イリナという妖精の日常
受け止められる男性がいて、彼女のことを理解できて、定期的に心身を満たされる。
女性にとって、これほど幸せな事はないであろう。
『自分がまともな女性だったら・・・』
イリナの心をいつもカリカリと噛むつぶやき。
ハンス・イェーガーに出会って、イリナは幸せと自己嫌悪の両方を、
いつも思わずにはいられない。
自分が妖精にならなければ、ハンスには出会えなかっただろう。
ハンスのことを考えるだけで、胸がいっぱいになる。
彼に愛されることを考えただけで、幸せにとろけそうになる。
だけれど・・・
「おひさしぶりです、マックドァルさま。」
立派な鼻ひげを蓄えた紳士が、にこやかにキスをする。
葉巻のにおい、男性のにおい、
優しいしかしゆっくりと味わうようなキスが、
イリナを上気させる。
「あなたの甘い唇は、いつもすばらしい。」
耳元でぞくりとするようなつぶやき。
頬を上気させたイリナも、
「マックドァル様のキスも、私をドキドキさせてくださいます。」
潤んだまなざし、
上気したすべらかな頬、
銀の鈴を振るような声。
背筋を一撃されたような快感が、男性の中を駆け上がる。
「いつも思うのですよ、なぜもっと早くあなたと出会えなかったのかとね。」
イリナは決して多弁な娘ではない。
ただ、静かに微笑を向け、底知れぬまなざしでマックドァルの言葉を受け止めていく。
マックドァルはいつも思う、
このまなざしを、少しでも揺るがすことはできないか、
自分は、この少女の心を揺るがす存在ではないのだろうか。
だが、同時に・・・
自分に向けられるまなざしが、
たまらなく愛しく、そしてあたたかいことも感じていた。
イリナは何も言わず、
ただ、マックドァルによりそったまま歩き出す。
すでに濡れている自分がいる。
あたたかいしっかりした腕にすがり、
体温と体臭と、
互いの重みと柔らかさと、
感覚が交流する感触、
それに二人が重なっていく。
自分が妖精になったのは、多数の男性とSEXしなければ耐えられないため。
だけれど、妖精になって初めて分かる、男性の本当の温もり。
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妖精になる前、
ホテルのベッドに引き込んだおびただしい男性たち・・・
「くはあ、ああっ、あっ、んフッ、ンんっ!、んうっ!、うっ!、んううっ!」
激しくきしむベッドの上で、
イリナのしなやかな肢体が、犬のように這い、あえぎ、しなう。
ジュブッ、ズブッ、ズブッ、ズブ、ズブッ、ジュブッ、ズッ、ズブブッ、
下からヴァギナを突き上げ、腰を跳ね上げる男性。
グリュッ、ギュッ、ズッ、ズブッズッ、ズブッ、グリュッ、
後ろからアヌスを犯しながら、尻肉をつかみ、広げ、淫靡なすぼまりを視姦する男性。
チュバッ、ジュブ、ジュブッ、チュバッ、
バラの蕾のような唇が、淫乱に広がり、みだらにすぼまり、いやらしく吸い上げる。
細く白い指先が、亀頭の先を嬲り、陰茎の脈動をしごきあげる。
「ひゃうううううっ!!」
脈動がイリナの胎内を突き上げ、爆発する。
ドビュウウッ、ドビュウウッ、ドビュッ、ドビュッ、ドビュッ、
同時にアヌスの中へ、灼熱するマグマが、激しくほとばしる。
同時に犯されながら、同時に射精されながら、
それを残らず受け止め、飲み込んでいく。
顔一面に射精され、愛らしく膨らんだ胸に浴びせられ、
指先から手首までどろどろにされて、
ごろりと横たわるイリナに、
待ちかねた男たちが群がり寄る。
「来て、もっと、もっと、みんなでめちゃくちゃにしてえっ!」
欲望に滾った目、獣欲に血走った目、
それに見られ、嬲られ、輪姦されて、
「あフッ、あっ、ああっ、いいっ、いいよおおっ!」
前後から貫かれ、掻き回される胎内、
ドロドロの身体中にさらに重ねられ、塗りたくられるザーメン、
なおもそれを欲し、むさぼり、受け入れてた。
自分も、相手も、乾いて、乾いて、ただむさぼるだけ。
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今すがっている腕は温かい。
肩に回してくれている手が、気持ちいい。
心を傾け、情を穏やかに投げかけてくれる、優しい深い感覚。
今はこの人のものになる。
優しい気持ちに精一杯応えたかった。
「イリナ」
マックドァルは、美しい庭園をそぞろ歩きしながら、ふと声をかけた。
まるで、イリナの心を聞いたかのように。
「自分はある家の当主として育ちました。」
名家の当主として教育され、その道を歩むしかなかった彼に、
恋愛や結婚の自由などあるわけが無かった。
今の妻に不満があるわけではない。
遊びが禁じられているわけでもない
大富豪として有名な彼に出来ない遊びなど無かった。
ただ、遊びは遊びに過ぎない。
「ここに来るまで、そう思っていました。」
だが、彼のシニカルな心を微塵に打ち砕いたのがイリナの笑顔だった。
まっすぐな視線と、
心から喜んでくれる笑顔と、
何の計算も無いあたたかさと、
それを口にしようとしたマックドァルに、優しいキスが見舞った。
「それ以上はおっしゃらないで下さい。今は二人だけなのですから。」
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妖精館の奥庭には、美しく木を組み合わせ、
まるで林の一部に溶け込んでいるかのような、
小さな建物がいくつか点在していた。
あずまや、と呼ばれるそれは、
洞窟のような口をぽっかりと開け、
奥に、磨き上げられた美しい木の椅子と、小さな香炉が置かれている。
自然を好むエルフたちが、
時に好んで使う場所でもある。
掃き清められ、香が焚かれた中で、
イリナはひざまづいて、マックドァルのたくましく黒光りする陰茎を、
唇を滑らせ、指先をまといつかせ、じわじわと舐め上げていく。
柔らかな頬をこすられ、
潤んだ視線を投げられ、
いとおしげに舌先に絡み付かれ、
腰が抜けそうな快感によって、今にも全てを吸い出されてしまいそうだ。
テクニックのどうのと言う前に、
こめられた愛情に、男の威厳も何もかも、押し流されていく。
イリナは、自分にエルフの血が流れていることを、
ふと感じていた。
ルフィル妖精館の膨大な敷地内にある自然の中に溶け込んだ木の家、
その中で、奔放に血が沸き立つことを。
したたりを飲み干し、
唇をちろりと舐めた。
椅子に座ったマックドァルのヒザに、
優雅に、しかし大胆にまたがっていった。
「はっ、はっ、あっ、ああっ、あんっ!」
工芸品の椅子をきしませ、
脚を淫らに広げ、白いドレスが激しく動く。
あたたかい、
くるみこまれ、飲み込まれていく。
ほっそりとした若い、こんなにもか弱い姿に、
蠢きが、愛液が、粘膜が、
こすれ、からみ、蕩けあう。
胸をはだけ、愛らしい乳首を吸い、
激しく動く腰を、さらに引き寄せ、突き入れる。
「ひあっ、あっ!、ああっ、今ッ、今だけは、あなたのもの・・」
「ちがっ、うっ、きみは、ものじゃ、ないっ、愛してるっ、イリナっ!」
甘い喘ぎと呟きが、いつとも知れぬ軋み中に絡み合い、溶けていく。
「あうううううううぅぅぅぅ!!」
白いドレスがのけぞり、痙攣する。
ほとばしる津波を受け取り、
蹂躙を存分にまかせ、
白く溶け合っていく。
マックドァルは、帰る前に一通の封筒を渡した。
イリナは気恥ずかしげに受け取り、静かに頭を下げた。
とんでもない額の小切手が入っていることは、
これまでの経験で分かっていた。
だからこそ・・・
『なぜもっと早くあなたと出会えなかったのか』
という言葉感じた、真率な響き。
でも、時は帰らない。
マックドァルにとって、自分は妖精。
館を去れば、消える存在でなければならない。
イリナはためらうことなく受け取ることで、
自分は交わることはあっても、人生をともには
出来ない妖精なのだと、告げていた。
本当の私は、ハンスだけのものだから。
帰りのリムジンの中で、彼はポケットを探った。
「また・・・、渡せなかったな。」
彼女に似合いそうなエメラルドの見事な指輪。
次もまた渡せないかもしれない、
そう思いながら、次に合える日を心から待ち望んでいた。
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