月光乱舞 前編
暗い闇の中、青白く肌が浮かび上がる。
「んっ、んんっ!」
苦しげなうめきが、かすかに闇に響き、
すらりと長い足が、丸く艶やかな尻が、ガクガクと動く。
めくられたスカート、足首に落とされた下着、
柵にしがみつく女を、巨体がグイと突き入れる。
ミチッ、ミチッ、ミチッ、
肉が裂けるかと思える、凶悪な節くれ立った男根。
それが、細い腹の奥まで、容赦なく押し入る。
だが、女の濡れた粘膜は、さらに深く、柔軟に受け入れ、
何倍もの快感を持って、包み込み、締め上げて、喰らう。
柵が軋み、激しく濡れた音がからみ、
巨体が何度も、白い尻を浮き上がるほど突いた。
「んううっ!、んんっ!」
可愛らしいとがった耳先が、何度も痙攣する。
小柄でしなやかな若木のような身体が、折れそうにのけぞり、くねる。
「きこえっ、ちまうぜっ、声が出てるぞっ」
「だっ、だって、だって、んあああっ!」
あわてて口を封じ、まるで野外で強姦しているようなシチュエーション。
最高級の娼婦であり、信じられない事に自分の愛人になっている女に、
さらに、快感が増大し、もう、耐えられなかった。
「うぐっ!」
「んはぁぁぁぁ・・・・・っ!!」
ドビュルッ、ドビュルッ、ドビュルッ、
猛烈な衝撃が、胎の奥を駆け抜け、
ガクガクと腰を震わせ、エカテリナは受け入れる。
愛しい男の、ペニスも、精液も、乱暴な愛情も、
全部、愛しく、可愛らしい。
頬を上気させてうっとりと微笑む、その艶然たる輝きが、
月の光に照らされ、うっとウェモンはみぞおちを突かれたような、
強烈な衝撃に出会う。
輝く頬と、深い蒼い瞳、女でありながら少女であり、
娼婦でありながら、聖女の輝きを持ち、
絡み合う胎内の、止めようも無い興奮は、
自分がサルになったかのように、どうしようもなくなる。
「ごめん、エカテリナ」
そういって、ウェモンは再び精液であふれた胎内を、突きあげる。
「んにゃあああんっ!」
嬉しげに、エカテリナは声を上げて受けた。
周りで覗いている男たちが、何度も短いうめきを漏らした。
満月がとても美しい夜。
ウキウキして、エカテリナとウェモンは散歩がてら歩いて帰ることにした。
ウェモンに子猫のようにじゃれ付くエカテリナは、
月光をはじき、輝きをあたりに跳ね返し、
とても美しく、そしてたまらないほど魅力的過ぎた。
「ちょっと、しようか」
ウェモンが公園のそばで、小声で言った。
えっ、という顔をしたエカテリナが、見る見る赤くなる。
まるで処女のような恥じらいは、むしろ欲情をかきたてる。
しかも、そこは覗きでかなり知られたスポット。
だが、ウェモンは容赦なくエカテリナを襲った。
「ん・・・もう、変態っぽいんだから。」
たっぷりその場で三回、最後は片足を上げられ、
奥まで見えるほど突きまくられて、壊れそうだった。
だが、ようやくおとなしくなったウェモンの分身を、ていねいに嘗め回し、
きれいにして嬉しそうに味わったのはエカテリナだから、
あまり人の事は言えないかもしれない。
恥ずかしそうに、ハンカチをあて、胎内からあふれてくる濃い濁液をぬぐい、
身じまいをする。
その光景そのものが、月光にこうこうと輝き、生唾を飲む音が、いくつもする。
今日はもう、覗きの連中は一晩中寝られまい。
妙なもので、覗きのスポットだからこそ、
やぼな手出しをしないという不文律があり、ここは犯罪が少ない。
もっとも、ウェモンを見て手出しをしようなどという、
酔狂な人間はいやしないが。
『よく壊れないよな』と、半分あきれ、半分驚きで、
覗きたちはささやき合う。
チャプ、
大型の浴槽に、温かな湯が張られ、可愛らしいキャップに包まれた頭が動く。
ちりちりと、舌先が男の乳首をなぞり、柔肌がデコボコの腹筋を、刺激していく。
桃色の肌に、ウェモンがのぼせそうになる。
しかも、
チャプ、チャプ、
しなやかな腿が動いて、間にウェモンを挟み、スマタで刺激するので、
見る見る勃起させられる。
ミリミリと肉が立ち上がり、凶悪なカリの反りかえりが、
股の柔肌に食い込んで、エカテリナを恍惚とさせる。
「そ、そろそろ、いいか」
うふ、と微笑むと、腰を上げ、水しぶきを散らしながら、
目が潰れそうな、白と桃色の混ざり合った裸体が起き上がる。
指先が誘導し、馴染みぬいたはずの肌に、吸い込まれ、絡みつかれ、
ぞくぞくする、数え切れないほど抱いた肌に、ぞくぞくとして目がくらむ。
その薄桃色で小柄な、輝く肢体が、ゆっくりと沈むと、
ウェモンはうっと顔をのけぞらす。
温かい湯の中より、さらに強烈に、滴るような快楽が、
熱く、ヌルヌルと包み込む。
ゴリゴリする亀頭の感覚に、細い首がヒクリと震え、
エカテリナの細い身体に、凶器に等しいものが入っていく。
細い足が、太い胴を締め付け、
柔らかい襞が、吸い付くようにからみつく。
桃色の尻に、指を食い込ませ、
その果実を揺さぶり動かす。
「んはあああんっ!」
指にからみつくような肌、
小ぶりで、ウェモンの手にはまりそうな尻は、
指先に痺れるような心地よさを与え、
思わず食い込ませ、揺さぶり、突き上げる。
ジャブッ、ジャブッ、バシャッ
「んはっ、あああっ、あっうううっ!」
肉の襞が動き、のけぞる白い腹の奥で、絡み合う、荒れ狂う。
清楚な少女の内側で、これ以上は無い淫靡で淫らな衝撃。
しぶきが散り、肌が震える。
のけぞる胸が、震えている。
声が、あえぎが、こだまし、溶け合い、
湯が揺らめき、あふれ、零れ落ちる。
うめきが槍となって貫き、
白い肌が、ゆっくりと後ろに倒れる。
ドクンンンッ、ドクンンンッ、ドクンンンッ、
身体の中に、打ち広がる白い波。
エカテリナの中に、繰り返し射精し、なすりこむ。
水面に広がり、喘ぐ白い裸身。
その身体につながり、中に残らず絞りつくして、
喘ぐ裸を目が犯していく。
再び、男が女に、呼び立たされる。
快楽を絞りきった虚脱。
巨大なダブルベッドで、小さな頭をなでながら、
ゆるやかに眠りのよどみに沈んでいく。
金髪の頭がそっと起きた。
「ねえ、ウェモン」
「なんだ?」
返事もおっくうなほど身体が動かないが、それでもウェモンは顔を上げた。
「私、愛してる?」
「ああ、愛してる。今日はどうしたんだ?。」
どこと無く違和感を感じながらも、ウェモンは眠気に対抗しながら、聞き返した。
いつも不安そうに聞くエカテリナだった。
孤独と、不安と、悲しさに、どれほどこの娘が傷ついていたか、
ウェモンはようやく理解していた。
「ううん、何でもないの、ごめんなさい。」
優しい、銀の鈴を振るような声。
心配するな、と言うように、ごつい手がそっと金髪をなでる。
最近、エカテリナに、紹介で来る上客が多くなり、
二人きりの時間は、ひさしぶりだった。
この優しい娘は、それを悩んでいたのだろうと思った。
顔を見せないような、大物らしい客が増えた。
たまたまウェモンが見たのは、議会の中間層で影響力を持つ議員だった。
中には、エカテリナを何とか『購入』できないかと交渉する客までいたが、
どこからかの連絡が入ると、コソコソ逃げ出すしかなかった。
『まあ、エカテリナのひいき筋は、半端じゃないしな。』
ただ、なんとなくウェモンのカンが、ある白髭のじいさんを思い出した。
反政府組織クラダルマのエルト。
だが、そこまで思い出した時点で、もう目が閉じてしまっていた。
『でもな・・・オレは・・・おまえを・・・愛して・・・・』
唇がかすかに震えただけで、ウェモンは眠りに落ちてしまった。
温かい大きな手のひらに、エカテリナはそっと頬をすりつける。
この世のものとも思えぬ、温かい柔らかさに、ウェモンは夢の中でも快楽にひたった。
煌々とした月夜、雲ひとつ無い夜空に、
この星を優しく照らす二つの月が上がる。
どちらも満月と言う、年に一度の珍しい時期。
テラスに、薄い夜着をつけただけのエカテリナが出た。
名月を喜ぶ人たちの、歓楽街などの音が、かすかにする。
二つの月が、蒼い目に写る。
瞳にそのまま、月がはまったかのように。
月が、金色の雫を落とした。
エカテリナの、金色の瞳が潤み、涙があふれる。
瞳は本当に金色の光を放っていた。
女性をつかさどるという、月の女神。
その二つの光が、彼女の深奥の何かを揺さぶる。
月の力が、彼女を無理やりに犯し、孕ませ、力を授けようとする。
『いらない、こんな力、いらない!!』
金色の光が、彼女を無理やりに力づけ、蘇らせる。
稀代の魔女の能力が、皮肉にも彼女を追い詰める。
消し去ったはずの闇が、ゆらゆらと復活しようとする。
闇とは『記憶』。
暗い記憶の隅に、何かがいる。
『いつ、自分は戻ってきたのだろう?』
ふと、湧き上がる疑念。海から戻って、いや、いつ・・・・
何かがゆらいだ。月が、煌々と光っている。
ああ、何かが、私の中で、叫んでいる。『忘れよ』と。
それが声を上げる。私はそれに逆らえない。
ソレハ、ナニカ、トテモキモチイイモノ・・・・。
月ノ光ニ、身ヲ任セタラ、トテモ気持チガイイカモシレナイ。
マカセテミヨウ、マカセテミヨウ、
ツキノヒカリハトテモ、キモチイイモノ。
夢の中の、不思議な幻想に落ち込んだエカテリナは、
月の輝きの中に、全てを投げ出すように、手を広げた。
ファサッ
薄い夜着が、落ちた。
月光に白く光る裸身、均整の取れたしなやかな若い女体。
その背に、長く巨大な羽が伸びた。
右の白と、左の黒と。
身体が光をまとい、光が身体を覆う、
20前後の肉体に変貌する。
犬歯が伸びたように見えるのは、気のせいか?。
バサッ
エカテリナの姿が、テラスから消えた。
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