■ EXIT      
BAD GIRL

一週間入院の予定だったエカテリナだが、3日でけろっとした様子で館に出てきた。
痣はその日のうちに消えてしまい、全身のすり傷や、裂傷も、一晩で塞がってしまっていた。若いとはいえ、医者が本気で不思議がるほどの回復力だ。

『最盛期のプロレスラーでも、ああは治らんぞ・・・?』
裏関係の医者なので、それ以上妙な関心を持たないのが幸いだった。

イリナ・ラングレーは空間移動魔法の暴走で、膨大な魔力を身体に受けている。

記憶を失いエカテリナと名づけられた彼女は、身体が2歳ほども成長していた。
しかしそれは、危険なほど膨大な魔力を収めるために、生存本能が無理やりに身体という器を広げたのだった。

今も彼女の身体の奥底では、無意識に莫大な魔力を押さえ込んでいる。
そこから漏れ出るエネルギーが、治癒力、病気への抵抗性、体力の回復など、身体能力を異様に高めていた。


防犯カメラにエカテリナの元気な姿が映ると、ルイーデは部屋でにんまりと笑った。

『モニター越しでも、女たちの体調は一目で分かる』
と豪語する彼女は、娼婦たちにはこの上もなく怖い存在だ。

エカテリナが体調万全なのを読み取り、うきうきした様子で出て行った。
そして部屋から一歩でたとたんに、その気持ちを悟られぬよう、表情を変える。

「エカテリナ」
館内が一瞬で静まる。

まだ客はおらず、娼婦たちはエカテリナがどんな目にあったか、だいたいのことは知っていた。こういう情報に異常に詳しい地獄耳がいるのだ。

ルイーデの声は、ざわめきを圧するほど冷たかった。


エカテリナは、自分が迷惑をかけたことを覚悟し、ルイーデの前に出た。
「ただいま戻りました、ご迷惑をかけて申し訳ありません。」

「だいたいの事情は聞いてるわ。でもね、あんたはこの館の高級娼婦なんだよ。」

ルイーデは叱る時は容赦なく叱る。
直後に熱を出したり、倒れて吐いたりする者もいるぐらいだ。

エカテリナの叱られる様子が見たさに、早々と出てきた女も多かった。


「のこのこ外へ出てって、10人あまりの男に乱暴されただぁ?」

 だんっ! テーブルにひびが入った。

「たかだか男10人、手玉に取れないでどうするっ!」


『え・・・?』
耳をそば立てていた全員が、一斉に顔色を失う。


「まだまだ修練がたりなあああぁぃ!!、男の10人や20人、粉も出ないぐらい干上がらせなさい!今日と明日は店に出ないでいいから、特訓よ特訓!」

「はっ、はいっ」

「ちょっ、ちょっとルイーデ」

「なあに?」
シアンは思わず引きとめようとして、声を詰まらせる。目が恐ろしいぐらい光っていた。

「い、いくら何でも、退院直後なんだよ、」

「そんなあまっちょろい根性では、やっていけないわよ。手の開いてる人は、後学のために見に来なさい。」
鼻息も荒く、エカテリナを引き連れて訓練ルームへと急ぐ。

「とっ、特訓って・・」
「ひえええ・・・」

野次馬のつもりでいた女たちは、全員震え上がってしまった。


だが、ルイーデの本心を聞いたら、震え上がるではすまないかもしれない。

『ふふふ・・・実に都合のいいシチュエーションだわよねえ。乱交は、うっかりするとトラウマになっちゃうから難しいんだけど、これなら、安心してさせられるわ。シアンにはちょっと感謝しなくちゃね。』



『そこっ、もっと魅せるのよ。男は目で興奮するんだから、自爆しちゃうぐらいに見せつけなさい。』

耳に仕込まれた超小型通信機から、ルイーデの声が飛ぶ。

「はっ、はい・・うぐっ」

小柄な裸身が、押しつぶされそうにのしかかられ、アナルから背筋へ、激しく突き刺さる衝撃が走る。
下から突き上げる陰茎が、底をえぐり、こすりたてる。

眼前に出されたペニスを、わざとゆっくりと、身体をくねらせ、口に導き、白いわきの下を光らせ、暗がりにまぶしさすら感じさせる。

ズグン

見ていた男たちが、興奮にペニスを震わせた。
胎内にそれを感じ、エカテリナは、魅せる技をさらに磨いていく。


10人の訓練専用の男たちが、かわるがわるエカテリナを貪り、その興奮を引き出そうとする。訓練専用の連中だ、実力20人に等しい。
だが、エカテリナも余裕ができたのか、むしろ男たちの興奮を引き出し始め、次第に形勢を立て直していく。

だが、さすがに光景は壮絶だ。

「うぐ・・・」

見ていた娼婦の一人が、思わずトイレへ駆け込んだ。
「あちゃ・・・」
シアンは眉をしかめた。
過去に大勢の男から酷い目にあって、トラウマを抱えている娘だ。

女たちは、最初は興味本位だったが、次第に訓練の意味を知り、青ざめながらも、本気で見入っていた。


輝く視線が、男たちを捕らえ、淫靡な微笑が、興奮を引きずり出すようになると、完全に形勢は逆転していた。

「ふふふ、さすがだわ、もう1人いかせる間に、3人いかせてる。」

『そこっ、すきがあったら、前立腺を嬲るのよ。いかせまくって、搾り取ってやんなさい。』

シアンは思わず、訓練用の男たちに同情した。

「ほんっきで容赦ねえな」
思わずぼやくシアンに、ルイーデが笑った。悪魔の笑みだ。

「これからあの娘は、修羅の道をあゆむわ。
半端なことしてたら、すぐ死んじゃうわよ。」

ぞくり

シアンも、長い娼婦経験で口に出せないような目にもずいぶん会ってきたが、ルイーデがたまに見せるそれは、自分も及びそうにない凄まじさがある。


「あんたも、あの娘につきあおうっていうなら、半端じゃあやっていけないわよ。」

「・・・わかったよ」
何も言っていないのに、シアンがエカテリナに傾倒していることまで感づいている。

見透かされているようで、面白くないが、ルイーデの言うことは間違っていないという直感があった。



驚愕する女たちの前で、さっさと服を脱ぐと、褐色の見事なボディラインが現れる。

頬を染めて、崇拝の目で見ている娘もいるぐらいだ。

「訓練員もう少し呼んどいてよ。」
「とりあえず5人足しとくわ。」

気のない返事をして、シアンは訓練用の部屋へ消えた。

「カメラとマイク、大急ぎでセット!!」
機材管理員たちが慌てふためく。

訓練用の部屋は、いつでもカメラやマイクが使えるようになっている。
その手のVTRが大好きな客がいるからだが、ルイーデは、もっといい活用法を思いついた。

『これは、面白いかもしれないわねえ・・・』




「エ・カ・テ・リ・ナ」

エカテリナがふと顔を上げると、シアンがにっと笑いながら立っていた。

裸の胸が砲弾のように突き出し、ふさふさした陰毛が綺麗に整えられて輝いていた。

男たちのペニスを握っていた彼女をひっさらうと、ザーメンまみれで汚れた唇を、激しく奪った。

「ん・・んん・・・んふ」
濃厚なディープキスから、唇、頬、鼻筋をべろべろと嘗め回す。

「こんなかわいらしい唇が、あんな悪いことするなんて、エッチな娘ねえ。」
だ液の線を光らせながら口を離し、淫靡な目つきでつぶやく。

ぼっとエカテリナの顔が染まる。

「うふふふ・・・かわいい。」
また奪うようにキスをし、どろどろの全身を、褐色の指が責めるように這い回る。

「あひっ、ああんっ」
耳を噛まれ、かわいらしいサクランボのような乳首をつままれ、エカテリナはなすすべなく声を上げて悶える。

ゆさっ

たっぷりとした乳房が、意外に小さめな乳首が、エカテリナの膨らみかけた胸にさわり、そして攻める。

ゆさっ、ゆさっ、ふにゅっ、ふにゅっ

「ひいんっ、いやっ、ああっ、感じちゃううっ」
不思議な感触が彼女の胸をさわり、乳首同士が絡み合うようにこすれる。

「うんっ、ああ、なんて、感じのいい肌なの、この娘ったら」

シアンも、予想外の肌の感触に眉をしかめ、乳首が見る見る勃起していく。

いつのまにかエカテリナも身体を動かし、胸同士をこすり合わせていた。

男たちも、女たちも、ルイーデすらも、その強烈な色香に目が離せない。

「うあああ・・・」
「ひあっ・・・」

女たちが、何人かたまらず座り込み、男たちは全員爆発寸前だ、だが、目が興奮してそれから離せない。

びゆっ、びゅびゅっ、

二人が激しく潮を吹き、軽く痙攣する。

「んあああっ!、」
「ひいんっ!」

思わず手を伸ばそうとする男たち、

だが、「だめ、まだあげない」残酷な宣言をして、シアンは身体を入れ替える。
エカテリナも目の前に来たシアンの美しい秘所に、しゃぶりついた。

「ひあっ、もうっ、そんなにっ、あひっ!」

愛情を込めた舌先が割り、もぐりこんでしゃぶる。

シアンも負けじと、柔らかい身体を曲げ、長く舌を伸ばした。
彼女は訓練もあってか、かなり長く舌を伸ばせる。

「ひ・・あひっ、あああっ!」

中に出された精液を、しゃぶり取るように掻き出し、 粘膜の襞を攻めまくり、陰核を指先がこすりあげた。

ビュウッ

愛液がふきだす。

舌先がお互いを愛撫し、指先がそれを嬲り、つまみ、ほじる。
肌が震え、汗が光り、陶酔とエクスタシーが二人を狂わせる。

「もうっもうっ、ああっ、だめっ、だめええっ」

「ひあっ、ああああっ、そこっ、いっちゃううううっ」

指先が震え、舌先が締め付けられた。

お互いの愛液がはげしく顔を濡らし、唇を光らせた。


がまんにがまんを重ねていた男どもが、 うめき声を上げながら、群がり寄る。

その声は悲鳴に近い、もう、ペニスが破裂する。
重なった二人に、突入する。

「あひいいんっ!」

「くはああっ!」

いったばかりで敏感になっているあそこが、びりびりとしびれ、感じる。
軽いエクスタシーが、身体を突きぬける。

ジュブッ、ジュブッ、ズブッ、ズブッ、

とろっとろの襞の中に、飲み込まれるような快楽の渦。

目の前で激しく犯されている淫花、お互いのそれが、自分のような気がする。

突きこねる感触、こすれ広げられる花弁の震え、飛び散るしぶきの輝き、絡み合う男と女の神秘に、舌が絡みつき、すすり上げた。

「あひいいいいっ!」
「あああああぁううううっ!」

ドクンッドクンッドクンッドクンッドクンンッドクンッドクッ、

身体を突き抜ける射精音、己の深部に浴びせられるザーメン、目の前であふれ、零れ、さらに突き刺さる。
狂おしく振られる腰が、繰り返し射精し続けていた。

強烈な性感が、全員を貫き、おびただしい精液が、顔に、背中に、身体中に浴びせかけられた。


ぬらり

精悍な美貌にたっぷりと浴びたシアンが起き上がる。

中指についた精液を舐めながら、エカテリナが妖しく笑う。

「んあっ、はっ、ははっ、あうっ、んうっんっ、んんっ、んっ」
男に跨り、ダイナミックに腰を振り、シアンが犯しているかのようだ。
ざらざらの肉襞が、イソギンチャクのような絡みつきで絞り上げる。
ペニスを突き破りそうな快感が、血管に、肉に、膨れ上がる。

群がる男たちを片っ端から咥え、しゃぶり、飲み込む。
胸に押し付けられ、乳首に射精がほとばしった。
『おっぱい、犯されてるみたい、きもちいいっ!』


「ひゃあっ、あんっ、ああっ、あたるっ、ああっ、んうっ、んっ、」
白い裸身が激しく突き上げられ、荒馬に跳ね上げられるように、黒々としたペニスが突き刺さる。いやらしい音が部屋に響き、滴りが腿をどろどろと伝い落ちる。

肌が吸い付く、粘膜が絡みつく、手のひらの熱さが、腿の柔らかさが、尻肉の感覚が、彼女に触れているところ全てが、甘い媚薬のような歓喜を引きずり出す。
エカテリナに何もかも出し尽くしたい欲望が、陰茎を駆け上る。

背中にしがみつかれ、小さめな胸を嬲られながら、なめらかな背筋に、脈打つ陰茎がこすり付けられる。
「あひいっ!、ああんっ!」

二人は首を伸ばし、激しく唇を絡み合わせた。シアンの情熱的な紅色が、エカテリナの清楚で愛らしいピンクが、

「うぐううっ!!」
「んうううんっ!!」

ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、

ドビュウッ、ドビュッ、ドビュウッ、ドビュッ、

腰が痙攣し、中に猛射がほとばしった。

舌先が、しびれたように震え、さらに求め合い、吸いあう。
胎の奥へ、ドクドクとほとばしる精液に、腰がわななき、ヒクヒクと喘ぐ。

乳房にめりこんだ亀頭が、背筋に突っ張ったペニスが、手に握らされたものが、周りにいた男ども全員が、激しくキスを繰り返しながら、それを祝福するかのように、浴びせかけ、飛び散り、ほとばしっていく。





ハアハアハア・・・

ルイーデすら、息を切らし座り込んでいた。

他は男も女も全員いってしまっている。

『こ、今夜は、ボスに来てもらわないと、たまんないわね・・・』
絶対一人寝は無理だ。一晩中悶えまくることになるだろう。

カメラは奇跡的に回り続けていて、すべて納められていた。


翌日シアンは、みょ〜に艶々した顔色のルイーデに呼び出された。

『この様子だと、ボスはさぞげっそりとやつれているだろうなあ・・・』
だが、ルイーデの提案に驚いて忘れ去る。

「はあ?、私らのAVですかぁ??」

今更自分の裸が晒されることには驚かないが、リヴァール連合内では、エルフのAVは、ほとんど商品価値が無い。

お金をかけたがらないから、やたら惨たらしいシーンばかり多く、機材も悪ければ、撮影もへたくそで見られたものではない。

要するに素材は良くても、調理で真っ黒こげにした料理のようなものだ。

売れないからますます極端化するという悪循環になり、 普通の人間が見ると、胸が悪くなるようなしろものが多い。

(例外中の例外は、ER圏から流れてきた密輸入版で、これは奪い合いになる。)

その上、民生品の画像用記録ディスクが極端に質が悪く、封を切ると半年から1年でほぼ完全に見られなくなる。ほぼ半永久的に画像が保たれるERとはえらい違いである。

だから、エルフのAVは売れないというのが常識になっていた。
(一説には、過去にエルフを美化するようなメディアは圧力がかかったとも言われている。)

「私は、ちゃんとがんばる人には、損はさせないわ。昨日はただ働きと思ったでしょ?」

「でも、売れないでしょう?」
心配ないとルイーデは断言し、かなりの金額をくれた上に、本数による歩合まで計算して出した。だが、歩合は相当な本数が出ないともらえない。
『まさかねえ・・・?』


「おい、これ注文間違えてないか??」
映像関係の子会社が悲鳴を上げてると聞き、マツグランはデータを見て仰天した。

海軍にコネのあるルイーデは、うまく軍の売店に納めることができた。
ポルノ雑誌やAVは、軍人たちにとっては貴重な慰めになる。

『館の淫らな娘たち』と題されたAVは、あっという間に注文が広がった。

口コミが一番の宣伝なのは、どこの世界でも変わらない。
地図で見ると、網の目のように、軍がいるところへ次々と注文が殺到した。

寿命が短いディスクを逆手に取り、割安の値段で枚数をさばくことにしたのが当たった。

しかも、意外なほどロングランになり、長く売り上げが落ちなかった。

シアンとエカテリナの名前は出さず、ルイーデの館の名前とロゴだけ入れてある。

シアンも驚くような金額が、歩合として渡される事になった。
これを見て、女たちの意欲が猛烈にあおられていく。

エカテリナとシアンが組んで始めたレベルアップの密かな指導と、この事件がさらに館を活性化していく。


女たちの教育と、娼婦館の活性化、そしてより多くの資金調達と、ルイーデの一石三鳥の計略は、見事に当たったようである。
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