■ EXIT      
縄目

「ひっ、ひああっ、こっ、こすれちゃうっ」
目隠しをされたエカテリナが、喘ぐように叫んだ。

白い身体に、幾重にも巻かれた縄、 それも、太く、荒く、エカテリナにめり込むようなグロテスクな縄。

両手を後に縛られ、その縄がきれいな愛らしい乳房をクロスに絞り上げ、 へそを囲むようにダイヤモンドを描き、 腿の付け根であそこを挟み込むように巻かれ、細い締まった足首を拘束する。
荒い縄の感触が、肌に、乳房に、そして花弁をこする。

たった一本の縄、それがエカテリナの全てを拘束し、 そして美しく淫らに絞り上げている。
視覚を奪われ、身体の感触だけが、 じりじりと焼けるように感じる。


喘ぐ動き、悶えの震え、 全てが縄に伝わり、縄が責める。

まるで、巨大な蛇と化したかのように、 エカテリナの動きに、あえぎに、悶えに、 縄がうごめき、白い肌を、やわらかい乳房を、震える花弁を、

ざわり、ざわり、ざわり、

「はあっ、はあっ、ああ・・・・」

美しいピンクの乳首は、痛いほど勃起し、 肌は淫らに、鮮やかな桃色を散らした。

美しいすらりとした腿が、広がるだけ広がり、 縄で微妙に見え隠れする陰花から、 美しい滴りが、キラリ、キラリ、と輝き落ちる。

薄暗い室内で、エカテリナの痴態だけが、 スポットに照らされ、鮮やかに浮かび上がる。



広大なブドウ農園をもつ貴族が、 縄師と呼ばれる『縛り』の芸術家を連れて来た。

縄師が一目で見初めたのが、エカテリナだった。



「すごい、すごい、これほどのエロスは初めてだ」
貴族は恍惚として、エカテリナの姿に見入っていた。

痩せた顔色の悪い縄師も、めったに見せぬ満足げな笑みを浮かべていた。 これほど素直で柔らかい身体をもち、美しく縄の映える女性は、記憶に無い。 ぐいと縄の末端を引いた。

ズルズルズルッ、

「んあああっ!」

縄目が、急激に絞り上げられる。

乳房が痛々しく絞られ、 肌に荒縄が食い込む、肌が赤みを帯び、 真っ白く美しい腿が、ぎりぎりまで広げられた。

羞恥と傷みが混ざり合う、強烈なエクスタシーが全身を犯した。

太腿が震え、身体が反り返る。 あそこが熱く煮えたぎるような錯覚。

苦しいはずなのに、恥ずかしいほどに開かれているのに、 なぜか気持ちいい、 喘ぎとよだれが、銀色の雫をこぼす。


一気に、目隠しがむしり取られた。

「いやあああああっ!」
光が照らし出す。 自分の痴態が、さらしものにされてる。
恥じらいが、汗が、ライトに照らされてはじける。
陶酔する蒼い瞳が、潤み、輝く。

「うおおおおっ」

貴族の声が上がる。

一瞬のきらめきが、見事な美を演出する。



縄が拘束位置を変えた。

身体が前に折れ曲がる。

両膝がぴたりと閉じ、ひざから首につなげられる。
両手は後ろに縛られ、がっちりと縛られた。
両足首も縛られ、身動きもできない。

きつく折りたたまれた白い肌、 震えるなめらかな背中。
苦しげなあえぎと、ゆれる金髪。

白い尻があえぎに動く。
苦しげな息遣いが、見る者の興奮を掻き立てる。



キリキリキリ・・・

一気に縄を解かれ、解かれた肉体が安堵の息を漏らす。

縄は滑車に取り付き、エカテリナのほっそりとした両手首を縛り上げ、 情け容赦なく引き上げる。

ぞくぅっ、ぞくぅっ、ぞくぅっ、

かすかな痛みと、縛られ引き上げられる感触、 周りは闇、自分だけが光りに晒され、引き上げられる。
痛みか、快楽か、分からないものが背筋を走り抜けていく。

「ひあああっ、ああんっ、だめえ・・・、ひいいい・・・」

両腕を吊り上げられた無力な服従から、 痛々しげに引き伸ばされる腕と肩、 幼さの残る胸が、汗に光り、 しずくが、へそから下へと降りていく。


縄の一端を、しなやかな足へ巻きつけ、 片方ずつ膝が、幾重にも巻かれ、ぐいと引き上げられた。

「んあああっ、ひっ、ひっ、ひいいっ」

持ち上げられていく白い肢体、 ゆらゆらと揺れるエカテリナの、白く妖しい姿。

両膝が両手首のところまで持ち上げられ、 家畜を縛るかのような、拘束されたような眺め。

細い首が後に曲がる、
金髪が揺れて輝く、

ぽたり、ぽたり、
可愛らしい尻が、滴りを落とす。
愛らしい花芯から、とめどなく露をあふれさせる。

「はあああ・・・、はあああ・・・、」

恥じらいと、興奮と、潤んだ目が喘いだ。


ぎりっ、ぎりっ、ぎりっ、

両脚がさらに上へ、そして左右へ広げられる。

もう、エカテリナはなすがままだ。
服従する体、服従する快楽。

ゆっくり、ゆっくり、
柔らかな女体が、形を変え、姿勢を変え、
両手を拘束されたまま、足だけが中にYの字に広げられる。

『ああ・・・広がっちゃう・・・恥ずかしい・・・』

恥じらいの色香が、ゆっくりとした動きに掻き立てられ、 頬を染め、身体を震わせる。
スポットライトが、残酷に全てを照らし出す。

ぎりぎりっ、ぎりっ、ぎりっ、ぎりっ、

さらに手が広げられ、身体の位置がずれていく。
右足が一直線に天を指し、 左足が45度に開かせ、顔が茂みの真下に引かれた。


蜘蛛の巣に捕らわれた蝶のように、 縄に捕らわれた哀れな蝶は、かすかに羽ばたいた。


「ひあっ・・・あっ・・・はあっ・・・」
小さな喘ぎが、クライマックスを伝えていた。

細いつま先が、縄をかすかに揺らし、静かに震えた。



「ううむ・・・あれほど縄が似合う女がいたとはな。」

たっぷりとエカテリナの痴態を堪能した貴族は、 複雑な顔をしながら、縄師に声をかけた。

「さようで。」
めったに口をきかない縄師が、 珍しく主人の言葉に同意した。

「わしがあと10年若ければ、あの女を堪能する所なのだが・・・」
高齢の貴族は、すでに十分な勃起が出来なくなっていた。
縄の美に魅せられている間だけ、強烈なエクスタシーを感じるのだった。

「今宵はお楽しみいただけましたでしょうか?」

先ほどまで、散々に責め立てられたエカテリナが、 薄桃色のドレスに身を包み、優雅なしぐさで現れた。

上気した頬と、初々しい微笑み、 老齢の貴族すら、少し頬を赤くした。

「もういいのか?、ずいぶんと無理をさせたと思うが。」

縄師の方が、ちょっとびっくりした目をする。
冷酷で情け知らずのご主人に、こんな言葉が出せたのか?。

「いいえ、すばらしい縄の技術で、苦しさはほとんどありませんでした。」

その言葉に嘘は無い。本物の縄師は女性の美を搾り出す技術に優れ、 苦痛はほとんど与えないものだ。
ほっそりした手首にも、わずかな赤い痕しか残っていない。

とはいえ、長時間の拘束に普通なら一日は寝込むところだ。

縄師も、その驚きは感じていた。
そしてこの清楚なドレス姿を、縛り上げ、晒し、引き裂き、 淫らで背徳的な映像を、脳裏に強烈に浮かび上がらせた。

『縛りたい』

猛烈に湧き出すイメージに、縄師も陶酔していた。

「その見事な肉体、これからも縄の表現に使わせていただきたい。」

今度は貴族が目をパチクリさせた。
『この無口な男が、女にこういう口を聞くとは・・・』
縄師が使えて10年になるが、たぶん初めて聞くのではないか?。

「わたくしでよろしければ、喜んで。」

エカテリナの笑顔に見送られ、 主従は不思議な気持ちで館を出た。

「お前も惚れたか」
「ご主人こそ」

この次は、あのドレスで縛りを表現したいと言うと、 主人は目を輝かせ、急に若返ったような表情になった。

エカテリナは、当分いろいろな縄目を味わうことになりそうである。
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