■ EXIT
魔宴(サバト)

ドクン、ドクン、ドクン、心臓が、激しい音を立てている。
脳髄が沸騰し、身体中が悲鳴を上げている。

青ざめた裸身のエカテリナが堕ちていく。

真っ暗な闇に、底無しの穴に、 身体が、落ちる、落ちる、落ちる。

『コンナトコロデ・・・ワタシハシヌノ・・・?』

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、 苦しい、苦しい、苦しい、苦しい、 落ちたくない、落ちたくない、落ちたくない、落ちたくない、 苦痛が、目の前を真っ赤に染める。

身体中の穴から血が噴き出し、肺が血であふれる。
ゴボッ、ゲホッ、ゴボボッ、 灼熱する痛みが、急激に氷の冷たさに成り、 氷の棘が、指先に、爪の間に、目の玉に、刺さり、えぐり、掻き回す。
泣き叫ぶ、涙も血、声も血しぶき。
『死にたくない、死にたくない、死にたくない!』
マダナニモ・・・マダナニモ・・・ミツケテイナイ・・・・
ウェモン、ルイーデ、ガッハ、フェリペ、シアン、ダイン、 ヴァンドロ、ジェンカ、 これまで出会った人たち、さまざまな記憶、そして、 うあああああああん、うああああああん、 ナイテイル、アノコタチナイテイル・・・

『赤ちゃん、私の・・・私の赤ちゃん・・・!!』
崩れる肉体のなか、エカテリナはもがき、あがき、狂ったように暴れた。

『いやだ、いやだ、いやだ、死にたくない、死にたくない、死にたくない!!』

何かが破れた。
記憶の奥の、幾重にも封じられたもの。
ウェモンの危機に、亀裂が入ったそれが一気に壊れた。

闇が、無数の蠢く文字となった。
無限の知識、膨大な書物、 死に向って落ちていくエカテリナの周りに、 それがどこまでも続いていく。

それは、『妖』の中で、ミューンが授けたもの。
ありとあらゆる魔道知識。
それを理解し、あやつる、人の身にあるまじき思考方法。

無限に等しい知識の中、彼女の手が、それを掴んだ。
彼女の最奥に封印され、二度と開かないはずの狂気の力。

赤い、禍々しい光が、核爆発のようにほとばしった。

たとえどんなものでも、それにしがみつかずにはおれなかった。
死にかけた身体を、無理矢理にでも生かす知識に。



倒れ伏したエカテリナの身体中から、血が噴き出した。
どす黒い、壊れた血液。

「手遅れだ・・・」

急ぎ引き払おうと立ち上がった足を、ガキリと掴まれた。
「ひ・・・・?!」

戦場で、死んだと思っていた人間が足に噛み付いたような、 背筋が凍る感覚。

「za-za-do、za-za-do、sukuro-no、ronosu-ku」
巨石がこすれあうような、地の底から響くような声。

エカテリナの死体が、赤黒いオーラをまとっていた。
血まみれの手が、隊長の足首を掴みギリギリと骨を鳴らし出した。

「za-za-do、za-za-do、sukuro-no、ronosu-ku」
妖しい声を上げながら、起き上がった目は、赤黒い洞穴のようだった。

ゴキッ、ゴキッ、ゴキッ、

骨があっさりと砕け、つぶれた。
「ギィヤアアアアッ」

「za-za-do、za-za-do、sukuro-no、ronosu-ku、vageru,veruzerubu、verugurebudeasu」
血が噴き出す暇もなく、のびた爪から吸収されていく。
足がミイラのようにしぼんだ。

引きずり寄せるや、その頭を掴み、首をひねった。

断末魔の痙攣と、鈍い音、そして、伸びた犬歯が首筋を食いちぎる。

ジュルルウウッ、ジュルルルッ、ジュルルウッ、

耳を塞ぎたくなる音、恐怖と絶望の混ざり合った音、嘔吐と絶息の交じり合った音。

赤いオーラが広がる。
洞穴のような目が、真紅に染まる。



カーミナックの沖合い10キロ、深度3000メートルの海底。

深海の底に身体を横たえた海の大妖怪『妖』。
海底そのもののように、身じろぎもせぬ数百メートル四方の身体は、 無数の触手が絡まりあった巨大な塊のようだった。

その精神世界に、静かに眠るエカテリナがいる。
それは彼女の全データを擬人化したもの。

それを見守るエルフの大いなる祖、ミューンの擬人化されたデータと、 淡いパール色に輝く『妖』の精神体。

エカテリナのコピーは、 今の彼女の状態を表すように、赤いオーラを激しい炎のようにまとっていた。

「太古の昔、生命は他者を取り込む事で、自らを生かすことを知った・・・。」
他者を取り込む、すなわち『命を食べる』こと。
数十億年の昔、現れては消える単細胞の生物の中に、それを行った1個があった。
あらゆる進化と変革は、その者から爆発的に広がった。


ミューンが詩を歌うように、言葉をつぶやく。

「壊れかけた命を救うには、他者の命をすするより他に無い・・・。」

彼女がエカテリナに与えたおびただしい魔道知識、 その中にある生命の奥義が、発動していた。

エカテリナ自身が二度と必要ないものと、厳重に封をした知識だが、 ミューンはあえて封印に穴を開けていた。
彼女の生命の危機に、封印が破れるように。


「そなたは、我が魔道知識全てを受け継いだ者、簡単に死んでもらっては困るのだ・・・」
たとえそれが、どのような結果を生むことになろうと。


『あの娘はいい、私も少し力を出そう』

光の玉のような『妖』の精神体は、 わずかに赤く発光した。

『妖』本体の全ての触手が一斉に立ち上がり、 わずかに震え、光った。

半径十数キロの海面が、ほんのわずか水温を上げた。
わずかな温度差が、冷たい海の表面に猛烈な上昇気流を産み、 不安定だった大気の状態が一気に崩れた。
激しい低気圧が発生し、分厚い雲が地表を覆いつくした。

これから起こることを、隠すように。


人間の脳は、本能の中枢を、人間の理性が覆う形で作られている。
理性が本能に勝つことは容易ではない。
生命の危機に、本能が全てのコントロールを奪う事も、どうしようもないしくみだった。

本能と知識が結びつく事は、理性を否定し、力のみが暴走する。
這って逃げようとした4人目が、ミイラとなって投げ捨てられた。

赤く染まった唇が、ぞっとするような笑みを浮かべた。
壊れかけていた体組織が、ようやく安定してきた。

生命の奥義は、DNAの激烈な活動を引き起こし、 組織構造すら一時的に変化させて、他者の生命を喰らい自分ものにする。
超再生能力、身体能力の増大、莫大な魔力と防御力、 発動中は、ほぼ不死の存在になると言っていい。

だが、その効率は極めて悪い。
生命エネルギーを吸いだすだけで1/10、 さらに自分のエネルギーに変換するのにまた1/10、 個体の生命エネルギーの1/100しか吸収できない。

しかも、そのエネルギーを得る時の甘美、快感は、 麻薬の1000倍以上におよび、飢えはさらに高められてしまう。

際限なき飢えにさいなまれながら、 無上の悦楽を求めて止まらなくなる。

呪われた奥義と呼ばれるゆえんであり、 最奥に封印された魔道知識のひとつだった。

ブルルウウン

「まっ、まってくれええっ!」

ケガをしていた二人を見捨て、 残りの4人はジープを急発進させる。

立ち上がった裸身から、何十発もの拳銃弾が落ちた。
血まみれのエカテリナに打ち込まれた弾は、 身体を覆う魔力の障壁に止まっていた。

ブオオッ 白い両手が、わずかに動くと、猛烈な風が巻き起こる。

けが人たちは小型の竜巻のような気流に巻き込まれ、干からびた。
搾り取られた血が、白い肌を覆い吸収されていく。

生命を吸い取る歓喜と、激しい渇望の突き上げ、 もっと、もっと、もっと!

強烈な飢えが、獣の獲物を欲する本能だけが蠢動する。
封印が解けた記憶の奥から、変身術が肉体を変化させる。

猛烈な魔力が、血まみれの肌に無数の紋様を浮かばせ、彩っていく。

シュワアアアアアッ!
エカテリナの美しい裸身から、 強烈な光がほとばしる。

淡い光を帯びた、黒い羽が宙に伸びた。
3メートルを超える巨大な羽。
光はエカテリナを包み込み、彼女の裸身はふわりと宙に浮いた。
胎内に湧き上がる強烈な魔力が、 エカテリナを重力から切り離す。

「クイタイ・・・モット・・・モットクイタイ・・・・」
生命に飢えた、氷のようなつぶやき。

髪が長く艶やかに伸び、 身体が見る見る変身していく。
魔力が空気中の元素を取り出し、変貌させていく。 身長が180を超え、女の成熟しきった身体へと、 美しく、淫らな姿に代わっていく。

唇から、鋭く白い牙が伸びていた。
瞳の赤い光が、一層強烈に輝いた。

キシャアアアアアアアア

闇の中に、狂獣の絶叫が響いた。
ヴァンバイヤ化した彼女の絶叫は、凄まじい魔力の波動をひきおこした。

無数の鳥獣が騒ぎ、闇の中をおびえ、跳ね狂った。
全リヴァール連合の魔道担当官たちが、 激しい頭痛や嘔吐に見舞われた。

世界中の魔法使いたちが、凶悪な魔力の波動に困惑した。

波動の中心点を測ろうとした宇宙ステーションは、 分厚い低気圧に手を焼いた。

赤い光が、闇の中を飛んだ。
雨も、稲妻も、エカテリナを避けるように分かれていく。

新月の暗闇に加え、分厚い雲と降り出した雨が、闇を漆黒にしていたが、 赤い目は、ジープが逃げていく姿を正確に追っていた。

彼らが逃げ込んだ陸軍特殊部隊の基地は、 “影”の私兵のような存在であり、
装備こそ非常に潤沢だが、規模は少し小さかった。

執拗な性格の“影”は、 エルトリアムへの見せしめと、 その保護をしている連中のあぶりだしに、 容赦なく接触した相手をしぼりあげ、 いたぶりつくせと命令していた。

彼らはその命令に従ったに過ぎない。
それゆえに、むくいもまたのがれようは無い。


「za-za-do、za-za-do、sukuro-no、ronosu-ku」
サーチライトが点灯し、サイレンが鳴りかけて、全てが止まった。
電磁波が狂い、あらゆる電子機器が悲鳴を上げた。

轟音と雷鳴が鼓膜を破壊し、 あらゆる建造物が落雷の餌食となっていく。

「za-za-do、za-za-do、sukuro-no、ronosu-ku」
天空にのびる、無数の金の糸。
不気味な呪文の詠唱と共に際限なく伸び、 1000メートルの長さを持つ金属分子の針と化した。

周囲の全ての雷が、その針めがけて襲いかかり、 全ては基地に降り注いだ。


白熱と雷撃が、狂気のように叩きつける。
轟音の暴力が、あらゆる者をなぎ倒す。

目がつぶれ、耳が壊れ、轟音が脳髄を打ちのめす。
瞬時に数十人が黒焦げになり、 金属に触れた者は、みな感電や火傷で跳ね狂った。

滝のごとき落雷の前に、人間の力は紙のごとくはかなかった。

食い切られた首が、ごろごろと転がった。


稲妻のシャワーは、エカテリナの身体に触れることすらなく、 彼女の周りを避けるように流れていく。

赤い目が光り、荒れ狂う電磁波が、脳を容赦なくしめあげる。
理性を失った軍隊は、悪夢の前にひざまづいた。


唇からこぼれた真紅の雫を、 真紅の舌がぺろりと舐めた。

輝く金髪は、足までも伸び、 風に舞い踊りながら、不気味なまでの輝きを放っていた。

赤い燃える目が、うっとりと潤み、 血まみれの犬歯が生えた唇が、妖しい微笑を浮かべた。

成熟した豊かな胸があふれんばかりに膨らみ、 長く伸びた足がゾクゾクするような腰のラインにつながる。
鮮やかに茂った金糸の恥毛、
その奥から、よだれのように透明な愛液が腿を濡らして伝い落ちる。

「クククククク・・・・」
豪雷の荒れ狂う地獄を、可愛らしい声の笑いが、不似合いに響いていく。

「Vorudaraaaagann!」
突然、極低音の奇怪な言葉が放たれた。
右腕が優美に弧を描き、赤い光が基地の全てを包み込んだ。

“魅了”、人間の理性を麻痺させ、欲望と衝動を激しく沸騰させる魔法。
パニックで理性を失っている人間たちは抵抗する術も無い。
地下に隠れている人間にすらそれはおよび、 理性は完全に自分の手から離れ、脳のどこかが焼き切れ、 性への渇望だけが沸騰する。

一挙に全てのエネルギーを走らせた雷は、急速に消え去り、 激しい雨がふりそそいでいた。

がれきの山となった基地の中で、生き延びた人間たちは、 ゾンビのようにどろりとした目をしていた。


歩き出した男たちは、 息を荒げ、激しく勃起させて、 基地の真ん中に立つ黒の姿に群がり寄った。

「サア、シマショウ・・・ミンナ、シヌマデシマショウ」
彼女の妖しい声のままに、無数の勃起したペニスが林立する。
もっとも無防備で、 もっとも血のあつまった組織、 血液から生成された生命のエキスの集合部。

ザラリとした舌が、そのオス臭い性器をザリザリと舐め上げ、 うめきを飲み込むように、深く咥え込んだ。

滴る愛液の壷に、 ずぶりと押し込まれる感覚、 「んふううんっ!」

プリンとした尻を引き裂かんばかりに突き入れる。
群がる男たちが、焦点を失った目で、口で、手で、 しなやかな肉体を愛撫し、犯し、嬲りつくす。

「んうっ、んっ、んっ、んふううぅっ!!」
牙の生えた口が、ほんのわずかその切先をかすらせ、 口の中を滑らせる。
チリチリとした感覚と、絶妙の口技が、 ペニスの全てをなで上げた。

ブビュルルルルルルルウウウウッ
身震いするペニスが、ありったけの精液を爆発させる。

ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、
甘露を飲み干すように、エカテリナの白い喉が、 音を立てて飲み込んでいく。

破滅的な射精が、陰嚢をカラカラに干しあげる。
エカテリナの胎内を灼熱するペニスがくねり、 絞り上げられる。
プチッ、ブチッ、ブシュッ、ブシュルウッ、

暴発する精液が、美しい眉をピクンと震わせ、 脈打つ精液の波が、子宮をたたきつける。

ガクガクガク、
壊れた人形のように、男の腰が痙攣し、 搾り取られるエクスタシーに痺れ、止まらぬ射精に意識を失う。

ピラニアがエサを奪い合うように、 群がる男たちは、白い肌をバラバラにするかのように強姦する。

「んん〜〜っ、んっ、んふっ、んっ、んふううっ!」
尻肉がちぎれそうにつかまれ、アナルが壊れるような律動が突き上げる。

パンパンパンパンパンパン
脚が壊れたように広げられ、蕩ける密壷の芯に狂ったように叩き込み、突き上げる。

ドロドロの口元に、強姦同然にペニスが突っ込み、 長い爪の伸びた指に、しごかせ、握らせ、こすらせる。

胸を穴を開けんばかりに、ペニスが突き、こね、えぐる。

腿に脈打ちながらこすりつけ、 背中を射精しながら、髪の中にぶちまける。

「はふううっ、うっふふふふふ」

飲みつくしたザーメンにため息をつき、妖しい笑いが零れ落ちる。
胸を掴み潰すほど握られ、 アナルもヴァギナも壊れるほど激しく突かれ、 腿に、乳首に、足に、噛み付く歯が感じる。

だが、破滅的な暴行も、輪姦も、 今の彼女には、心地よいシャワーよりもまだぬるい。
細い首を折れるほど絞められても、 不死化したエカテリナには、快楽の刺激でしかない。

胎内深く射精される白い腹に、うっとりと身体をくねらせる。

ドビュルウウウウウウウッドビュルッ、ドビュルッ、ドビュルッ、 子宮口を貫き、中にぶちまけられる精液、 激しい濁流が、あふれて零れ落ちると、 それは透明な粘液だけになっていた。

男たちの精のエネルギー全てが、飲み干され、吸い尽くされ、 単なる体液だけが、長く美しい腿を流れ落ちる。

新たな男が、蜘蛛の脚のような動きに捉えられ、 彼女の花芯に引きずり込まれ、 狂った律動を突き入れていく。

「んはあああんっ、いいっ、ああんっ、もっとおおおっ!」
跨った男を、絞りに搾り取りながら、 次々とくわえ込み、迎え入れていく。



「ひいっ!、ひいいっ!」
背中に大火傷を負った金髪の女性士官が、 涙を流しながら、前も後ろも部下たちに犯されている。
肉付きのいい腿を、壊れたように広げられ、 アナルからも、ヴァギナからも激しい陵辱で出血していた。

「うぶううっ!、うっっ!、ん・・・・っ!」
購買所の女性が、5人に輪姦されながら、息が出来ず痙攣していた。

後ろにまとめた髪が震え、 細い首が絞められる。
断末魔の痙攣の中、激しい締め付けにペニスが脈打つ。
彼女の子宮におびただしい射精が撒き散らされる。

基地にわずかにいた女性たちは、 理性を奪われたまま、発狂した欲望に貪り食われていく。


「げはっ・・・・・!!」
長い脚を広げさせ、 柔肌に狂ったように律動を繰り返していた男が、 血を吐くような声を上げて、痙攣した。
快楽の密壷の中に、己の生命全てを注ぎ込んで、白目を向いた。

最後の一滴まで注ぎ込んだ男は、心の臓をあっさりと止めた。

しなやかな腕に抱かれ、、 牙の生えた口が、乳首から首へと舌と唇を這わす。
白い牙が首筋にめり込むと、世にも幸福そうに男はのけぞった。
この世にはありえぬ快楽と絶頂。
血をすすられるエクスタシーは、 勃起が破れるほどの脈動となって、 エカテリナの身体中を汚しつくした。

牙が、肌を食い破り、乳首を削り落とし、 首筋にめり込んで噴き上げる血を浴びた。

「うふふふふふふ・・・」
脳の一部が壊れ、快楽へのブレーキが破壊されて、 群がるピラニアのはずだった男たちは、 哀れな、すすり尽くされる虫に等しかった。

蛇のように分かれた舌先が、尿道を犯し、かき回す。
うめきながら、射精する精液を残らずすすり上げ、 陰嚢を弾けさせた。

引きずり込む長い脚が強く締め付ける。
深く、子宮までのめりこむ快楽に、ため息を漏らす。

「んはあああ・・・・・・っ!!」
ビュグルウウウウウウッ

背骨が砕け、目の飛び出した男は、 痛みすら忘れ、己の生命全てを、熟れきった肉体の中に埋没させた。

「あはああ〜〜〜っ」
男の生命エネルギーが、 深奥めがけてほとばしっていく。
熱い快楽、エネルギーそのものと化して、 無上の快楽となってしみこんでいく。

豊満で美しい胸に挟み込み、その剣先を加え、嬲りまわし、 弾けさせながら、玉袋を絞りつくす。

浴びせかける顔中のザーメンが、上等な酒のように酔わせる。
肌が精液を吸収し、さらに艶やかになっていく。

口を、胸を、背を、腹を、アナルを、花芯を、 エカテリナのありとあらゆる場所に群がり、 生命全てを絞りつくし、すすりつくされ、 至福の境地で死んでいく。

サバトというものがこの世にあるのなら、 この狂気かもしれない。

血と、精液と、絶息のあえぎが、 果てしなく凶悪な魔宴を彩っていく。


るいるいと裸の屍が転がっていた。

強烈すぎる“魅了”の魔力に、脳の抑制する部位を破壊され、 飢え切ったエカテリナの肉体、その凄まじい快楽の化身に抱かれ、 この世ならぬ歓喜の代償に、命が枯渇するまで暴走した者たち。

ゆっくりと、罪の無い猫のように伸びをした裸身は、 異様な艶を帯び、輝いていた。

「モット、モット、モットホシイ」

知性も何もない、無残な声。
周りに転がる無数の屍に、一片の関心も無く、 物欲しげに周りを見回す、罪を知らぬ顔。

飛び上がる妖艶な姿に、嵐が去り、かすかに朝日が差し始めた。
「・・・・?」


何かが聞こえた・・・。

「ナニ・・・・?」


遠くで、何かが・・・。


声・・・声が・・・。


あああん、あああん


なんだ・・・これ・・・・。


赤子を抱いた女性が、一生懸命だっこし、あやしていた。
朝日が、母と子をやさしく、そして限りなく神聖に照らし出した。

「リリン、どうしたの、よちよちよち、泣かないのよ、リリン、いい子ね、よちよち。」


『あああん、ああああん、』

声が、きこえる・・・声が・・・あの子の、 あの子たちの・・・・・・・・・・・。

金と銀の目を持つ、赤子たちの姿。
・・・・・・自分の、世界で一番いとおしい者たち。


理性の光が、本能のオリを破壊した。

闇が砕けた。

朝日が、自分の両手を、身体を、 命と言う命をすすりつくした全身を照らし出す。
瞳の赤い光が消えていく。

身体中にみなぎる命のかけら、
血と、痙攣と、精液の狂おしい狂乱の映像、感触。
無数の転がる屍たち。

残酷な、理性と言う名の、審判が下る。


「いやあああああああああああああああああああああああ!!!!」

次の話
前の話