開かずの間
先日の海軍基地の火事騒動で、ルイーデの館は名を上げ、若い軍関係者が大勢来るようになった。
人が集まる店は、より多くの客を呼び寄せる。
にぎわう店で、珍しくエカテリナはぽっかりと時間が空いていた。
予約がぜんぜん取れないと客が嘆くほどの人気だが、
まれにこういう時もある。
通路に出ると、入り口のにぎやかさが一層増したようだ。
実はこの時、海軍基地の野戦病院で、シアンとその他の女たちによる、
出張サービスが盛大に行われていて、それを隠しカメラで見ていた男たちが、
これまた何人もいて、たまらず館に押しかけていた。
だが、女と部屋が足りず、館もかなり断らざるえなかった。
(さすがにエカテリナを買える客は来ていない)
にぎやかさに引かれて、エカテリナはそちらへ歩いていった。
地上3階、地下2階の大きな館は、通路がいくつにも枝分かれし、
安い女たちの区画、高級娼婦の区画、特別な趣味の部屋、厨房や倉庫、従業員施設、
そしてエカテリナ専用となっている区画などがある。
どの部屋もにぎやかに男女がもつれ合い、騒いでいるのが漏れ聞こえる。
ちょっと寂しさでうらやましく思いながら、にぎやかな表玄関をちらりと覗いた。
こういうときはエカテリナは出ていけない。
女が買えない男たちの不満が増大するからだ。
『あら?、こんな所に通路が・・・』
男性用の化粧室の近くで、普段彼女が近づかない場所に、狭い通路を見つけた。
突き当たりの部屋は静まり返り、人の気配が無い。
『部屋は満室のはずなのに・・・?』
開けてみると、割と上等な部屋だが、長く使われていないのか、
冷え冷えとして、少しホコリがしていた。
どこの宿屋や館にも、一つや二つ開かずの間というのがある。
奇妙に自殺や心中が相次ぎ、ゲンが悪いと館の者にも忘れ去られた部屋だろう。
「おっ、子猫ちゃん発見!」
振り返ると、少し酔った二人連れの軍人が、ニタニタしながら入ってきた。
ちょうど化粧室から出てきた時、エカテリナの後姿を見つけたらしい。
娼婦のあきを待っていた客のようだ。
「おおお、えらい美人じゃねえか、な、な、客待ちか?」
後ろ手でドアを閉めながら言ってるのだから、何をかいわんやだが、
エカテリナはクスリと笑った。
少し暗めの部屋で、エカテリナの微笑みは、妖しく、息を呑むような色香を漂わせた。
「私で、よろしいのですか?」
「んふ・・・」
艶然と微笑むエカテリナが、細い指先を陰嚢に這わす。
妖しい唇が、亀頭に鮮やかなキスマークをつける。
ドレスを脱ぎ、下着姿になった彼女の淫技は、
全裸のそれよりも、はるかに興奮を高める。
絹のストッキング、白いガーター、透ける淡い下着、
大柄なたくましい男二人が、小さな愛らしい娼婦の手管に、
身体を震わせて耐えた。
陰嚢がやわやわと揉まれ、唇が亀頭を包み、そっと愛撫する。
背筋がぞくぞくするような快感。
『お、思い切ってよかっったああっ!』
亀頭が包み込まれ、舐め上げられ、肉茎が爪先でそっと嬲られ、
二人は先ほどの決断に、感謝した。
『私はおいくらと思われますか?』
エカテリナは、ふといたずら心を起こして、二人に尋ねてみた。
『思うだけの額を、あのツボに入れてみてくださいませ。』
にっこりと何の邪気も無く微笑むエカテリナに、男は奮い立った。
一人がためらうことなく財布ごと投げ込んだ。
もう一人も思わずそれにならう。
『うれしゅうございますわ、それでは、今宵は精一杯尽くさせていただきます』
もちろん、エカテリナは額の多少を問うつもりは全く無かったが、
男の気持ちがとても嬉しかった。
ぐっと喉の奥まで飲み込み、舌をからみつかせる。
吸い上げながら、ゆっくりと引き抜き、
「ふあ・・・っ」
びくびくと爆発寸前の物を放し、
もう一人に咥え込み、舐め上げる。
何度も、いきそうになる寸前まで高められ、
快感が脳髄を熔かしそうだ。
両手でそっと包み込むや、微妙なタッチでなでるようにしごき上げ、すすりこんだ。
「ぐおおおっ!」
ドビュンッ、ドビュッ、ドビュッ、
猛烈な男の匂いが、口腔いっぱいに広がり、その味を喉に落とした。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、
吸われ、飲み込まれる快感が、陶然と頬を染める笑顔が、強烈なエクスタシーをほとばしらせた。
もう一人も、腰が抜けそうなほどの快感で、腰が砕けそうになる。
白い喉が鳴る音が、耳から溶けてしまいそうだ。
可愛らしい唇で清められ、舐められると、すぐさま復活させられる。
「脱がせていただけます?」
そっとホックをはずされ、まだ膨らみ始めたばかりの初々しい乳房が、薄明かりに光った。
下着はひどく濡れ、雫が零れんばかり。
「な、何て香りだ」
濡れた下着を、思わずかいでしまう。
「私より、下着がよろしいのですか?」
そっと胸とあそこを手で覆い、ちょっと寂しげに言うエカテリナ、
青いほど白い肌と、気品ある絵画のような裸身は、
見ることにすら凄まじい背徳感が漂い、思わず息を呑んだ。
「くはっ、あっ、ああんっ!、すごっ、うっ、んうっ、んっ、んううっ!」
久しく使われなかったベッドが、激しくきしみ、
甘い声が、長い空白を埋めるかのように響き渡る。
シーツが細い指につかまれ、
広げられた膝の間には、滴りがぽたぽたと零れ落ちる。
四つんばいの腰をでかい手がつかみ、ひきつけ、
ふっくらした恥丘のスリットは、目いっぱい広げられ、
ごつごつした熱い感触が、エカテリナの中を突き上げる。
ギュウッ、ギュウッ、と幾重にもからみつき、締め上げる絶妙の感触、
粘膜と襞が、強烈にこすれあい、ざらざらとペニス全体をこすり上げる。
先に吸い出されていなければ、すぐにでも達していただろう。
喘ぎながら、ピンクの愛らしい唇は、いやらしく蠢き、舐め上げる。
前に立つ男のペニスは、深く飲み込まれ、吐き出され、甘く蕩けるような舌先で嬲られる。
白い肌にごつい手がはいずり、美しい金髪を撫で回し、
喘ぐように息づく淫核をとらえた。
「んうううっ!」
思わず男ものけぞり、腰が痙攣した。
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、
「ぷは・・・ああんっ、はんっ、ああんっ、」
なめらかなお腹がピクピクと震え、
中にほとばしっている感触が、ほっそりと美しい裸身をのけぞらせ、色っぽく喘がせる。
潤んだ目が、繰り返し突き上げられるたびに、揺らめき、閉じられる。
男性の熱い精が、身体の奥底まで染みとおるかのように。
エカテリナの口で、存分に高ぶった男根はそそり立ち、
滴る花芯が、ゆっくりと包み込んだ。
「くふっ、あっ、あああんっ!」
ズブ、ズブ、ズブッ、
跨る身体を、引き裂かんばかりに、
脈打つ男根が、割り込んでいく。
『ああ・・・、血が、脈打って、お腹に、響いて・・・』
「はううっ!」
突き上げられ、身体が浮き上がる。
突き当たる衝撃に、細い眉が震え、わななく。
淡いふくらみが、激しく喘ぎ、ピンクの乳首が勃起し、震えていた。
だが、獣欲はそれに反応した。
「ひあっ、あっ、ああっ、あっ、あぐっ、ぐっ、あひっ、ひっ、」
ばね仕掛けのように、鍛えた腰が跳ね上がり、細い身体を繰り返し突き上げ、
白い喉から悲鳴に近い喘ぎをあふれさせる。
「うおっ、ぐっ、どっ、どおだっ、いいかっ、いいかっ!」
金髪が激しく振られた。
「はいっ!、あっ!、いっ!、いいっ!、いいですっ!、すごっ!、いいっ!、」
声と共に、肉襞が締まる、
喘ぎと共に、腰がくねり、腿がぞくぞくするほど絡みつく。
雫が白く、だらだらと流れ、
あふれた愛液と精液のカクテルが、腿を伝い落ちて光る。
後からたまりかねたように、身体をつかみ、押し倒した。
「ひあっ、あっ、ああ〜〜っ!」
ミチッ、ギュッ、ミチッ、
薄茶の可愛らしいすぼまりに、それが、無理やりに押し込まれる。
シーツが破れんばかりにつかまれ、
細い身体が震え、のけぞる。
『入って、入って・・くるっ!』
唇が喘ぐ。
舌が震える。
貫かれて、白い肩がのけぞる。
「くあはあああんっ!」
胸の上で震える白い裸身、熱い肌、
濡れて、透ける白いストッキング、
甘い喘ぎ、
白い背筋の、わななきと吐息、
ビクンッ
凶暴な獣が動き、突き上げる、
「ひあっ、あっ、あひっ、ひっ、ひあっ、はひっ、ひっ、こわれっ、るうっ、ああっ」
悲鳴とは裏腹に、身体はすがりつき、腰は淫ら極まりなくくねる、
後からかぶさる腕にしがみつき、熱い肌がすがる。
白く蕩ける裸身、甘く受け入れ、からみ、飲み込んでいく粘膜、
汗と愛液が弾け、歓喜と絶叫が流れあう、
痙攣する肌に、脈動がほとばしり、
のけぞる腰の奥へ、熱く煮えたぎったマグマが放出された。
「ひあっ!、あっ!、いくっ、いくうううううううううううっ!!!!」
血脈が激しく打った、
身体が串刺しにされ、脈動が轟いた。
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、
ビュグッ、ビュグッ、ビュグッ、ビュグッ、
「かはっ・・・、はっ、・・・はあっ、・・・あぐっ・・・」
身体の中で、グチャグチャとかき回され、泡立っている。
エカテリナの肌が震え、痙攣する。
男たちが、激しく射精し、胎内をこね回している。
男の精が、ジンジンと染み込んでいる。
『きもち・・・いい・・・』
うっとりとしながら、
エカテリナは、まだまだ元気そうな男たちを、締め付けた。
「いや、確かにあの部屋で遊んだんだよ」
「そんなことを言われましても、お客様。」
7日ほどして、あの夜のことが忘れられず、金を工面してきたらしい二人連れは、
館の窓口でもめていた。
あの部屋で遊んだ女の子に会いたいという二人に、
受付は戸惑いを隠せない。
「これは、御内密に願いたいのですが、
あの部屋、オキニスbは2年前に閉鎖されて、一度も鍵を開けていません。」
3組続けて心中が出たため、さすがにゲンが悪いと開かずの間にしているという。
「それに・・・、説明より見ていただいた方がいいと思います。」
さすがに受付は言いよどみ、部屋の前へ案内した。
細い枝道の奥は、物置のように使わない大きなものがごたごたと置かれ、
奥の扉には、何本も太い木が打たれ、開かないようにされていた。
さび付いた釘は、2年の月日を克明に物語っていた。
二人の陸軍下士官は、本気で青ざめた。
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「まったくもう」
ルイーデは苦笑いしながら、ちらりとエカテリナを見た。
エカテリナは珍しく額に汗などかきながら、あさっての方を見ていた。
「あの二人が酔っ払ってたからいいようなものの、気をつけなさいよ」
とたんにエカテリナは顔を赤くしてうつむいた。カの鳴くような声で、
「ごめんなさい・・・」
実は、あの枝道の横に、もう一つ隠し扉があり、
枝道から秘密の部屋に続いているのだ。
顔や名前を知られたくない大物や、宗教関係者が、こっそり遊びに来るための部屋で、
それこそめったに使われない。
エカテリナは館を巡っていて、構造の不自然に気づき、通路を見つけたのだった。
それに、エカテリナの本当の値段を知ったら、
下士官二人の財布ぐらいではおっつかない。
幽霊相手にしたと思われるのが、一番いいだろう。
「それにしても、変ねえ?。」
ルイーデが本気で首をかしげた。
「なにがですか?。」
「あの部屋の鍵は私が持ってるのよ。それなのに何で入れたの??。」
「え・・・???」
こういう館には、たまに不思議が起こるようである。
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