■ EXIT      
バカンスのざわめき


 ザザーン

波の音、風のそよぎ、日差しは目に眩しく、 砂浜は白く輝いていた。

だが、その中でも一番輝いているのは、 のんびりと海にたわむれる妖精たち。

水にはしゃぐベルリナとクレア、 砂浜でトップレスの香織、 トロピカルカクテルを楽しんでいるイリナとイェッタ、

今日は、彼女たちのバカンスで、 その予定を聞きつけ、他にも十人の妖精たちが、 遊びに来ている。

何もバカンスまで一緒に来なくても…と、 思ってしまうが、皆親友や交流の深い友人ばかり、 妖精たちは、意外なほど仲が良い。

ここは、最高級ホテルグランドエルフォンのプライベートビーチ。

もちろん、ホテルの最上級ロイヤルスィートの部屋は、 彼女たちに占拠されている。

「いいわねえ、気持ちよくて。」

豊かで柔らかそうなバストが、 のびやかで美しい裸身の上で、少し重力に歪む。 香織のトップレスなど見せられては、 美しい女性を見慣れているはずのここのスタッフも、 思わず前かがみになってしまう。

「でも、ちょっとさびしいですね。」

かわいい透けるカーディガンを肩にかけ、 白い肌をまばゆいほどに輝かせるイリナは、 見る人の心臓をわしづかみにしてしまう。

シックなワンピースの紺色に、小さく優雅なロゴがあるだけの水着は、 新鋭デザイナーの発表したスク水型と呼ばれるタイプだ。

恐ろしくシンプルで単純、 女性が安心して着れる水着のように見せかけながら、

実は、女性の優美なラインを白い浜辺や水に際立たせ、 着けた女性の安心感から無防備なしぐさをさせてしまうという、 暗い、絶妙な、感覚と英知と欲望の結集したデザインであった。

妖精館を代表する女性であり、 AVに出演すればあまりの乱れっぷりに度肝を抜かれるイリナだが、 本質は恥ずかしがり屋で、純粋で、実にかわいらしい性格。

おへそも出さないこの水着が気に入って、 無邪気に浜辺で思いっきり身体を伸ばしている。

が、しかし…、

広い寝椅子の上で、胸をそらし、両手を後ろに組んで伸びをし、 片膝を折り曲げて、もう一方の足をすうっと延ばす。
絵のような美麗な光景と、 胸を突き出し細いのどをのけぞらす、エロスの女神のような姿。

少女と女、両方を描き出したような足を開き、 寝椅子の上で腰をくねらせるような動き、 やわらかい体の描く曲線が、無造作に、無防備に椅子を降りる。

白い砂の上で、肩幅より広めに足を広げ、 すうっと身体を折り、両手を足首からつま先へ広げ、 足の間へ頭を入れるような姿勢になる。 が、伸縮性の高い水着は、突き出したお尻に引き伸ばされ、 次第に狭くなり、隠しきれぬスリットが広がってくる。 そんな危険極まりない姿勢で、知り合いへ無邪気に手を振る。

彼女の無防備かつ無邪気な様子は、際立つ容姿もあいまって、 神話伝承に出てくる森の精が、裸で現れたかのような錯覚を引き起こす。

そのため周辺では、転倒、衝突、激突、カップルの破局騒ぎまで、 イリナの危険なエロスを、この水着、むしろ際立たせる凶器と化していた。

これで、普通の浜辺に来た日には、 周囲で惨事が絶えないこと請け合いであろう。

それ以前に、男性が群がって身動きとれないかもしれないが…。

ビーチバレーに加わったり、イルカによく似た動物とボーバルと泳いだり、 妖精たちは賑やかにはしゃぎまわる。



「ふう…」

肌が火照り、艶めかしい息が夜の風に溶けた。

おいしい夕食とお酒、軽い酔いと日差しの火照り、 ERのスキンケアは、強烈な南国の日差しも軽い火照り程度で済ませ、 きれいな小麦色も、白い肌も望みのままだ。
イリナは、焼けないようにして軽い火照り程度で済ませている。

満月が鮮やかに白く、波がそれを跳ね返すように動く。

他の妖精たちは、昼間の疲れでぐっすり寝ているが、 イリナはお酒と日差しの火照りで、なんだか眠れなかった。

ビーチサンダルが波に濡れ、 白い短パンから延びた白い足が、 短いピンクのキャミソールから見える肌が、 上気した白い頬が、月光で輝いていた。

人の声がした。
「すごかったなあ、ここ来てよかったよ。」
「おいおい、こっちは生殺し気分だったぜ。」
「可愛かったよなあ、ハーフエルフの女性。」

数名の若者が、浜辺のはずれでランタンをつけ、酒やつまみをあおっていた。 どうやら、このホテルのボーイたちらしい。

「スク水の彼女だろ、名前しってるか?」
「他の女性がイリナって呼んでたぜ。」
「おおっ、イリナちゃんか、いい名だな〜お近づきになりたい!。」

声を殺して笑いながら、イリナはそっとその場を離れた。

昼間に使った寝椅子が、きれいに磨かれて並んでいた。
夜風が火照った肌に気持ち良く、そこに横になると、涼しくていい気持ちだった。

 ザザーン

若者たちが、石のごとく凍りついていた。

誰かが、ごくりと喉を鳴らした。

はあっ、

長い呼吸停止が解け、ようやく涼しい空気を吸い込む。

月光の下、白い寝椅子、 その上に静かに『眠れる美少女(スリーピングビューティ)』。

軽い宴会を終え、にぎやかに戻って来た彼らが、 帰りにちょっと横になる場所。

そこに、月の光が凝り固まったような、少女の寝姿。

「すごい・・・」
「き、きれいだ・・・・」

この瞬間をわずかなきっかけが破り、壊してしまう事を恐れる、 細い細い、息をはくような声。

長いまつげの上に、月光が踊る。
白い頬を、光の粒がすべり降りる。
濡れた薔薇のつぼみ、小さな唇が濡れたように輝く。

それに、手を、恐る恐る伸ばしたとして、誰が責められよう。

触れて弾けるのではないかと、夢が壊れるのではないかと、 おびえて、それでも指をそっと、唇の輝きにのばしてしまう。

震えて、恐れて、それでも指先にすべてを集中して。

かすかな気配、 人の感覚、 まどろみの中から、優しいおびえる指先。

かすかに動く唇。

薔薇のつぼみが、そっと広がる。 かすかに、かすかに、優しいキス。

悪魔が全身を駆け抜ける。

恐怖と歓喜が、脳まで走る。

指の先から、血を噴くのではないか、 全身の血が沸騰するのではないか、

キス、そっとまたキス、

光景が、見る者を妖しく呪縛する。
指先が、己の性器と化すように感じる。
震えが、足から全身にはいのぼる。

手が凍りついて、キスの魔力から逃れられない。

必死に振り払おうとする、でもできない。
このままいってしまう、何もできず達してしまう。

泣き叫びそうな意識が、 開いた唇にのまれた。

「ん…あむ…ちゅ…」

無邪気な、淫魔の快楽。

ばら色の唇、熱く濡れた舌先、 とろけるハチミツのようなぬめり。

ピンク色の渦が、指先から脳へ、 背中をはいまわる、快感の魔物たち。

無邪気に、しかし、悪夢のような蠢きで、 指先から全てを、吸いだされてしまう。

「ひっ、ひ・・っ、はひ・・・っ」

半泣きの声で、指先に全てを支配され、 少女の全てに熔かされる。

少女はゆっくり身体を動かし、 あどけなく指を、咥えたまま、 身体を横へと動かして、 ヒザをゆっくりと身体に寄せる。

うごめき、盛り上がる肌、 小さく、か弱く、無防備な身体、 それでいて、若者が一人、その奴隷と化していて、 泣きながら、指先の快楽に腰をふるわせる。

匂いが、可憐な鼻をくすぐり、 唾液が、小さな口に湧き出す。 達した男が、真っ白になりかけ、 唇から抜かれた指が、 いやらしい、ゆっくりした動きで、 ねっとりと、快感の極地の蠢きで、 舌先で、喘ぎで、ぞろぞろろと舐め上げられる。

腰が、ガクガクと痙攣する。
今にも再爆しそうになる。
真っ赤になった目が、イリナの無防備な肉体に、 襲い掛かった。

ドロドロの肉棒が、 むしられた短パンの中、 白い、白い、青さすら帯びた腿の間、 濡れて、蕩ける華の中に。

グヂュルギュルギュッ

「ん…は…っ!」

かすかな、絶え入るような声。 熱く、火花を散らさんばかりの、 焼けた鉄杭のような、男の陰茎、 それが、きつい肉洞の中を、

一気に、荒々しく、けだものじみて、

突き抜ける。

舌が、喘ぐ。
唇が、濡れて、糸を引く。

恍惚とした顔が、上気して、揺れる。

ジュグッ、ジュブッ、ズグッ、ジュブッ、

音が、イリナの一番好きな音が、 身体の芯を突いている。

細い腰がくねり、 白い喉が反り、 長く細い足が、揺さぶられる。

快感が、じりじりと燃える。
うごめく律動の、凶暴な突き上げ、 快感が、打ち込まれ、染みとおる。

「んはっ、はっ、んあっ、ああっ、」

淫靡な声、淫らな声、卑猥な声、蕩ける声、

のけぞる腰が、イリナを突き刺す。
深々と埋まるそれが、胎内の奥にめり込み、 快感と絶叫で吼え猛る。

「んああああっ!!」

ドビュウウウウウウッ、

泡立つ放出、

ドビュウウッ、ドビュウウッ、ドビュウウッ、

男の若い腰、そり返り、突き立つ。 ほとばしる、出す、撃ち込める。

イリナは夢うつつのまま、快楽に従順に、ほとばしりを受け入れる。

目の前のそれに、目が合う。 唇がまた、それを咥える。

牡のにおい、精液のにおい、鼻が深く吸う。

舐めあげ、指でころがし、 染み出す先走りを、舌先で嘗め回す。

別の男が、足を掴んだ。 広げられる、涼しい夜気、 トロトロの間を、かすかに冷やす。

のしかかる男性、

『ああ、きて、いいから、私なら、いいから』

男の感覚に満たされる。

ズブ、ズブ、ズブ、

うめき、舌を伸ばし、喉を飲み込む。 身体に、入れられ、入れさせ、締め上げる。

快楽が、白い肌を染め、月光がそれを妖しく照らす。

のたうつ裸身を、恍惚の貌を、 突き上げるたびにくねる身体を、 白く、光らせ、汗に、輝かせ、快楽に、のけぞらせ、 うめきが深く、深く、深く、何度も、何度も、何度も、

絶頂が、撃ち果てる。

「んん−−−−−−っ!!」

ドシュウウウウウウウッ、

深い、イリナの腹の奥、 熱く、煮えたぎって、大量に、 のけぞる胎内の奥一杯、 突き上げ、突き上げ、中に出す。

腰をくねらせ、白い尻を上げ、 男の手が尻を掴み、広げ、のしかかる。

『ああ・・・私、またやっちゃったんだ・・・』

かすかな後悔、夢の記憶。 たまらなくなって、男を集めて、 見知らぬ人たちの、性欲に頼って、 自分の、酷い性欲を慰めてもらって、 恥ずかしかった。

だから、今だけ、いっぱい、

ズブッ、ズブッ、ズブブッ、

私の、身体、いくらでも、いいから、

グリュッ、リュッ、ズブブッ、グリュッ、

お願い、許して、私、止められない。

泣きながら、しがみつく。
前から押し込まれ、歓喜に震え。

喘ぎながら、反りかえる、 下から、アナルを突かれ、締めつけて、感じあう。

顔を濡らし、精液を零し、唇を開く。
指を貪り、掌を転がし、両手に握り締めて、放たせる。

『出して、入れて、汚して、犯して、メチャクチャにしてえええっ!!』

痙攣するイリナ、 突っ張る両足、 うめき、突き上げ、叩きつける。

ドビュルウウウウッ、ドビュルウウウウッ、
ビュグウウッ、ビュグウウウッ、
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、
ビュルッ、ビュルッ、ビュッ、
ブシュウウウッ、シュブッ、

瞬間、白濁する。
意識も、罪悪も、嫌悪も、歓喜に染まる。

顔も、喉も、胸も、腹も、アナルも、ヴァギナも、

イリナの全てが白濁し、汚される。
快楽に、しがみつく。
歓喜に、のたうつ。
喜悦に、打ち震える。

「んはあっ、はっ・・・はっ・・・、ああ・・いいのお・・・」

優しい愛撫が、男をそそり、 甘い喘ぎが、興奮をあおる、 汚れ切った少女が、月光に輝く。

「おねがい…もっと…もっとおお…」

跨る男、その天を突くドリルが、イリナの身体を押し広げる。

「んはあんっ、ああっ、いい、いいのおっ、」

うねり、突きまくる動きに、蕩け、喘ぐ。
後ろから、前から、男たちが群がり、貫く。

何もかも忘れて、イリナは快楽に溺れた。
脚が、強く交差し、 声が、歓喜が、喉を高く抜ける。

うめきが、絶叫が、ほとばしり、噴き上げ、中に注ぎ込まれる。



夜明けに、目を覚ました香織が散歩にでなかったら、 この騒ぎ、どうなったか分からない。
さらに大勢を巻き込んだ、大乱交にも成りかねなかった。

「んはあっ、はあっ…ああんっ、んっ、んあっ」

今にも途切れんばかりの息で、 立たされ、前後から挟みつけられるイリナ。 だが、快楽におぼれた肉体は、男たちを放そうとしてくれない。

「ひいっ、ひいっ、この女、いくら姦っても、姦りたりねえっ」
「肌に、肌に吸いついちまうぜっ」
「オヤジさんに、うまく言っといてくださいよっ」

イリナをはさみつけ、狂ったように嬲り輪姦す8人の男たち。 ボーイとして勤めているが、 支配人の息子とホテルグループ幹部の二男とその取り巻きなので、 大抵のことなら、もみ消してもらえるという打算がある。

一人がイリナに咥えさせ、ニヤリとわらった。

「こいつら妖精らしいぜ、どうせ客になってやれば、  喜んでさせるんだ、試食ぐらい構わねえさ。」

ボキッ、ボキボキボキッ、 異様な音が、浜辺に響き渡った。

怒り狂った香織の全身から、その音がしていた。

「こんのおおお、愚か者どもおおおおおおっ!」

戦闘モードに入った二条香織は、帝国で極めていた合気柔術で、 何の容赦もためらいも無く、愚か者たちを残らずぶっとばした。



「気の毒なことをしちゃった…」

正気に戻ったイリナは、ただ一言、悲しそうに言った。

「ああもう、イリナが気にすることじゃないのよ!」

何が嫌かと言って、 男性を巻き込んで後悔するイリナが、 香織は一番胸をかきむしられる。

いっそ支配人呼びつけて、土下座させようかとも思うが、 それだけは止めてと、泣いて頼まれ、あきらめた。

騒動は二人の胸の内にだけ治め、 予定を早めて帰ることになった。

だが…。

「なんであなたたちまで、早く帰るのよ?」
「お二人の表情みたら、想像がつきますよ。」

ベルリナの言葉に、全員がくすくすと笑い、 イリナは顔を真っ赤にした。

イリナのこの手の騒動には、すでに慣れっこだし、 全員が、この不思議で純粋で可愛らしい女性を愛していた。 イリナと香織のいないバカンスなど、みんな楽しくないのだ。

妖精たちは、次のバカンスの予定などを、 にぎやかに話しながら帰った。


最上級の客たちが、突然全員帰るという、 前代未聞の事件に、ホテルの支配人たちは、 呆然と、見送るしかなかった。

総支配人は、 『青い鳥が逃げていくのを見送るような気分だった。』 と後の回顧録「懺悔」で述懐している。

もちろん、イリナも香織もその後は何もしていない。
そのホテルを避けるようになっただけである。

だが、この二人に避けられるということは、 全ミュルス一族から避けられるのと同じ。
ホテルの関係者は、後にその意味を骨の髄まで思い知らされる。

自然と、ラングレー王国関係者はもちろん、 各国王族、貴族、大富豪、著名人の足までが遠のき、 超高級ホテルでありながら、メインの客層がすっぽりと抜け落ちた。

その後、この会社がどうなったかは、言うまでもあるまい。

ミュルスと、そして誰よりイリナの影響力は、 それほど恐ろしいものがある。
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