縄目
「ひっ、ひああっ、こっ、こすれちゃうっ」
目隠しをされたエカテリナが、喘ぐように叫んだ。
白い身体に、幾重にも巻かれた縄、
それも、太く、荒く、エカテリナにめり込むようなグロテスクな縄。
両手を後に縛られ、その縄がきれいな愛らしい乳房をクロスに絞り上げ、
へそを囲むようにダイヤモンドを描き、
腿の付け根であそこを挟み込むように巻かれ、細い締まった足首を拘束する。
荒い縄の感触が、肌に、乳房に、そして花弁をこする。
たった一本の縄、それがエカテリナの全てを拘束し、
そして美しく淫らに絞り上げている。
視覚を奪われ、身体の感触だけが、
じりじりと焼けるように感じる。
喘ぐ動き、悶えの震え、
全てが縄に伝わり、縄が責める。
まるで、巨大な蛇と化したかのように、
エカテリナの動きに、あえぎに、悶えに、
縄がうごめき、白い肌を、やわらかい乳房を、震える花弁を、
ざわり、ざわり、ざわり、
「はあっ、はあっ、ああ・・・・」
美しいピンクの乳首は、痛いほど勃起し、
肌は淫らに、鮮やかな桃色を散らした。
美しいすらりとした腿が、広がるだけ広がり、
縄で微妙に見え隠れする陰花から、
美しい滴りが、キラリ、キラリ、と輝き落ちる。
薄暗い室内で、エカテリナの痴態だけが、
スポットに照らされ、鮮やかに浮かび上がる。
広大なブドウ農園をもつ貴族が、
縄師と呼ばれる『縛り』の芸術家を連れて来た。
縄師が一目で見初めたのが、エカテリナだった。
「すごい、すごい、これほどのエロスは初めてだ」
貴族は恍惚として、エカテリナの姿に見入っていた。
痩せた顔色の悪い縄師も、めったに見せぬ満足げな笑みを浮かべていた。
これほど素直で柔らかい身体をもち、美しく縄の映える女性は、記憶に無い。
ぐいと縄の末端を引いた。
ズルズルズルッ、
「んあああっ!」
縄目が、急激に絞り上げられる。
乳房が痛々しく絞られ、
肌に荒縄が食い込む、肌が赤みを帯び、
真っ白く美しい腿が、ぎりぎりまで広げられた。
羞恥と傷みが混ざり合う、強烈なエクスタシーが全身を犯した。
太腿が震え、身体が反り返る。
あそこが熱く煮えたぎるような錯覚。
苦しいはずなのに、恥ずかしいほどに開かれているのに、
なぜか気持ちいい、
喘ぎとよだれが、銀色の雫をこぼす。
一気に、目隠しがむしり取られた。
「いやあああああっ!」
光が照らし出す。
自分の痴態が、さらしものにされてる。
恥じらいが、汗が、ライトに照らされてはじける。
陶酔する蒼い瞳が、潤み、輝く。
「うおおおおっ」
貴族の声が上がる。
一瞬のきらめきが、見事な美を演出する。
縄が拘束位置を変えた。
身体が前に折れ曲がる。
両膝がぴたりと閉じ、ひざから首につなげられる。
両手は後ろに縛られ、がっちりと縛られた。
両足首も縛られ、身動きもできない。
きつく折りたたまれた白い肌、
震えるなめらかな背中。
苦しげなあえぎと、ゆれる金髪。
白い尻があえぎに動く。
苦しげな息遣いが、見る者の興奮を掻き立てる。
キリキリキリ・・・
一気に縄を解かれ、解かれた肉体が安堵の息を漏らす。
縄は滑車に取り付き、エカテリナのほっそりとした両手首を縛り上げ、
情け容赦なく引き上げる。
ぞくぅっ、ぞくぅっ、ぞくぅっ、
かすかな痛みと、縛られ引き上げられる感触、
周りは闇、自分だけが光りに晒され、引き上げられる。
痛みか、快楽か、分からないものが背筋を走り抜けていく。
「ひあああっ、ああんっ、だめえ・・・、ひいいい・・・」
両腕を吊り上げられた無力な服従から、
痛々しげに引き伸ばされる腕と肩、
幼さの残る胸が、汗に光り、
しずくが、へそから下へと降りていく。
縄の一端を、しなやかな足へ巻きつけ、
片方ずつ膝が、幾重にも巻かれ、ぐいと引き上げられた。
「んあああっ、ひっ、ひっ、ひいいっ」
持ち上げられていく白い肢体、
ゆらゆらと揺れるエカテリナの、白く妖しい姿。
両膝が両手首のところまで持ち上げられ、
家畜を縛るかのような、拘束されたような眺め。
細い首が後に曲がる、
金髪が揺れて輝く、
ぽたり、ぽたり、
可愛らしい尻が、滴りを落とす。
愛らしい花芯から、とめどなく露をあふれさせる。
「はあああ・・・、はあああ・・・、」
恥じらいと、興奮と、潤んだ目が喘いだ。
ぎりっ、ぎりっ、ぎりっ、
両脚がさらに上へ、そして左右へ広げられる。
もう、エカテリナはなすがままだ。
服従する体、服従する快楽。
ゆっくり、ゆっくり、
柔らかな女体が、形を変え、姿勢を変え、
両手を拘束されたまま、足だけが中にYの字に広げられる。
『ああ・・・広がっちゃう・・・恥ずかしい・・・』
恥じらいの色香が、ゆっくりとした動きに掻き立てられ、
頬を染め、身体を震わせる。
スポットライトが、残酷に全てを照らし出す。
ぎりぎりっ、ぎりっ、ぎりっ、ぎりっ、
さらに手が広げられ、身体の位置がずれていく。
右足が一直線に天を指し、
左足が45度に開かせ、顔が茂みの真下に引かれた。
蜘蛛の巣に捕らわれた蝶のように、
縄に捕らわれた哀れな蝶は、かすかに羽ばたいた。
「ひあっ・・・あっ・・・はあっ・・・」
小さな喘ぎが、クライマックスを伝えていた。
細いつま先が、縄をかすかに揺らし、静かに震えた。
「ううむ・・・あれほど縄が似合う女がいたとはな。」
たっぷりとエカテリナの痴態を堪能した貴族は、
複雑な顔をしながら、縄師に声をかけた。
「さようで。」
めったに口をきかない縄師が、
珍しく主人の言葉に同意した。
「わしがあと10年若ければ、あの女を堪能する所なのだが・・・」
高齢の貴族は、すでに十分な勃起が出来なくなっていた。
縄の美に魅せられている間だけ、強烈なエクスタシーを感じるのだった。
「今宵はお楽しみいただけましたでしょうか?」
先ほどまで、散々に責め立てられたエカテリナが、
薄桃色のドレスに身を包み、優雅なしぐさで現れた。
上気した頬と、初々しい微笑み、
老齢の貴族すら、少し頬を赤くした。
「もういいのか?、ずいぶんと無理をさせたと思うが。」
縄師の方が、ちょっとびっくりした目をする。
冷酷で情け知らずのご主人に、こんな言葉が出せたのか?。
「いいえ、すばらしい縄の技術で、苦しさはほとんどありませんでした。」
その言葉に嘘は無い。本物の縄師は女性の美を搾り出す技術に優れ、
苦痛はほとんど与えないものだ。
ほっそりした手首にも、わずかな赤い痕しか残っていない。
とはいえ、長時間の拘束に普通なら一日は寝込むところだ。
縄師も、その驚きは感じていた。
そしてこの清楚なドレス姿を、縛り上げ、晒し、引き裂き、
淫らで背徳的な映像を、脳裏に強烈に浮かび上がらせた。
『縛りたい』
猛烈に湧き出すイメージに、縄師も陶酔していた。
「その見事な肉体、これからも縄の表現に使わせていただきたい。」
今度は貴族が目をパチクリさせた。
『この無口な男が、女にこういう口を聞くとは・・・』
縄師が使えて10年になるが、たぶん初めて聞くのではないか?。
「わたくしでよろしければ、喜んで。」
エカテリナの笑顔に見送られ、
主従は不思議な気持ちで館を出た。
「お前も惚れたか」
「ご主人こそ」
この次は、あのドレスで縛りを表現したいと言うと、
主人は目を輝かせ、急に若返ったような表情になった。
エカテリナは、当分いろいろな縄目を味わうことになりそうである。
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