■ EXIT      
妖精館体験記-イリナ編-


雑誌でもネットでもいい、ルフィルの名があればそこには大抵、 風光明媚とかいった美辞麗句が添えられている。それは事実だ、 空港に降り立っただけでそれは直感できる。しかしこの街の真価は それではない、タクシーで一言、その名を告げるだけだ。

妖精館。ルフィル郊外にそびえ建つその巨大な洋館は、門からの 敷地も含めて、妖精と呼ばれる娼婦達の住まう世界なのだ。

「いらっしゃいませ。ようこそ妖精館へ」

白いシルクの服に包まれた肢体を優雅に折り、うやうやしく礼を する妖精たち。その笑顔は輝くばかりに美しい。エルフに馴染みの ない世界から来た身には尚更感動だ。

あれこれ目移りしながら、私が選んだ妖精は、イリナ・クィンス。

後で知ったのだが、彼女はここでは五指に入る人気妖精で、運が悪 いと半年待っても抱けない客もいるらしい。
そんな彼女を予約もな しに指名できた私は、ちょっとだけツいているといえるだろう。
無論、高級娼婦だけに、その料金は安くはない。

この半額以下で、娼婦を購うことができる場所を、私はいくつも知っている。

もっとも、楽しんだ後身包み剥がれたり、抜き打ち捜査で手が後ろに回るリスクを 呑み込めば、だが。それがここでは堂々と、何の恐れもなく妖精を 抱けるのだ。
訪れる価値はある、と改めて記しておく。

ともあれ、イリナにエスコートされて、私は部屋に入った。瀟洒な インテリアで整えられたそこは、娼館の一室とは思えない。 汗や黴や煙草の臭いがしみついた、すりきれたシーツなどというものもな い。ルフィル市街の一流ホテルに匹敵する、清潔さと気品があった。

時間はたっぷりある、私とイリナはソファに腰かけて肩を並べ、 あれこれと話した。

殆どは私の質問だが、イリナは丁寧に答えてく れる。短めに揃えた髪から見える、エルフ特有の長い耳には、ごく 薄い金の産毛が見てとれる。彼女の語彙も知識も驚くほど豊かだ、 いつまで話しても退屈しないだろうが、それだけでは勿体ない。

会話が途切れた一瞬を見計らい、私はイリナの肩に手をかけた。

躊躇なく彼女が身体を寄せてくる。続いて唇が重なる…驚いた、妖 精は唾液にすらハーブの香を染み込ませている。火照り始めたイリ ナの身体から立ち上る香もまた、かぐわしく鼻をくすぐる。

「お風呂…いかがですか?」

それに比べて日中ルフィルを歩き回った私の身体は汗臭かったの だろう、イリナはさりげなく勧めてくれた。本当はこのままのしか かりたかったが、彼女に嫌われては元も子もない、素直に従う事に した。

その前にお楽しみ、とばかり、私はイリナの服を脱がせにかかる。 白い肌から絹の服が除かれると、イリナはブラもショーツもつけて いなかった。白いガーターとストッキングが妙に艶かしい。それも そろそろと脱がせると、今度こそイリナ・クィンスは生まれたまま の姿になった。

続いては私の番だ、イリナは丁寧に脱がせてくれる。身をかがめ てズボンと下着を降ろしてくれれば、その鼻先へ既にいきり立った 私のモノが飛び出した。

「…」

イリナがかすかに笑う。心なしか彼女の目がギラついているよう だ。これはバスルームでも楽しめそうだ…。

部屋と同様、案内されたバスルームも清潔で十分に広い。 白い埋め込み型の浴槽にはふんだんに湯が満ち、やはりハーブ等混ぜてあ るのだろう、胸のすく香りがする。

これだけ香草が繰り返しだと、 大抵酷い悪臭になってしまうものだが、イリナによると、エルフは その長い歴史の中で、ハーブや薬草を実に多彩に使いこなしてきた らしい。
自然を愛する種族なのだと、私は文明を拒否してきた偏屈 な存在という、エルフに抱いていたイメージを、尊敬をいだきつつ 変更した。

まずはシャワーで汗を流し、サービス開始、とばかりに、イリナ がボディソープを泡立たせ、身体になすりつけて、後ろから私にし がみつき、滑らせてくる。
その肌はきめ細かで、生命をもった絹の ようだ。人間でこんな肌を持つ娼婦など、大枚を払ってもまずお目 にはかかれない。浴室の暖かさも手伝って、私はゆっくり夢の世界 へ入っていった。

ふと、湧き上がる快感に顔を下げれば、イリナの白い、しなやか な指が私を優しくしごきあげている。 心地よさを貫いて射精へ繋が る予兆を感じた私は、慌てて下腹部に力を入れ、それを堪えた。 私の首筋に、暖かく湿った感触がくる。

イリナが私の皮膚を、少し尖らせた唇でついばんでいる。ウブな恋人めいたその行為は、し かし新鮮な感動を与えてくれた。

私もお返しとばかり、首を思い切 り捻ってキスをする。イリナが応じ、深くねっとりと舌を絡めてく る。その舌づかいは、熟練した娼婦のそれだ…そのギャップが、ま すます私を興奮させた。

舞台を浴槽に移し、私達は睦み合った。
腰を浮かし、湯船から突き出た私のソレを、イリナはしゃぶり、舐め上げ、強く弱く吸う。

深く頬張って、絡んでくる口内粘膜と唇の巧みさは、ヘタな膣の感 触など足元にも及ばない。5分ともたず私が果てたのは、当然だ。
無論イリナは、それを一滴残らず飲み干した。

これもイリナの魔法やテクニックなのか、射精しても硬さを失わない私のソレに、再 び唇を這わせてくる。このまま天使の唇で、絞りきられてしまいそ うだったので、私は湯船から上がって、ベッドで楽しみたい、と、 イリナに告げた。

快い感触のタオルで身体を拭いてもらい、私とイリナはベッドに 潜り込む。今度は私が攻める番だとばかり、唇といわず乳首といわ ず、大きく開かせた脚の間、指でそっとめくると鮮やかなピンクを 見せる花弁といわず、舌と指で存分に楽しんだ。

イリナの蜜は甘い…いくらでも味わいたくなる。

喉が鳴り、飲み下すたびに、胸の動悸が速くなる。

これもエルフの秘術だろうか?

だとしたら恐るべきことだ、触れもしないのに、イリナに触っても もらっていないのに、私のソレは射精をしたくてうずうずしてきた のだ。このまま暴発しては勿体無い。私はイリナにお邪魔すること にし、もう一度脚を開かせて、その可憐な花弁に突き入れた。

…そこはまるで桃源郷だった。

たっぷり潤い、甘くしっとりと締 め付け、無数の肉襞が私をもてなす。耳に届く、イリナの喘ぎも、 また艶かしい。白状すると、挿入して数回腰を動かしただけで、私 はイリナの中に、思い切り射精してしまった。

イリナはそれでも嫌な顔ひとつせず、再び甘く締め付けてくる。 忽ち回復した私は、慈母の笑みで見守るイリナへ頷いて、腰を再び スライドさせた…。

それから朝まで、私は何度射精したかわからない。

イリナの中に、その唇に、白い肌に、私はありったけの精液をぶちまけた。イリナ もまた、何度も絶頂を向かえ、様々な体位で私をもてなしてくれた。

彼女の笑顔に見送られて妖精館を出ても、私に疲労や拒絶感はな かった。普通なら倒れているほど射精したのに、だ。これもエルフ の秘術なのだろうか?

翌々日、私はルフィルを離れた。旅客機が飛び立ち、大きく旋回 する途中で、窓からあの妖精館と、深い緑の森が見えた。

今日もまた日が沈めば、あの妖精、イリナ・クィンスは、とびき りの笑顔で、極上の身体で、男を迎えるのだろうか?願わくば次に ルフィルを訪れる時も、会えることを願いつつ、私はシートの背を 倒し、まどろみながら帰路へとついた…。
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