■ EXIT      
淫乱マタニティ(前編)

温かく、満たされた闇、

どくん、どくん、
緩やかな鼓動のリズム、羊水の響き、

目覚めの時を待つ胎児が、
その鼓動の合間に、
不思議な歌を聞いている。


いる、いる、ふらむふぉん、いあ、いあ、ふぁすてぃ
いる、いる、ふらむふぉん、いあ、いあ、ふぁすてぃ、
ふぉれんす、いああるろぬ、はてるらむ、かれんてぃ・・・






「んんっ、はあああんっ、あんっ、あっ、あっ、そこっ、」

「んっ、ぐうっ、おおおっ、」

汗に濡れた金髪が、シーツを激しくこする。
かきいだく白い腕が、爪の痕をたくましい背中にのこす。

開き気味の足が、ひくひくっと震え、 合間に攻め込んできた手が、のたうつたびに広がりを大きくする。
あえぐ唇が、淫らに声を上げ、歓喜に震え、舌を淫らにくねらす。
美しい蒼い目が、恍惚に染まる。

エカテリナの白い肌は、今やこれ以上は考えられぬ光沢を持ち、 吸い付く感覚は、深くどこまでも男をいざなう。

右手が陰嚢をやさしく包み、さわさわとなで上げ、 指先が肉茎を挟み、残酷にしごきあげる。

「うおっ!」

ぞくんぞくんぞくん、
ウェモンが必死に己を押しとどめ、歯を食いしばって耐えた。

館の調教師や訓練要員でも、ひとたまりもなく射精するテクニック、 耐え切れただけでも、たいしたものだ。

すがりつく白い肌、絡みつく細い手足、 甘く情熱に蕩けるキスが、魔物のように男の精を吸出し、 全てを破滅させようとすすり上げる。

さしものウェモンも、限界が近い。
太い血管が、弾けんばかりに膨れ上がり、 膨張した男根は、巨大な蛇とも見間違いそうだ。
彼の限界を見こしたエカテリナが、そっとつぶやく。 「きて・・・」

恥じらいを含んだ、そっと開く足、 目にまぶしい白い肌、しっとりと潤った谷間、 だが、その上のかすかなふくらみに、わずかに逡巡する。
手がすべりこむように伸びた、 脚が、ぐいとからみついた。

ズブブブッ
「んっ、あはああああんっ!」

すがりつく身体に引きずり込まれ、巨蛇はぬれそぼる穴倉に突き進んだ。

ひさしぶりの、強烈で熱い感覚、 一瞬、エクスタシーが脳裏に弾けた。

ぞくん、ぞくんっ、ぞくんっ、

粘膜の歓喜が、蠕動となってまといつき、幾重にも締め上げ、こすりつける。
蛇も、身震いし、突き抜けそうな衝動に、必死に耐えて、

ズムッ、

うねりとざわめきの中、ざらつく深奥を突き上げる。
抱え込まれた両脚が、びくんと歓喜に震える。
絡み合う細い足首が、腰を深く引き込む。

巨蛇は、華奢でほっそりした裸身の奥を、喰らいついた。

「はひいっ!」

これ以上は無いような、蕩ける笑みを浮かべ、 征服される喜びに、エカテリナは全身で応えた。

肉の壁を思わず喰らい、細くすらりとした腿を裂きそうなぐらいねじこみ、こね回す。
「はあんっ、いいっ、いいっ、とても、とっても、ああっ、ウェモン、ウェモンっっ!」

乱暴な、何もかも突き壊してしまうような律動も、 エカテリナにとっては、最高の悦楽でしかない。

身体ごとゆすられ、突き上げられ、 乱れに乱れる裸身が、淫乱にのたうち、輝く。

『この奥に、誰かの子供がいる』
何とも言い知れぬ嫉妬と、ねたましさで、 狂い猛る律動に、エカテリナは全身を乗せて受け止める。

「いいっ、いいっ、もうっ、もうっ、だめっ、いくっ、だめええっ、いっちゃうううっ!!」

のけぞり、腰を突き上げてわななく、 たまりかねて、ウェモンものけぞる。

「あうううううううううぅぅぅぅぅ!!」

ドビュウウウッ、ドビュウウウッ、ドビュウウウウッ、ドビュッ、ドビュッ、ドビュッ、

脈動が、子宮にぶち当たる。
閉ざされたふくらみが、精の熱でかすかに震える。
ぴくん、ぴくん、

『ああ、中で・・・動いてる・・・』

潤んだ目が、放心したように揺れ動く。

でかい男性に貫かれながら、その柔らかな肉体は、 暴行同然の暴力を受け止め、飲み込んでわななく。
あふれる精液の流動が、粘膜の中をヌルヌルと蠢いている。

「とっても・・・、すてき・・・・」

淫乱な微笑を浮かべ、上気した美貌は、たとえようもなく淫らだった。

ひさしぶりのSEX、 がまんにがまんを重ねていただけに、エカテリナはものすごくHな気分だ。

考えてみれば、初めてのSEXから、 SEXしない日が珍しい彼女が、妊娠から安定期まで1ヶ月がまんしていたのだから、 これはもう大変である。


深く絡み合わせたまま、エカテリナの身体が蠢き、 萎えかけた男根を、きゅっと絞り上げる。

「うおっ」

たちまち、蛇は頭を持ち上げた。

「さあ・・・、もっともっとくださいな。」



通常、妊娠から安定期まで3〜4ヶ月かかるのだが、 わずか1ヶ月で、彼女は安定期に入っていた。

胎児の成長の異常な速さに、マツグランお抱えの闇医師は判断がつかないとさじを投げ、
それを聞いたフェリペ夫人が、 フェリペ家のお抱え医師とでも言うべきシャロット・エナス医師を送り込んできた。

30代前半の知的な容貌を持つ女性医師は、エカテリナを診断してため息をついた。
「成長速度はおおよそ3倍ですが、それ以外は極めて順調です。」

正直言えば、フェリペ夫人から厳しく釘を刺されていないなら、 このエルフの娼婦について、徹底的に調査してみたいところだ。

順調すぎるのだ。

経験豊かな女性ならまだしも、初産で全くもって異常が無い。 つわりすら全く無い。

妊娠の安定度測定では、ありえない理想値をたたき出した。
まるで強力な庇護か、魔法の助けでもあるかのようだ。

「1ヵ月後に安定期に入ると思われます、 現在でもほぼ安定期と言っていいでしょうが、念のために激しい運動や刺激は避けてください。」

安定期になれば、SEXに不都合は無いと言っていい。

一ヶ月がまんしたエカテリナは、 その飢えと渇きを満たすように、ウェモンと激しく身体を重ねていった。

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「なんだ、この波動は・・・?」
これまで感じたことも無い魔力の波動が、魔道担当官レッサヴァイ・ゼノバの脳裏に響いた。

強い力ではないが、奇妙なリズムを持ち、 何かの呪文か、言葉をつむいでいるようだった。

リヴァール連合は、ERに何度も苦渋をなめさせられてきた。
高い技術水準もだが、 強力な魔法部隊によるゲリラ活動や、情報かく乱等もバカにならぬ被害を受けてきた。

リヴァール連合も、遅ればせながら魔道担当官を組織し、 国内でのスパイ活動や、情報かく乱を防ぐ活動を行っていた。

レッサヴァイは、即座に各地の魔道担当官に念話で情報交換を行う。

恐ろしく広い範囲に、この波動は伝わっていた。

『どうやら中心は、フォルティエ自治区、マンノース自治区、リヴァール王都南部、 この隣接する三つの地区あたりにあるようです。』

若い担当官が、情報をまとめた。

『もう少し絞り込めないか?』
漠然とした広さにレッサヴァイは眉をしかめた。
『あまりに時間が短すぎました、現在の担当官の人数ではこれが限界です。』
どこも新しい組織は、割を食うものだ。
魔道担当官は、まだ適合者も少なく、ようやくまともな活動ができるようになったばかり。
情報局の強力なバックアップがなければ、議会や一部の軍の圧力で潰されかねない。
それだけに担当者たちは良くがんばり、かなりの実績を上げていた。
だが、反面それをさらに敵視し、虎視眈々と睨んでいる連中もいる。

レッサヴァイは、熟考の末に一部担当官を裂いて、 その追跡をさせることにした。

『あらゆる問題は、その芽の内にどう対処できるかで決まる』
苦労人の彼は、己の哲学を信じて行動を開始した。
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