イリナ・ラングレーの性癖
夜の街、ホテルの一室では、狂おしい宴が始まろうとしていた。
「来て…」
美しい少女が、欲望と警戒心をちらつかせてたたずむ、8人の男達を差し招く。
既に少女はあらかた服を脱ぎ捨て、シルクに命を吹き込んだような純白の肌を、間接照明が作る薄闇の中に浮かび上がらせていた。
「マジかよ…」
「薬キメてんじゃねえか、こいつ?」
お互い面識もない、ただ少女に誘われてついて来た男達が、口々に呟く。うかつに少女を抱けば、明日の朝はボロキレのように街角に転がされているかもしれない…
そんな安っぽいイメージが、男達の脳裏を行き来していた。
いや、たとえ少女の誘いが本物だとしても、この状況の異常さはどうだ。
8対1という、あまりに大きい男女比でのセックスが、どれだけ凄惨な陵辱となるか、無邪気に微笑むこの少女は、理解しているのだろうか?
それもただの少女ではない。
高いポテンシャルを有しこの世界に美しく君臨する、エルフの血を引くもの…
ハーフエルフの少女なのだ。
「はやくう…お口でも、お尻でも…
どこでもめちゃくちゃにして…いっぱい精液出して…」
澄んだその声が、鋭い切っ先で男達の理性を切り捨てた。
ある者は唸りながら、ある者は無言で、それぞれに衣服を身体から剥ぎ取りながら、
微笑みを絶やさず待ち構えている、無防備な獲物に襲い掛かっていった…
ハーフエルフの少女は王家に名を列ねる高貴な血筋を引く存在。
名をイリナ・ラングレーという。
すべてのハーフエルフがこうした淫欲に溺れる性質ではなく、
今の彼女は周期的に湧き上がる強烈な性衝動に支配されていたのだった。
過去の事件に起因する。
その性衝動が眠っている時のイリナは、聡明で誰からも愛され、強力な魔法をよく制御し、資質性格とも多くの尊敬を集める少女だった。
しかし一度性欲が目覚めると、それは容易なことではない。
それは精神のみならず肉体へも変化をもたらし、その陰部からは媚薬に近い成分の愛液がとめどなく湧き出し、相手だけではなく自らをも淫欲の淵へと誘う作用がもたらされるのだった。
無論、今の男達にはそれを知る由も無い。ただただ、美しい少女を思うざま貪るチャンスに酔い痴れているつもりで、既にイリナに快楽を供給する存在と成り果てていた。
膝まづいたイリナを囲むようにして、男達が輪になる。
運良くイリナの正面に立った男は、躊躇うことなくその唇に、肉の凶器を押し当てた。もちろんイリナもlそれを拒まず、舌なめずりをしてそれを受け入れた。
「手も使えよ!」
それを聞くが早いか、イリナのしなやかな両手が周りのペニスに伸びる。
一本、あるいは二本を同時にその手にすると、
心得たようにスナップを効かせ、しごきをくれる。
その奉仕からあぶれたペニスの持ち主は、粘ついたフェラチオの音を聞きながら、小刻みに揺れるイリナの乳房を視姦しながら、自らの手で快楽を生み出して、気まぐれなイリナの手や唇が訪れるのを待った。
「すげえ…吸い取られそうだ…」
イリナの奉仕を受けている男が、感極まったように漏らす。
イリナは熱心に8本のペニスを賞味し、その白い肌にうっすらと汗を浮かべて、男達を一回目の射精へと順調に導いた。
「あっ、ん!」
ほとんど間をおかず、8本のペニスから精液が迸り、
イリナの髪を、顔を、身体を汚してゆく。
イリナはピンク色の舌が届く範囲で、顔についた精液を舐め取り、手に溢れ出た精液を啜り、心底美味しそうに飲み干した…部屋の空気に溶けた淫臭が、濃さを増してゆく。
イリナはその肢体を大きく開き、全てを男達に曝け出して囁いた。
「ね、今度は…中にください…ボクの中に、いっぱい…」
男達が色めき立ち、今しがた射精したペニスが素早く屹立した。
言われなくてもイリナの恥部を漁るつもりではあったが、はっきりと誘われれば興奮は倍加する。
「デキちまっても知らねえぞ!」
男の一人が殊勝に叫ぶが、イリナは頬を染めて微笑むと、
「大丈夫…ボクは平気だから、いっぱい、ください…」
免罪符は与えられた。
男達は歓喜に震えながら、イリナにのしかかると、愛液にテラテラと濡れ光る肉の裂け目に、遠慮なくペニスを沈ませていった。イリナを引き裂くように奥までそれを収めると、強引なストライドでそれを出入りさせる。イリナの可憐な唇から、トーンの高い嬌声が放たれる。それに合わせてイリナの恥部は収縮を繰り返し、ペニスを逃がすまいと締め付け、絡み付いてゆく。
妊娠や感染症を恐れないイリナの秘密。
それはイリナ自身の強い魔力にあった。
魔法使いと呼ばれる者なら嗜みとして、普段でも魔力防壁と呼ばれる、目に見えないシールドを、無意識のうちに身体にまとわせている。特にイリナのような高位の魔法使いは、皮膚は言うに及ばず、膣や子宮にまでそれを施し、望まない妊娠や疫病からも、完璧に防御することが可能なのだった。もちろんそれは意志により解除もできる。イリナが愛する人の子を宿す時に…。
男達は嵐のように、獣のように、イリナを犯した。
乳房にむしゃぶりつき、手も唇も休ませず、顔といわず身体といわず、舌を這わせ、唾液を塗りこんだ。
それに重ねて、何度も何度も、驚くほど濃い精液をぶちまける。
「うおおおっ!」
叫びとともに、男がイリナの中に射精する。
イリナの全身を一際強い快感が突きぬけ、激しいオーガズムが襲い掛かる。
この瞬間を存分に味わうために、イリナは魔力防壁を膣や子宮に施しているのだった。
「もっと…もっとお…ボクに…中に、ください…」
精液にまみれたクリトリスをつまみ、貪欲に快感を求めながらイリナがおねだりする。
その痴態は、まるでチャームの魔法のように男達を虜にし、尽きぬ性欲をペニスに充填していった。
イリナの膣で、唇で、速射砲のようにペニスが弾ける。それでも足りず、顔にぶちまけられ、乳首になすりつられる精液を、イリナは忙しく指ですくい、唇へ運んでゆく。
8人の奉仕にもてなされ、イリナは快楽のディナーを満喫していった…
街に朝日が訪れるころ、宴はついに終わりを迎えた。
いや、正確に言えば、男達が力尽きた。床に倒れ伏し、シーツに絡まり、ソファにめり込んで眠る男達。
その中でわずかに体力で勝る男が、のろのろと起きだしたのを、イリナが見逃すはずもなかった。
「まだ、できるよね?」
イリナが微笑む、その笑みが枯れ果てた男の性欲を蘇らせる。
鎌首をもたげたペニスにイリナは何度も頬ずりすると、
「今度は…ボクからしてあげる」
たっぷりと唾液を含んだ唇を大きく開き、イリナの誠心誠意の口腔奉仕が始まった。
「んむ…ちゅぱ…はっ、ふ」
澱んだ空気が満ちる、ホテルの部屋に、くぐもった音が響く。
イリナはペニスを喉の奥まで飲み込み、また唇でしごき、付け根や袋まで舐めしゃぶり、不意に亀頭を強く吸った。指も総動員して、宝物のようなそのペニスに奉仕してゆく。
「も、もう…」
「出そう?いいよ、ボクのお口にいっぱい出して…飲んであげる」
イリナはそう言って、亀頭をぱくりと口に含む。舌を絡めて亀頭を刺激しながら、竿を指で撫でしごく。
絶妙のコンビネーションに、それから20秒とたたず、男はイリナの口の中に、大量の精液を発射した。
「!…こくっ、こく、こくん…ちゅる…こくっ…っ、ふう…おいしい…」
丹念に精液を味わったイリナが、ゆっくりとペニスを唇から引き抜く。
精液と唾液のカクテルが、空間に細い橋を一瞬築いて、滴り落ちる。
綺麗にしてあげようとイリナは再び亀頭を口に含んだが、すぐにそれを出し、「硬くなってる…じゃあ、もう一回、ボクの中に来て、ね…」
くるりと後ろを向くと、形の良いヒップを両手で割り開き、性交の刺激でますます鮮やかな紅色を見せる恥部を晒し、誘うように腰を振る。
たまらず男はそのヒップをわしづかみにして、一息にイリナを貫いた。
「ひっ…ゃうっ!」
イリナが小さな悲鳴を上げる。
締め上げるその膣が男を求める。
イリナと男がリズムを合わせて腰を振る。肉が肉を打つ音が聞こえる。
男が放つ…
イリナが受け止める…
結合部から泡になった精液と愛液がしたたり、床にいくつもシミをこしらえていった。
最後の男が崩折れたあと、交わりを解いてイリナはバスルームに立った。
たっぷりの熱い湯を使い、身体から汗と唾液と精液の入り混じったものを拭い去ってゆく。
強めの水流を当てても、後から後から太腿を伝う液体の感触が、イリナの心に、羞恥・後悔・満足感が複雑に絡み合いながら、細波のように湧き上がらせてくる。
「…」
宴のあとはいつもこうだった。
しかし、これだけは止められない。
あの、身体の奥からかあっと湧き上がる衝動に抗う術は、イリナには無いのだった。
シャワーを水に切り替え、その刺激で思考をリフレッシュしたイリナは、バスタオルを何枚も使って身体を拭いた。
それから部屋に戻り、ついさっきまで気持ちよく嗅いでいた部屋の空気に真っ赤になりながら服を身に着け、男達を跨いで部屋を横切ると、鏡の前で身なりと髪を確かめる。
そして、振り向かずに部屋を出、後ろ手でドアを閉めた。
その、パタンという小さな音が、男達の夢を終わらせた。
新鮮なゾンビィという形容が似合うほどの頼りなさで、男達は、他の者などいないかのようにシャワーを浴び、服を着て、一人、また一人と部屋を出て行くのだった。
その脳裏には、昨晩の記憶など微塵も浮かんでこない。
鉛のように重い身体と、搾り取られた虚脱感と、なぜ、そうなったのか、という疑問だけが、どろどろと渦巻いていた。
「朝ごはん、何食べようかな…」
無意識とはいえ怠り無く、魔法で男達の記憶を操作してのけたハーフエルフ、
イリナ・ラングレーは、性への飢えを身体のどこかに追いやり、年頃の娘らしい、健全な食欲をみなぎらせて、朝の街を闊歩していった。
しかし。
朝がくれば、夜も来る。あの淫らで、濃厚で恥ずかしい夜が。
そしてその夜が、イリナ・ラングレーの許に訪れるのは、そう遠いことではないのだった。
|
|