男たちの演歌・女たちの艶歌
「へいらっしゃいいい!」
「いらっしゃいませぇ!」
グラムリングシティの居酒屋『だいかぐら』は、
安さとうまさ、きっぷのよさでいつも大入り満員だ。
油光りするような古い店構えだが、
店をこぎれいに改装するより、
うまい食い物と酒を出すのが身上という頑固な主に、
むしろひいきにする客は多い。
当然油臭くて気難しい軍の技術屋たちも、
こよなく愛し、ひいきにしている。
「チイ、酒がたらねえと怒鳴られるぞ!」
「あい〜、分かってるねオヤジさん!」
ほっそりとしたミニのチャイナ服の女の子が、元気のいい声で返事する。
だが、酒をなみなみと入れたとっくり2段重ねのお盆を、
片手で軽々と持っているところは、ただものではない。
少しつり目ぎみだがパッチリした目元と、
可愛らしいチャイナドールのような美貌だ。
目のふちに入れたアイシャドウで、大人びた感じを出している。
だが、化粧を落とせば16,7ぐらいだろうか?。
奥の座敷を開けると、タバコと酒の匂いがどっとあふれる。
「おー、ちょうど切れた所だったぞ。」
「チイちゃん、こっちもだあ。」
ずらっと並んで騒いでいるおっさんたちは、いつにも増してにぎやかだった。
どれもこれも、油じみた技術屋、整備関係の男たちだが、
がらが悪そうに見えて、実はとても優しいのは、
『だいかぐら』の女たちも良く知っている。
「はいはい、いつもありがとさんですぅ。」
急に盆が軽くなった。
「あなたはあちらに持っていってあげてね、こっちは私がするわ。」
背の高い、目の覚めるような褐色の美女に、チイは目を見張った。
スタイルは抜群、胸は砲弾のように突き出し、
ウエーブのかかった金髪は非常に豊かで美しい。
チイもスタイルはいいのだが、いかんせん胸はまだ発展途上、
ちょっとうらやましそうな目をした。
「あ、いえ、お客さんにそんなことはさせられません。」
「座ってるだけじゃ退屈なのよ。いいからいってらっしゃい。」
ダークエルフハーフのシアンハルレインは、ルイーデの館に勤める一人立ちの娼婦。
今日はひいきの客ヴァン・マツウラに呼ばれて来ていた。
ちなみにヴァンは、『整備の神様』と呼ばれる超一流の技術屋で、
第一空軍基地の総合整備主任であり、周辺基地の技術者たちの親分なのだ。
当然宴会では一番上座にすえられている。
こういう宴会にひいきの娼婦を呼んで見せるのを『顔見せ』といい、
失礼や揉め事を起こさないための、儀式のようなものだ。
それだけヴァンはシアンを気に入っている。
「大将、やっぱり先日の火事は、エランの道具屋ですわ」
「やっぱりあれか、片方ヒビ入れか」
「その上、入ってない方は、マクガン基地に飾りもんですよ。」
宴会では大声で、わけのわからぬ言葉が飛び交っている。
ひと言発言すると、ビールを空け、
論戦が起こると、注し合い、飲ませ合い、
ますます話のペースが上がってくる。
酒の話題から、部品談義、同期の歌からエロ話、
だが中でも真ん中に陣取るヴァンの周辺たるや、
普通の人間が聞いたら、何が何だか分かるものではない。
技術屋の合言葉や道具用語だらけの会話なのだ。
エランの道具屋とは、評判の悪い会社で、ごまかしを良くやる。
ヒビ入れというのは、わざとヒビを入れて部品を殺すことを言う。
飾りもんというのは、安い部品を評価をすりかえて高く見せることを言う。
先日第4海軍基地に大規模な火災事故が発生した。
安全検査を担当する係官が事故死し、
それに気づかなかったために起こったとされていたが、
ヴァンを始め、技術屋たちはいろいろおかしな点に気づいてた。
その上、安全検査の担当官は通常二人一組で行動する。
一人は急病で休んだことになっていて、
事故の後移転があり、かなり遠いマクガン海軍基地に栄転していた。
そして、死んだほうのはどうも殺人らしい。
整備技術者たちにとっては、大問題だった。
元来、油まみれになる彼らは、火災に恐ろしく神経質だ。
ましてや燃料基地、火花一つでも散らないように、厳重な注意がされている。
計画的な犯行でない限り、あのような大規模火災は起きるわけが無いというのが、
ヴァンたちの出した結論だった。
だからといって、宴会が静まるような連中ではない。
「オヤジぃ!、ビンごと焼酎もってこいいい!」
「俺ら空軍整備隊やあああっ!」
「一気いけえっ、一気ぃぃぃっ!」
陰謀、揉め事、来るなら来いと怪気炎を上げ、
ますますやかましくにぎやかになる。
酒を運んでくる女たちの尻を触り、嬌声を上げさせ、
オヤジパワー全開でますます猥雑に盛り上がっていく。
3時間後のルイーデの館、
シアンの部屋のベッドルーム。
「ん・・んふ・・・ん・・・」
たっぷりとした乳房がヴァンのペニスをはさみつけ、
間からのぞいた亀頭を、唇が捉え、舌先が愛撫する。
柔らかいが弾力のある胸は、堪らない刺激で陰茎をこすり、
咥え込んだ唇が、淫らにからみつき、
からみつく舌先が、執拗にもてあそぶ。
ヴァンも強烈な快感に、こらえるのが精一杯だ。
『んふ、ビクビクしてる、とっても感じてるのねヴァン』
いきり立ったペニスが、オスのにおいを放ち、
乳房に血脈の動きがズンズン感じる。
その肌合いが、シアンもとても感じる。
ピンクの小さめな乳首が、ピンピンに立っていた。
唇がさらにすぼまり、粘着するように絡みつく。
舌先が亀頭の裏側をなぶりあげ、
細身のしなやかな身体をくねらせて、絞るようにこすった。
先走りの体液をすすり、舌先を尿道に差し込んで、責め立てた。
「うお・・・っ!!」
探りまわされる感覚が、針のようにペニスを突き刺した。
快感のしぶきが、男の中心から噴き上げる。
ビュグウウウッ
口の中に弾ける熱感に、シアンも身体を震わせた。
胸の谷に突き上げる脈動に、あそこが熱く濡れた。
やられっぱなしでは男がたたんと、
ヴァンは猛烈に責め返し、
シアンの蜜をすすり上げ、柔らかな内腿から尻肉を貪りつくし、
ぐいと抱え上げた。
シアンの方が10センチは背が高いのだが、
ヴァンの体力は相当なもの。
「あひいいんっ!」
散々によがらせられ、濡れに濡れたところで、
身体を抱えられてあそこに落とされた。
ズブリッ
足ごと抱えられ、Mの字に広げられたあそこに、
ヴァンのいきり立ったペニスが、音を立てて突き刺さると、
頭まで快感がつきぬける。
しなやかで柔らかいシアンの身体は、窮屈に折り曲げられても、
まだ余裕があった。
「ひあっ!、あんっ!、ああっ!、深いっ!、深いよおっ!、あうっ!、ああっ!」
柔らかいだけに、あそこのこすれ具合はさらに強くなり、
肉が密着し、深い一体感が感じてたまらない。
身体が浮き上がり、深く突き刺さる。
そのたびに、火花がスパークするような快感が背筋を走る。
元々大柄なシアンは、抱えられてしたことはあまり無い。
俗に『駅弁』というスタイルで、足がヴァンの首に絡みそうだ。
「おらあっ、効くだろう、おらおら、シアンっ、どうだっ!」
ヴァンの野獣のような声に、突き刺さる衝撃に、
シアンは朦朧となって、しがみつく。
「だめえっ!、いくっ、いっちゃうっ!、いっちゃうっ!、」
肉がぶつかり合う甲高い音、
滴り落ちる愛液が、濡れた音で絡み合い、
恍惚とした美貌が、のけぞり、目を潤ませ、絶叫した。
「きてっ、きてっ、中に、あたしいっ!!」
ドビュウウウウウウウッ、
真っ白になった脳裏に、激しい脈動がたたきつけた。
「あああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・!!」
シアンの中は、ヴァンでいっぱいだった。
激しく脈打つそれに、たまらなく感じ、からみつき、残らず搾り取った。
あえぎながらベッドに倒れても、
長くつながったまま、二人は動かなかった。
「ねえ、ヴァン」
しっとりした寝物語。
「なんだ?」
胸の温かいふくらみが、男を安らがせる。
「本当は言っちゃいけないんだけど・・・」
シアンは今日の宴会の話題が、なんとなく読めた。
それは元々、娼婦たちの噂話から聞いていたからだ。
あの大火災の後、ルイーデの館はエカテリナとシアンが中心となって、
けが人たちのお見舞いと宴会を取り仕切った。
館の評判はものすごく上がり、
当然、軍属の人間が多く集まるようになった。
同時に、末端の兵士たちが事故を意外に良く見ていて、
事故ではなく計画的な犯行ではないかという噂があったのだ。
だが、それを口外するのは娼婦の不文律に反するのと、
もう一つ、誰が関与しているか分からないために、
館自身が危険にあう恐れがあって、黙っていることになった。
「賢明だな。俺たちの調査でも、かなり上層部が関わっているようだ。」
二人の話をつきあわせると、
事件の思わぬ概要が浮かび上がってきた。
中でも、エカテリナが基地指令を訪問した時の疑問が非常に大きかった。
彼女はシアンにだけ、それを話している。
彼女が基地指令ベノッサ・マクガイヤーを訪問した時、
軍本部から監査官が二人来ていた。
『ベノッサ様は、かなり長時間詰問されていたようだったわ。
単なる調査なら、事故直後に司令官を長期間詰問する必要は無いはずよ。
まず現場の人たちを調査しなければならないわ。』
通常このような大事件では、
監査部の独自調査と、司令官の報告書をつき合わせ、
それから詰問をするのが常識だ。
火災からたった二日で、おびただしい現場の人間を調べ尽くせる訳がない。
調査が十分に終えていないのに、司令官の責任を問うのは無理なはずだ。
しかも、有能な軍人であるはずのベノッサが、
憔悴しきってしまうほどの長時間の詰問が執拗に行われている。
あの時はエカテリナが訪問して、ベノッサに一息つかせたのが、
大変な救いとなって詰問を乗り切っている。
まあ、エカテリナの甘いキスを受けたら、
たいていの男は発奮するだろうが。
おかげで海軍基地は、ルイーデの館に異常に好意的だ。
「なるほどなあ、道理であの時、酔った勢いでかなりムチャな提案をしたんだが、
司令官が気味悪いほどあっさり賛成するわけだ。」
ヴァンが苦笑いした。
けが人たちの慰安をしてやろうと声が上がった時、
娼婦たちを呼んでやろうじゃないかと提案したのは、
そうとう酔っ払っていたヴァンだったりする。
シアンは頭を抱えたくなった。
取りしきったのは彼女だったので、
変なイベントを考える『変わり者』も軍にいるのねと娼婦たちと話したのだが、
まさか自分の男とは・・・。
ヴァンが顔つきを改めた。
「監査が絡むってことは、狙いは司令官の交代だったんだな。」
歓楽街のはずれ、安モーテルの暗い一室。
盛大な3人分のいびきが聞こえる。
「はい、そうです。技術関係者たちも同意見でまとまったようでした。」
裸の少女が、鏡台に仕込まれた通信機に小声で話しかけている。
顔も黒髪も、ぶっ掛けられ、浴びせられた精液で汚れているが、
チャイナドールのような可愛らしい顔は、『だいかぐら』のチイだった。
『だいかぐら』の宴会が終わって、
チイは3人の整備士に誘われた。
ある意味売春だが、いやなら断ってかまわない。
チイはけっこう好みが変わっていて、中年のさえないおっさんが大好きだ。
あいにく3人ともチイは好みのタイプで、彼女が迷ったので、
にらみ合いからケンカに発展しそうになった。
「んじゃ、3人一緒ならいいでしょ?」
びっくりする3人を嬉々としてひきつれ、
彼女は安モーテルにはいった。
部屋でさっさと一人のジッパーを下ろすと、
別の二人には服を脱がせてもらう。
彼女は身体はスレンダーだが、肌がきれいでぴちぴちしている。
鍛えているのか、細いがしなやかで、生気が満ちている感じだ。
「んっ、んっ、んっ、んふっ、むうんっ」
太いペニスを口いっぱいにほおばり、
タマを優しく指先でさすりながら、汗臭い匂いを吸い込む。
うっとりと頬を赤らめ、おいしそうにしゃぶりつく。
後ろからは服を脱がされ、胸をもみしだかれ、
乳首がコリコリと立ってくる。
パンティを下ろされ、淡い茂みから中をさぐられ
ごつい指が繊細なタッチで探りまわし、ジンと熱くなってくる。
背中を舐められ、背筋に沿って唇が上下する。
指が二本、クチュクチュと中をかき回し、
潤んだ胎内が次第に激しく濡れてくる。
しゃぶり、舐めあげ、すすり上げ、男の味を満喫する間に、
身体中をまさぐられ、あそこを丹念に探索され、潤った愛液でびしょびしょにしていく。
「んはっ、いっ、いれてっ、いいよおっ」
流し目が媚を含んでちらりと見ると、
男もビンビンに立ったものを、やわらかい陰唇を押し開き、ぐいと突き出した。
グリュグリュッ
「んあああんっ!」
ゴツゴツと当たる感触が、深く突き刺さってくる。
『すごっ、こんなにっ!、おっきいっ!』
おろそかになっていた口を、再び深く咥え、
突き上げられる動きにあわせ、首を振り、唇をすぼめる。
指先がタマをこりこりと転がすと、
男が頭をグイとひきつけた。
チイは素直に根本まで飲み込んだ。
ドビュクッ、ドビュクッ、ドビュクッ、
喉の奥で、激しく出てる。
ほとばしりが当たる、鼻の奥ににおいが抜け、
喉が飲み込み、口にも広がる。
赤い唇の端から、ツウと滴りが落ちた。
「ぷはああっ、はあっ、ああんっ、」
後ろからは、チイのしなやかな身体を引き裂くような、
強烈な律動が突き上げてくる。
「はあっ、ああっ、いいっ、いいっ!」
もう一人のペニスを、優しくキスし、舌を絡み付けるように這わせる。
タマの方までキスを這わせ、咥えて転がすように愛撫する。
目の前に屹立するペニスが、ひどくいやらしく感じて、
それが、膣をえぐり、子宮まで小突いているのが、
肉が広がり、粘膜がこすれるのが、
深い、とても感じる、
「んあっ、はっ、ああっ、あっ、くるっ、くるうううっ!、あひいいっ!」
叩きつけるスパート、
めり込んだ亀頭、それが、こすれ、えぐり、のめりこんで、振動する。
「ふあああああぁぁぁぁっ!!」
ドビュウウウウウウッ、ドビュウウウウウウッ、
中に炸裂する白いハレーション、
手の中のペニスとタマをキュッと握ると、
たまらずそれもうめき、放つ。
中に深くめり込み、射精するペニス。
顔めがけ、白いぬめりがぶちまけられる。
ザーメンが膣底を叩き、子宮になだれこんでくる。
子宮が熱く、蕩けて、きゅうっと震えた。
ビュグッ、ビュグッ、
「はあああ・・・」
目も開けられないほど、激しく精液が浴びせられ、
思わずため息をついた。
尻に指先が食い込み、
何度も突き上げられ、中で放たれる。
ドクッ、ドクッ、
最後の一滴まで、チイの中に射精し、刻み付けていく。
「きもち、いい・・・ああ・・もっとお・・・」
ぬらぬらの顔で、今入れられたばかりのペニスを咥えた。
足が抱えられ、後ろからアナルに、彼女が誘い入れるままに押し込んだ。
真っ白い肉の間、薄い色のすぼまりが、グイと押し開かれて、
「ああ・・・」
チイは甘い声であえいだ。
グッ、グリュッ、
肉が、亀頭が、中にもぐりこんでくる。
広げられ、張り裂けそうになる。
でも、それがたまらない。
「ああんっ、ねえっ、こっちもおおぉ」
赤みを帯びた淫肉を開くと、トロトロとザーメンが流れ落ちる。
ゴクリと喉を鳴らし、男はそこへ突入した。
「はひいいっ!」
細い眉を震わせ、ねじ込まれる感触に足先を震わせる。
桃色に染まった肌が、一層艶やかに輝いた。
広がった足が、アナルから、ヴァギナから突き上げる動きに震え、
淡いふくらみをそらし、乳首を強く立たせてわななく。
「ああっ、いいっ、うごいてるっ、中いっぱいうごいてるうっ!」
はむっと、陰茎を咥え、いやらしく唇を這わせ、
淫らに身体をくねらせ、白蛇のような肢体をのけぞらせる。
たくましいペニスが、淫肉を貪り、
脈打つ陰茎がアナルを押し広げ、
口いっぱいにほおばったオスの匂いが、たまらなく脳髄を刺激する。
ベッドが軋み、白い肉体が激しくわなないた。
「はひいっ、はひいっ、あっ、あっ、あっ、はあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
ドビュッ、ドビュッ、ドクンッ、ドクンッ、ドビュッ、ドビュッ、
脈動が身体中に突き刺さった。
「チイ、だいじょうぶか?」
全身をひくつかせてあえぐチイに、
気のいい3人のおっさんたちは心配げな顔をしたが、
「ああん、もっとおおお、3人もいるんでしょお」
このスキモノめと、にやりと笑って、再びチイの身体を嬲り始めた。
もちろん、チイは喜んで身体を開いて迎え入れた。
何回SEXしたかも忘れるほど、
夢中で溺れきって、30分ほど眠ったチイは、部屋の隅の鏡台に向っていた。
3人相手に奮闘した股間は、ザーメンがあふれ、
白く美しい腿にもおびただしく伝い落ちているが、
彼女は当たり前のように話している。
「第4海軍基地火災は、計画的な犯行だと推測。
目的は絞り込めていないようでしたが、司令官の交代や、石油利権の占有、
三軍の勢力争いなどの意見が出ていました。」
『だいかぐら』での専門語だらけの会話も、チイは完全に理解していた。
彼女は『草』。特殊なスパイである。
諜報機関などが、目的の地域に長期にわたって溶け込ませ、
通常の生活をさせ、一切の不審を持たれない人間として作り上げる存在だ。
『だいかぐら』の女たちは、貧しい身分の者が多く、
気に入った相手には、気軽に身体を売る。
チイも誘われると気軽に相手をするので、良く声をかけられる。
彼女は特に整備関係のおじさんたちに優しく、人気があった。
最初は、情報を集めるのに好都合だったので、
そういう人間を選んでいたのだが、
身体がなじむと言うのか、
次第に、本気で彼らを好むようになってしまっていた。
『それにまあ、お小遣いもけっこうくれるしね。』
自分に言い訳するように、大して気にもしていない金額のことを考えたりする。
頬についた精液をぬぐい、ぺろりと舐めた。
『3人とも張り合っちゃったのかな?、すごくがんばってたよねえ。』
また3人張り合わせようかと思うあたり、すでに悪女の素質十分だろう。
彼女はER連合に名高い特殊部隊ニーベルゲンの下部組織に属し、
若いが情報の精度と分析力が高く、ニーベルゲン本体も注目している『草』だった。
『ふむ・・・、人は見ているようで見ず、見ていないようで見るものだな。』
鏡の向こうの相手は、上司のかなり上の人間らしく、
最近ちょくちょく彼女の報告を自分に回させる。
そうとうな皮肉屋で、毒舌家。
チイはニーベルゲンの幹部ではないかと推測している。
この安モーテルも、実は組織に属し、
通話だけだがERに中継する特殊回線を持っている。
だからSEXに誘われると、安いからとここに連れて来て、
男が疲れて眠っている間に連絡をするのである。
今日3人相手にしてしまったのは、宴会の話題が興味深い情報だったのと、
その場の勢いと言うか、最近ご無沙汰だったので、
つい歯止めがかからなくなったせいもあったりするが。
良く寝ているのをチラッと確認し、
盛大ないびきに、くすりと笑った。
本当なら娼婦にでもなりたいぐらいSEX好きだが、
娼婦になってしまうと、組織と連絡が取れなくなるのがつらいところだ。
『まず狙いは、司令官の交代だろうな。』
相手がひとりごとのように言うのには返答しなかった。
考えるのは上司の仕事だ。
ただ、自分もそうではないかとにらんでいた。
第一空軍基地と第二陸軍基地は、石油施設のある第4海軍基地と密接な関係にあり、
いざと言う時は、海軍基地の意向を気にしなければならない。
司令官が変わるのは大問題なのだ。
だが、通話の相手はとんでもない能力の持ち主らしく、
チイの無言の同意を悟っていた。
『貴様も思っているように、司令官の交代はそちらの三つの基地の大問題だ。』
ま、まさかこの鏡、映像も送れるの?!。
顔色を読まれたかと、真っ赤になって身体を隠すチイに、
その様子を感じ取った相手は冷たく笑った。
『心配いらぬ、映像は来ていない。
ただ、中年男性のいびきが3つも聞こえ、
貴様の衣ずれの音が全くしない事を考慮すれば、
どういう状況か分からぬほど愚かではない。』
チイはゆでダコのようになった。
汚れた裸を見られるよりまだ悪い。
3人相手に思いっきり乱交した直後の状況まで、モロに悟られてる。
『女の子相手に、もう少しデリカシーないの?!』
思わず口に出しそうになった『草』らしくないセリフを必死に飲み込み、
心の中で思いっきり中指おったてた。
『万一出会えたら、金玉絞りつくしてやるううっ!』
『やり口からみて“影(シャドウ)”のようだな・・・』
平然とした口調に、チイの赤い顔が、急速に色を失う。
名高い特殊部隊ニーベルゲンですらも、
未だに殺しきれていないリヴァールの暗部に棲む妖怪。
元々軍に多大な影響力を持つと言われているが、
さらに掌握の度を深めようと狙った事件なのだろう。
わざわざ『草』に、この名前を教えるという事は、
注意せよと言う意味を含ませているようだった。
実際、用心深く、極端に臆病なほど慎重な“影”は、
何人もの『草』をあぶり出し、消している。
『これまで通りの連絡を頼む』
通信が切れた。
「これまで通り・・・か。言ってくれるじゃない。」
“影”が動いてる事を知って、なおかつこれまで通りの諜報活動を続けるのは、
自殺行為に等しい。
だが、相手はにくったらしいことに、チイの能力を高く買っていた。
『草』が無能力者なら、『連絡は中止』とあっさり見捨てるだろう。
そして最後の『頼む』のひと言が効いている。
『期待している』というスパイスがそっと仕込まれている。
チイはこういう頼まれ方には、とても弱い。思わず毒づいてしまう。
「全く、“悪魔”のような相手ね」
チイは、話した相手の顔も正体も知らないが、
まさか本当にそう言われているとは、夢にも思っていなかった。
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