっくりと上げた顔の眩しさに、痛みにも似た衝撃が走った。

『な、なんだこの雌エルフ・・・・、』

ぎくりとした男に、立つのではなく、にじり寄る形で美しい腿をひらめかせ、相手のわずかな動揺を刺激せず、優雅な妖しいまでの美しさで移動した。

「私でよろしければ、なんなりと。」

ひょろりとしたズボンのチャックを、そっと緩やかに動かす。いや、いつの間に股間に手を当てられていたのか、優雅な動作は警戒心すら刺激しなかったのだ。

そっと白い指が当てられた瞬間から、フレーザーマンの意識が飛んだ。

指の優しい動きに、まるで宝物を大事に扱われているかのような、最高級娼婦ですら味わったことのない美と感覚に、魂が抜け出てしまっていた。


熱い吐息に、いきり立ったものははちきれそうになり、
舌のこそばゆいほどの蠢きとリズムに、衝動が一気に突き上げ、
なで上げられる指の、意味不明な快感のラインが炸裂する!。

ドビュグッ、ドビュグッ、ドビュグッ、ドビュグッ、

小さな舌を伸ばしたメイドの、可愛らしいソバカスに、大きなブラウンの瞳に、きれいなまとめられた金髪に、けがれたアメーバーが襲いかかるように、煮えたぎった濁った体液が、爆発するようにほとばしった。

気がつけば、メイドの美しい顔中に、己の体液を思いっきりぶちまけていた。

だが、その表情の色情、喘ぐ顔の萌え立つような色香、滴る粘っこい体液が宝石の上を伝うかのようにぼとぼとと落ちていく。

粘液の間から覗く、潤んだ瞳の輝きが、もはや矜持も理性もブッ飛ばしていた。


冷たい床の上に押し倒したメイド服が、激しく乱れた。

若い分、凶暴な衝動に狂い、いきなりのしかかり、強姦する。

狂い猛る衝動は、血管を浮き立たせ、赤黒く勃起し、エカテリナの秘肉をいきなり貫いた。

「んうっ・・・うっ、んっ、ううっ、くっ、ううっ、」

必死に声を立てまいとするエカテリナ。
無残に両足を広げられ、ただ獣と化したフレーザーマンに、めちゃくちゃに突き上げられる。

グレザに散々犯された後で、濡れそぼっているとはいえ、熱く勃起したペニスは強烈に内部を食い荒らす。

そして、乱されたメイド服とエプロンが、頼りなくひらひらと動くのが、さらに淫靡さをあおった。

「うぐおおおおおおっ!!」

「ひ・・・・・・・・っ!!」

白い歯が血が出そうなほど食いしばられ、エカテリナの奥にめり込んだペニスは、弾け散った。

ドビュルルルルウウウウウウウウウウッ

煮え立つ精液は、どっと膣底を焼き、子宮に突っ込んでいく。 のけぞるエカテリナの細腰を抱え、のけぞりながらねじり込む、ねじり込みながら射精を繰り返す。

「うがっ、がっ、うがっ、がっ、があっ、!」

もはや恰好をつけたIT企業トップはいない。そこにいるのは、獣そのもの。

涙をこらえながら、獣欲の責めに耐えるエカテリナ。
髪を飾る白いヘアバンドが、頼りなく揺れ、激しい責めに今にも外れ落ちそうだった。

暗くぬれた肉を喰らい、艶めかしい肉襞の蠕動にからめとられ、凶暴な欲望の蛇は白い毒液を子宮にはきかける。

「うぐ・・・・・っ!!」

「ぐおおおおおおおおっ!!」

ドビュグッ、ドビュグッ、ドビュグッ、ドビュグッ、

鈍い音と、焼けつくような粘液が、子宮口にねじ込まれ、凄まじい勢いで放出される。 涙を流しながら、己の歓喜する肉体を恥じらい、受け入れてわななくエカテリナ。

きらめく涙が、美しい顔を流れ落ちていく。

下腹部をあふれさせた汚濁が、白く濃い濁りとなって、腿を伝い落ちていく。









足をふらつかせながら、給湯室を出たフレイザーマンは、ひどく落ち込んでいた。
我を忘れ、獣じみた醜さをむき出しにした自分が、恥ずかしかった。
そんな自分の本性をむき出しにさせた、あのメイドがひどく恨めしく、そして、恐ろしいほど強く印象に残っていた。
それ故に、逃げるように急いで、ふらふらしながら出て行った。

嘲笑の笑いに耐え、別の男が給湯室に入るのを横目で見て、歯ぎしりをしていた。









この日のグランド・ビッグ・パレス最上位フロアは、リヴァールの企業家たちの巨大な会合場になっていた。

年末、政治家たちの演説や、新しい企業理論の研究発表、各地の最新経済報告などがフロアのあちこちで行われている。
だが、何より重要なのは、コネクションづくりである。

リヴァール経済を担う企業家たちに、一年で最大の交流の場を設け、経済発展を行ってもらうのがリヴァール政府の目的だった。

そのため、どちらかと言えば若手の企業家たちが中心であり、最上位クラスの人間はお義理とささやかな差し入れをして、場を盛り上げてやる事が多い。

サーニャ・エグゼリオンは、リヴァール最大のコングロマリット会長であり、その愛らしい美貌と若さとは別に、ガッハ・バルボアなどと同じく経済界最上位の存在である。
このグランド・ビッグ・パレスも、エグゼリオンコングロマリットの所有になっている(ちなみに『中央ルーム』は、ビルの地下200メートルの所にある)。
そのため、場の盛り上げ役であることが多い。

そして、今日は一人のメイドを連れて訪れ、『十分に皆様のお世話をするように』と言いつけ、とっとと立ち去ったのだった。

そのメイドがおかれた区画は、最上位フロアの中でも主力企業家、すなわち一番活力のある連中のVIP区画。
2000名の参加者の中でも、わずか35名しか入ることを許されない場所。そして全員男性。

だが、そんな連中でも彼女の連れてきた、超一流のメイドのような女性は、誰も持っていなかった。

品格が違う、美しさがけた外れ、作法に優れ、意地悪な他国語の質問に自由自在に応える。
長いエプロンだがスカートは短く、その脚線美は息をのむほど華麗。
いれた紅茶は、舌が肥え切ったはずのグルメですら、おかわりを頼むほど。

しかも、どう見ても『エルフ』、すなわち人外の血を濃くひく耳。
人間至上主義のリヴァールで、しかもここに置かれたメイドとしては、どんな運命も受容しなければ許されない存在である。

エグゼリオンコングロマリット会長の“粋なはからい”に、気づかないような愚か者は、この区画には一人もいない。

『十分に皆様のお世話をするように』という事は、お世話をされる方は『壊さない限り、何をしようと思うがままに扱ってよろしい。』

大半の者が生唾を飲み込んだのは言うまでもない。




すでに6人目の男が、給湯室に入っていた。

だが、出てくる男、出てくる男、魂まで抜かれたようなありさまで、まだどこか見くびっていた連中は、次第に焦りだした。

くじで最初の方に当たった者は喜び、あとの方ほどがっかりしていた。

この会合はかなり長時間だが、それでもここに泊るわけにはいかない。 それに、数名男に嬲られれば、それで使用済みのティッシュのようにぐちゃぐちゃになるだろうと思いきや、未だ狂った男の声が聞こえ、甘い喘ぎにこちらがたまらなくなってきた。

「おい、ラブロノ。」
「なんだよ、グレイン。」

腐った顔をしたグレインが、目をきょろつかせているラブロノを見た。

「お前9番だったな。」
「てめえが10番だったようにな。」
「複数プレイもありじゃねえか?。」

本当はそれに期待をかけていた連中は、ばっと顔をむけた。

「俺は構わんぞ。」
「おれもだ、第一順番が回らねえ。」
「『十分にお世話を』って言いやがったのは天災の方だしな。」

この連中に、我慢や辛抱などという言葉を期待する方が間違っているのだろう。

「最初から壊そうとしない限り、使って壊れたのは問題じゃないよな。」

壊す気満々で、化学企業のデドスが細い骸骨のような顔の、落ちくぼんだ目をギョロ突かせた。

ひょろりとした病人のような顔色の男だが、精力増進の薬の開発で財を成したため、精力は常人の3倍はあると言われている。
サイの角のように、ズボンの前が強烈に勃起していた。

「まあまて、給湯室じゃ人数が入らない。こいつで姦ろう。」

軍需産業のルモイラスコーポレーション社長の、ベルデ・ルモイラスがカバンから5センチ四方程度の丸い固まりを取り出した。

留め金を指ではじき放ると、空中でパタパタと広がり、すとんと直径4メートル、高さ2メートルほどのドームが出現した。

「うちの新製品だ、折りたためばご覧の通り。特殊な素材で、断熱・防寒・静音のシークレットルームになる。」

科学者でもあるデドスが、色合いと極細の繊維の強度から気づいた。
「炭素繊維か。軍事用にも十分耐えそうだな。」

「ああ、だが既存のものより少し強度を下げて、その分生産性と柔軟性に優れている。色々特性もついたしな。」

「姦りながら、商売の話じゃ無粋だが、あとでうちにも回してくれ。」

低いソファが運ばれ、あっという間に簡易ベッドの出来あがりだ。


メイドが『運ばれて』きた。

もはや彼女の身につけているものは、頭にはめられたフリルのヘアバンドだけ、それもドロドロに濡れている。

「んっ、、んうっ、んっ、あひっ、ひっ、」

低く、絶え間なく声をあげながら、全裸の真っ白な裸体は、巨漢の筋肉質な男に抱えられていた。
『猛牛』のあだ名を持つ、新興食肉会社の大手、ダーヴィッシュ社長だ。

軽く小柄な女体は、男の腕の輪の中にすっぽりと抱えられ、腰と尻をつかまれて、両足を高く上げさせられていた。
巨漢にふさわしい巨根が、少女の体を深々と貫き、根元近くまで入れたまま、わざと腰を揺らしながら運んできたのだった。

周りが明るくなり、好奇と、好色と、そして欲望に満ちた視線が、体中に突き刺さる。

「あ、あああ、い、いやああ・・・」

か細い悲鳴を上げ、いやいやと首を振る幼げなまでの様子に、逆に興奮と欲望が強烈に吹きあがる。

その声に一番に刺激された男は、興奮に快感が膨張し、少女の中でずんと膨らんだ。

「うひっ!」

目を潤ませ、声をあげる少女。

その身体を突然、その場で責め立てる。

ガスッ、ガスッ、ガスッ、ガスッ、

「ひっ、だめっ、だ、や、やめ、いやぁぁぁっ、あっ、あひっ、ひっ、あひっ!」

上下に踊る裸体、

しぶきを吹く陰唇、

広がり、引き出され、また巻き込まれる粘膜、

次第に朦朧となる紅潮する少女の美貌を、カメラが、携帯が、パシャパシャとフラッシュで晒す。

犯される秘部も、のけぞる首筋も、涙であふれる瞳も、残酷に、無残に、晒されたまま撮られていく。

「だめっ、だ、め、あ、いや、いきたく、ないっ、あっ、だめっ、ああっ、いっ、いっ、」

悲鳴が次第に切実となり、何とかもがき、逃れようとする細い手が、哀れなほど力無くあがく。

その哀れな抵抗こそが、男の欲望を煽りたてる。

髪が波打ち、体が上下動に耐えられなくなり、広がり、裂かれ、砕かれ、

体の奥を突上げる塊が、さらに灼熱してえぐった。

いやいやと振る頭が、さらに早く、必死にあがいた。

壊れる、割れる、突き砕かれる。

意識が突きあげる熱の固まりに砕かれ、焼かれ、そして絶頂に突き抜かれた。

「いや、や、や、だ、め、いっ、いく、いく、いくいくいくううううううううううううううううううううううううううううっ!!」

のけぞる、泣きながら、イかされる。

フラッシュが、その瞬間を連続して捉え、白い肌のわななく陰影が、卑猥に、強烈に、その美と欲望をそそり立たせる。

のけぞる少女の胎に、雄の汚れた津波が叩きつけるように襲った。

ドビュグウウッ、ドビュグウウウッ、ドビュグウウッ、ドビュグウウウッ、・・・・・




貪り終えた少女を、簡易ベッドに乱暴に下ろし、男も精根尽き果ててしゃがみ込んだ。

ここまで絞り尽くした女は、彼の知る限り一人もいなかった。
彼の精力に泣き、叫び、最後はおかしくなった女もいたというのに。

ダーヴィッシュが下を向いてぜいぜいと喘ぎ、自分が感じているおかしなものに意識が奪われ切っていた。
それが、SEXで生まれて初めて感じた満足だと、理解するのはかなり先になってからだった。

そして、下ろされた少女は、情け容赦なく群がる雄たちの欲望に喰われていた。



「んっ、んうっ、んっ、んっ、ううっ、うっ、んぅっ!!、んっ、んん〜〜っ、んぶっ、んっ、んうっ!」

シークレットルームの暗い部屋の中で、白い肌が絶えず上下し、揺さぶられ、貫かれ、犯され、嬲られていく。

その凄まじさは、スラムの暴行などよりはるかに容赦なく、凄まじかった。

スラムの男は、まだ女と見れば手を緩める。

だが、人間を人間と見ない、人以外の人類を認めない人間至上主義者にとって、エルフの血を引くと言う事は罪でしかない。

顔を陰茎ではたき、群がるように浴びせ、
髪にも脇にも、なすりつけ、犯し、射精し、
血を薄めてやると、広げ、晒し、前も後も同時に何度も何度も、繰り返せるだけ繰り返し輪姦し、その胎に詰め込めるだけの精を突きいれていく。

ボロボロに犯されていくエカテリナは、ただそれを受け入れ、喘ぎ、痙攣した。

エルフの血を引く女を、人間の血で薄め、人に近付けてやると、むしろそれが善行であるかのように、彼女の細い裸身を犯し抜き、中に出し続ける。

中でも、暗い情念を持った男が、執拗にエカテリナを犯していた。

病人のような顔色で、異様にとがった陰茎を差し込み続ける男、デドス。

「んっ、んうっ、ううっ、うっ、んうう〜〜〜っ!!」

エカテリナの口を、膣を、アナルを、あらゆる場所を犯し、穢した。

他にも、彼と同じような暗い情念を持ち、どこか歪んだ恐怖と憎悪を秘めた男が数名いた。

エカテリナは、それを一人も見逃さず、脳裏に刻みつけていた。



彼女は、ベッドを共にした男の、精神のかなりの部分が読める。
それも、表層意識では無く、その奥にある混沌とした意識下の部分。

エカテリナが先天的に持つ、人を虜にする“魅了”の能力は、彼女も意識しないまま相手の意識下に働きかけ、その本能を刺激し、好意や快感を強く刺激するのだが、ルイーゼの施した長いSEXの修業は、次第にその能力を表層意識に持ち上げてきていた。

それによって、彼女は肌を重ねた相手の精神を、ある程度読める。
それも数字や知識では無く、その本質。


デドスと同じ物、ある種の歪んだ恐怖と憎悪を持つ男たちを、エカテリナはよく知っていた。

あのワイルド・ワイド・ウェストで、凄まじい性体験を繰り返し、何度も襲われ犯された中で、彼女には理解不能の暗く歪んだ恐怖と憎悪を持つ男たち。

まるで磁石の針のように、一様に同じ方向性を持ち、そして『影(シャドウ)』に近いほど、強く濃くそれを持っていた。
つまり、『影(シャドウ)』の影響を強く受け、関係している人間が判別できるのである。

もちろん、彼女ほどの高い知性と能力、そしておびただしい体験を重ねた人間でなければ、自分の感じているそれをとても理解などできなかっただろう。
今や彼女は、生きた『影(シャドウ)』判別装置であり、肌さえ重ねれば、その人間があれにどのくらい近いか分かるのだった。

それ故に、彼女は周りの反対を押し切って、この無茶な欲望の生贄をかって出た。

いまごろ、隠しカメラでフェリペが、悔しさと悦楽の混ざり合った顔で、この壮絶な輪姦劇を写し取っている事だろう。
ソファを運び込んだ警備員はみな、その息がかかっている。




喘ぎ、のたうちながら、また新たな男が彼女を貫き、えぐり、口姦する。

か弱く、ボロボロにされているように見えながら、彼女はその全てを冷静に、吟味し続けていた。
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