■ EXIT      
シアンとの出会い

薄暗い、すえた匂いのする部屋、その真ん中に、目隠しをされて、後ろ手に縛られ、 エカテリナは恐怖をこらえながら座っていた。

「いいのかいシアン?」

「なに、かまやしないよ。泣き叫ぶぐらいかわいがってやんな」

金を受け取ると、欲深そうなババアは、にたにた笑いながら、数人の男を呼び集めた。

やがて、飢えた獣のような男たちが、『特別ないい話』にのって、やってきた。

「おいおい、こんなのが特別ないい話だってか?」
エルフの小娘など、珍しくも何とも無い。特別料金(それでもはした金にすぎないが)を払った男は、腹立たしそうに、エカテリナの目隠しをむしりとった。

ゴクリ・・・

だれかが喉を鳴らした。
薄汚い部屋に、急に日がさしたような気がした。

おびえを含みながらも、蒼く輝く大きな瞳が、星のようだった。
気品などというものと、無縁の生活をしてきた男たちは、 しばし魅入られたように、エカテリナを見ていた。

ビリッ、ビィッ

悲鳴と怒号が交差するはずの部屋で、静かに、ただ服を破られる音だけが響く。
薄い緑の上質な絹が破れ、あらわになる肌が、香気を立ち上らせる。
男たちは息を呑み、目を這いずり回らせる。

伸びやかで美しい四肢が、なめらかで輝くような肌が、ひきむしられ、さらけ出されていく。
エカテリナは、ただ、恐怖に耐えて唇を噛む。
恥じらいに頬を染め、全身を嘗め回される視線に耐えた。
その表情がたまらない、震える肌が嗜虐の欲望をかきたてる。


だが同時に、恐怖は異様な興奮もエカテリナに与えていた。

ジュブッ

指を押し込んだ男が、おもわずのけぞる。

ふっくらとした、無毛の秘所、雫に包まれ、中指が吸い込まれる。
指から背筋へ、ぞくんと、異様な快感が走る。

「う・・はあっ・・」

少女があえぐ、指がぞわりと吸われる。
わずかな身じろぎ、指が舐め上げられるようなざわめき。

「ゆ、指だけで、いっちまいそうだぜ・・」
そう言いながら、手をひねり、指を絡みつかせた。

「はあっ!」
エカテリナがびくりと震えた。

ジュンッ、
大量の愛液が、指にまとわりつき、からみつく。

「くっ・・・」

必死の思いで指を抜いた男は、暴発寸前のものを引きずり出し、 すでに先走りで濡れた亀頭を、一気に押し込んだ。

「う・・ああんっ!」

エカテリナの細い裸身が、突き上げられる。
押し倒され、広げられた身体に、突き刺さる。
縛られた身体が痛い、 見知らぬ男たちへの恐怖に、叫びそうになる。
狂ったような律動が、突き刺さる。
だが、ほんの数回で男はうめき声を上げた。
腰をめいっぱいのけぞらせ、 魂が抜け出しそうな快感をほとばしらせた。

「あひいっ!!、ひっ、うっ!、あああ・・・」
目に涙を浮かべ、エカテリナは身体を震わす。

お腹にほとばしる精液が、異様に熱い。

「く、咥えろや」

異臭のするペニスを、エカテリナはおずおずと咥えた。
別の男が、突きのけるようにして入れ替わり、エカテリナの両足をつかみ、のしかかる。

「ん・・んう・・んうっ!」

今出されたばかりの精液が、膣にあわ立ち、ぬめりと、脈打つ肉が、身体の真ん中を蹂躙する。
エカテリナは無法な扱いに耐えながら、 ほほの肉に亀頭を押し当て、唇を撫で回し、舌を走らせた。

びりびりとこすれる感触に、腰をくねらせ、締め付け、受け入れる。

ほとんど最低の女しか知らない男たちは、昇天する気持ちを初めて知った。






エカテリナは、ルイーデの娼婦館にデビューした。

裏稼業組織『マツグラン』の風俗本部とも言うべき、『ルイーデの館』。
人口70万のグラムリングシティ歓楽街にあり、 黒を基調とした重厚な石作りの大きな売春宿だ。
これとは別に、沿岸部を回り、各地から女を集める、 娼艦という前線基地も存在する。

ここは、王都からは少し離れているが、 リヴァール王国軍第2陸軍本部基地、第4海軍基地、第1空軍基地から、 ほぼ均等の位置にあり、 物資補給、交通の要衝地、休息地などの多様な条件を満たす土地だ。

そのため、歓楽街も王都に次いで大きく、 むしろ通の遊び人たちは、こちらを好むといわれている。

エカテリナがくる日、館の娼婦たちはひどくざわめいていた。

ルイーデが直々に連れて来るのも珍しいが、 あの鉱山王ガッハが、送りつけた花の山に全員が目をむいた。

『愛するエカテリナへ』と描かれ、 数百本のすばらしいアートアレンジの花全てに、 リボンで金貨が結び付けてある。
(これは店の終了後、他の娼婦たちへのチップになる)


館は、人間の高級娼婦が半分と、エルフやハーフエルフが半分という、 リヴァールとしてはかなりランクの高い部類に入る。
(全員が人間の女性という場所も無いではないが、王都のみにある会員制の超高級クラブに限られる)
しかし、こんな贈り物をされた娼婦は一人もいない。

さぞかし高飛車な高級娼婦だろうと、 女たちのまとめ役とも言うべきシアン・ハルレインはうんざりした。

彼女は、すらりとした細身で金髪金目のダークエルフハーフだが、きつめの妖しい美貌と、バストが砲弾のように突き出し、ウェストは異様に細い、凄みのあるスタイルと、男殺しという噂から、殺人蜂(キラー・ビー)のあだ名がある。

何より娼婦の経験が長く、度量があり、きっぷもいい。
エルフの女性たちは、ほぼ無条件に彼女に従い、 人間の女たちといえど、彼女には一目おかざる得ないものを持っていた。


その日夕刻に訪れたルイーデは、 後ろについてきた小柄なハーフエルフを紹介した。
まるで、自分の娘を紹介するような気軽さだった。


「こちらでお世話になる事になりました、エカテリナと申します。 まだ何も分からない若輩者ですが、がんばりますのでよろしくお願いいたします。」
銀の鈴を振るような、鮮やかな声。
深々と頭を下げる、まだ幼さすら残るハーフエルフ。

全員が驚愕するのも無理は無い。
この少女が、ルイーデが直々に招き、ガッハがほれ込んでいる女なのだろうか?!。

「ルイーデ、エカテリナはきたかあああっ!」
全員の驚愕は、直後に響き渡るガッハのドラ声でかき消された。


翌日から、館は二つに分かれていた。
ガッハに見向きもされず、憤懣やるかたない人間の高級娼婦たちと、 驚愕から立ち直れず、エカテリナをひどく恐れるエルフたち。

ここの女主人であるルイーデが溺愛しているのは、誰にでも分かった。 そのため、高級娼婦といえど、エカテリナに対する苛立ちは向けようが無く、 その分エルフにつらく当たる。

エルフたちは、ルイーデの機嫌を損ねることを恐れ、 また未知の恐怖におびえ、ひたすらエカテリナを恐れた。 ルイーデはここの女たちの生殺与奪権を握っている。 まして、高級娼婦たちを差し置いて、トップクラスの客にデビューを飾らせるなど、 ほとんど魔物を見るような目を向けていた。


しかも、信じられないほど頭が良く、ルイーデの横で仕事をてきぱきとこなし、 帳簿の計算ミスを何箇所も見つけられて、事務所の職員が泡を食ったほどだ。

さらに、夕方帳簿類を運んでいたエカテリナに声をかけたのが、 たまたま気まぐれに遊びに来た、第4海軍基地指令の中将だったから、館は騒然となった。







『耐えるって、約束したもの』

エカテリナは狂ったようにむさぼる男たちに耐えて、 必死に歯を食いしばる。

どやどやと数人の男が来た。

後ろからも押し込まれ、前後から同時に攻められだす。
「うあああぁっ!」

あそこが裂けるような苦痛と、無数の手が、身体中を嬲り、口に次々と押し込まれ、むせ、あえぎ、息が詰まりそうになる。

顔に、胸に、浴びせられる精液、入れ替わる男のものが、つぎつぎと身体に突き刺さる。
美しい眉を震わせ、 涙をこらえながら、必死で受け入れ続ける。

それがさらに男たちの嗜虐欲をそそりたたせる。

身も知れぬ薄汚い男たちが、 繰り返しエカテリナを輪姦していく。







エカテリナは何とかみんなと話をしようとするが、誰も近寄らない。

考えた末に、まとめ役らしいシアンに必死で話しかけようとしたが、 それこそ、彼女は見ようともしない。

シアンが歩くと、まだ娼婦見習いの10歳から12歳ぐらいの娘たちが寄って来る。
シアンが娼婦館を出ると、街の子供たちも駆け寄ってくる。
客からもらった土産や、買っていた食べ物をあげながら、 一人一人の目を見て話し、笑い、抱きしめている。
そんな彼女に見向きもされないのが、エカテリナはつらかった。

シアンも長い苦労の体験があり、あまりに恵まれたスタートのエカテリナに、 気持ちが動揺するのは仕方の無いのかもしれない。

だが、エカテリナも執拗だった。
シアンを見つけるたびに、犬ころのように必死で追ってくる。

感情とは複雑なもので、シアンは、次第に彼女にかわいげを感じ初めている自分に腹が立ってきた。

『お願いです、シアンさん。どうか話だけでも聞いてください。』

だから、あんなことをしてしまった・・・。







『あんたが、わたしらのことをちょっとでも分かるっていうなら、 話ぐらい聞いてやるよ。』

押し殺したような声で言うシアンの灰色の瞳は、凶暴な光を帯びていた。

ガッハのひいきまで受けたエカテリナは、週に3日店に立てばよかった。
残り4日は、店にいてもルイーデの住まいにいてもいい、 送り迎えは専用の車がある。
ただ、店から出ることは許されていない。

それでもエカテリナはシアンについていった。
目隠しをされて、フードをかぶせられたまま歩いた。


ルイーデの館からさほど離れていない、 場末の薄汚い路地、その奥の廃墟同然の汚らしい建物、 シアンの一番みじめだったときの連れ込み宿。

「ここで我慢できたら、話ぐらいは聞いてやるよ」

後ろ手にしばられ、シアンはエカテリナを放り出すように置き去りにした。

数人で数時間も嬲られれば、悲鳴を上げて泣き出すだろうと思っていた。

宿のバアさんは、言われた通り数名を集めた、 ただ、客が何をしようが知ったことではない。

「ひっ・・・ひっ・・・あうううっ!」

狭い部屋から、床の抜けそうな広間に引き出され、 10人もの男が、エカテリナを嬲りぬいていた。

立て続けに犯された秘所は、赤く腫れ、 それでも猛り狂うペニスが、押し込んでくる。
飲み切れぬ精液が喉を伝い、美しい金髪もどろどろに汚れていた。
1人終われば、2人よみがえり、 今にも壊れそうな激しさで、 エカテリナを犯し続けている。

男の1人が、携帯にかかってきた借金の催促に困り、 つい『特別ないい話』をばらしてしまったのだ。

お調子者が連れ立ち、 めったにない高級娼婦らしいということで、 酷い人数がエカテリナを嬲りつくす。


「ひぐうううっ!」
腫れたクリトリスをひどくつままれ、 身体がしびれた。 シャアアアア・・・
小水を漏らし、細い裸身が痙攣する。
喉が詰まる、アナルがしびれる、異様な刺激が身体を貫く。

「あぐ・・・んうっ、んんっ!、んっ!、んううっ!」

前からも後からも、貫かれる。
子宮の奥まで精液があふれ、 なおも脈打ち、中に出される。
口にも顔にも、背中にも手にも、 足の裏にまで擦り付けられ、 息ができないほど、浴びせかけられる。

「ひい・・・はひいい・・・あああ・・・」

エカテリナの意識は、今にも消えてしまいそうだった。





シアンは、押し殺した声で尋ねた。

「どういうことだよ、これは・・・」
広間で、いまだにエカテリナは輪姦され続けていた。

「あたしゃ知らないよ。客が勝手にやってることさ」
素人にも判る位に、殺気が猛烈に吹き上がる。
宿のババアは、青ざめてへたりこみ、小便を漏らした。


元々、金を受け取ってあずかっているのだ。
壊れるほど無茶をしていいはずがなかった。
まして、裏の人間が知らないですむ問題ではない。

どこかでシアンを舐めていたババアは、 シアンの殺人蜂のあだ名、その裏の意味をようやく思い出した。
シュルッ
髪飾りから一本の鋼線が引き抜かれた。
特殊鋼で作られたそれは、30センチの針になった。

「やっ・・やめ・・」

言葉を出し尽くす前に、首の裏側ぼんのくぼと呼ばれる場所に、 針が深々と突き刺さる。
老婆は目を開いたまま、息絶えた。

シアンの肢体が影のように動いた。

男たち全員が息絶えた。



エカテリナの身体を抱きかかえると、 風のように走り出した。

シアンの顔を見つめ、呆けたようにしていたエカテリナが、 喘ぐように言う。

「シアン・・さん・・・、私、耐えました・・よ・・」

「分かったよ・・わかったよおっ。」

シアンは泣きながら怒鳴った。



エカテリナは、組織のお抱えの病院に入院した。
1週間は絶対安静だった。

首を差し出すつもりで、シアンはルイーデの部屋を訪ねた。
ルイーデは細いシガーをくゆらしていた。

「死体処理の連中が、喜んでたわよ。ほとんど傷のない死にたてのは珍しいからね。」
裏組織のマツグランは、いろんな稼業が傘下にいる。

表向きは、孤独死や行き倒れ、死刑囚の死体などを引き受け、後始末をする正当な業者だが、 歓楽街の裏で起こったやっかいごとの後始末も、いい儲けになる。 医療訓練の解剖用、研究所の実験用臓器、昨日の様な新鮮なのは臓器移植用と、 死体の需要は意外に多い。

自殺やケンカ、心中に麻薬中毒、借金や保険金、組織間の抗争など、 毎晩どこかで死人が出ている。行方不明など珍しくも無い。

巨大な歓楽街のはずれのはずれ、ごみためのような場所には、 警察機構もいちいち対応していられない。 処理代行の業者は忙しいばかりだ。

宿のババアもろくでなしばかり集めただけはあって、 ババアと消えた10人に、ただの一軒も捜索願は出ていなかった。

自分のせいだというシアンに、ルイーデは背を向けた。
「あの娘は、シアンたちの昔が知りたくて、 一人で行ったとしか言わなかったわ。 襲われたのを、シアンが助けてくれたとね。」

もちろん、ルイーデがそんなことを信じるわけがない。
「いらないことを教えたのは問題だけど、とりあえず感謝しておくわ」

ルイーデの背中は、エカテリナを立てて不問に付すと言っていた。


「シアン、あの娘いくつかわかる?」
真っ青な顔をしていたシアンは、のろのろと顔を上げた。

「脊髄の年齢検査では、12歳なの。もちろん、まだ初潮すらないわ。」

エルフの女性は、ほぼ全員13歳で初潮すなわち生理が始まる。
大人と子供の区別も、そこから始まる。

雷に打たれたように、シアンはへたり込んだ。
エカテリナの美しすぎる容姿と大人びた言動に、彼女は見誤っていた。

自分の12歳、乱暴され何もかも失った記憶。
それが、自分自身の罪となってのしかかる。

「うっ・・・、うっ・・・、」

いつしか、シアンは泣いていた。

病室に入ると、眠っていたエカテリナが目を開いた。

「シアンさん」
まぶしいほどの微笑が向けられる。
なんで、そんなに微笑む事ができるんだ?

「約束だったからな・・・、話を聞きにきた」

むしろ怒鳴られ、責められ、殴られた方がどんなにか楽だろう。
ルイーデも、エカテリナも、何一つ責めようとしない。
いっそ逃げ出してしまいたかった。

蒼い目が急に光を増す。
どきりとするような深い蒼。

「シアンさん、4級市民ってなんですか?」

いまさら、何を聞くんだ?。

「あたしやあんたみたいなのをいうのさ。」

エカテリナの優しい声が、鉄のような硬さを持った。

「私はルイーデさんから拾われる前の記憶がありません。
この国では、エルフもエルフの血を引くものも4級市民だと教えられました。 4級市民がどのような立場にいるのかも習いました。 でも、何が違うんですか!。」

目が危険なまでに光っていた。手が痛いほど握られた。

「お姉さんの手は、こんなにきれいで温かいじゃないですか、 あんなにも子供たちに優しいじゃないですか。 私も人間とエルフの血を持っています。 血は混ざるんです。父の血と母の血がこの身体に流れています。 どちらもとっても大事なんですよ!。」

シアンは声も無かった。
この小さくて優しそうな娘が、本気で怒っていた。

自分は生きている、それだけで彼女は血をくれた父と母に感謝していた。
片方の血を貶める制度が許せなかった。

「人が夢を持って生きて、何が悪いんですか!。」

4級市民だというだけで、あらゆる可能性を閉ざされた人たち、 エカテリナは、ルイーデから話を聞いたとき、 本気で怒りを覚えた。

彼女はそれゆえに、ためらうことなく戦う道を選んだ。

武器を持って戦うのではない。
戦うのは人の心、優しさを押しつぶした醜い欲望。

差別に理由などいらない、あるのは、醜い欲求を満たそうとする欲望と為政者の都合だけだ。

エカテリナは女として、それが最も許せなかった。

ルイーデは言った。娼婦は奴隷では務まらないと。
『人形』で満たされるわけが無いと。
では、なぜ『人形』すら必要とされるのか?。

「まずいものでおなかを満たして、幸せなわけがないでしょう。 不幸せな人をそばにおいて、本当の幸せになれるわけが無いでしょう。
人間自身が不幸せなのを、気づかせたいんです。
一人でも多く、一日でも早く!!。」

それは、ラングレー王家の血の叫びだったかもしれない。
烈火のごとく燃え上がる光に、シアンもいつしか魅せられていた。


「人間自身が・・・不幸せか・・・、そんなことをいうやつは一人もいなかったな。」
いやというほど男を見てきたシアンは、 その意味が痛いほど分かった。

幸せな男など一人もいない、少なくとも、娼館に来る人間たちは。


不幸せが不幸せの連鎖を呼ぶ。
学も何も無いシアンだが、長い娼婦生活の中で、 シアンなりに体得していた哲学だった。

だから人に優しくしたい、子供たちに幸せになってほしい。
自分の不幸せを他人にまで押し付けたくなかった。

そして、自分たちより幸せなはずの上級市民が、 何人自分の胸やヒザで泣いただろうか。

だったら、自分にも戦えるかもしれない。
武器ではなく、肌で。
暴力ではなく、情で。
そう思うと、生まれて初めて胸に火が灯ったような気がした。

「おもしろいね、お前の言うこと。で、何からはじめたらいいんだい?」

シアンは、心から『負けた』と思った。
そして、自分の心を彼女に捧げようと自分自身に誓った。

シアン・ハルレインは、この日からエカテリナの親友となった。
次の話
前の話