■ EXIT      
みだらなる乱舞

風が舞う
花びら巻き込み、風が舞う

艶なる絹がひるがえり、白き扇が舞い狂う

細い腕が宙を切り、小さきくつが踊り行く、無上の笑みが花びらに、飾り飾られ振り返る。

極上の大理石の床を、踊り手は音も立てず、すべるがごとく、飛ぶがごとく、無数の花びらを舞い上げ、風の中におどらせ続ける。

『いつ見ても、凄まじい技だ。』
10分にも及ぶ花びらと踊り手の舞いに、メフィス少将は、恐れすら感じながら見惚れていた。

少将も素人ではない。
格闘技ではマスタークラスの実力を持つ。

もし、自分があそこに切り込んだら、命が無い。
銃で狙えば、狙いをつける前に、踊り手は後ろに立つだろう。

ほんのりと漂う色気、つややかで美しい頬、無邪気でけがれを知らぬかのような、愛くるしい美貌。
それに魅了すらされかける。
漆黒の髪と瞳が、光を放つように輝いている。

ようやく踊り手が舞いを納めた。
舞い落ちる花びらが、無数に増えた。

全て4つに断たれ、切り刻まれ、彼女を隠すようにひらめき、落ちた。

だが、その女性はそこにいなかった。
少将の右に、ひっそりと立っていた。

殺気なく花びらを断ち、格闘技の師範クラスの彼に気づかれる事もなく横に立つ。

「見事だ。ミネルファス」

『夢影の毒針』の二つ名を持つ踊り手、ミネルファスは、にこりと無邪気に微笑んだ。

「半月後に、ラングレー王国の全権代表のシーナ・ラングレーとの安保会議がある」
メフィスは言葉を選びながら、話し出した。
「今度の交渉で、我が国には譲れない一線がある。」

だが、あらゆる条件を検討した結果、政治に長けたセシリア・ラングレー女王の才能を受け継いでいるシーナの存在がある限り、今度の交渉では失敗する。
ERの中枢の一部である、ERの政治や外交を主にこなすラングレー王国。

ミネルファスは、チャイナドールのような愛らしい小首をかしげた。
「ですが、少将様の陣営と、ラングレー王国・・いえ、ERとは友好関係にあるのでは?」

少将が苦笑した。
「友好関係ということは、相手に合わせるという事ではないのだよ。私たちはERの属国ではないのだ。時には畏怖も抱いてもらわねばな」
新興独立国家群の国家の一つに属しているメフィス少将は更なる出世のために、強行手段に出ようとしていた。





妖精館が娼館である以上、よほどのことがない限り、ご要望にはお応えしなければならない。
男女差別などもってのほかである。

イリナ・ラングレーは男性客はずいぶんととったが、女性のリクエストは初めてだった。
それもほぼ一晩貸切状態。

最近何度も来ている上客で、同僚からむしろうらやましがられた。

「はじめまして。ミーチャオ様。」
「こんにちは、今日はリクエストに応えてくださって、ありがとう」
今日はイリナは白い清楚なドレスだ。 すらりとした細い足が半ば淡く透け、おっとりとした優しげな美貌がひきたっていた。

お相手がこれまた強烈な印象を与える。
金を混ぜたような栗色の髪に、淡い緑の瞳。
チャイナドールのような顔立ちに、とても印象的な髪と瞳だった。

「あら?、イリナさん右肩が張っているわね。勉強のしすぎかしら?。」
「ええ?!、ど、どうして分かるんですか?」

ミーチャオはクスリと笑った。
「私の本職は針治療ですもの。寝不足に、右手右肩のコリ、姿勢もすこし歪んでいるわ、長時間椅子に座りすぎた時の形ね。」
イリナは本気で感心した。

「私、針治療って見たことが無いんです。」
「じゃあ、そこに横になってみて。」
「え、えええ??。」

イリナはサービスに来たのであって、自分が治療されるわけには行かないと言ったが、 「あなたのことを知るのは、これが一番なの、ささ、横になって。」 柔らかだが強引な押しと、イリナ自身の好奇心もあって、 ついにベッドにうつぶせにされてしまう。

「知ってるかもしれないけど、針ってほんの数ミリしか刺さらないのよね。」
最初に肩甲骨を押され、ツンッ、ツンッ、とかすかな刺激がいくつも打たれていく。

白いなめらかな背中に、金の針が並んで輝く。
刺激が不思議な快感になり、
イリナの白い頬が上気していく。

喘ぎが針をゆらめかせ、ゆらゆら、ゆらゆら、輝きながら、イリナの興奮を伝えていく。

「ひいっ!」
脇をひとなでされると、思わず声が出てしまう。
うっすらとした快感が、羽毛で撫でるように、全身をちりちりと刺激していく。

ツンッ、ツンッ、尾てい骨のあたりに、わずかな刺激。
瞬間、全身に火が走ったような錯覚を見せた。

「ひううっ!」
金色の目が、スパークした。
細い指先がシーツを掴む。

「いいわあ、あなたってとっても。」
可愛らしい尻肉を、なでさすり、指を食い込ませる。
おもちのような感触を楽しみ、
刺激を煽り立てるマッサージを密かにイリナにくわえていく。

「あ・・・あ・・・」
もうイリナに抵抗するすべがなかった。
されるままに脚を広げ、その間にねそべられて、ふっくらとした唇が、陰唇をなでまわす。
ビクッ、痙攣した陰唇から、輝く露がほとばしった。

ぬめぬめとした舌が、頬のそれを舐め、真っ白な太腿に滴る雫を舐め取る。
「ひく・・っ!」
太腿に這う痕がてらてらとついていく。
イリナに拷問に等しい快感を這わせていく。

まるで手足を鎖に縛られたように。
涙を流し、快感にあえぎながら、身動きできずに全身を震わせる。
最後の一線ぎりぎりまで追い詰め、無情にひいていく快感の繰り返し。

「だっ、だめっ、お願い、どうにかしてえっ!」
「うふふふ・・・」
緑の瞳が、瞬時黒く光った。

舌先がとりつくように、濡れた襞を割った。

チュルッ

「あひいいっ!」
ぞくぞくする感触が、襞の中に入り込む。

わざと細めた舌が、襞をこすり、中を刺激し、快感の高ぶりをさらに深くする。
だけど、いかせない。

手足が言うことを利かず、快感から逃れるすべも無く、今にも心臓が止まりそうな興奮が、何度も何度も、おしよせてくる。

イリナは気が狂いそうだった。
『きちゃう、あれがきちゃう?!』
黒雲のように広がる波、下半身から汗に光る背筋、なめらかな肩を震わせ、細い折れそうな首をのけぞらせ、津波が脳髄を襲った。

一定周期で、彼女を襲う性への衝動。
欲情の大波、理性を失わせ、彼女の根底を揺るがすそれは、まだ先のはずだった。

『死んじゃう、このままじゃ死んじゃうぅ!』

ちゅく・・・
花びらに、それが当たった。

一瞬、欲情が理性を狂わせたのかと思った。

ぬらりと、熱い塊が、その肉茎を花びらにそわせた。
脈打ってる、血管のおびただしく浮いたモノ・・・

「おっ、おね・・が・・それを・・」
「うっふふふ、これ〜?」

意地悪くそれを、ゆっくりなぞるように花びらにこすりながら、ミーチャオはにんまりと笑う。
それは紛れも無く男性の陰茎だった、陰嚢こそないが、へそまでそり返る大ぶりな代物。
ひくっ、ひくっ、興奮のあまり、イリナが白目を剥き、痙攣すら始めた。

「うふふ、あまり待たせちゃかわいそうね。」

ズブリッ

容赦ない突入が、イリナを声もなくのけぞらせる。 ものすごい締め付けに、かすかに眉をしかめながら、軽く、優しく、イリナがもっとも望まない動きで、絶頂のギリギリの境界で責め立てる。

涙を流し、あえぎ悶える彼女を、さらに、さらに、追い詰め、壊していく。

「おねがいいいっ!、い、い、いかせ・・てええ・えっ!」

「なら、私のお願いも、聞いてね」
わずかずつ、イリナを深く掘り下げながら、快感をむごく、執拗に高めながら、 絶息しそうな彼女を、冷たく蛇のように見ながら、腰を突き上げていく。

何度もうなずくイリナに、ミーチャオは耳に舌を差し込み、その言葉を流し入れた。

「XXX、・・・、!!」

引き裂かれるような律動が、イリナの奥の奥まで突き上げる。
言われた言葉を、ただ木偶のように繰り返し、腿を抱えられ、身体ごと突き上げられるような律動に、満たされ、嬲られ、もてあそばれる。

涙を流し、唇を震わせ、細い裸身を折れんばかりにのけぞらせ、満たされるエクスタシーにすがりつく。

キスを交わし、乳をこすり合わせ、腰を獣のように交し合い、イリナを何度も絶頂に押し上げた。
とろとろに蕩けきった胎内に、 黒々としたものが、勢いよく突き上げ、えぐり、こね回す。

上にあげられた裸身が、 うめき、あえぎ、絶叫する。
乳房に赤い痕をつけ、 恥じらいもなく腰をこすりつけ、 繰り返す絶頂に身を投げる。

「あグ、あっ、あぐっ、ひっ、あっ、ひっ、あっ、あああああああぁぁぁぁっ!!」
恍惚とした顔が、宙をさまよう。
視点を失った目が朦朧とかすむ。
締め上げた陰茎が、ついに脈動をほとばしらせる。

ビュグウウウウウッ、ビュグウウウウッ、ビュグウウウウッ、

強烈な充足の快感、イリナの意識が白く消えた。

「ふう・・ふう・・・、あれを使ったのに、いかされるとはね・・・」
ミーチャオは激しくあえぎながら、 ゆっくりと引き抜いた。
ぞくぞくする感触に、再び埋め込みたい誘惑を振り切り、 意識を丹田(下腹部の気の中枢)に集中する。 『毒針」の異名を持つ陰茎が、張りを失い、小さく、見る見る姿を失う。

髪と瞳が漆黒の輝きを取り戻した。

そして、ありえないことに、妖精館の電源が落ちた。





「セシリアには3人の娘がいる。 長女のシーナ、次女のソフィア、三女のイリア」

「セシリアに関係する家族たちの調査で、唯一シーナの娘イリナだけが 、全く情報が掴めん。実年齢から大学生のはずだが・・・」

情報が掴めないという事は、重要な人物が多いラングレー家の中で特別の立場なのか、偽名を使って一般社会に溶け込んで生活しているのか、と推察した情報局所属のメフィス少将は、過去の情報を徹底的に洗い出した。 どんな情報もその本体は見えなくても、徹底的に周辺を洗い出すと、意外なほど細部まで浮き上ってくるものだ。

ある程度成長した時点から、一定周期で所在が不明になる事、その時点での外泊行動、詳細が一切不明という異常な記録に突き当たるのだが、

ここで、不幸な偶然が作用した。
情報局が人間の顔を鑑別するコンピューターに、コンピューター管理者の一人が、 謎のAV女優アンリ・スタンザーの正体を知りたさに、 こっそりデータを入れてしまったのだ。

無機質なコンピューターの鑑別と体系照合によって、体系情報とほぼ一致し、デジタルメイクによる印象変化は取り除けられた最終照合によって同一人物の可能性としてイリナ・ラングレーの名前が浮かび上がった。

ただ、イリナの情報は最上位のシークレットであり、事実上少将しかデータを見ることができない。
(もちろん、私的にコンピューターを使った馬鹿者は、20年の禁固刑が言い渡された)

そして、香織の行動とイリナの所在不明時期がかなりの頻度で一致し、撮影時以外の香織の行動の大半が妖精館に注がれている事から、所在不明時の時には、どこにイリナが居るかを気づいた。

妖精である事から、ラングレー家の中で一番、見知らぬ人と接する機会が多いイリナはメフィス少将にとって格好の標的に見えた。

「別にイリナに危害を加えるわけではない、 ただ数日、会議終了まで旅行をしていただくだけ、そうだなミネルファス。」
チャイニーズ系の美しい顔立ちが、無邪気に・・・、笑った。





「う・・ん・・」
ひどく頭が重い。

イリナが目を覚ますと、 ひどく豪奢な部屋の、大きなベッドに寝ていた。
かけられていたシーツがずれると、 可愛らしい乳房が朝日に照らされた。
「わっ・・・、ぼ、ボク、裸?」

両手首に太いリストバンドがつけられ、 頑丈な南京錠がかけられている。

皮肉なことに、この時代で一番破られにくいのが、 機械式の錠だったりする。

イリナの魔法は屋敷に幾重にもかけられた短時間では破れそうも無い結界と、 リストバンドの抑制術でがんじがらめに押さえられていた。

「あら、お目覚めですね」
ティーポットとクロワッサン、フルーツを盛ったトレイを持ち、 赤いチャイナ服にまっ白いエプロン、 すらりとした細身の女性が、黒髪をなびかせながら入ってきた。

「き、キミはだれ?」
必死ににらみつけるイリナを、くすくすと笑い、 「つれないですわ、あんなに昨日は燃えたのに」

目と髪の色が瞬時に変わる。

「え?え?、ミーチャオさん??」
身長まで10センチ近く変わっている。

「魔法じゃないわ、変化よ」
印象魔法だったら、イリナにばれないはずが無かった。
気の力で関節を伸ばし、髪や目の色まで変える特殊技術だ。

「ここ、どこ?、ボク、どうしてここにいるの??」
「あらあ、私言ったじゃありませんか」

責め立てられ、息もたえだえに懇願する耳に、艶かしく差し込まれた言葉。
『それじゃあ、私の奴隷になってね、・・・』
その後、絶対服従の魔法を自分に唱えさせられ、 数時間、彼女に言われるままにあらゆるラインの消えた妖精館を出てきたのだった。

もちろん、服従の魔法は絶対ではないし、 他人を殺したり、自分を傷つけたりすることもできない、 時間もきわめて短いのが常だ。
イリナほどの強力な術者でなければ・・・だが。

耳まで真っ赤になったイリナに、 にこやかにお茶をすすめながら、 「約束は約束でしょ、一生なんて言わないから、ほんのしばらくここにいてね。」

思いっきり穏やかなお茶と朝食、 昨日のことをからかわれながら、 ふとさらわれて来たことすら忘れそうな風景。

『変わった人だなあ・・・』
悪意の無いミーチャオの行動に、イリナは、ころっと騙されてしまった。

食後はボードゲーム。

恥ずかしそうに服を下さいというイリナに、にんまりと笑いながら、 「だめよお、あなたは奴隷なんだから、ここにいる間は裸でいてね。」
『絹のベッドに、上等な朝食、ご主人の給仕で奴隷ですか・・・』
イリナは頭を抱えたくなった。

二人が始めたのが、 タイタンの開拓者という未知の星を開拓者となって開くゲームなのだが、 『負けたほうは罰ゲームね』
と、色々書いているらしいカードを篭の中に放り込む。

序盤順調に飛ばしていたイリナだが、 3回連続で開拓地が火事になって、収益は赤字に転落。
「は、破産です〜〜〜。」

「武士の情け、罰ゲームは自分で選んでいいわよ。」
しかし、引きの悪さはとことんついてなかった。

「ぶぶぶ、すごいの引いたわねえ・・・」
罰ゲームのカードを見て、イリナも絶句してしまう。


「ひいんっ、ひんっ、ひんっ、」

リリア糸という太くてやわらかい、異常に伸縮性に富んだ糸があるのだが、 大人のお遊びで有名な道具でもある。罰ゲームの為に庭に出たイリナは、半泣きになりながら、 そろそろと爪先立ちで歩いていく。

後ろ手にリストバンドをくっつけられ、 おまたの間に直径3センチもあるリリア糸が高く通されている。
いやでもあそこに糸がこすれる。

柔らかいから傷はつかないが、いや柔らかいからこそ始末におえない。
ネコジャラシが無限にあそこを責めなぶるようなものだ。

『この姿勢で10メートル歩く事』

ほとんど拷問である。
喘ぎながら、上気した頬をのけぞらせ、 腰をもじもじとくねらせ、 それでもそろそろと、ほっそりした足を進める。

とろとろの愛液を吸って、糸が光ってくる。
適度な柔らかさと、ちくちくする感触が、快感を煽り立てる。
しかも、ゴールちかくなると、次第に上のほうへ角度が上がっていることに気づいた。
つまり・・・
「あひいっ!」
クリトリスがこすれ、敏感なあそこから、快感がショート。

ブシャアッ

おびただしい愛液を零しながら、
イリナは柔らかい芝生に転んでしまった。

「ひんっ、ひんっ、ひどいですうう・・・」
あそこをもじもじさせながら、本気に泣き出してしまうイリナだが、そのスタイルと潤んだ目が、たまらなく愛らしい。

『かっ、可愛すぎる〜〜!』
ミーチャオが抱き上げる。

後ろ手の縛りを外すと、泣きながら絡み付いてくる。

芝生の上で、二人はキスをくりかえし、お互いの肌に指を這わせ、雫を嘗め合う。
あそこがうずいてたまらないイリナが必死に尻を振ると、 ミーチャオのペニスが、ビンと伸びた。


背中の下で柔らかな草が潰れる。
「ひあっ!、あっ!、あくうううっ!」
凶暴な陰茎が、イリナの秘所を襲いまくる。 わざと細い手首を抑え、足を強引に広げさせ、 レイプするかのように突き上げる。

だが、イリナもすらりと長い腿をくねらせ、 ミーチャオの細い腰をぐいぐい引き込む。
白日の陽光が、のけぞる愛くるしい顔を照らし、 のたうつ白い肌を晒し出す。
凶悪な律動が、たまらない甘美の波を起し、 イリナの愛液が、黒光りする陰茎を濡らし、染め上げる。
激しい動きにくねり、締め付け、絡みつかせ、 そそり立つ欲望を飲み込み、溺れさせんと蠢く。

襞をこすり、子宮口をこねあげられ、 叩きつける細い腰が、激しい圧力を深く、イリナの奥底まで、叩き込んでくる。

「あひっ、ひっ!、もっ!、もうっ!、もうっ、だめえええええ〜〜〜っ!!」

何度目かの敗北の後、絶叫してイリナは陥落した。
顔に、淡く可愛らしい胸に、細くなめらかなお腹に、 熱いほとばしりが、くりかえし浴びせられた。
恍惚に身動きできないほど喘ぎながら、 イリナは、いかされっぱなしなのが、悔しかった。
『どうしてこの人には、ボクの愛撫や愛液が効かないんだろ?』

イリナの愛液は、媚薬の効果があり、 香りを嗅ぐだけでも興奮するはずだった。

妖精として努力して習得してきたはずのテクニックも、 天性の身体と愛液すらも、 ほとんど通用せず、 先に、何度も絶頂へいかされてしまう。 イリナがなんとなくここから出て行けないのは、 プライドと相手を満足させ切れない不満が、 カリカリと心を噛むのだ。

月光が、ほっそりとした美しい指を照らした。

そのとき、イリナの直感が開いた。
『そっか、そういうことか・・・』
イリナが小悪魔的な笑みをうかべ、 ゆっくりと身を起こした。
完全にノックアウトしたはずのイリナが、 ゆっくりと起き上がると、 ミーチャオが嬉しげに白い歯を見せた。

再び室内に戻り、ベットの上で二人は69の形で絡み合い、お互いを愛撫しあった。

ちろちろと、可愛らしい舌先が蠢き、 濡れ光る陰茎を愛撫していく。
優雅で美しい腰のラインと、 異様な猛々しさでそそり立つそれが、 ひどくアンバランスで、しかも麗しかった。 ミーチャオの小さな口から、細く長い舌が、 ぬめぬめと茂りのない丘をはいずり、ふくよかな肌をあじわっていく。

はむっ、 イリナが陰茎を甘噛みし、唇でなぞるようにすべらせる。

かすかな呟きが、その唇から漏れ出た。

「ひっ!、あ、あ、あ・・?!」
ミーチャオが思わず腰を引きそうになる。
それを逃さず、さらにくわえ込む。

『やっぱり!』
彼女を抑えている抑制術は、強力な魔法ほど強く抑える。
だが、弱い魔法にはさほど反応しない。
イリナの子宮に張られた妊娠防止魔法が消えていないのがその証拠だ。

そして、それはミーチャオも同じ。

ほおばった亀頭を、口の中で回し、カリ首を舌先で攻め立てる。

「くひっ!、ひっ!、あうううっ!」
クレア直伝の指の愛撫に反応しなかったのは、彼女だけだ。
つまり、彼女は感覚を鈍くしているはず。

『感覚鈍磨の魔法は、鋭敏化で打ち消したよ、さあ、これに耐えられるかな?』

これだけ密着してかけられれば、弱い魔法でも逃れるすべはない。

わざと鈍らせていた感覚が、目の覚めるような鮮やかさで伝い上がる。

イリナは身体ごと前に出て、白く細い喉に、根元まで飲み込んでいく。
舌で、唇で、そしてかすかに歯をかすらせ、 血管と粘膜の凹凸を絶妙な加減で刺激していく。

快感に今にもいきたい、 だが、それをもっと味わいたい、 反する欲望に身体をわななかせ、歯を食いしばってたえぬく。
もう一度飲み込もうとするイリナを身体ごと持ち上げ、 バックから爆発寸前の物で突き刺した。

「あひいんっ!」
「う、ああああ!」
二人とも絶え入るような声を上げた。

これまで以上に膨張した物、 閃光の中に放り込まれたような快楽、 イリナが征服される圧力に屈しかけ、 ミーチャオがざわめきと蠢動の快感でくるみこまれ、 二人は狂ったようにぶつけ合った。

だが、もう一方的な攻めではない。

ベッドをきしませ、あえぎを蕩けさせ、 身体の溶け合うようなエクスタシーが二人を行き来し、責めつける。

強烈な律動に身を任せながら、 迎え入れる胎内をうねらせ、絡みつかせ、自分の全てで絶頂へ導く。 突き進むたびに、それがわななき、 うねり入るたびに、うめき、喘ぐ。 イリナはやっと、ともに登り上がる満足に満たされていく。

愛液が芳香となり、 興奮が脳髄まで届く。 ペニスが燃え上がり、濡れそぼる胎内で 喘ぎのけぞる腰の奥で、もう、耐え切れそうになかった。

「もっ、もうっ、だめっ、」
「いっ、い、いっしょにいいっ!」

二つの女体が深く結合し、 快感のエキスが激しい交流を交わす。

魂が抜け出るような快感と放埓、
イリナの胎内で何度も痙攣を解き放ち、 二人はぐったりと崩れた。

「と、とうとう・・、いかされちゃったわね・・・」
未だに締め付けられる中で、 ミーチャオは喘ぎながらつぶやく。

「うふ、でもまだこれからですよ」
ぞわっ、背筋がそそけだつような甘い声がした。

え?、と彼女が思う間もなく、 イリナが柔らかい身体をくねらせ、 ぐるりと彼女の方を向き直る。
一体どんなテクニックなのか、ミーチャオは抜いてもらえないまま。
「あひっ!、ちょっ、ちょっと、ゆるめてぇっ!」
中でよじれ、こすられるペニスはたまったものではない。

「さんざん、切ない思いをさせられたんですから、今夜はお返しをたっぷりしま〜す。」

「ええ〜〜っ??」





ふらふらと入ってきた姿に、少将は苦笑した。

「おかえり」

ミーチャオことミネルファスは、げっそりとやつれ、 不眠と虚脱のくまが、ファンデーションでも隠しようがなかった。

「す、すみません、4日が限度でした。私が限界に達した頃に丁度、迎えが来て・・・」
できれば7日、彼女を拘束しておくのが要請だった。

「いや、2日が限度だろうと予測していたのだが、むしろ意外だった。」
頬をひきつらせるミネルファスに、正面のでかいモニターを見せた。

「2日目に送られてきたディスクだ」

「げ、シーナ・ラングレー」
イリナを強烈にしたような美貌は、ミネルファスを睥睨していた。

『メフィス殿、すこしいたずらが過ぎるのではありませんか?。 まあ、悪意というほどのこともなし、今回の状況については不問にしますが、 あまりファリア(妖精館の主)を困らせないで下さい。 一応そちらの面子を立てて、交渉については配慮しますわ・・・それと、 いらぬ騒動は起こさないで下さいね。』

「まあ、ここまでみすかされては、これ以上は何もできん。
全ては無かったこととして、引き上げる。」
『この手際のよさから、イリナに関する情報は我が情報部がたどり着き易いように配置されており、私の行動ですら予測されていたのか・・・不問にする事で、大きな貸しを作ってしまった。イリナに対して害を働いたら、私・・・いや、この国は恐ろしい結果になっていただろうな・・・』

「分かりました、ですが少将様」
「なんだ?」
「ひとつだけ」
チャイナドールのような顔が、妖しく微笑んだ。
「イリナについて、以後一切の情報漏えい、無きようにお願いいたします。」

強烈な殺気に、少将は口がきけなくなった。

『ミイラ取りがミイラになったか・・・』

自分の陣営に、イリナ・ラングレーの強烈な崇拝者が出てしまったことに、 本気で後悔せざるえなかった。
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