■ EXIT      
船ババア その1

エシュ・グレシュ。
船ババアと呼ばれる、港湾で安い食い物を商う屋台船の老婦人。
若いころはそれなりに美人だったかもしれないが、 今は日に焼けてしわくちゃの、干し固めたようなバアサンである。

『あそこの女が誰か1人でも降りてこんかな?。』
儲かる商売をしたいと必死で願っていた老エシュは、 娼艦エメラルドが4日泊まることを聞いて、 なにげなく船を寄せて見上げた。

だが、船のチェアに座っているエカテリナを見て、 本気でそれを願ってしまった。
元女の自分ですらどきりとするような姿に、 あれがもし手伝ってくれたら・・・。

できるなら、船を空に飛ばしてでもかっさらいたいと思った。

30分あまりも、ほれぼれと見ていたエシュは、 その帽子が風に舞ったとき、反射的に船を走らせていた。

白い帽子が、幸運の青い鳥に見えた。
エカテリナがタラップを降りてきたときは、それこそ舞い上がってしまった。

そして、かっさらったエカテリナに、本気で頼み込んだ。
正直真っ向『あんたで商売がしたい』と。

儲けは折半、ちゃんと船にも返す、この老人を哀れと思って手伝っておくれ。
必死の願いは、あまりにあけすけで怒るより可笑しくなってしまった。
自分で乗ってしまった上に、元々こういう生真面目なお願いには弱い。

まして、この老人の頼み方は、何か半端でない必死さがあった。
思わず苦笑しながら聞いてしまった。
「どうすればいいの、おばあちゃん?」
「エシュと呼んどくれ。」
とニタッと笑った。

船ババアだけあって、港の事は裏まで知り尽くしている。

特にスケベで金を持っていそうな船長や、商人の所へ船で回ることにした。
この町は、エメラルドの寄港地だけあって、 その手の組織がいない空白地帯、個人の売春も大目に見られている。

エカテリナも今回は技術指導員なので、何の制約も無い。
なんだか、こっそりスリルを楽しんでいる気分で、ウキウキしてきた。

船底の部屋を空け、どこからか中古のエアベッドを運び込み売春宿としてしまう。 もちろん、エカテリナも嬉々として手伝っている。
ここに男を引っ張り込んで、エカテリナを売るわけだが、「私をいくらにするつもり?」老エシュが提案したささやかな金額に、エカテリナは吹き出した。

「この金額でだいじょうぶ、一文もまけちゃだめよ。」
エカテリナが言う金額に、エシュは腰を抜かしかけた。
働き盛りの港湾労働者が、一月働いても追いつかぬ額である。


「ちょいと、旦那旦那。」
良くオカズを買う屋台船の船ババアから、それこそいわくありげに小声で呼びかけられ、 はげて恰幅のいい船長は、なんだと耳を寄せた。
この船は最近景気が良く、所有者兼船長の男は、かなり金を持っている。

「うちの船に入ってごらん、目の玉が飛び出しますよ。」
声をひそめるだけひそめ、それでも興奮しきった口調である。
好奇心旺盛な船長は、気軽に乗り移った。

そして、暗がりの中に腰掛ける女性を見て、本当に目の玉が飛び出した。
ランプのおぼろな明かりの中、物憂げにベッドにかけている女性、 その目の憂いと光、たおやかな肢体、全身から漂う気品、 蒼い蒼い目が、男を誘いかけていた。
見ている間に船長の息が上がってくる。

その手がベッドをさわりとなでる。
そのしぐさに、男の血が沸騰する。
元々絶倫で女遊びがメシより好きという船長は、一気にのぼせ上がった。
「い、いくらだ??。」

エシュのささやく金額に、財布から見もせずにつかみ出し、押し付けた。


ほっそりとした首筋が、深々と頭を下げる姿勢の中に青白く浮き上がる。
「今宵は、かわいがってくださいませ。」

けだるげに、しかし、妖艶な響きを帯びた声がヌラリと耳をなでた。

まといつくように服を脱がし、 細くしなやかな手が、淡いピンクの唇が、甘いと息が、 船長の身体を、耳元を、へその下を、這いずり回る。

甘い体臭がまといつき、温かい肌が触り、 輝く金髪や蒼い目、白い肌が目を射るように淡いランプの光で浮き上がる。

服を脱ぎ捨てようとしていた船長は、身動きできぬうちに服を脱がされていた。 まるで赤子のように優しく扱われ、 自分ではどうにもならぬことに、いつの間にか服従していた。

「さあ、脱がせてくださいませ。」
薄いキャミソールを恐る恐るめくり上げていくと、生唾を飲んだ。
血管が透けそうな白い肌。 薄い布地に痛々しく隠されていたそれは、 張りのある若い肌に、女の脂が淡く乗り、吸い付くような肌触りで手を焼いた。

可愛らしい乳房が、ふっくらと盛り上り、 そのプリンとしたふくらみ、サクランボのごとき先端に触ると、女がため息を漏らした。
「はふ・・・」

脇の下のずきりとする様な輝き、乱れる金髪、上気した頬、 深い深い蒼の目。

これだけは高級品らしいレースの下着は、すでに湿り気を帯びていた。

言葉すら出ぬまま、それをそっとつまみ、ゆっくりと下ろす。
粘り気のある糸が、肉の合間から布に伸びた。

「はうううんっ!」
そこに思わずかぶりつき、甘い体臭の溶液をすすり、舐める。
口から鼻に抜ける甘美な香りに、船長は我を忘れた。

あぐらをかいた船長のヒザに、 天性の恥じらいを見せながら、 女の細いしなやかな腰が、跨り、降りていく。
すでに露を含んだ艶やかな淫花が、楚々と開いていく。

チュク・・

濡れた粘膜が、抵抗と降伏を見せながら、いやらしい音を立てて飲み込んだ。

「く・・・」
細い腕がたくましい首にからむ、 女の腰がゆっくりと、震えながら降りていき、 船長の黒光りする男根をゆっくりと、その中に飲み込んでいく。

ズグン、ズグン、

ペニスが、一気に膨張しようと荒れ狂い、 狂おしい快感に、身悶えする。

華奢で繊細な銀細工のような身体が、 柔らかい熱が、肌に吸い付いて離れない。

船長も、童貞の少年のように、 包み込み、蠢き絞める感覚に、必死に絶え、射精を押しとどめた。

「んあっ、はっ、はっ、あっ」
どちらが動き出したのだろう。
女の身体が上下し、男の腰が力強く突きあげる。
潤んだ目がきらめく。

ドロドロの溶鉱炉の中のように、熱くたまらない。

歯がきしみ、身体が硬直する。
わななく女の身体が、吸い付き、すすり上げ、締め付ける。

「あはあああああっ!!」
ドクンッドクンッドクンッドクンッ・・・

声を上げてのけぞる、細い身体を抱きしめ、 熱い煮えたぎる奥に、エクスタシーがほとばしっていく。

わななく肌が、熔けて、合わさる。 何もかもが、女の胎に流れ込んでいく。 だが、熔けて崩れそうな快楽の中から、 妖しい蠢きが男を目覚めさせる。

赤い舌が男の首筋の汗を舐めた。
細い爪が、ぎりりと背筋を赤く彩る。
しなやかで細い脚が腰を締め付けると、 蕩けかけたペニスが唇にもてあそばれるような快感に包まれ、締め上げられた。
「くうおっ!」

声を上げた口を、世にも甘いキスが塞ぎ、 腰が、身体が激しく蠢き出す。

老エシュが、フカリとキセルの煙を吐いた。

ようやく激しいきしみが止まり、 魂を抜かれたような顔の船長が、ふらふらと出てきた。


エカテリナは身体の手入れをしながら、 くすくすと笑っていた。
こんな変わった場所でするのは初めてだったし、 場末の娼婦を演じるのも、面白かった。

変な匂いのする船底の部屋も、 貧しいベッドや薄暗いランプの明かりも、 彼女には興味深い。

ルイーデの教育は徹底していて、 いろんな女を演じ、見せるのも商売のうちと、 ランプや暖炉の明かりで演じるやり方も教わっていた。
ランプを使うのは、今回が初めてだったが、 『お客様の反応は上々だったわ。』
館で試してみても面白いわね、と超ボジティブなのです。


ふとおいしそうなにおいが漂ってきた。
「ええとエカテリナ、ちょっと食べないかい?」
老エシュは財布にいっぱい入った金に、どぎまぎしながら、 恐る恐る尋ねた。

船ババアの店は、港湾労働者や、船乗りたちに、 いろんな惣菜を安くおいしく食べさせる。

エカテリナの気を引こうと、エシュも必死で色々おいしそうな惣菜を作っていた。
元々人気のある船ババアなのだ。

「うわ〜、おいしそうですねえ。」
魚の切り身を煮たり揚げたり、団子にしてゆでて独特のソースをからめたりと、 色々だが、中でも特ににおいのいいのは、サンシンという細長い40センチはある魚を、
あっさり炭で焼いた物だ。

「こいつ(サンシン)はこの港が北国一あつまる港なんだよ。
上のやつらは安くて下品なんていうが、いきのいいサンシンにかなう魚はいないよ。
漁師たちなんかは、生きてるうちにさばいて、生で塩とレモンで食べるぐらいさ。」
感心して食べながら、エカテリナはあることを思い出した。
そしてクスッといたずらっぽい笑いを浮かべた。
何か、思いついたらしい。

「ああおいしかった。さあ、次はどんな方ですの?」
何のくったくも無いにこやかな笑顔に、老エシュはむしろ恐れに似た感覚を覚えた。
食べ方は上品だが、4人前は作っていた料理はほとんど消えていた。
何だか食べ物が男に見えてくる。

さっきの船長はまたきてくれと、泣くように懇願していた。
あのドスケベで遊びまくった有名な船長がである。

『あたしゃ、とんでもない人間を釣り上げちまったんじゃないだろうか?』
まさしくその通りだった。




・・・そして次の客




「んはっ、んっ、あはっ!、あんっ!、あんっ!、ああ〜んっ!」
甘いあえぎが、船底部屋にいっぱいに響き、 腰を狂ったように突き上げる男の脳髄を蕩かす。

美しく長い腿を、太った両腕に抱え込み、 太い肉茎が、可憐な秘花を今にも散らさんばかりに広げ、 根元まで、亀頭が挟みつけられるまで突き入れる。

たぎりにたぎったペニスが、今にもはじけんばかりにふくらみ、 エカテリナの胎内を犯していた。

のけぞった身体が、妖しくくねり、 金髪が汗に光り、打ち振られる。

可憐な少女の瑞々しい肢体、 汗に輝くしっとりした肌、 耳を熔かさんばかりのあえぎ声、 そして、

ジュブッ、ズッ、ズッ、ズブブッ、

引き抜くのが苦しいほどの快感、 押し込むたびに、まといついて離れない粘膜。

「ああんっ、いいっ、いいですうっ!、もっと、もっとくださあああいっ!」
嬉しげに、腰をくねらせ、ヴァギナを締め付けながら、 醜い男の物を欲しがった。

エカテリナにとって、性欲に燃え盛っている男性は、 むしろ可愛らしく、扱いやすい。
彼らの激しい欲望は、エカテリナにとって嬉しくて、気持ちよくて、たまらない。

「うっ、でっ、でるっ、飲んでくれっ!」

「はいっ!」

ちょっとだけ残念そうな顔をしながらも、エカテリナは喜んで身を起こした。
甘美な唇の感触が包み、舌先が尿道をつついて、開いた。
「うおっ!」
ドビュッ、ドビュッ、ドビュッ、ドビュッ、

すごい勢いで、濃い精液が口いっぱいにひろがり、 男の匂いが鼻に抜ける。

口に広がり、喉を落ちていく感触も、あそこにジンと染みるような快感があった。

コクッ、コクッ、コクッ、

恍惚とした目をしながら、舌をからませ、喉を鳴らして飲み込んでいく。
オークに嬲りぬかれ、その強烈な精液を正気を失うまで飲まされたエカテリナは、 今や、どんな男性の精液もたまらない美味に感じてしまう。


うっとりと最後の一滴まで吸出し、さらにきれいに嘗め尽くした。
見る見る元気を取り戻すそれに、 エカテリナは柔らかな頬をほおずりした。

「今度は、子宮(なか)にいっぱいくださいね。」
何度もペニスにキスをされ、男は再び昇天しそうになる。
「ううっ、うおおおおんっ!」

醜い豚のような顔の男は、思わず泣き出した。
どんな娼婦相手でも、ここまで言ってもらえたことが無い。
あまりにオークに似ている為に、怖がられ、嫌悪されてしまうのだ。


オークに何度も嬲られたことのあるエカテリナは、 少しもオークに似てるなどとは思わない。 彼女にとっては、あどけない目をした可愛らしいおじさまであった。

蒼い目が優しく見つめると、 心にあったこわばりが、トロトロと崩れていく。

チュッ、チュッと、濡れたあばただらけの頬をキスすると、 今度は男を押して、自分が上になる。
「ああん、すごい元気ですうぅ」

上気した顔でペニスを愛しげにキスしながら、その上に跨っていった。

華奢な身体の中に、暴力的なペニスがズブズブとのまれていく。
その淫靡な光景と、包み込まれる強烈な粘膜の吸い付き、 そして、足をひしと絡め、離すまいとぐいぐい引き寄せる。
嬉しげにあえぎ、蒼い潤んだ目で見つめながら。

男はいつ死んでもいいとまで思った。

「あんっ、あっ、あああんっ!」
身体の中を上下する、太い肉のカギ、 粘膜がひっかけられ、強烈な快感が深く中まで刻まれて、 思わず身震いして歓喜する。

「ああんっ、これっ、これすてきいいっ!」
思わず腰をくねらせ、ひねって気持ちよくする。

本心からこの美少女が喜んで、SEXしていることに、 男は無上の喜びを覚え、もっともっと喜ばせたいと燃え上がる。

熱い雫が、 律動するペニスを覆い尽くす。

かぶさり、からみつき、深く交わる。

跨った細い裸身が、美しく上下し、 そして、覆いかぶさって、男の醜い顔に優しくキスをし、 腰を激しく蠢かせ続ける。

その蒼い目は、純粋なまでに輝き、 その中に放り出された男は、戸惑い、迷いながら、 輝きの中に溺れてしまう。

うめき声とともに、 強烈な快感がほとばしった。

「はああんっ!、くるっ!、くるっ!、くうううううっ!!」
弓のようにのけぞり、身体を上下に何度も痙攣させる。

甘美で強烈な締め付けの中で、

ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクッ、ドクッ、

鈍く激しい響きが、濡れた襞の中に激しくほとばしって、 エカテリナの美しい眉を震わせた。 甘えつき、心から満足した笑みを浮かべてキスをするエカテリナに、 生きていて良かったと心から思わされる。

「あはっ、また元気になってきた。まだまだだいじょうぶですよね。」

柔らかな温かい、蕩ける粘膜の中、 男の分身は嘗め回されるような感覚に、むくむく膨れ上がる。

裏表の無い笑顔をむけ、腰を動かし始めるエカテリナに、 ツイギーは涙が出て仕方がなかった。

すでに魔性の娼婦と呼ばれ、あらゆる男を狂わせるといわれたエカテリナだが、 その本当の恐ろしさは、どんな男も溺れさせる、際限のない愛情なのかもしれない。

「バアサン、ありがとよ。」
餓鬼のようのに金を集め、守銭奴とまで言われた男が、 エシュにぽんと札束を渡した。
最初にしぶしぶ払ったというのに、それよりさらに多額の金をである。

「ツイギーさん」
エカテリナが後ろから呼びかけ、ツイギーは振り返って目を見張る。

明るい日差しと、波のきらめきの中、 ドレスをまとって甲板に現れたエカテリナは、まるで物語に出てくる妖精のようだ。 白く長い手袋をはめた手が、醜い顔を包み、そっと引き寄せる。 手足ががくがくと力が抜けていく。
抱きしめる細い身体が、ひどく熱く感じた。

甘い唇の香りと、ルージュの痕が夢の名残を残していた。
外見の醜さで、傷だらけだった男の心が、ひどく熱くそして温かくなる。

『こんなにすげえ女と、俺はしちまったのか?』

もう、自分の醜さも、惨めさも吹き飛んでいた。
後に、ツイギーはエメラルドのあとを追っかけ、 ついにはルイーデの館を訪れるようになる。

彼がリヴァール有数の大商人となっていくのは、そう先のことではなかった。
次の話
前の話