妖精館体験記-ベルリナ編-
僕の腕の中、彼女がいる。
細くしなやかで、柔らかく温かく、優しく、礼儀正しい。
「油臭くないかな?」
僕は何回聞いているんだろう。
「いいえ、お風呂上りですもの…石鹸の、いいにおい」
そして彼女は何回、嫌な顔もせずに答えてくれただろう。
それがたまらなく愛しくて、僕は彼女を抱きしめる。
彼女の名は、ベルリナ。 ベルリナ・アエルマッキ。
ようやく会えた、僕の、いや、僕達の妖精。
僕の職場は、空軍。といっても、戦闘機を相手にはしない、大き
く野暮ったい輸送機の整備だ。当然女っ気は少ない。基地祭で、愛
機と並んで写真に収まるパイロット、その傍らで、ロープを支えて
人垣を遮るのが、僕達のポジションだ。
来る日も来る日も整備整備整備、時々訓練。災害出動などあると
まあ、一週間は地獄を見る羽目になる。眠気と疲労で、容器に顔を
突っ込みそうになりながらレーションを食い、使いまわして汗臭い
毛布にくるまって、詰め所で交代で寝る、なんてのは序の口だ。
でも。真っ暗に見える僕達の毎日にも、希望はある。
二週間に一度、僕達の基地からはルフィルに向けて輸送機が飛ぶ。
ERF空軍の整備センターへ、機体を順番に空輸するのだ。ほとんど
全部を分解しての整備だから、日帰りできない。最低一泊はしない
といけないのだが、これに当たった人間は、楽しい休暇をフイにす
る。誰もが避けたい任務だ、普通なら。
だけど。
輸送機を整備センターに引渡したあと、簡単な手続きで、運んで
きたパイロットには12時間の外出許可が出る。基地の前にいつもい
るタクシーに飛び乗れば、光まばゆいルフィルの街までひとっ走り
だ。でも、皆へのお土産なんて買う必要はない。
「妖精館へ」とタクシーの運転手に言ったあと、そこへ電話をか
けて、自分の名前と、あるコードと、あの娘を予約する、と言う、
それだけでいい。
そしてあの娘が、ベルリナ・アエルマッキ。
ホプキンスもマクマホンも、サカモトもグエンも、とにかく僕達
の間では、ルフィルに行ったら彼女に会うのが約束だ。
彼女は僕達の女神。童貞を引き受けてくれる、優しい妖精。
もちろん、ルフィルの妖精館の値段は知っている。普通なら尻込
みしそうなその料金は、基地祭の模擬店で稼いだ売上やら、皆の募
金やらで、ルフィル行きが決まった奴に渡されるのだ。
本当は僕より先にローウェンが行くはずだったのだが、
「生憎だったな。俺はもう、契約しちまったよ」
そう言って笑い、薬指に光るリングを見せつけて、僕に順番を譲
ってくれたのだ。
まあそれはともかく、僕はベルリナをその腕に抱いている。彼女
の温もりが、さっき放ってしなだれている僕の中心を元気付ける。
「ご奉仕、させていただきます」
まずフロアで会って、腕をとられて部屋に入り、お互いが服を脱
いで、お風呂場へ入った。そこで丁寧に洗ってもらったあと、僕は
立ったままで、まず彼女の唇で歓待してもらったのだ。
「ん…熱くて、固くて…すてきですわ」
上目遣いで僕を見ながら、ピンクの唇を開いて、暖かく潤んだ中
に、僕を招き入れる。小さく音をたてて吸い上げ、舌で転がす。
僕の初めては、一分、いや、もっと短い間に終わってしまった。
自分でも恥ずかしくなるくらい、僕はベルリナの中に、大量に放っ
た。それでも彼女はむせたりもせずに、飲み干してくれた。
「…美味しい」
頬を淡いピンクに染めて、そう言ってくれたベルリナ。床がタイ
ル貼りでなかったら、僕はその場に彼女を押し倒していただろう。
身体の滴を、ふかふかのタオルで拭ってもらい、僕達は何も身に
つけずに、ベッドに腰掛けて、少しお酒を飲んだ。
「いかがですか?」
そう言ってベルリナは、赤いワインを口移しで飲ませてくれたり
もした。僕には酒の味などわからないが、とても興奮した。
他愛ないおしゃべりで、僕はずいぶんとつまらないことを喋った
と思う。それでも、彼女は答えてくれるし、自分の失敗談でも話し
てくれる。クラスメイトと並んでるような気軽さで、緊張していた
僕を解きほぐしてくれる。それが、とても嬉しかった。
ベルリナの指がさりげなく動き、部屋の灯を暗くした。
しばらく、僕達はおし黙る。僕は何を言っていいかわからない。
耳の中に、ハイスピードで動悸が響いている。僕の中心はもう、痛
いほどになっているのに、動き出す何かが、僕には欠けていた。
と、ベルリナが動いた。立ち上がると身体を翻し、僕の両肩を持
ち、そのままやんわりと押し倒す。裸の背中にシーツの心地よい冷
たさを感じた瞬間、僕はじいっとベルリナに見つめられているのに
気づいた。
「わたくし…もう、我慢ができませんの。あなたを…ください…」
瞳を潤ませて、可愛くおねだりをする。
僕は腕に力を入れて、彼女を抱きしめて、長い長いキスをした…
位置を交代して、僕はおずおずと彼女を愛撫しにかかる。ゆるや
かに上下している胸、そのてっぺんにはつん、と乳首がある。部屋
を明るくして、そのピンク色を眺めたいが、彼女が泣いちゃうかも
しれないので、やめておいた。
僕はできるだけの慎重さで、そこを触り、つつき、掌でさすり、
揉みしだく。とても熱い…掌に鼓動が響いてくる。
「あ、ん…」
ベルリナが喘ぐ。唇から甘い、切なげな息が漏れる。
ベルリナの胸は、グラビアで見るモデルほどには大きくない。で
も、とてもいい形だ。ちょうど掌に収まるくらいで、それもいい。
そこの味を確かめたくて、僕はキスをしてみた。乳首を吸うのなん
て、赤ん坊の時以来だ…覚えてないけど。
唇は左の胸へ、手は右の胸に這わせ、僕はベルリナの胸を楽しむ。
耳に彼女の喘ぎ声が聞こえる。とろけるように、甘い声だ。
ふうっ、と、エルフ独特の長い耳に、息を吹きかけてみる。それ
だけでベルリナは敏感に反応し、身体を震わせる。
改めて抱きしめると、ベルリナの身体はちょっと小柄だ。僕が腕
を回したら、その中に収まってしまう。
「…」
抱きしめて瞳を見つめるだけで、彼女は唇を重ねてくる。一瞬た
りとも休むことのない、その奉仕は、僕をますます興奮させた。
「ええと…その…」
自分でも解る位顔を赤くして、僕はベルリナの耳に唇を寄せ、お
願いを言う。
「かしこまりました」
微笑んで身体を起こし、くるんと回し、僕が下になる。ベルリナ
の唇が僕の、僕の唇がベルリナの、それぞれ中心に重なる。
そこは甘く、熱く潤った場所だった。僕の舌に蜜が乗る。舌が粘
膜に触れるたび、じわあっと蜜が染み出てくる。
ベルリナの口が、僕を包む。温かい粘膜が、ぼくをもてなす。そ
からしばらく僕達は、お互いを愉しみ、味わった。
たっぷりと蜜を味わったあとは…いよいよだ。僕はベルリナに再
び告げて、身体を入れ替えてもらった。やっぱり、初めては正面か
ら…彼女を見つめながら、体験したい。
「来て…ください」
言いながら、ベルリナはしなやかな肢体を開く。彼女に導いても
らい、僕はゆっくり、ゆっくり、彼女に分け入ってゆく。
「!!」
頭がくぐったところで、僕は…暴発してしまいそうになる。背筋
に力を入れて、間抜けにこらえる僕。それでもベルリナは微笑んで、
僕をフォローしてくれる。
「ゆっくり、息をお吐きになって…そう…あふっ…あなたを感じま
す…とても熱い…」
ベルリナの中が、僕に絡んでくる。締め付けてくる。神経がそこ
へ向かって、研ぎ澄まされていくのが解る…背筋を熱さが抜けてゆ
く…
そのまま僕は、何度もベルリナの中で放った。放つたびにベルリ
ナが震え、僕を抱きしめて喘ぐ。それが嬉しくて、僕は自分でも驚
くくらい、早いペースで回復しては、また放つ…
翌日は、素晴らしく晴れた。整備を終えた輸送機の、座りなれた
シートに身体を預け、僕はルフィルの大地に別れを告げる。玄関ま
で出て、僕を見送ってくれたベルリナ。
「また、お越しください…お待ちいたしております」
そういって、キスをしてくれたベルリナ。
次に僕がここへ来るのは、いつだろう。何ヶ月?何年?わからな
い。
でも、僕は信じている。永遠の生命を持つというエルフ、ベルリ
ナ・アエルマッキは、いつだって、そこにいる。
きっと。いつまでも。
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