■ EXIT      
プリズム 中編

泣きながら必死に気力を振り絞り、のろのろと起き上がる。
悲しいほどわずかの水が桶の底に光っていた。

イリナは涙をながし、血が出るほど歯を食いしばると、 それを手に取ろうとして、はっと思い出す。
二条香織が教えてくれた、昔の娼婦がしていた技。

『おもしろいでしょ?』
香織の膣から50センチも飛ぶ小型のピンポン玉。
仰天するイリナに、花電車と呼ばれる昔の娼婦たちが作った芸は、 2メートルも飛ばしたというのだ。

『元々は、男性を喜ばせたり、いざという時膣を簡単に洗う方法だったりしたらしいのよ。』

そう言って、困り果てた顔をするイリナに色々仕込んだものだった。
『香織さん、感謝します!』

わずかな水を手に取り、下腹に力を込めると、 括約筋を自在に動かし、膣から子宮へずいと吸い込ませる。
冷たい感触が中を踊るようで、イリナは目を閉じてぶるっと震えた。 精子は非常に弱く、酸素や水に合うと、簡単に死滅してしまう。
おびただしい精液が、何度か洗い出され、とろとろと出てくる。
完全ではないかもしれないが、これでずいぶん気は楽になった。

イリナはようやく落ち着き、身体をぬぐうと、心労でばったりと寝てしまった。



真っ黒の無音のヘリが、廃墟の一角に静かに下りた。
シーナ・ラングレー中将が降り立ち、 その後を、フードをかぶった女性らしい姿が下りた。

シーナが女性の方を振り返る。
「お母様、ここは?」
優しげなシーナの面影を感じるが、格段に違う威厳と底知れぬ意思を秘めた目が、 懐かしげにその廃墟を見た。
エルフの女王にしてER主席秘書官セシリア.ラングレーが、 おびただしいERの特殊部隊が囲む中に、静かに降臨していた。
セシリアの誰にも明かしたことがない思い出の場所。 すでにうち捨てられた廃墟に、特殊部隊が捜索を開始した。
「認めたくないものね・・・若さゆえの過ちというものは」
セシリアのつぶやきは、風にかき消された。





「ふ・・うっ、ううっ、んっ・・・」
イリナは涙を流しながら、 おびただしいゾンビのような男たちの陵辱に耐えていた。

欲情にまみれたペニスが、イリナの身体中を犯す。
一人がベルトで両手を縛り、梁に、つまさきがつく程度の高さで吊るした。
醜い表情が歪み、イリナの美麗な乳房をしゃぶり、 噛み痕をつけながら、肘にかけた脚を持ち上げ、腰を突き上げる。

こんな荒々しい扱いを受けながら、 花芯はおびただしい蜜を流し、 受け入れる男に歓喜していた。

熱く、蕩ける胎内が恨めしかった。
後ろから耳をしゃぶり、クリトリスをつまみ、痙攣する尻を突き上げる。
偶然だろうが、耳はイリナのもっとも感じやすい場所。
「あ・・・あうっ・・・ひっ!」
頬を赤らめ、ヌルヌルとした感触に白くしなやかな背筋を震わせた。
そして、アヌスを責められるごりごりとした刺激、 クリトリスをつままれる電撃。
「ひいっ!、ぐうっ!、やっ!、だめええっ!、やめて・・おねがい・・・、ひぐううっ!」

相手が聞く耳など持たないスリーピングゾンビだということも忘れ、 身悶え、のけぞりながら、喘ぐ声で哀願する。
その愛らしい声が、さらに律動と暴行を加速する。

ゾンビスリープをかけられた相手は、夢の中にいるに等しい。

目で見て判断する事と、好みや理想が切り離され、 主に命ぜられれば、どんな相手だろうと、夢の中で、理想の美女を襲っている事になる。

とはいえ、それが本当に美人の場合、 五感の刺激が欲望を増幅させ、 ケダモノの様に欲求を激しく奮い立たせる。

イリナの身体が、宙に踊り、 叩きつける肉の音と、濡れた音が、 前後から暴行し続ける。

「うっく、ううっ、ひっ、あううっ!、あっ、やあああっ!」
がくがくと痙攣する腰から、脈動が突き上げ、イリナの胎内で爆発した。
脈打つペニスの向こう側、薄い肉の奥で、アナルを突き上げるペニスも、締め付けに痺れ、射精した。
「ひぎいいいいいいいっ!!」

つまさきが激しく屈曲する。
のけぞる身体中が桃色に染まり、 みだらに開ききった脚が激しく震え、痙攣する。
「ひぐっ、ひぐっ!、えっ・・えっ・・、」
泣きながら、喘ぎながら、イリナは胎内にどうしようもなく流れ込む恐怖に怯え、 それに溺れようとする淫乱な自分に怯えた。

そして、胸を刺す痛みに震えた。




数時間前、
目が覚めたイリナは、扉を押し開け、暗い通路に入った。
その奥に、もう一つの部屋があり、 同じぐらいの男たちがずらりと立っていた。

へたり込みそうになるイリナの後ろから、 またあの男が来た。

「どうして・・・、どうしてこんなことをするの?」

「恨むなら、セシリア・ラングレーを恨め」
男は冷たい目を燃やし、驚愕するイリナを睨みつけた。

彼の祖父はマチュマティといい、 人間にしては珍しい魔法使いと呪術の両方の才能を持っていた。

それほどの力がありながら、この辺境で一生を独身で過ごし、 彼の育てた弟子の一人が、息子同然に仕え、さらに子を残した。

マチュマティはその子を孫同然にかわいがり、 事故で死んだ両親に代わり、育て、教育した。

だが、彼も年には勝てず、次第にボケていく。 ある雨の降る夜、木の下でうずくまり濡れながら子犬のように彼は泣いていた。
『セシリア・・・』

探しに来た彼の前で、ただ一度その名を口にした後、165歳で枯葉が落ちるようにマチュマティは死んだ。すでに200歳近くまで人間の寿命ものびていたが、なぜかマチュマティは遺伝子レベルでの寿命延長をこばんでいた。
父以上の才能に恵まれた彼は、マチュマティの名を継ぎ、3世を名乗った。


「オレはおじい様の日記を見つけた。」
古いが立派な分厚い表紙のそれは、 若いとき、マチュマティが修行をしながらつづった物だった。

今から140年前、祖父はひどい怪我をした一人のエルフを保護した。
外の世界では、激しい大戦が続いていた。
美しい女性のエルフに心を奪われながら、 祖父は親身にその世話をした。
そのエルフの名は、セシリアとだけ書かれていた。

『ここで暮らさないか?』

告白から一ヶ月、そこには夢のような日々があった。
だが、ある日セシリアは消えた。 何も言わず、ただ一房の髪を残して。
祖父の嘆き、悲しみ、それがしみるように伝わってくる日々。
そして、ある日、日付だけを書かれた日を最後に、 それは書かれなくなっていた。
一言の謝罪も、何の断りもなく、一房の髪を残して去った女。

祖父がどれほど彼女を愛していたか、 一度として訪れることのない女性を胸に、 140年の孤独に耐えて、一人寂しく死んでいったのだ。
3世はじっとしておれなくなった。
女が残した髪を、水晶に封じたペンダントを元に、 不眠不休で、7日の間呪術で必死に探知をかけた。

そして7日目の夜、妖精館で眠っていたイリナと意識がつながった。

王宮や軍の施設には、強力な呪術返しの結界が張ってあり、 セシリアや娘たちとは繋がらなかったが、妖精館のそれは、 比較的弱く、彼の実力と執念がついに突き破った。

それすら、並みの魔法使いや呪術師なら数人がかりでもやぶれるしろものではないのだが。

「呪術でお前さんと意識がつながったとき、色々聞いたよ。
あのセシリア.ラングレーがあんたのばあさんなんだってな。」

数度の大戦を戦い抜き、今なおエルフ国家最大の王国に君臨する女王。
3世の驚愕は怒りに変わった。

「それで分かったさ。どうせおれたち平民は、あんたらにとっては、 取るに足らない存在なんだってな。」
敬愛する祖母の、信じられない行動、 それがイリナを混乱させる。

「気まぐれでもてあそんで、気まぐれで放り出す。 ああ、国家の為ならしょうがないだろうさ、 すぐ年取って死んじまう人間なんて、つまんないだろうさ、 だけどな、おじい様は、そのほんのわずかな一生を、 百年たった一人で生きてきた。あんたのばあさんだけを思ってな。」

「お、おばあさまは、そんな人ではありません」

「お前にとっては、だろう。」
言うべき言葉が見つからないイリナに、 3世は無情に告げた。

「あんたには何の恨みも無い、あんたには何の罪も無い、 だがな、偉大でお偉い女王様にも、140年孤独に生きた男の気持ちぐらいは知って欲しいんだよ。」

最初怒りにませて、イリナを夜の闇に引き出し、 妊娠防護を解かせて、危険な闇の中にイリナを放り出した。

だが、それではセシリアに本当の意味が分かるまい。
3世はイリナ自身をここに飛ばせた。

セシリアに、己の罪を分からせる為に。


ついと、手を動かすと、 ゾンビのような男たちが、わらわらと動き出した。

「エルフの血の濃いあんたにはすまんが、見知らぬ男の子供を、孕んでくれや。 女王様に人間一人分の人生ぐらい、そばで見て欲しいのさ。」






ギシッ、ギシッ、ギシッ、
梁がきしみ、イリナの両腕が痛んだ。

「ひっく・・・ひっく・・・えっ・・えっ、」

イリナはただ泣きつづけた。
どうしようもない悲しみが、次々とうちよせていく。
自分の信じていた家族が、行ったという残酷な仕打ち、 祖母を愛し、そして朽ちていったマチュマティという人、 その孫から投げつけられる激しい憎悪、 祖母は、そんな人だったのだろうか?。

気高く、誇り高く、自分の憧れであった人が、そんなことをするのだろうか。

「あぐううっ!」
アナルとヴァギナが同時に突き上げられ、 イリナの女の部分が、歓喜の声を上げる。
そして、イリナの理性が悲しみの悲鳴を。


−−−ピシイイッ!−−−

頭にはじけた快感が、セシリアをプリズムのようなガラスに映した。

美しく、誇り高く、慈愛に満ちた女王。

冷たいまでの王族の威厳、 苛烈な大戦争を、眉一つ動かさず指揮する豪胆さ、敵から恐れられ、憎悪される祖母。
栄光と輝きの合間に、憎悪と憎しみが、暗く、妖しくきらめいていた。
どちらが本当の祖母なのだろう、 いや、どちらも本当の彼女なのだろうか。

イリナは首を振り、迷いを打ち消そうとした。

「ひぐっ!、ひっ!、ひいっ!」
両脚が抱えられ、激しい突き上げが、無力なイリナの身体を貫いていく。
か弱く泣き続ける姿に、興奮したペニスがいきり立ち、無防備な子宮へ突き入る。

迷いが打ち消される間もなく、 憎悪そのもののような感触が、 灼熱して、脈動しながら、 肉感にまみれて突き上げる。

性欲に無防備な身体が、今一番望まぬ快感を、イリナにぞくぞくと流し込んでくる。

頭が打ち振られ、意識が朦朧となる。
全身が浮き上がるほど、腰が叩きつけられ、衝撃で背骨がのけぞる。

雄叫びが、子宮を突き上げる。

「ひいいいいっ!」
ドブウウッ、ドブウウウッ、ドブウッ、ドブウッ、

根元まで男のペニスが入っていた。
激しく脈打つ亀頭から、おびただしい精液が噴き出していた。
宙に吊られ、力なくのけぞるイリナの腹に、脈動がさざなみを立てていく。


興奮し、射精する脈動が、ドクドクと胎内にあふれていく。

ハンスだけのそれを受け入れるはずだった胎内に、 見ず知らずの無数の男の精液が、ドロドロとわだかまり、 魔法結界の無い内膜へ、容赦なく染み込んでいく。

ああ、また・・・

入れ代わる男が、飢えた目をむけ、 ベルトをひきちぎる。
床に転がされ、身体を折り曲げられ、 顔の真上に来た赤く腫れた秘所から、 ぼとぼとと精液があふれ出る。 顔に、おびただしく落ち、濡らしていく。

その上から跨るように腰を下ろし、イリナの膣を貫いた。
目の前で、オスのペニスが赤黒く光り、胎内に出入りする。

肉が広がり、粘膜が押し開かれ、無力に、無防備に、 押し込まれる光景と、突き入ってくる感触が目の前で合致する。

ブチュッ、ブチュッ、

イリナに注ぎ込まれた粘っこい体液が、 繰り返し逆流し、突き入れるたびに噴き出してくる。

自分が精液の袋に過ぎないと、 力なく貫かれながら、その感覚に支配されながら、 意識が、飲まれていく・・・イリナは目の光を失いかけた。

あふれて逆流する精液が、繰り返し、繰り返し、イリナの顔を汚し続けた。

ザバッ
顔に冷たい水が浴びせられる。
「おい、簡単に気を失うんじゃねえ」

「う・・あ・・・」
髪の毛をつかまれ、顔を引き上げられる。
痛みと、そして怯えが身体を走る。

「簡単に死ぬな、簡単に狂うな、セシリアに伝えるまではな。」
無情で、冷たい、言葉の刃。
セシリアに・・・その言葉に、イリナは必死に立ち向かった。
セシリアを、いやラングレーのみんなを信じて。

喘ぎながら起き上がろうとするイリナを、ためらいも無く男たちに投げ与える。
怪物じみた体力で、 イリナを人形のように軽々と抱え、 イリナの肌をしゃぶり、指先でむさぼり、舌でなぶりまわす。

ズブッ、ズブッ、ズブッ、ズルウッ、
「ひっ、ひぐっ!、あっ、あああっ!」

股が裂けんばかりに広げられ、 猛り狂う陰茎が、イリナを貫き続ける。
M字型に広がり、前後から突きまくられる。
白い肌が痛々しく閃き、力なく首が垂れる。

アナルが壊れんばかりにえぐられ、痺れるほどこねまわされる。
ヴァギナがはちきれそうに貫かれ、底をえぐられる。

抱え上げられた裸身が、暴行に揺れ動く。
うめきと痙攣が、容赦なくほとばしる。

ビクッビクッ

イリナの腹に熱い絶望がほとばしり、こすりつける。
凶暴な欲望が一度や二度の射精では萎えることすら知らず、 さらに硬さを増し、イリナの全てをむさぼり続ける。

気力を失いかけたイリナが、暗い淵に沈みかける。
誰かが、淵の底から声を上げる。

『負けるな、イリナ!』
イリナは泣いた。泣きながら、歯を食いしばった。

死ねない、あの人に会うまでは。
真実を、本当のことを知るまでは。

たとえこの身がどうなろうと、ここで朽ち果てたくない。
ハンスの声が聞きたい・・・!



何時間たったのか、ドロドロの身体に毛布をかけられ、 またわずかの水を入れた桶と布が置かれていた。 粗末な食事もそばにあった。

わずかな望みを託し、胎内を洗い、身体をぬぐう。 絶望に全てを捨てたくなるのを堪え、 味の無い食べ物を口に押し込み、イリナは眠った。

その日、イリナは閉じ込められたまま、何もされなかった。 ただ、気がつくと食事がおかれていた。
闇の中に目を覚ましたイリナは、身体が熱っぽい事に気づいた。


イリナが居るこの地下空洞は、先代の2世が発見した場所で、 温泉脈が近く、かなり温かい。
イリナのように全裸で寝ていても、まずカゼを引く事は無い。

他に誰も知るものはいないのだから、 どれほどラングレー家が必死になって探そうとまず見つからなかった。 イリナの髪に仕込まれた発信機も、この地下では無力だ。
身体がひどく感じやすくなっている。

「き、きたんだ・・・」
イリナはがたがたと震えだした。

彼女を定期的に襲い、苦しめてきた強烈な発情期。
原因不明で、理性では一切抑えることが出来ず、 暴走する本能のおもむくままに、 狂ったように男を求めざる得ない魔の時期。

彼女が妖精館にいる最大にして唯一の理由がこれだ。
しかも、異常な環境とストレスが、欲求を加速していた。
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